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相見積もりが必要な理由と、よくある失敗
システム開発やWeb制作、AI導入などを外注するとき、複数社から見積もりを取る「相見積もり」は定番です。ところが、相見積もりを取ったのに意思決定が進まない、あるいは安い会社に決めて後悔するケースが少なくありません。原因の多くは、見積もり金額そのものではなく「比較の条件が揃っていない」ことにあります。
たとえばA社は「要件定義〜開発〜運用」まで含めた金額、B社は「開発だけ」の金額、C社は「最低限の機能だけ」の金額、という状態で並べても、安い・高いの判断はできません。さらに、見積書の粒度(項目の細かさ)も会社ごとに違うため、金額の差の理由が読み取れず、社内稟議や決裁者説明で詰まりがちです。
相見積もりでよくある失敗は次の通りです。
- 仕様が曖昧なまま依頼し、各社が別解釈で見積もる(比較不能)
- 「一式」見積もりを受け取り、内訳が分からないまま決めてしまう(後で追加費用)
- 安さだけで決め、品質や体制、運用負荷で破綻する(結局高くつく)
- 比較表を作らず、印象で決める(説明責任を果たせない)
本記事では、ITに詳しくない担当者でも実務で使えるように、相見積もりの取り方を「条件を揃える」ことに焦点を当てて解説します。外注先の比較のやり方を押さえると、価格・品質・スケジュール・リスクを同じ土俵で判断でき、社内合意も取りやすくなります。
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比較できる相見積もりにするための「条件の揃え方」
相見積もりで最初にやるべきは、見積もり依頼書(RFP)の整備です。RFPは立派な体裁でなくて構いません。重要なのは、各社が同じ前提で試算できる情報を渡すことです。つまり「見積もりの前提条件」を固定します。
条件を揃えるために最低限押さえたい項目は次の通りです。
- 目的とゴール:何を解決したいのか、成功の定義(例:問い合わせ数を月◯件、手入力を◯%削減)
- 対象範囲(スコープ):どこまで作るか(例:管理画面は必要/不要、スマホ対応は必須)
- 現状と制約:既存システム、利用中のツール、社内ルール(セキュリティ、クラウド可否)
- 想定ユーザーと利用シーン:誰が、いつ、何のために使うか(例:店舗スタッフがiPadで入力)
- 必須要件と希望要件:MustとWantを分ける(優先順位が見える)
- 納期・予算感:理想と最低ライン、段階リリース可否
- 運用体制:社内で誰が運用するか、保守契約の要否
特に「Must/Wantsの分離」と「スコープの線引き」は効果が大きいです。Mustが固まっていれば、各社は同じ要求を実装する見積もりになります。Wantが多い場合は、オプション扱いにして別見積もりにすることで、価格差の理由が明確になります。
また、外注先の比較で見落とされがちなのが、コミュニケーションや体制面です。たとえば「週1定例を実施」「チャットは当日返信」「仕様変更時は見積り再提示」など、進め方の条件も揃えると、金額以外の差が表に出て判断しやすくなります。
見積依頼書(RFP)の作り方:非エンジニアでも使えるテンプレ要点
開発に詳しくない担当者ほど、「何を書けばいいのか分からない」と手が止まります。そこで、まずはA4で2〜5枚程度のラフな資料から始めるのが現実的です。重要なのは、完璧さではなく「見積もりに必要な情報が同じ形で伝わること」です。
以下は、相見積もり用RFPに入れると失敗しにくい構成です。
- 概要:プロジェクト名、背景、目的、期待効果
- 現状:現行の業務フロー、課題、利用中ツール(Excel、Salesforce等)
- 要件(機能):必須機能/あると良い機能、画面一覧、データ項目の例
- 非機能要件:セキュリティ、性能、権限、監査ログ、バックアップ
- 対象外:今回はやらないこと(例:会計連携は次期)
- スケジュール:希望リリース日、社内レビューの日程、段階リリース案
- 成果物:設計書、ソースコード、運用手順書、テスト結果など
- 見積条件:想定工数の出し方、前提、含める/含めない(保守、インフラ等)
- 評価観点:価格だけでなく、体制・実績・提案力も見ることを明記
「要件(機能)」の書き方は、箇条書きでも十分です。たとえば「申請→承認→差戻し→再申請のワークフロー」「管理者がマスタを編集」「CSV取り込み」「メール通知」など、業務の流れが分かる書き方が有効です。画面のイメージがあるなら、手書きのラフでも良いので添付すると、各社の解釈ブレが減ります。
