提案内容の良し悪しを判断する方法(要件・設計・UX・運用の評価軸)

提案の「良し悪し」が曖昧になる理由:価格や会社規模では判断できない

開発会社やベンダーから提案を受け取ったとき、「良さそうだけど、何が良いのか説明できない」「比較表を作っても決め手がない」という状態になりがちです。これは発注側の知識不足というより、提案の評価軸が“成果”ではなく“印象”に寄ってしまう構造が原因です。

たとえば「実績が多い」「有名企業の導入がある」「見積が安い/高い」「資料がきれい」といった要素は参考にはなりますが、プロジェクトの成否を決める本質ではありません。成否を左右するのは、要件(何を実現するか)、設計(どう作るか)、UX(使われるか)、運用(回り続けるか)の4点がつながっているかです。

特に情シスや事業部の担当者が抱えやすいのは、「比較したいが、どこを見ればよいか分からない」「専門用語が多く、質問できない」「提案が“盛られている”かどうか見抜けない」という悩みです。そこで本記事では、専門知識がなくても使えるように、提案書・見積・スケジュール・体制・画面案・運用設計を同じものさしで評価するチェックポイントを整理します。

ゴールは、提案の優劣を“好き嫌い”ではなく、“根拠”で判断できる状態です。複数社比較にも、社内稟議にも、そのまま使える評価軸に落とし込みます。

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要件の評価軸:目的・範囲・優先順位が合意できているか

要件とは「何を実現するか」を決めるものです。ここが曖昧な提案は、後で必ず揉めます。良い提案は、発注側の言葉になっていない要望まで拾い、目的→課題→解決策→対象範囲が一枚の絵でつながっています。

良い提案に共通する“要件”のサイン

  • 目的が数値や状態で書かれている:「業務効率化」ではなく「月次処理を3日→1日に」「問い合わせ対応を一次回答まで2時間以内に」など
  • 対象ユーザーと利用シーンが具体的:誰が、いつ、どこで、何のために使うか(例:店舗スタッフが閉店後にスマホで在庫入力)
  • スコープ(範囲)が明確:やること/やらないことが明記され、追加要望が出た時の扱いが書かれている
  • 優先順位がある:Must/Should/Couldのように段階があり、納期や予算に応じて削れる構造
  • 要件の決め方が提案に含まれる:ヒアリング、業務観察、現行資料レビュー、ワークショップなどの進め方と成果物

危ない提案のサイン(要件が薄い)

  • 「一式」「基本機能」などの表現が多く、何が入るか分からない
  • 機能一覧はあるが、業務フロー(現状→理想)の説明がない
  • 優先順位がなく、全部を同じ重みで作ろうとしている
  • 「要件は進めながら固めます」だけで、固める方法・期限・責任分界がない

提案を判断する質問としては、「このシステムが入ったら、何がどう変わるのかを一文で言えますか?」「やらないことは何ですか?」「優先順位を変えると、費用と納期はどう動きますか?」が有効です。良い提案は、これらに具体例付きで即答できます。

設計の評価軸:作り方が現実的で、品質・拡張性・コストが両立しているか

設計は「どう作るか」です。専門用語が多い領域ですが、発注側が押さえるべきポイントは、技術の良し悪しよりも意思決定の根拠が説明できるかにあります。良い提案は、なぜその構成にするのかが、運用や将来の変更も含めて説明されています。

最低限チェックしたい設計ポイント

  • 全体構成が1枚で説明されている:フロント(画面)・バック(処理)・データ(DB)・外部連携の関係が分かる図がある
  • 非機能要件(性能・可用性・セキュリティ)が言語化されている:「同時アクセス◯人」「停止許容時間」「権限設計」など
  • データ設計の考え方がある:マスタ管理、履歴管理、検索・集計を見越した項目整理(丸投げではない)
  • 外部連携の責任範囲が明確:SaaS連携やAPI利用で、どこまでがベンダー作業か/どこからが利用側の契約か
  • 品質担保(テスト)の計画がある:何をどの粒度でテストし、受入基準をどうするか

見積の“精度”を測る:根拠があるか、リスクを織り込んでいるか

見積は金額だけでなく、精度と透明性が重要です。良い提案は、機能ごとに工数や単価の根拠があり、変動要因(未確定事項)が見える形で書かれます。たとえば「要件確定後に±20%」のようにブレ幅と条件が示されます。

逆に危ないのは、詳細不明なのに固定金額で「全部できます」と言い切るケースです。後から追加費用が出るだけでなく、スケジュール遅延や品質低下を招きます。確認質問は、「この見積が変わる条件は何ですか?」「変わるとしたらどの機能が一番影響しますか?」「要件が固まっていない部分はどこですか?」が有効です。

体制と進め方:誰が意思決定し、誰が手を動かすか

設計の良し悪しは、体制にも現れます。提案に「PM(進行管理)」「リードエンジニア」「デザイナー」「QA(品質管理)」などの役割が書かれ、関与度合いが明確かを見ます。窓口だけがいて中身が見えない提案は、実装段階でブレが起きやすいです。

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UXの評価軸:使われる画面・導線・入力負荷になっているか

UX(ユーザー体験)は「使いやすいか」だけでなく、「業務が前に進むか」「迷いなく完了できるか」を含みます。提案段階でUXを評価するには、見た目の好みより、業務の流れに沿っているかを見るのがコツです。

