2025年以降の開発戦略|最新技術の使いこなし方と導入の落とし穴とは?

最新技術を「知っている」だけでは足りません。**どう導入し、どう成果に変えるか?**が2025年以降の課題です。

このパートでは、DevOps、CI/CD、ローコード、エッジコンピューティングなど開発現場の最前線をカバーしつつ、

導入時に注意すべきセキュリティや人材育成、さらに企業が取るべきアクションまで徹底解説します。

最新のシステム開発手法とツール

システム開発の現場でも、技術トレンドに合わせて手法やツールが進化しています。昔ながらの開発方法だけでなく、新しい開発スタイルを取り入れることで、開発スピードや品質が飛躍的に向上しています。ここでは、今注目の開発手法・ツールについて紹介します。

DevOpsとCI/CDの普及

DevOpsCI/CDは、ソフトウェア開発の効率と品質を高める現代的な手法です。DevOps(デブオプス)はDevelopment(開発)とOperations(運用)を一体化して考えるアプローチで、開発チームと運用チームが密接に連携しながら素早く製品をリリースしていきます。一方CI/CDはContinuous Integration/Continuous Delivery(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の略で、コードの変更を自動的にビルド・テスト・リリースする仕組みのことです。

  • 開発スピードの向上:DevOpsの考え方を取り入れることで、組織内の壁を取り払い迅速な開発サイクルを実現できます。従来は開発班が作ったものを運用班に引き渡す際に時間や手間がかかりましたが、DevOpsでは両者が一体となって協力するため、要件の変更やトラブルにも柔軟に対応できます。またCI(継続的インテグレーション)によって、開発者がコードを変更するたびに自動でマージ(統合)とテストを実行するため、不具合がその場で見つかり素早く修正できます。これらの仕組みにより、短いサイクルでどんどんリリースと改善を重ねることが可能になります。
  • 品質保証の強化:CI/CDの導入によって、自動テストがパイプラインに組み込まれるため、品質チェックが徹底されます。コード変更のたびにテストが走り、小さなバグも早期に発見できるので、本番リリース後の重大な不具合を大幅に減らすことができます。また、インフラの構成もコードで管理する「Infrastructure as Code(インフラのコード化)」の実践により、本番環境とテスト環境の差異が少なくなり、環境依存の問題も減少します。これらにより、開発スピードを上げつつもソフトウェアの信頼性を高く維持することが可能です。

ローコード・ノーコード開発

ローコード開発ノーコード開発も、近年注目を集めている手法です。これは、その名の通り「ほとんどコードを書かずにソフトウェアを開発する」アプローチで、専門的なプログラミング知識がなくてもアプリケーションを作れる点が特徴です。

  • ローコード開発:一部の処理はコードを書く必要がありますが、あらかじめ用意されたテンプレートやGUI(グラフィカルユーザインターフェース)でのドラッグ&ドロップ操作によって開発を進められる手法です。定型的な機能は部品を組み合わせるように作れるため、従来より格段に開発工数を削減できます。例えば、業務システムの基本的な画面やデータベース連携部分はテンプレートから自動生成し、細かな業務ルールだけ開発者がコーディングするといった形で、効率よく開発できます。
  • ノーコード開発:こちらは一切プログラミングをせずにアプリ開発を可能にする手法です。高度な技術知識がなくても、ユーザーが画面上で項目を配置したり条件を指定したりするだけでシステムを構築できます。例えば、営業部門のスタッフがノーコードツールを使って自分たちで顧客管理アプリを作成したり、経理部門が請求書発行のワークフローを自動化するツールを構築したりと、IT部門以外の社員が自らシステムを作れる時代になりつつあります。

これらローコード・ノーコードの手法を活用すれば、今まで数ヶ月かかっていた社内ツール開発が数日~数週間で完了することも珍しくありません。専門のエンジニアが不足していても現場の発想でシステム化が進められるため、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において強力な助っ人となってくれます。また、従来の開発に比べコストも大幅に削減できるケースが多く、特にスタートアップ企業や中小企業にとっては試作(プロトタイピング)を素早く低コストで行える点が大きなメリットです。

エッジコンピューティングの活用

エッジコンピューティングとは、データの処理をクラウド(遠隔のデータセンター)ではなく、データが発生する端末やその近くのローカルな環境で行う手法です。IoT機器や自動運転車など、即座の応答が求められるケースではクラウドに全てを任せるのではなく、このエッジコンピューティングが重要になります。

  • クラウドとの違い:従来のクラウドコンピューティングでは、現場から遠く離れたデータセンターにデータを送り、集中処理していました。一方エッジコンピューティングでは、現場近くの装置や端末自体がデータ処理を行います。そのため、ネットワーク越しにデータのやりとりをする量が減り、通信遅延の影響を受けにくくなります。例えば、山間部や海上のようにインターネット接続が不安定な場所でも、エッジ側で必要な処理を完結させれば、接続トラブルに左右されず安定したサービス提供が可能です。
  • リアルタイム処理の強化:エッジコンピューティングにより、リアルタイム性が求められる処理を迅速に行えます。例えば、防犯カメラの映像解析を考えてみましょう。全ての映像データをクラウドに送って解析していたのでは、送信や処理に時間がかかり、緊急時の対応が遅れてしまう恐れがあります。そこでカメラ近くのエッジデバイスで映像をAI解析し、不審な動きがあった場合だけクラウドに通知するようにすれば、即座に警備員に知らせることができます。また、工場の生産ラインでもエッジでセンサー情報を処理し、異常が発生した瞬間にラインを停止するといったリアルタイム制御が可能です。このようにエッジコンピューティングは、超低遅延が要求されるシステムで威力を発揮します。

