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SaaS・PaaS・IaaSを一言で言うと?まずは「どこまで任せるか」で整理
クラウドを検討すると必ず出てくるのがSaaS/IaaS/PaaSです。言葉の違いで迷いがちですが、本質はとてもシンプルで、「アプリやサーバーの面倒を、どこまで自社で見るか」の違いです。
SaaS(Software as a Service)は「完成したアプリを利用する」形です。例えるなら、出来上がった業務ソフトを月額で使うイメージで、メール、会計、勤怠、営業支援、チャット、ワークフローなどが代表例です。利用者側は画面操作と設定が中心で、サーバー管理やアップデートは基本的にサービス提供者が担います。
PaaS(Platform as a Service)は「アプリを作る土台(実行環境)を利用する」形です。自社で作ったWebシステムやAPIを動かすための環境をクラウドが用意してくれます。OS設定やミドルウェアの面倒が減り、開発と運用のスピードを出しやすいのが特徴です。身近な例で言うと、社内向けの申請システムや顧客ポータルなどを短期間で作って運用したいときに選ばれます。
IaaS(Infrastructure as a Service)は「サーバーやネットワークといったインフラを借りる」形です。仮想サーバー(VM)を立て、OSから上の設定・運用を自社で行うことが多く、自由度が高い一方で、構築・保守の責任範囲も大きくなります。オンプレ(自社サーバー)からクラウドに移す際の受け皿として利用されることも多いです。
以降では、ITに詳しくない情シス・管理部門でも判断できるように、「違い」→「選び方」→「失敗しない導入手順」の順で整理します。
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違いが一発で分かる比較:コスト・スピード・自由度・責任範囲
SaaS、PaaS、IaaSは、どれが「上」ではなく、得意分野が違います。意思決定で重要になる観点は、①導入スピード、②自由度(カスタマイズ性)、③運用の責任範囲、④コスト構造(初期/運用/人件費)です。特に非エンジニアの方は「責任範囲」を軸にするとブレません。
比較の目安(ざっくり)
- 導入スピード:SaaSが最速(今日から使える)/PaaSは中(開発前提)/IaaSは遅め(設計・構築が必要)
- 自由度:IaaSが最大/PaaSは制約の中で高い/SaaSは設定範囲が中心
- 運用の手間:SaaSが最小(ベンダー側)/PaaSは中(アプリ運用中心)/IaaSは大(OS・監視・バックアップ等も)
- コストの考え方:SaaSは「利用料」中心/PaaSは「実行量+開発費」/IaaSは「サーバー費+運用人件費」
例えば「勤怠をクラウド化したい」ならSaaSがほぼ第一候補です。一方で「自社独自の審査ロジックがあり、既存SaaSでは業務が回らない」ならPaaSやIaaSで内製/外注開発が現実的になります。
注意したいのは、月額費用だけ見て判断すると失敗しやすい点です。IaaSはサーバー単価が安く見えても、監視・障害対応・セキュリティパッチ・バックアップなどの運用工数が必要になります。逆にSaaSは月額が高く見えても、運用負担が減り、担当者の時間が空くならトータルで得になるケースも多いです。
どれを選ぶべき?業務シーン別の最適解(チェックリスト付き)
「結局うちはどれ?」に答えるために、よくある業務シーン別に整理します。結論から言うと、標準業務はSaaS、競争力の源泉はPaaS/IaaSが基本方針になります。
まずSaaSが向くケース
- 会計、経費精算、勤怠、給与、電子契約、メール、グループウェアなど「一般的な業務」
- 拠点や在宅が増え、短期間で全社展開したい
- 情シスの人手が限られ、運用を抱えたくない
- 監査・セキュリティの説明責任を、ある程度ベンダーに寄せたい