非機能要件は難しく感じますが、最低限、次は書いておくと安心です。
- セキュリティ:社内IP制限の要否、二要素認証、データ暗号化、権限管理
- 利用環境:PC/スマホ、ブラウザ、社内ネットワーク制約
- 運用:障害時の連絡方法、対応時間、監視の要否
もしここが書けない場合は、「現状のルール(社内セキュリティ基準)」をそのまま共有し、各社に不足点の指摘と提案を求める形でも相見積もりは成立します。
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見積書で見るべきポイント:金額以外の比較軸
相見積もりの取り方で重要なのは、見積書を「安い順」に並べることではありません。外注先を比較するときは、同じ条件で出た金額を土台にしつつ、リスクと成果の確度を左右する要素をチェックします。
見積書・提案書で必ず確認したいポイントを整理します。
内訳の粒度(「一式」を減らす)
「要件定義 一式」「開発 一式」だけの見積もりは、比較も交渉もできません。最低でも「要件定義」「基本設計」「詳細設計」「実装」「テスト」「リリース」「運用引継ぎ」など工程別に分かれているかを見ます。粒度が細かいほど、追加要望が出たときの影響範囲も判断しやすくなります。
前提条件と除外条件
見積もりには必ず前提があります。たとえば「画面数◯」「帳票◯」「外部連携◯」「データ移行は別途」などです。各社の前提がズレていると比較が崩れるため、前提・除外を抽出して表に並べ、同じ条件に揃え直します。ここを丁寧にやると、価格差の正体が見えてきます。
体制・コミュニケーション(誰がやるか)
同じ金額でも、プロジェクトの進みやすさは体制で大きく変わります。PM(プロジェクト管理者)が専任か、開発メンバーの経験、窓口のレスポンス、仕様調整の進め方を確認しましょう。特に非エンジニアの発注側は、「要件を一緒に整理できる相手か」が成否を分けます。
品質担保(テスト範囲、レビュー、セキュリティ)
安い見積もりの裏側で削られがちなのがテストとレビューです。テスト項目作成、受入テスト支援、セキュリティ対策の範囲(脆弱性診断の有無など)を確認し、どこまでが見積もりに含まれるかを揃えます。
保守・運用費(「作った後」の費用)
初期費用だけで比較すると、運用で苦しくなることがあります。障害対応、軽微改修、監視、クラウド費用、問い合わせ窓口など、ランニングコストの前提を確認します。見積もり段階で「保守は別途」でも構いませんが、最低限の運用モデルと概算を揃えておくと意思決定がスムーズです。
外注先比較を「見える化」する:比較表と評価基準の作り方
社内で説明しやすい相見積もりにするには、比較表(ベンダー比較表)を作るのが最短です。比較表があると「なぜその外注先に決めたか」を言語化でき、稟議や監査、引継ぎにも強くなります。ポイントは価格と非価格を同じ表で扱うことです。
比較表に入れると実務で効く項目例です。
- 総額:初期費用、月額費用、クラウド費用(見える範囲で)
- スコープ適合:Mustが全部入っているか、Wantはオプションか
- 工程別内訳:要件定義〜テスト〜リリース〜引継ぎ
- 納期:初回リリース、段階リリース案、遅延時の扱い
- 体制:PM/リードの経験、稼働割合、バックアップ体制
- コミュニケーション:定例頻度、チャット、議事録、課題管理ツール
- 品質:テスト範囲、レビュー体制、セキュリティ対応
- 契約条件:支払い条件、検収条件、著作権/成果物の帰属
- リスクと対策:懸念点(属人化、技術負債、運用負荷)と提案
評価方法は、点数化(例:5段階)でも、○△×でも構いません。ただし、価格だけを数値で、他をコメントだけにすると、結局「安い方」が勝ちやすくなります。おすすめは、価格は「予算内/超過」「妥当/要確認」で評価しつつ、非価格(体制・品質・提案力)に比重を置く形です。
また、比較表とセットで「質問リスト」を全社に同じ内容で投げると、条件が揃います。例として、次のような質問が有効です。
- 見積もりに含まれない作業は何ですか?(例:データ移行、運用設計)
- 仕様変更が起きた場合の進め方と費用の考え方は?
- 要件定義で確定させる範囲はどこまで?
- 納期短縮が必要な場合、何を削る/増やすと可能ですか?
- 納品後の保守プラン(対応時間、SLA相当)は?