システム開発で最新技術を取り入れる際の注意点

最新技術は非常に便利ですが、導入にあたって注意すべき点もあります。ここでは、システム開発で新しい技術を活用するときに押さえておきたいポイントを紹介します。

セキュリティの強化

新技術を導入する際、セキュリティ対策は従来以上に重要です。クラウドやIoT、AIなどはインターネットを介して大量のデータを扱うため、狙われるリスクも高まります。

  • サイバー攻撃対策:日々高度化するサイバー攻撃に備え、基本的な防御策を徹底しましょう。ファイアウォールの設置や侵入検知システム(IDS/IPS)の導入で外部からの不正アクセスを防ぎます。また、社員のログインにはパスワードに加えてワンタイムコードなどを使う多要素認証(MFA)の導入が有効です。万一侵入されても被害を局所化できるようにネットワークを分離し、権限のないデータにはアクセスできない仕組みを整えることも重要です。さらに、定期的にセキュリティ診断(脆弱性スキャンなど)を行い、弱点が見つかったら速やかに修正する運用を心がけましょう。
  • データプライバシーの確保:個人情報や機密データを扱うシステムでは、プライバシー保護も大きな課題です。国内外の法律(例えばEUのGDPRや日本の個人情報保護法)に準拠した適切なデータ管理が求められます。対策として、保存データや通信データは暗号化(例えばAES暗号化)し、万が一データが漏えいしても内容が簡単に読めないようにします。また、誰がどのデータにアクセスできるか権限を厳密に管理し、不必要なデータは定期的に削除するなど、保持する情報量を最小限にすることも大切です。

コストとパフォーマンスのバランス

新しい技術を導入すれば高性能が得られますが、そのぶんコストがかかる場合もあります。費用対効果を考え、コストとパフォーマンスのバランスを取ることが重要です。

  • 目的に合った技術選定:最新だから、高機能だからといって何でも盛り込めば良いわけではありません。まずプロジェクトの目的や必要な機能を明確にし、それに見合った技術を選ぶことが大切です。例えば、クラウドサービスを利用する際にはAWS、Azure、GCPなど複数のサービスを比較し、自社に必要な機能だけを持つプランを選択すれば無駄な出費を抑えられます。また、アクセス負荷がそれほど高くないシステムなら、常時サーバーを動かすのではなくサーバーレスで必要時だけ稼働させる構成にすることで、コストをグッと抑えることができます。
  • 開発効率の向上によるコスト削減:システム開発では人件費も大きなコスト要因です。最新技術を活用して短期間で効率よく開発する工夫も重要となります。例えば、ゼロから全てを自作するのではなく、実績のあるフレームワークやオープンソースのライブラリを活用すれば開発時間を大幅に短縮できます。また前述のローコード・ノーコードツールを使えば、プログラミング作業自体を減らせるので開発コスト削減に直結します。さらにシンプルな業務アプリなら、市販のパッケージソフトやクラウドサービスを導入する方が安上がりな場合もあります。このように、既存のものを活用できないか検討する視点も持ちましょう。

社内スキルと技術導入のギャップ解消

最新技術を導入する際には、それを使いこなす人材やスキルの確保も課題になります。社内に知見がないまま新技術に手を出してしまうと、思うように活用できなかったり不具合に対処できなかったりする恐れがあります。そこで、以下のような取り組みでスキルギャップを埋めることが重要です。

  • 基礎研修の実施:まずは導入する技術に関する基礎知識を、チーム全員で共有しましょう。例えば、「クラウドとは何か」「AIを使うときの注意点」など、初心者向けの社内講座を開催します。専門用語や概念を噛み砕いて説明する場を設けることで、メンバーが技術の全体像を掴みやすくなります。基礎が身についていれば、その後の実践もスムーズになります。
  • 専門スキル習得の支援:より高度なスキルが必要な場合は、外部の力も借りて学習を支援しましょう。例えば、その技術に詳しい外部講師を招いてハンズオンセミナーを行ったり、社員にオンライン学習サービスの受講を推奨したりする方法があります。資格取得を奨励するのも効果的です。新技術に関する社外セミナーへの参加勉強会への派遣を積極的に行い、最新情報やノウハウを社内に持ち帰ってもらう仕組みを作ります。
  • 実プロジェクトでのOJT:実際の業務に新技術を取り入れ、小規模なプロジェクトを通して経験を積ませるのも有効です。例えば、本格導入の前段階としてPoC(概念実証)プロジェクトを立ち上げ、少人数のチームで試験的にシステムを作ってみることが考えられます。実践の中で問題点や効果を体感することで、机上の勉強だけでは得られない知識が身につきます。こうしたOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の機会を設け、学習と実務を両立させることが大切です。
  • ナレッジ共有の促進:新しい技術に挑戦したら、その学びをチーム内・社内で共有しましょう。具体的には、学習内容やプロジェクトで得た知見を社内Wikiやドキュメントにまとめて蓄積したり、定期的な技術共有会(勉強会)を開いたりする方法があります。誰か一人の知識を皆で共有することで、組織全体のレベルアップにつながります。疑問点があれば気軽に相談し合える文化を育てておけば、新技術へのキャッチアップも格段にスムーズになるでしょう。