SaaS導入の肝は「業務をSaaSに寄せる」覚悟です。細かい独自ルールを維持したいと、設定や連携が複雑になりやすく、結果的に“高いのに使いにくい”状態になりがちです。現場ヒアリングでは「例外処理」の頻度を必ず確認しましょう。
PaaSが向くケース(作る価値がある)
- 顧客向けポータル、予約、申込、審査、在庫引当など「自社の業務ロジックが強い」
- SaaS同士をつなぐ中継APIや、データ統合基盤を作りたい
- 素早く改善を回し、機能追加のスピードを上げたい
PaaSは、OSやミドルウェアの管理が軽くなる分、アプリの設計・品質・権限設計に集中できます。情シス主導で外注する場合でも、要件の筋が良ければ運用はかなり楽になります。
IaaSが向くケース(自由度が必要)
- 既存オンプレ環境をクラウドへ移設し、まずは同等構成で動かしたい
- 特定ソフトウェア要件(特殊なミドルウェア、古いバージョンの依存)がある
- ネットワーク分離や細かな制御が必要で、PaaSだと制約が厳しい
ただしIaaSは、自由度の裏側で「運用設計の成熟度」が問われます。誰が24/365でアラートを見るのか、バックアップの復旧手順はあるのか、脆弱性対応の責任者は誰か。ここが曖昧だと、障害時に止まりやすくなります。
迷ったら使えるチェックリスト
- 業務が一般的で、差別化要素ではない:SaaS優先
- 独自の業務ロジックがあり、改善頻度が高い:PaaS優先
- 既存資産をそのまま持ち上げたい/特殊要件がある:IaaS優先
- 運用担当が薄い:SaaS or PaaS(IaaSは慎重に)
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失敗しやすい落とし穴:SaaS連携、権限、データ移行、そして「見えない運用コスト」
導入後に「思ったより大変だった」となりやすいポイントを先回りして潰します。クラウドの失敗は、技術よりも“業務と運用の設計不足”から起きることが多いです。
SaaSの落とし穴:連携地獄と例外運用
SaaSを複数入れると、ID管理(入社・異動・退職)、マスタ同期(取引先・部門)、承認フローなどで連携が増えます。「AはCSVで出せるがBはAPI必須」など差があり、結果として手作業が残ることもあります。対策は、最初に「人・組織・権限・マスタ」をどこが正とするか決めることです。可能ならSSO(シングルサインオン)とプロビジョニングも検討しましょう。
PaaS/IaaSの落とし穴:作った後の保守と属人化
自社開発は柔軟ですが、仕様変更・障害対応・セキュリティ対応が継続的に発生します。よくあるのは、初期開発を急ぎすぎて運用設計(監視、ログ、バックアップ、権限)が後回しになること。最小構成で始める場合でも「止まったら誰が何をするか」だけは最初に文章化しておくと、後々の損失が減ります。
共通の落とし穴:データ移行の見積もり甘さ
旧システムから新環境に移す際、データの整形や重複、文字コード、未入力、部門名揺れなど“汚れ”が必ず見つかります。ここを軽視すると、移行直前に慌てます。最初の段階でサンプル移行をやり、問題の種類を洗い出すのが現実的です。
見えない運用コスト:アカウント棚卸しと監査対応
クラウドは契約が増えやすく、退職者のアカウントが残る、不要ライセンスが増える、権限が過大になるなどが起こります。情シスが詳しくない場合ほど、「権限は最小」「定期棚卸し」「ログの保管方針」をルール化し、経営・監査・セキュリティの説明責任に耐える形にしておくことが重要です。
最適に使い分けるための導入手順:要件→選定→小さく開始→運用で勝つ
選び方を「手順」に落とすと、現場と経営の合意が取りやすくなります。ポイントは、技術選定の前に“業務の目的”を決めることです。
目的と優先順位を決める(例:コスト削減、スピード、統制)
まず「何を良くしたいか」を一つに絞ります。例:月次締めを3日短縮したい、問い合わせ対応を半減したい、拠点追加に強い環境にしたい、監査対応を楽にしたい。目的が曖昧だと、SaaSの機能比較に終始し、判断が長引きます。
