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なぜ今「Gemini利用ルール」が必要なのか
Geminiは、入力した情報を材料に回答を生成するため、社内情報の扱い方が曖昧なままだと「うっかり漏えい」「誤った出力の拡散」「著作権トラブル」が起きやすくなります。特に情シスや管理部門が「便利だから使っていいよ」と先に許可してしまうと、現場は善意で試したつもりでも、後から監査・取引先確認・法務対応が必要になるケースがあります。
中小企業でも大企業でも、生成AIのルール作りは「技術の話」というより「情報管理と業務運用の話」です。たとえば次のような日常業務でGeminiはすぐ使われます。
- メール文面のたたき台、謝罪文、提案文の整形
- 議事録の要約、タスク整理、ToDo化
- Excelの関数案、手順書の構成、社内FAQの文章化
- RFPや要件定義の整理、ベンダー比較の観点出し
このとき問題になるのは「使う/使わない」ではなく、何を入力してよいか、何を入力してはいけないか、出力をどう扱うかです。ルールが無いと、担当者ごとに判断がブレて、現場は怖くて使えないか、逆に無自覚に危ない使い方をしてしまいます。
本記事では、専門知識がなくても作れるように「入力してよい情報」「禁止事項」「運用の仕組み」まで、Gemini利用ルールの作り方をひとつの完成形として解説します。
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まず決めるべき前提:目的・対象範囲・責任者
ルール作りで最初に詰まりやすいのが、細かな禁止事項から書き始めてしまうことです。先に目的・範囲・責任を決めると、後の判断が一気に楽になります。
目的(何のためのルールか)
おすすめは、目的を3つに絞ることです。
- 情報漏えいの防止:顧客・取引先・社内の機密を守る
- 品質事故の防止:誤情報の社外発信、誤った意思決定を避ける
- 現場の生産性向上:安全に使える状態を整え、禁止だらけにしない
「禁止するため」ではなく「安全に使えるようにする」姿勢にすると、現場が協力しやすく、シャドーIT化(勝手に個人アカウントで利用)が減ります。
対象範囲(誰が、どの端末で、何に使うか)
最低限、次を明確にします。
- 対象者:全社員 / 一部部署のみ / 派遣・委託を含むか
- 利用場所:社内端末のみ / BYOD可否 / 在宅の条件
- 用途:文章作成 / コード生成 / データ分析 / 画像生成 など
情シスが把握しやすい単位(部署、業務、システム)で切るのが実務的です。最初から全社一斉でなく、影響が小さい業務から段階導入しても構いません。
責任者(判断・例外承認・更新)
ルールは「作って終わり」ではなく、運用中に必ず例外が出ます。責任者が不明だと、現場が止まります。
- 主管:情シス(運用、権限、ログ)
- 共同:法務/総務(契約・個人情報)、情報セキュリティ、広報(社外発信)
- 現場代表:営業/CS/開発など(実態に合うルールにする)
例外承認の窓口を1つに決めるだけでも、スムーズに回り始めます。
入力してよい情報の決め方:3段階の情報分類で迷いを減らす
Gemini利用ルールの核は「入力ルール」です。ここを複雑にしすぎると守られません。おすすめは情報を3段階に分類し、原則を先に置くことです。
情報分類の例(公開 / 社内 / 機密)
- レベル1:公開情報(入力OK)…自社サイト掲載内容、公開プレスリリース、公開法令、一般的な業界知識など
- レベル2:社内情報(条件付きOK)…社内規程の一般論、業務手順の抽象化、社内用テンプレの構成など
- レベル3:機密情報(入力禁止)…顧客情報、取引条件、未公開財務、ソースコード、認証情報、個人情報、機微情報など
ポイントは「社内情報を全部禁止」にしないことです。たとえば議事録の要約でも、固有名詞を消して「抽象化」すれば十分役に立ちます。入力してよい形に変換する手順をルールに含めると、現場の生産性を落としません。
条件付きOK(レベル2)を成立させる「抽象化」と「置換」
条件付きで入力する場合は、次の加工をセットにします。
- 固有名詞の削除:会社名、製品名、人名、プロジェクト名を「A社」「新製品X」などに置換
- 数値の丸め:売上や単価などをレンジ化(例:120万円→「100万円台」)
- 識別子の除去:顧客ID、注文番号、メールアドレス、電話番号を削除
- 文脈の分離:具体案件の事情を外し「一般的なケース」として相談
