SaaSのデメリットと導入前に知っておくべき注意点

SaaSとは?「便利」の裏にある前提を押さえる

SaaS(サース)とは、インターネット経由でソフトウェアを利用する形態です。たとえば、営業管理(SFA/CRM)、会計、勤怠、チャット、電子契約など、ブラウザやアプリからログインして使うサービスが該当します。自社でサーバーを持たずに使えるため、初期費用を抑えやすく、導入も早いのが魅力です。一方で、SaaSは「外部のサービスを借りる」以上、社内システムのように自由に作り替えられるわけではありません。ここを理解しないまま契約すると、「思ったより使いにくい」「運用が回らない」「乗り換えが大変」といったギャップが起きます。

中小企業にとってSaaS導入は、DX(デジタル化)の第一歩になりやすい反面、選び方と運用設計で成果が大きく変わります。特に経営者・マネージャー層は、機能の多さより「自社の業務に合うか」「現場が続けられるか」「コストが読めるか」を優先して判断する必要があります。便利さの裏側にある前提(ネット依存・契約・制約・運用)を先に確認することで、失敗の確率を下げられます。

この記事では、SaaSの代表的なデメリットと、導入前に確認すべき注意点、よくある失敗パターン、対策の打ち手を実務目線で整理します。ITに詳しくなくても、社内の稟議や導入判断に使えるよう、業務シーンの例も交えて解説します。

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SaaSの主なデメリット

SaaSのデメリットは「サービス品質が低い」という意味ではなく、提供形態から生まれる制約です。まず押さえたいのは、SaaSはベンダー(提供会社)のルールの中で使うため、自由度と引き換えにスピード・低コストを得るという性質がある点です。以下では、中小企業がつまずきやすいポイントを中心に整理します。

カスタマイズが難しく、業務を合わせる必要が出る

パッケージ型のSaaSは、標準機能で多くの企業に合うよう作られています。その結果、「自社の細かい運用にぴったり合わせる」ことは難しくなります。たとえば、営業日報の入力項目を増やしたい、承認フローを独自にしたい、見積書のレイアウトを特殊にしたい、といった要望が出ても、できる範囲が限られます。オプションや拡張機能で一部は補えますが、やり過ぎるとコスト増・運用複雑化に繋がります。

よくあるのが、「現場の運用に合わせるためにExcelを併用し続ける」状態です。結果として二重入力になり、SaaSが定着せず、データも分断されます。導入前に“変えられない部分”を把握し、業務側をどこまで標準化できるかを決めることが重要です。

月額課金が積み上がり、総コストが読みにくい

SaaSは初期費用が低い反面、月額・年額課金が続きます。さらに、ユーザー数課金、機能別課金、ストレージ課金、API連携課金、サポートプラン課金など、料金体系が複雑なこともあります。導入当初は少人数でも、部署展開や取引先追加で増えると、想定以上にコストが上がるケースがあります。

例えば「営業10名で開始→成果が出て全社50名に展開」のような成長は喜ばしい一方で、費用も5倍になる可能性があります。加えて、複数SaaSを導入すると月額が分散し、経営側が全体像を把握しづらくなります。3年程度の総コスト(TCO)で見積もり、増員・拡張時の上限も想定することが、予算超過を防ぎます。

データ移行・乗り換え(ベンダーロックイン)の壁

SaaSを使い込むほど、顧客データ、案件履歴、メールログ、添付資料、設定情報などがサービス内に蓄積します。すると、別サービスへ移行する際に「データを出せるか」「同じ形で移せるか」「移行後も検索・分析できるか」が課題になります。エクスポートはできても、項目や形式が合わず、結局手作業で整形が必要になることもあります。

また、業務フローがそのSaaSに依存すると、乗り換えが心理的にも運用的にも難しくなります。いわゆるベンダーロックインです。これは悪ではありませんが、出口戦略(解約・移行・データ保全)を契約前に確認しておくと、将来の選択肢が広がります。

障害・メンテナンスで止まると業務が止まる

SaaSはクラウド側で運用されるため、自社内のサーバー管理は不要ですが、逆に言えば、障害やメンテナンスの影響を受けます。たとえば月末締めのタイミングで会計SaaSが不安定になる、営業会議直前にCRMに入れない、電子契約が遅延する、といった事態は業務インパクトが大きいです。

提供側は冗長化や監視をしていますが、ゼロにはできません。重要なのは、止まったときに「代替手段は何か」「誰が判断して切り替えるか」「顧客への影響をどう抑えるか」を決めることです。業務の重要度に応じて、運用ルール(緊急時の手順)を作ると安心です。