まとめと今後の展望

最後に、2025年以降の技術トレンドの見通しと、これから企業が取るべき行動についてまとめます。

2025年以降の技術トレンド予測

  • AIのさらなる進化:AI(人工知能)は今後も飛躍的に進化すると考えられます。特に近年注目の生成AI(Generative AI)は、文章や画像、動画などを自動生成する技術で、今後ますます自然で高度なコンテンツを作り出せるようになるでしょう。これはクリエイティブ分野にも大きな影響を与え、デザインやコンテンツ制作の現場でAIがアシスタント的な役割を果たす場面が増えると予想されます。また、AIの自己学習能力(強化学習など)が向上することで、ビジネスにおける意思決定支援やパーソナライズされたサービス提供がさらに精度を増していくでしょう。例えば、ヘルスケア分野ではAIが患者の診療データから最適な治療プランを提案してくれるシステムが実用化されるかもしれません。
  • 量子コンピューティングの可能性:現在はまだ研究段階に近い量子コンピュータですが、その発展にも大きな期待が寄せられています。量子コンピュータは、従来のコンピュータでは何年もかかるような超複雑な計算を瞬時に行える可能性を秘めています。もし実用化が進めば、金融分野での高度なリスクシミュレーション、創薬(新薬開発)や新素材開発、気象予測や交通の最適化など、さまざまな領域で革命的なブレークスルーが起こるでしょう。現時点(2025年)では商用利用は限定的ですが、各国の研究機関や大手IT企業が開発競争を繰り広げており、2030年頃には本格的にビジネス活用が始まる可能性も示唆されています。量子コンピューティングが実用段階に入れば、現行の暗号技術の強度やAIの計算能力にも影響を与えるため、引き続き注視が必要です。

企業がとるべきアクション

技術の進化に対応し、競争力を維持するために、企業は計画的に行動を起こす必要があります。以下に、最新技術を活用するために企業がとるべき具体的なアクションをまとめます。

  • 課題の洗い出しと活用分野の見極め:まず自社の業務課題や改善したいポイントを洗い出し、それらを解決するためにどの技術が有効かを整理しましょう。AIが役立つのか、クラウドへの移行が効果的か、IoTでデータ収集すべきか、といった検討を行います。目的がはっきりすれば、技術導入の優先順位も明確になります。
  • 社内体制の整備(人材・スキル):新技術を扱える人材の育成や確保も重要です。前述した研修や教育を通じて現有社員のスキルアップを図るとともに、必要に応じて新たに専門知識を持つ人材を採用したり、技術に強い外部企業と連携したりすることも検討しましょう。社内のデジタルリテラシー(ITに関する基本知識)を底上げするため、定期的な勉強会や情報共有の機会を設けることも効果的です。
  • 小規模なPoC(実証実験)の実施:いきなり全社的に新技術を導入するのではなく、まずは小さなプロジェクトで**PoC(Proof of Concept、概念実証)**を行いましょう。試験的に新技術を使ったシステムを構築し、その効果や課題を検証します。PoCを通じて「この技術を使うと業務がこれだけ効率化できた」「ここが問題点だった」といった具体的な知見が得られれば、本格導入の判断材料になります。失敗しても小規模であればダメージは限定的なので、積極的にトライしてみる価値があります。
  • セキュリティ対策の徹底:新しい技術を導入するときには、それに伴うセキュリティリスクへの対策も忘れずに行いましょう。例えば、クラウドにシステムを移すならアクセス制御や監視体制を強化する、IoT機器を導入するならファームウェアの更新管理やネットワークのセグメント分離を行う、といった具合です。技術導入計画の中に必ずセキュリティ面の検討を盛り込み、万全の準備をした上で展開することが大切です。

以上、2025年に注目すべきシステム開発の最新トレンドとその活用ポイントについて解説しました。システム開発の発注や外注を検討する際は、ぜひこれら最新技術トレンドを踏まえて計画を立ててみてください。 技術の進化を味方につけることで、きっと業務効率やビジネス成果の向上につながるはずです。もし具体的なプロジェクトについて相談したいことがあれば、お問い合わせや資料請求などもお気軽にご利用ください。新しい技術を上手に取り入れて、競争力のあるシステム開発を実現しましょう。

 

※この記事はシリーズの第3部です。まだ第1部・第2部を読んでいない方は以下からぜひご覧ください。

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