この「同一質問→同一形式で回答」を徹底すると、外注先の比較が驚くほどクリアになります。
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相見積もりの実務手順:依頼〜決定〜契約まで
ここからは、実際の相見積もりの取り方を、手順としてまとめます。重要なのは「見積もりを取って終わり」ではなく、決定・契約・開始までを一連で設計することです。途中で条件が変わると比較が崩れるため、段取りを先に決めておくのがコツです。
- 社内の目的・優先順位を決める:Must/Wants、期限、予算の上限、意思決定者を確定
- RFP(見積依頼書)を作る:完璧でなくてよいが、前提条件を明文化
- 候補の外注先を選ぶ:3社程度が現実的(多すぎると管理が破綻)
- 同日・同条件で依頼:回答期限、質疑応答の締切、説明会の日程をセット
- 質疑応答を一元管理:質問と回答を全社に同時共有し、条件を揃える
- 提案/見積の説明を受ける:金額より「前提」「スコープ」「進め方」を確認
- 比較表で評価:総額だけでなく、体制・品質・運用を評価
- 最終調整(交渉):削る機能、段階リリース、保守条件などを調整
- 契約:検収条件、成果物、著作権、再委託、秘密保持、変更管理を確認
特に「質疑応答の一元管理」は、条件を揃えるうえで効果が大きいです。A社だけに詳しい追加情報を渡してしまうと、その時点で比較が成立しなくなります。スプレッドシートで質問一覧を作り、回答を全社に同報する運用がシンプルでおすすめです。
また、交渉では「値引き」よりも「スコープ調整」を優先しましょう。値引きは品質低下のリスクがありますが、スコープ調整(Mustを守ってWantを次期へ)なら、目的を守りながら予算に寄せられます。外注先比較のやり方として、費用を下げる手段を「削る/分ける/段階にする」に寄せると失敗しにくいです。
ケース別:条件が揃いにくいときの対処法(開発・制作・AI)
相見積もりは万能ではなく、分野によって「条件が揃いにくい」場面があります。ここでは、よくあるケースと対処法を紹介します。目的は、比較不能を避けつつ、意思決定できる材料を揃えることです。
システム開発:要件が固まっていない
要件が固まらない場合、いきなり本開発の相見積もりを取ると各社の解釈差で金額が大きくブレます。対処として、「要件定義フェーズだけ」を先に相見積もりし、要件定義の成果物(画面一覧、業務フロー、要件一覧、概算見積)を揃えてから本開発を比較する方法があります。
この方法は、発注側の不安を減らしつつ、ベンダーの力量(整理力、提案力、コミュニケーション)も見えます。結果として、外注先比較が「価格」ではなく「進められる相手か」で判断できるようになります。
Web制作:デザインの好みで評価がぶれる
Web制作は、見た目の印象で評価がぶれがちです。条件を揃えるには、参考サイト(好き/嫌い)と、KPI(問い合わせ・採用応募・資料請求など)を明確にします。さらに、デザイン案は「1案まで」など提出条件を揃えると、提案コストの差で価格が歪むのを避けられます。
AI導入:PoC(検証)と本番が混ざる
AIは「まず試す(PoC)」と「業務に組み込む(本番)」で必要作業が大きく変わります。相見積もりでは、PoCと本番を分けて条件を揃えるのが基本です。PoCでは評価指標(精度、工数削減、対応範囲)を固定し、本番では運用(監視、再学習、データ管理、責任分界)まで含めて比較します。ここを混ぜると、安い見積もりが「PoC相当」だった、という事故が起きます。
どのケースでも共通するのは、条件を揃えるために「段階に分ける」「成果物を明確にする」「評価指標を固定する」の3点です。
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まとめ
相見積もりの取り方で最も大切なのは、複数社から見積書を集めることではなく、同じ条件で外注先を比較できる状態を作ることです。条件が揃っていない相見積もりは、安い・高いの判断ができないだけでなく、追加費用や納期遅延、品質トラブルの原因にもなります。
- 相見積もりは「前提条件の固定」が成否を分ける
- RFPは完璧でなくてよいが、目的・スコープ・Must/Wants・制約は明文化する
- 見積書は総額だけでなく、内訳・前提・体制・品質・運用まで比較する
- 比較表と同一質問リストで、判断材料を揃えて社内説明しやすくする
- 要件が曖昧なら、要件定義だけを先に相見積もりするのも有効
「自社にとっての正解の外注先」は、最安ではなく、目的達成まで一緒に走れる相手であることが多いです。条件を揃えた相見積もりで、価格とリスクを見える化し、納得感のある意思決定につなげてください。
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