セキュリティ・法務・監査の確認が必要になる

SaaSは一般にセキュリティ投資が進んでいますが、利用企業側にも確認義務があります。特に顧客情報、契約書、人事情報などを扱う場合、アクセス権限、ログ、二要素認証、データ保管場所、バックアップ、委託先管理などを確認しないと、情報漏えい時の責任問題になり得ます。

また、利用規約やSLA(サービス品質保証)、サポート対応範囲、データ削除の扱いなども見落とされがちです。中小企業でも取引先からセキュリティチェックシートを求められる場面が増えています。“導入したい”気持ちより先に、情報の種類と社内ルールを整理することが、後戻りを減らします。

導入前に必ず確認したい注意点チェックリスト

SaaS導入を成功させるコツは、比較サイトのランキングではなく「自社の条件」を先に決めることです。現場が使い続けられるか、成果を測れるか、契約上の落とし穴はないか。この3点を軸に、導入前チェック項目を具体化します。以下は、経営者・マネージャーが押さえるべき実務チェックリストです。

導入前チェック(最小構成)

  • 目的:何を改善するSaaSか(例:商談の進捗の見える化、請求漏れ防止、契約締結のリードタイム短縮)
  • 対象業務:どの業務範囲まで含めるか(入力・承認・集計・分析・共有)
  • 利用者:誰が使うか(営業、上長、事務、経営)/ITが苦手な人でも使えるか
  • データ:何を入れるか(顧客、案件、商品、契約書)/既存データの整備は可能か
  • 連携:メール、会計、基幹、名刺、チャット等と繋ぐ必要があるか
  • 権限:閲覧・編集・承認の権限設計ができるか(部署別、役職別)
  • 費用:月額だけでなく、初期設定・教育・連携開発・運用工数まで含めたTCO
  • 契約:最低利用期間、解約条件、データ返却、SLA、サポート範囲

たとえばCRM/SFAのSaaSを導入する場合、目的が「案件管理」なのか「売上予測」なのかで、必要な入力項目や運用ルールが大きく変わります。目的が曖昧だと、入力が増えるだけで成果が出ず、「SaaSは使えない」と結論づけてしまいがちです。“何を良くするか”を一文で言える状態にしてから、機能比較に入ると意思決定がぶれません。

また、費用はライセンス料金だけでなく、初期設定(項目設計、権限、ワークフロー)、データ移行、現場教育、定着化のための運用会議など、見えにくいコストが発生します。導入担当が兼務だと、社内工数がボトルネックになります。自社でどこまでやるか、外部支援を使うかも、早めに決めるのがおすすめです。

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よくある失敗パターンと回避策

SaaS導入の失敗は、製品選定よりも「運用設計不足」で起きることが多いです。特に中小企業では、導入担当者が忙しく、ルールづくりや教育まで手が回らないまま開始し、数か月後に使われなくなるケースが目立ちます。ここでは、現場で起きやすい典型例と、現実的な回避策をまとめます。

機能が多すぎて、結局使わない(オーバースペック)

デモを見ると高機能なSaaSほど魅力的に見えます。しかし、入力項目が多い、画面が複雑、設定が難しいなどの理由で、現場がついていけないことがあります。特に営業部門では、入力が増えると活動時間が減り、反発が起きやすいです。

回避策は「最小運用」から始めることです。たとえばCRMなら、最初の1〜2か月は「顧客名・担当・案件金額・ステータス・次回アクション日」だけに絞り、会議で必要な情報だけを確実に集めます。“入力を増やす”のではなく“判断を速くする”ために項目を決めると、定着しやすくなります。

入力ルールが曖昧で、データが汚れて分析できない

同じ意味の項目が複数の表記で登録される(例:株式会社ソフィエイト/ソフィエイト/(株)ソフィエイト)、案件ステータスの定義が人によって違う、金額が税込/税抜で混在する、といった状態になると、レポートが信用されず、使われなくなります。

回避策は、導入前に「入力辞書」を作ることです。難しい資料ではなく、A4一枚のルールで構いません。例:会社名は登記名、金額は税抜、ステータスは5段階、失注理由はプルダウン、次回アクション日は必須、など。ルールを“守らせる”より、“迷わない仕組み”にするため、プルダウン化や必須項目設定を活用します。

既存のExcel・メール・チャットと分断される

SaaSを入れても、見積はExcel、連絡はメール、社内共有はチャット、請求は別ツール…とバラバラだと、情報が散らばり「結局どれが正しいのか」が分からなくなります。これが二重入力や確認作業の増加を招き、SaaS導入の効果が薄れます。