「抽象化して使う」文化が根づくと、Geminiは実務でかなり使いやすくなります。逆に、顧客名入りのメールをそのまま貼る、といった使い方が常態化すると事故は時間の問題です。
入力してよい情報の具体例(そのまま使える)
利用シーン別に「OK例」を書いておくと、迷いが減ります。
- 文章:社内向け案内文の言い回し改善(固有名詞なし)
- 企画:一般的な市場動向の整理、競合比較の観点出し(公開情報のみ)
- 管理:規程文の読みやすい要約(条文そのものが公開でない場合は注意)
- 業務改善:手順書の構成案、チェックリスト作成(自社固有の機密を除外)
「入力してよいこと」を具体例で示すのが、ルールの遵守率を上げる最短ルートです。
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入力禁止事項の作り方:禁止リストは「カテゴリ+例」で短く強く
禁止事項は網羅しようとすると長文化します。現場が読みません。そこで「カテゴリで禁止し、例で補う」形にします。Geminiに限らず生成AI全般で共通化できる設計です。
最低限の入力禁止カテゴリ(テンプレ)
- 個人情報:氏名、住所、電話番号、メール、社員番号、履歴書情報、健康情報など
- 顧客・取引先情報:担当者名、契約内容、見積、単価、納期、与信、クレーム詳細など
- 認証・セキュリティ情報:パスワード、APIキー、秘密鍵、VPN設定、脆弱性情報(未公開)など
- 未公開の経営情報:決算見込み、資金繰り、M&A、採用計画、未発表施策
- 知的財産・著作物:第三者の有償資料、ライセンス制限のあるコード、無断転載文章
- 機密性の高い技術情報:ソースコード、設計書、構成図、ログ(個人情報や鍵が混ざりやすい)
「ソースコードは全部禁止」にすると開発部門は困る場合があります。その場合は、社内の閉域環境で動くツールに限定する、あるいはコード片の持ち出し禁止など、別ルールで設計します(本記事の読者像では、まずは禁止でも問題が起きにくいケースが多いです)。
うっかり起きるNG例(現場に刺さる書き方)
- 顧客への返信メール全文を貼り付けて添削(署名・電話番号が混入)
- 障害調査でログを貼り付け(トークンやメールアドレスが混入)
- 見積の妥当性を相談(単価や取引条件がそのまま)
- 人事評価コメントを要約(センシティブ情報を含む)
「意図せず混ざる」ことを前提に禁止例を書いておくと、現場は自分ごと化します。
出力の扱い方(誤情報・著作権・社外発信)まで決める
入力だけ守っても、出力の扱いが曖昧だと事故が起きます。Geminiの出力は便利ですが、常に正しいとは限りません。さらに、他者の文章と似た表現が混ざる可能性もあります。「出力は下書き」ルールを明記するのが基本です。
誤情報対策:確認の責任を人に戻す
ルール文としては次のように書くと分かりやすいです。
- 出力は参考情報であり、最終判断は利用者が行う
- 重要事項(法務、契約、財務、労務、医療等)は一次情報で裏取りする
- 数値・日付・固有名詞は必ず確認する(架空のものが混ざりやすい)
現場向けには「そのまま送らない」「そのまま貼らない」を合言葉にするのが有効です。
著作権・引用:コピペ運用を止める
社外公開コンテンツ(Web記事、提案書、ホワイトペーパー、SNS投稿)にGeminiを使う場合は、次を最低限入れます。
- 第三者の文章を貼り付けて要約・改変する行為は原則禁止(権利・契約次第で例外)
- 引用する場合は、出典を明記し、引用の範囲を必要最小限にする
- 納品物・公開物はコピペではなく、自社の言葉に書き直す
「AIが書いたから大丈夫」ではなく、従来どおり著作権の考え方が適用される、と整理すると通ります。
社外発信フロー:誰がレビューするか
社外発信はレビューを必須にするだけで、炎上や誤発信の確率が下がります。
- 対外メール:上長確認が必要なケース(謝罪、契約、金額、納期)を定義
- 提案書:営業責任者+法務/情シスの観点チェック(機密混入の有無)
- Web/SNS:広報または編集責任者レビュー(事実確認・表現・権利)
レビューは重くしすぎないことが重要です。「全件法務」は現実的ではないので、リスクの高い類型だけ必須レビューにします。
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ルールを形にする:社内で運用できるテンプレ(そのまま流用可)
ここからは、Gemini利用ルールを「文書」として成立させるための部品を紹介します。情シスが通達として出す場合も、各部門の簡易ガイドとして配る場合も、骨格は同じです。
社内ルールの基本構成
- 目的・適用範囲
