入札契約適正化法とは?公共工事の透明化と不正防止についてわかりやすく解説

入札契約適正化法とは?

「入札契約適正化法」とは、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の略称です。

国などが行う公共工事の入札と契約の適正化を促進し、公共工事に対する国民からの信頼の確保や建設業の健全な発達を目的として、平成13年4月に定められました。

適正な入札・契約を行うために、入札契約適正化法の基本原則に則った発注者の義務やガイドラインなどが規定されています。

入札契約適正化法の基本原則

入札契約適正化法には基本となるべき原則が存在します。

  • 透明性の確保
  • 公正な競争の促進
  • 適正な施工の確保
  • 不正行為の排除の徹底

この基本原則に則り、全ての発注者に対して以下の項目が義務付けられています。

発注者の義務

情報の公表 ・公共工事の発注の見通しを毎年度、公表すること
(変更があった場合も公表する)
・入札や落札の過程や結果、契約の相手方や内容を公表すること
不正行為などへの措置 ・談合や一括下請負などの不正行為があった場合は、公正取引委員会などへ通知をすること
適正な金額での契約の締結などのための措置 ・入札金額の内訳を記載した書類を提出、確認をすること
施工体制の適正化 ・一括下請負の禁止
・施工体制台帳の提出や点検を受けること
適正化指針 ・入札と契約の適正化のための措置に関する指針を定めること
国による情報の収集、提供など ・公共工事発注機関や建設業者などに対する教育や指導を行うこと
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の概要

発注者へのガイドライン

「適正化指針」に従い、入札・契約の適正化を推進

各発注者は、閣議決定された「適正化指針」に従い、入札・契約の適正化の推進を行います。

「適正化指針」の主な内容は以下の通りです。

  1. 透明性の確保(情報の公表、第三者機関による意見の反映など)
  2. 公正な競争の促進(入札と契約方法の改善、苦情処理の方策など)
  3. 不正行為の排除の徹底
  4. ダンピング受注の防止
  5. 適正な施工の確保(施工状況の評価の方策など)
  6. その他(不良不適格業者の排除、入札契約のIT化の推進など)

「適正化指針」のフォローアップ

また、各発注者の取り組みへのフォローアップについても定められています。

  • 国土交通大臣や財務大臣などは、これらの発注者の取り組み状況を毎年度把握し、公表する
  • 特に必要のある時は発注者に対し改善を要請することができる

これまでの公共工事の入札と契約

それでは、これまでの公共工事の入札契約はどのようなものだったのでしょうか。

指名競争入札による相次ぐ不祥事から「一般競争方式」を導入

日本では、明治33年の「指名競争方式」の創設から、公共工事の入札・契約制度としては指名競争方式を基本としてきました。指名競争方式は諸外国でも使用されており、正しく使われれば効率的な制度です。

ですが公共工事をめぐり、平成5年には地方公共団体の首長や国建設業界を代表する企業の幹部などが贈収賄、談合などの各種の事件により逮捕・起訴されることが多発。公共事業そのものに対する国民の信用を失うこととなっていまいます。

指名競争方式の中核である「発注者は公正で中立である」ことへの疑心が起こったことから、「信頼のできる業者を選ぶ」と同時に「不正が起きにくい」システムを構築するために「一般競争方式」を採用するに至りました。

これにより建設省では、平成5年12月の中央建設業審議会からの建議を受け、「公共工事に関する入札・契約制度の改革について」全面的な改革を行いました。

国際的な視点も加味した「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」

これまでは、日本建設市場への外国企業の参入希望がほとんどなかったため、日本の入札における制度は主に国内企業を念頭に置いたものでした。

ですが、米国などの諸外国からも建設市場への参入の要望が高まっていたこと、大規模工事について世界の主要国を中心に政府調達のルールが定められつつあったこと。これらの国際的な建設市場の開放を背景として、国際的な視点も加味した、透明で客観的な公共事業の入札・契約手続のシステムが重要となってきます。

そこで、国際的に見て、わかりやすいシステムとなっているかどうかを改めて見直す必要が生じました。

これらを受けて公共事業の入札・契約手続改善、対応の統一化を図るため、その共通的な指針として平成6年1月に策定したものが「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」です。

入札・契約手続とその運用の更なる改善の推進

平成10年2月に中央建設業審議会の建議「建設市場の構造変化に対応した今後の建設業の目指すべき方向について」が行われました。さらに平成10年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か
年計画」も合わせ、入札・契約手続とその運用の更なる改善の推進をしていくよう、地方公共団体などに要請をしました。

この要請は公共工事の入札・契約制度について透明性、競争性の一層の向上を図るなどにより、適正で効率的な公共工事の執行を確保するためのものです。

具体的には、多様な入札・契約方式の導入の推進、一般競争方式の対象工事の拡大、予定価格の事後公表、経営事項審査の結果、資格審査における格付けの公表など、入札・契約制度の更なる改善などが関係者各庁へ求められました。

