ノーコードで作ったシステムの保守・運用の考え方

ノーコードでも「保守・運用」はなくならない

ノーコードなら作った後は放置できるのでは?」という期待は、現場でよく聞く誤解です。確かに、ノーコード(ローコード)で作ると開発スピードは上がり、改修も比較的やりやすくなります。しかし、業務で使う以上は、どんな仕組みでも保守(壊さないための手入れ)運用(毎日回すためのルール)が必要です。

たとえば、営業現場の「見積作成→承認→請求」の流れをノーコードで自動化した場合でも、次のような変化が必ず起きます。

  • 取引先ごとに見積の項目が増える、値引きルールが変わる
  • 担当者が異動して入力のやり方が変わる
  • 会計ソフトやメールの仕様が変わり、連携が止まる
  • 個人情報の取り扱いルールが厳しくなる

こうした変化に追従できないと、最初は便利だったノーコードの仕組みが「手戻りの温床」になり、結局Excelに戻ったり、二重入力が復活したりします。特に中小企業では、IT担当が専任ではないことが多く、運用が属人化すると一気に詰みます

この記事では、専門知識がなくても実務で使える形で、ノーコードで作ったシステムの保守・運用を「何を決め、何を回し、どこで止めるか」まで整理します。ツール名に依存しない考え方なので、アプリ作成ツールや業務自動化ツール、データベース系のノーコードを使っている方にそのまま当てはめられます。

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保守・運用で最初に決めるべき「責任の線引き」

ノーコードの保守・運用で最も重要なのは、技術よりも責任の線引き(誰が、どこまで面倒を見るか)です。ここが曖昧だと、トラブルが起きた瞬間に「作った人がいない」「誰も直せない」「業務が止まる」が発生します。

まず、社内で次の3つの役割を明確にします。1人が複数を兼ねても構いませんが、役割名を決め、担当者を置くことが大切です。

  • 業務オーナー:「この仕組みで何を実現するか」を決める人。営業部長・業務責任者など。
  • 運用担当:日々の登録、エラー時の一次対応、問い合わせ窓口。現場リーダーが多い。
  • 保守担当(管理者):権限管理、設定変更、連携の修正、バックアップ確認。情シス・外部パートナーでも可。

次に、トラブルを「業務トラブル」と「システムトラブル」に分けて扱うルールを決めます。たとえば「承認が遅い」は業務トラブルで、ワークフローの設計やルールの見直しが必要です。一方「承認ボタンが押せない」はシステムトラブルで、権限・フォーム・連携の設定確認が必要です。問題の種類が混ざると改善が進みません

最後に、外部サービス(ノーコードツール提供会社)と自社の責任分界点を整理します。ツール側は「プラットフォームとして動く」ことが責任範囲ですが、あなたの会社が作ったアプリの設定ミス、データの整合性、運用ルールの不備は基本的に自社責任です。契約プランによってサポート範囲も違うため、問い合わせ先と回答までの時間も含めて確認しておきましょう。

ノーコード特有の「壊れ方」を知る:よくある5つの事故

ノーコードはコードを書かない分、壊れないわけではありません。壊れ方が「設定・連携・権限・データ」に寄りやすいのが特徴です。ここでは、現場で頻出する事故パターンを5つ挙げます。事前に知っているだけで、保守・運用の設計が一段ラクになります。

  • 権限が増えすぎて管理不能:部署・役職・案件別に権限を足していくうちに、誰が何を見られるか分からなくなる。退職者のアカウントが残ることも。
  • データ構造の後付け変更で崩壊:項目追加や名称変更を繰り返し、過去データと整合しなくなる。集計ができず、結局手作業で直す。
  • 外部連携の仕様変更で止まる:メール、カレンダー、会計、CRMなどのAPIや認証方式が変わり、気づかないうちに自動化が動かない。
  • 通知が多すぎて誰も見ない:便利だからと通知を増やしすぎ、重要なアラートが埋もれる。結果として「気づく人がいない」状態になる。
  • 現場の例外処理が吸収できない:「例外は手で対応」が積み重なり、データが欠ける。後から追跡できず、クレームや請求漏れにつながる。

これらは技術力よりも、設計と運用ルールで予防できるものが大半です。特に中小企業のノーコード運用では、“作る”より“壊さない”に予算と時間を振るほうが、長期的にROIが高くなります。

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運用を回すための基本セット:手順書・監視・バックアップ

ノーコードの保守・運用を安定させるには、「担当者の頑張り」ではなく仕組みとして回る最低限のセットを用意します。ポイントは、完璧なドキュメントではなく、止まったときに復旧できる粒度にすることです。

まず、手順書は3種類に分けると運用負荷が下がります。

  • 日次手順:朝の確認、未処理の洗い出し、エラー通知の確認、締め処理など。
  • 月次手順:ユーザー棚卸し(退職・異動)、権限の見直し、データの保存、請求や集計の突合。
  • 障害時手順:「まず何を見るか」「誰に連絡するか」「暫定対応は何か」を1枚に。