回避策は「基準となる台帳」を決めることです。顧客情報はCRMを正とする、契約書は電子契約を正とする、請求は会計SaaSを正とする、など。さらに可能ならAPI連携やiPaaSで自動連携します。連携が難しい場合でも、“どこを見れば最新か”を決めるだけで運用コストは下がります

中小企業がSaaS導入で失敗しない進め方(実務手順)

SaaS導入は「買って終わり」ではなく、運用が始まってからが本番です。とはいえ、いきなり完璧を目指すと疲弊します。中小企業に向くのは、スモールスタートで成果を作り、社内に広げる進め方です。ここでは、IT専任がいない企業でも回しやすい手順を紹介します。

  1. 目的とKPIを決める:例)見積提出までの日数を短縮、請求漏れゼロ、商談の停滞を減らす
  2. 対象範囲を限定する:最初は1部署・1チーム・1商品ラインなど、影響範囲を絞る
  3. 現状フローを紙に書く:誰が何をいつ判断しているかを可視化し、ムダと属人化を見つける
  4. SaaSで“変えない部分”を確認する:承認フロー、帳票、権限、データ項目、連携の可否
  5. 最小の入力・運用ルールを作る:必須項目、命名規則、会議での見方、更新頻度
  6. トライアルで実データ検証:デモではなく、自社の案件・顧客・帳票で試す
  7. 定着の仕組みを入れる:週次レビュー、入力の抜けチェック、改善要望の窓口を決める

ポイントは、トライアルで「実データ」を使うことです。デモ環境では見えない、入力の手間、検索のしやすさ、権限の困りごと、帳票のズレが見つかります。営業現場であれば、実際の商談を数件登録し、会議でその画面を使ってみてください。会議で使える=現場が使い続ける確率が上がるためです。

また、導入後の定着は、担当者の熱意だけでは続きません。仕組み化が必要です。たとえば「入力がない案件は会議で扱わない」「次回アクション日が空欄の案件は停滞扱いにする」など、SaaSのデータを意思決定に直結させると定着します。逆に、入力してもしなくても評価が同じなら、忙しい現場は入力しなくなります。

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導入後に注意すべき運用・ガバナンス

SaaSは導入が早い分、運用を放置すると“いつの間にか危ない状態”になりやすい側面があります。たとえば、退職者アカウントが残る、権限が広すぎる、データが増えて検索しづらい、部署ごとに別のSaaSを契約して請求が散らばる、といった問題です。これらは情報漏えい・コスト増・業務停滞に繋がります。

最低限のガバナンスとして、次を定例化するのが現実的です。

  • アカウント棚卸し:月1回、利用者・権限・退職者を確認し、不要アカウントを停止
  • 権限設計の見直し:「見えるべき人にだけ見える」状態を保つ(個人情報・給与情報は特に)
  • データ品質チェック:重複、未入力、表記ゆれを定期的に是正(自動ルール化できると理想)
  • コスト管理:契約中SaaS一覧、月額合計、オプション、更新月、解約条件を台帳化
  • 障害時の手順:止まったときの代替フロー(紙、Excel、別チャネル)と判断者を明確化

特に「SaaSが増えすぎる問題」は見落としがちです。現場が便利なツールを個別に契約し、支払いが部署ごと・カードごとに分散すると、セキュリティとコストの両面で管理不能になります。“新しいSaaSを入れる前に相談する窓口”を決めるだけでも、無秩序な増加を抑えられます。

もし「このSaaSを中心に業務を組み直したい」「複数SaaSを連携して二重入力をなくしたい」といった段階に進むなら、業務整理とデータ設計が効いてきます。ここはツール選定以上に効果が出やすい領域です。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

まとめ

SaaSは、初期費用を抑えてスピーディーに業務を改善できる一方で、カスタマイズの制約、月額課金の積み上がり、データ移行の難しさ、障害リスク、セキュリティ・契約面の確認など、導入前に知っておくべきデメリットがあります。特に中小企業では、製品選びよりも「目的の明確化」「最小運用の設計」「入力ルールと定着の仕組み」が成果を左右します。

導入前は、目的・対象範囲・データ・連携・権限・契約条件・3年TCOをチェックし、トライアルでは必ず実データで検証してください。導入後は、アカウント棚卸し、権限見直し、データ品質、コスト台帳、障害時手順を回すことで、SaaSを“便利なツール”から“利益に効く仕組み”に育てられます。SaaSは導入の速さが武器ですが、成功は運用設計で決まります。自社の実態に合わせて、無理のない範囲から始めていきましょう。

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