しかし、入札・契約の適正化は未だ十分に図られていない

こうした改善を重ね、一般競争入札方式の導入、入札監視委員会の設置、工事完成保証人制度の廃止などの改革が行われてきました。

ですが、国や地方公共団体といった公共工事の発注者の間で、指名基準の策定状況などの取組みの程度には差があり、入札・契約の適正化は未だ十分に図られていない状況です。

入札契約適正化法の背景

入札契約適正化法には、不正の多発や国際化の要請などの歴史があったことがわかりました。

では、その背景や特色はどのようになっているのでしょうか。

国、特殊法人等及び地方公共団体を通じて、適用の対象とすること

フランスなどの諸外国には、国や特殊法人等及び地方公共団体を通じて、公共調達について定める法律が存在します。

ですが、当時の日本には国や特殊法人等及び地方公共団体を通じて定める法律はありませんでした。国は会計法、地方公共団体は地方自治法、特殊法人等についてはそもそもの共通の規則が存在しません。それにより、入札契約制度の改革はなかなか進まない状況でした。

そのため、入札契約適正化法は、国、特殊法人等及び地方公共団体を通じて適用の対象としたものとしています。

改革の努力の方向性を示す適正化指針の策定

入札契約適正化法の対象者は、国から市町村に至るまでの全ての発注者です。そのため、工事の規模などにおいて様々な主体が含まれることとなります。

このような多様性があると法律で一律に義務を定めることは難しくなりますが、公共工事に係る不正行為の防止や建設業の健全な発達を図る上では、各発注者が統一的、整合的に入札契約の適正化を図っていくことが不可欠です。

このように各発注者が目指し、取り組むべきガイドラインとして適正化指針が定められています。

フォローアップの仕組み

フォローアップの制度を定めていることも、入札契約適正化法の特色の一つです。

入札契約適正化法の改革は今までの制度の根本的な変更を意味したものです。ですので、この改革の影響をその時点で全て見通すことは難しく、試行錯誤の中から新しい秩序をつくりあげていくことが必要となります。

そのため、適正化指針の実施状況の定期的・持続的なフォローアップを行い、制度や運営を見直してその改善の努力を続けていくこと。これらが入札契約適正化法を正しく運用していくために必要だといえます。

いままでと何が変わるのか

入札契約適正化法が行われることにより、公共工事の透明性のある適正な施工の確保と、不正行為の排除を徹底した入札契約の適正化が期待されます。

そのために講ずべき基本的・具体的な措置を規定していますが、何がちがうのでしょうか。

ダンピング対策の強化

ダンピング受注とは、採算を無視した低価格での契約の締結をいいます。 

これは工事の手抜き、下請業者へのしわ寄せ、これらに従事する者の賃金や労働条件の悪化や安全対策の不徹底などに繋がることとなり、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあります。

そのため、入札契約適正化法の基本となるべき事項に新たにダンピング受注の防止を追加し、以下を義務付けました。

  • 入札の際、入札金額の内訳を記載した書類を提出すること
  • 不適正な金額の施工の契約締結を防止し不正行為を排除するため、発注者は提出された書類の内容の確認をすること

また、国土交通省では、低入札価格調査制度や最低制限価格制度の適切な活用を徹底することによりダンピング受注の排除を図る要請をしてきました。

くわえて、各地方公共団体における調査基準価格や最低制限価格の算定方式や設定範囲などを他の団体と比較できるよう公表することで、ダンピング対策の「見える化」を行い、ダンピング対策の取り組みの適切な見直しなどを図っています。

契約の適正な履行を確保

公共工事の契約の適正な履行を行うことは、入札契約適正化法の基本原則「適正な施工の確保」へ繋がります。契約の適正な履行を確保をするために、以下の事項が義務付けられています。

  • 一括下請負(丸投げ)の全面禁止
  • 工事現場ごとに施工体制台帳を作成し備え置く
  • 受注者は、作成した施工体制台帳の写しを発注者に提出すること
  • 発注者による工事現場の施工体制の点検を受ける
  • 施行体系図を、工事関係者が見やすい場所や公衆が見やすい場所に掲示する

一括下請負を容認することには、工事の質の低下や労働条件の悪化、工事の責任の不明瞭化が発生するとともに、不良建設業者の輩出を招くなど、ダンピングと同じく建設業の健全な発達を阻害するおそれがあります。

施工台帳の作成と提出は、これまでは一部の建設工事のみに適用されてきましたが、下請契約を締結する全ての工事請負等に拡大されました。また、施行体系図を掲示することで、工事関係者が施工体制を把握する、施工に対する責任や役割分担を明確にする、技術者の適正な配置の確認をすることができます。

まとめ

このように入札契約適正化法は、公共工事の透明性や適正な施工の確保を図ることで、ダンピングなどの不正行為を防止し、建設業の健全な発達などへの重要な役割を担っています。

参考:
・「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成十二年法律第百二十七号)国土交通省「公共工事に関する入札・契約制度の改革について」国土交通省「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針の一部変更について(令和4年5月20日、閣議決定)」内閣府「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」建設省経入企発第12号「地方公共団体の公共工事に係る入札・契約手続及びその運用の更なる改善の推進について」

CONTACT

 

お問い合わせ

 

\まずは15分だけでもお気軽にご相談ください!/

    コメント

    この記事へのコメントはありません。

    関連記事