提案書で見るべきUXのポイント

  • ユーザーストーリーがある:「担当者が問い合わせを受け→顧客情報を検索→回答テンプレを選び→履歴を残す」など
  • 画面遷移がシンプル:最短手数で完了できる導線になっている(余計な入力・戻りが少ない)
  • 入力項目の根拠がある:「必須/任意」が業務上の理由で説明され、後で困らない設計
  • 例外処理が考えられている:未入力、重複、権限不足、差し戻しなど“現場で起きること”への対応
  • アクセシビリティ配慮:文字サイズ、色のコントラスト、操作の分かりやすさ(現場ほど重要)

よくある失敗:きれいなUIだが、業務が遅くなる

例えば、入力フォームが見栄え良くても、現場では「同じ情報を二重入力」「検索が遅い」「一覧で比較できない」などがストレスになります。良い提案は、画面モック(ワイヤーフレーム)だけでなく、“この画面で何分短縮するか”の観点を持っています。

質問としては、「この画面で、1件処理するのに何クリックですか?」「現場の人が最も頻繁にやる操作は何で、そこが一番速い設計ですか?」「入力ミスはどう防ぎますか?」が有効です。UXを“感覚”から“検証”に寄せられる提案ほど、後工程の手戻りが減ります。

運用の評価軸:リリース後に回る設計(保守・改善・体制)になっているか

提案の落とし穴は、リリースまでが丁寧で、運用が薄いことです。多くのシステムは作って終わりではなく、データが溜まり、業務が変わり、改善が必要になります。良い提案は、運用(回し方)までを設計に含めるのが特徴です。

運用で必ず確認したいチェックリスト

  • 問い合わせ・障害対応の窓口:受付時間、一次対応、エスカレーション、復旧目標(SLA的な考え方)
  • 監視とログ:何を監視し、どのログを残し、誰が見て、どうアラートを出すか
  • 権限管理と入退社対応:誰がアカウントを発行し、棚卸しをどう行うか
  • バックアップと復元手順:バックアップ頻度だけでなく、復元の手順と所要時間
  • 改修の進め方:小さな改善の依頼窓口、見積の出し方、優先順位付け、リリース手順
  • 運用コストの内訳:保守費に何が含まれるか(軽微改修は含むか、監視は含むか)

「内製する/丸投げする」ではなく“役割分担”で決める

運用は、全部をベンダーに任せるか、社内で抱えるかの二択ではありません。たとえば「業務ルールの変更は社内」「権限追加は情シス」「障害一次対応はベンダー」「軽微改善は月次で一緒に棚卸し」など、役割分担を決めると現実的です。良い提案は、役割分担表(RACIのようなもの)を示し、責任の穴を作りません。

また、AIやデータ活用を含む提案の場合は、精度劣化やデータ偏りへの対応(学習データの更新、評価方法、監査ログ)が運用に入っているかが重要です。ここが抜けると「最初は良かったが、半年後に使われない」状態になりやすいです。

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複数社を比較するための「提案評価シート」:非専門家でも判断できる形にする

提案を比較する際は、A社は資料が丁寧、B社は安い、C社は技術が強そう……と論点が散らばります。そこでおすすめなのが、要件・設計・UX・運用を同じ比重で並べ、各社を同条件で採点する方法です。社内合意形成の道具としても役立ちます。

例:評価項目(10点満点×8〜12項目)

  • 目的の定義:達成状態が具体的か(定量/定性の両方)
  • スコープ明確さ:やる/やらない、前提条件、優先順位
  • 進め方の妥当性:要件定義〜設計〜開発〜テスト〜移行の流れ
  • 品質担保:テスト方針、受入基準、レビュー体制
  • UXの妥当性:業務導線、入力負荷、例外処理
  • 運用設計:監視、問い合わせ、権限、バックアップ、改善サイクル
  • 見積の透明性:内訳、変動条件、未確定事項の扱い
  • 体制とコミュニケーション:担当者の役割、定例、議事録、意思決定プロセス

採点は厳密でなくて構いません。重要なのは「なぜその点数なのか」を言語化することです。提案が良いほど、根拠が提案書の中にあり、質問してもブレません。

提案レビュー会で使える質問テンプレ

  • 要件:成功の定義は何ですか?優先順位を変えるとどうなりますか?
  • 設計:この構成にした理由は?将来の機能追加はどこがボトルネックになりそう?
  • UX:一番頻度の高い操作は?最短導線は?入力ミスはどう防止?
  • 運用:障害時の初動は誰が何分以内に?保守費に含まれる範囲は?

この質問に対して、良い提案は「できます」ではなく、手順・成果物・判断基準で返ってきます。逆に回答が抽象的なら、その領域はリスクが残っていると判断できます。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

まとめ

提案内容の良し悪しは、会社の知名度や見た目の良さではなく、要件・設計・UX・運用が一貫しているかで判断できます。特に非専門家の発注側が押さえるべきポイントは、「根拠が説明できる提案か」「未確定事項が可視化されているか」「リリース後まで回る設計か」の3点です。

比較の際は、要件(目的・範囲・優先順位)、設計(品質・拡張性・見積根拠)、UX(業務導線・入力負荷・例外)、運用(保守・監視・改善サイクル)を同じ評価軸で並べ、質問テンプレでブレを確認してください。提案が良いほど、回答は具体的で、成果物と手順がセットになっています。

「提案をどう評価していいか分からない」「社内稟議のために根拠を整理したい」「要件が固まっていないが失敗は避けたい」という場合は、第三者視点での提案レビューや要件整理から始めるのも有効です。結果として、無駄な追加開発や手戻りを減らし、投資対効果の高いプロジェクトに近づけます。

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