次に、監視(モニタリング)です。大げさな監視システムは不要で、ノーコードなら「失敗したら通知」「一定時間止まったら通知」のような最小限のアラート設計が現実的です。例えば「フォーム送信→DB登録→Slack通知」の自動化なら、Slack通知が来ない=止まっている可能性が高い、というシンプルな見方ができます。

バックアップは「あるか」ではなく「戻せるか」が重要です。ノーコードツールによっては自動バックアップの仕組みが弱い、あるいはプラン依存の場合があります。最低でも以下を決めてください。

  • 対象:データ(顧客・案件)、設定(フォーム・ワークフロー)、連携設定
  • 頻度:毎日 or 毎週(業務影響度で決める)
  • 保管先:ツール外にエクスポートして保管できるか
  • 復元テスト:年に1回でもよいので「戻せる」ことを確認

特に、営業・顧客データは会社の資産です。ノーコードの画面で見えているものが全てではないので、CSVエクスポートやスナップショットの取り方を早めに押さえておきましょう。

変更に強い設計:小さく作って、安全に育てる

ノーコードの利点は「早く作って改善できる」ことですが、やり方を間違えると、改善のたびに壊れる状態になります。保守・運用を前提に、変更に強い設計のコツを押さえます。

第一に、データ項目は「用途」を決めてから増やします。たとえば「顧客名(自由入力)」と「顧客名(マスタ参照)」が混在すると、検索・集計・連携で必ず詰まります。後から直すほどコストが跳ねます。追加する項目には、次のチェックを通す運用がおすすめです。

  • この項目は誰が入力し、いつ更新するのか
  • 入力のルール(必須/任意、形式、選択肢)は何か
  • レポートや請求など、どこで使うのか
  • 個人情報・機密情報に当たるか

第二に、環境を分けます。可能なら「本番」と「テスト(検証)」を分け、設定変更はテストで確認してから本番へ反映します。ノーコードでも、フィールド追加や自動化の条件変更で、意図せず全ユーザーに影響することがあります。小さな会社ほど「本番で試す」になりがちですが、業務停止のリスクが高すぎます

第三に、変更管理(チェンジログ)を残します。難しいツールは不要で、スプレッドシートで十分です。

変更日 / 変更内容 / 目的 / 影響範囲 / 実施者 / ロールバック方法 / 参考URL

この1枚があるだけで、担当が変わっても保守・運用が継続できます。ノーコードは「作った人の頭の中」に依存しやすいので、履歴を外に出すのが最重要です。

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外注・内製の判断基準:どこまでを自社で持つべきか

中小企業がノーコードを使うときに悩むのが、「自社で回すのか、外部に任せるのか」です。結論は、業務の中核に近いほど自社で判断できる状態を作り、技術的に重いところは外部を使う、が現実解です。

自社で持つべき領域は次の通りです。

  • 要件の優先順位:何を先に改善するか(売上・コスト・リスクの観点)
  • 運用ルール:入力の責任、承認の期限、例外処理のやり方
  • 現場教育:使い方の浸透、FAQ整備、入力品質の担保

一方で外部に任せたほうがよいのは、次のような領域です。

  • 連携や自動化の複雑化:複数ツール連携、認証、エラー時のリトライなど
  • セキュリティ設計:権限、ログ、情報漏えい対策、監査観点
  • データ設計の再構築:スパゲティ化したデータの整理、移行計画

判断の目安として、「止まったときに売上が止まる/顧客に迷惑が出る」仕組みは、保守の体制とSLA(どれくらいで復旧するか)を意識して外部も含めて組むべきです。逆に、部内の便利ツールで影響が限定的なら、運用担当が回せる範囲で小さく改善を積むほうが成功しやすいです。

また、ノーコードは人材市場的に「誰でもすぐ引き継げる」と思われがちですが、実際はツールごとの癖や設定思想があり、引き継ぎコストが発生します。外注する場合も、納品物として設定のスクリーンショット、データ定義、運用手順、変更履歴を求めると、将来の保守・運用が安定します。

まとめ

ノーコードでシステムを作ると開発は速くなりますが、保守・運用が不要になるわけではありません。むしろ「設定」「権限」「データ」「連携」にトラブルが寄りやすいため、責任分担・運用手順・監視・バックアップ・変更管理を最初に整えることが、長く使える仕組みへの近道です。

  • まずは役割(業務オーナー/運用担当/保守担当)と責任分界を決める
  • ノーコード特有の事故(権限、データ、連携、通知、例外)を前提に設計する
  • 手順書・アラート・バックアップで「止まっても戻せる」状態を作る
  • 変更はテスト環境と変更履歴で安全に積み上げる
  • 中核業務ほど、外部も含めた保守体制と復旧目標を持つ

もし「作ったものが増えてきて管理が不安」「担当者が辞めたら回らない」「連携がたまに止まるが原因が追えない」といった状態なら、今が保守・運用の整備タイミングです。現状の棚卸しだけでも、次の一手が見えやすくなります。

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