- 利用可能なアカウント/環境(会社アカウントのみ、個人アカウント禁止など)
- 入力してよい情報・禁止情報
- 出力の扱い(確認、保管、共有、社外発信)
- 禁止行為(無断利用、外部共有、回避行為)
- 違反時の対応(報告先、一次対応、再発防止)
- 問い合わせ窓口・改定履歴
「どこまでOKか」を迷わせないために、利用可能な環境を先に確定させるのがコツです。会社管理のアカウント、端末、ネットワークで使う方が統制しやすく、監査にも耐えます。
短い「現場向けチェックリスト」もセットで配布する
長文ルールは読まれにくいので、A4 1枚のチェックリストを併設します。
- 入力前に:固有名詞/個人情報/契約金額/ID・鍵が入っていないか
- 出力後に:事実確認したか、出典確認が必要か、社外に出すならレビューしたか
- 迷ったら:入力しない/抽象化する/窓口へ相談
現場での実行力は、結局この1枚で決まることが多いです。
プロンプト例:安全に使うための「前置き」テンプレ
Geminiに入力するとき、毎回同じ安全宣言を付けると事故を減らせます。以下は社内展開しやすい例です。
前提:
- これから入力する内容には個人情報・顧客名・契約条件・認証情報は含めません。
- 出力は下書きとして扱い、事実確認を行います。
依頼:
以下の文章を、社内向けに読みやすく要点を3つに整理し、箇条書きにしてください。
(ここに抽象化した文章を貼る)
「入力してはいけないものを入れていない」ことを自分で確認する儀式になるため、うっかりミスが減ります。
導入から定着まで:情シス・管理部門が押さえる運用ポイント
ルールは作って配っただけでは定着しません。特に予算はあるが詳しくない組織ほど、ツール導入で満足して運用が弱くなりがちです。ここでは「揉める前に決めておく」運用ポイントをまとめます。
例外申請と相談窓口を用意する
禁止が多いと現場は回避し始めます。そこで、次を用意します。
- 例外申請:どうしても必要な場合の申請フォーム(目的、入力内容、期間、責任者)
- 相談窓口:Teams/Slackの専用チャンネル+情シスの担当者
「相談していい」空気があると、シャドー利用が減ります。
教育は30分でよい:事故りやすいポイントだけ教える
全社員研修を長くするより、短時間で刺さる内容にします。
- 入力禁止のトップ5(個人情報、顧客情報、契約、鍵、未公開情報)
- 抽象化・置換のやり方(例を見せる)
- 出力は下書き、社外発信はレビュー
「やってはいけない」だけでなく「こうすれば使える」をセットにすると、利用価値が伝わります。
ログ・監査・端末統制は「できる範囲」で段階的に
理想は統制を強くすることですが、最初から完璧を目指すと頓挫します。段階的に考えます。
- 第1段階:会社アカウント利用、個人アカウント禁止、社外共有禁止
- 第2段階:アクセス制御、利用部門の限定、教育の定期化
- 第3段階:ログレビュー、DLP(情報漏えい対策)検討、データ分類の整備
「現場の摩擦」と「守るべき情報」のバランスを取りつつ、成熟度を上げていくのが現実的です。
よくある失敗と回避策
- 失敗:禁止が多すぎて誰も使わない → 回避:抽象化OKの範囲を明確にし、OK例を増やす
- 失敗:ルールが長すぎて読まれない → 回避:A4 1枚チェックリストを併設
- 失敗:社外発信で誤情報 → 回避:レビュー対象の類型を決め、事実確認の責任を明記
- 失敗:個人アカウント利用が横行 → 回避:会社アカウントの利便性を上げ、相談窓口を作る
ルールは「縛る」ためだけに作ると反発が出ます。安全に使える道を用意することが、結果的に統制になります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
Gemini利用ルールを作る際は、細かな禁止事項より先に、目的・対象範囲・責任者を決めるとブレなくなります。そのうえで、入力情報を「公開/社内/機密」の3段階に分け、社内情報は抽象化・置換で安全に使える道を残すのが実務的です。
また、事故の多くは入力ではなく出力の扱い(誤情報、著作権、社外発信)で起きます。「出力は下書き」「重要事項は一次情報で確認」「社外発信はレビュー」という運用ルールを明記してください。
最後に、ルールを読ませる工夫として、A4 1枚のチェックリストと相談窓口を用意し、段階導入で定着させるのが成功の近道です。安全に使える環境を整えれば、Geminiはメール・要約・資料作成など多くの業務で確実に効果を出せます。
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