現状の業務フローを“例外”まで含めて棚卸し
業務フローは、通常ルートだけでなく例外(返品、差戻し、緊急承認、代理承認、請求修正など)を洗い出します。例外の頻度が高いほど、SaaS一本槍が難しくなり、PaaSで補完する価値が出ます。
アーキテクチャの型を決める(現実的なハイブリッド)
多くの企業では、SaaSだけ/IaaSだけ、のような単一選択より、組み合わせが最適になります。例えば「基幹周辺はSaaS、独自業務はPaaS、既存のレガシーはIaaSで延命」といった具合です。ここで重要なのは、データの正本(マスタ)と連携方式(API/ETL/CSV)を決め、“連携の複雑さを増やしすぎない”設計にすることです。
PoC(小さく試す)で“運用まで”確認する
試験導入は機能確認で終わりがちですが、重要なのは運用です。権限設計、ログ、バックアップ、復旧、管理画面の操作性、問い合わせ対応、請求の増え方(従量課金のブレ)まで確認します。「使える」より「回せる」かを評価軸に置くと失敗が減ります。
契約・SLA・データ持ち出し(出口)を確認する
SaaSは乗り換えやデータエクスポートが課題になることがあります。PaaS/IaaSでも、特定クラウドに寄せすぎると移行が大変になります。契約前に、データの取り出し方法、保管期間、障害時の責任分界、サポート範囲、解約手順を確認し、“出口戦略”を持った導入にしておくと経営判断としても安全です。
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判断に迷う人のための結論:よくある組み合わせパターンと意思決定の軸
最後に、現場でよく採用される「使い分けの型」を提示します。迷ったら型から入ると、検討が前に進みます。
パターンA:SaaS中心(情シス省力化・短期導入)
勤怠・経費・会計・契約・グループウェア・CRMなどをSaaSで揃え、ID管理と最低限の連携だけ整えます。メリットは導入が早く、運用の手間が少ないこと。注意点は、SaaS間連携が増えたときに手作業が残りやすい点です。SSOとマスタ管理の方針が鍵になります。
パターンB:SaaS+PaaS(独自業務だけを素早く開発)
標準業務はSaaSに任せつつ、独自の申請・審査・在庫・顧客ポータルなどをPaaSで開発します。メリットは、差別化領域に集中しながら、土台の運用負担を抑えられること。注意点は、要件定義とデータ連携設計が弱いと改修が増え、コストが膨らむことです。
パターンC:IaaSで移設→段階的にSaaS/PaaSへ(レガシー移行の現実解)
まずIaaSでオンプレを移し、停止リスクを下げてから、順次SaaS化・PaaS化を進めます。メリットは移行の安全性。注意点は「移しただけ」で改善が止まることなので、移設と改革のロードマップを分けて合意しておきましょう。
意思決定の軸は、①運用体制(誰が守るか)、②変更頻度(どれだけ改善するか)、③独自性(競争力かどうか)、④リスク許容度(止められないか)です。これらを言語化できれば、SaaS/IaaS/PaaSの違いは“用語”ではなく“経営判断の道具”になります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
まとめ
SaaS、PaaS、IaaSの違いは、突き詰めると「どこまで自社で運用責任を持つか」です。標準業務を早く・安全に整えるならSaaSが有利で、独自業務を作って改善を回すならPaaS、自由度や既存資産の制約が強いならIaaSが現実的です。
導入で失敗しやすいのは、機能比較に偏り、連携・権限・データ移行・運用設計が後回しになることです。目的を明確にし、例外を含む業務棚卸し→小さく試して運用まで検証→出口戦略の確認、の順で進めると判断が安定します。
もし「SaaSでいけるのか、PaaS/IaaSで作るべきか」「連携や運用の設計をどう進めるべきか」で迷う場合は、現状業務と体制を前提に、最小の投資で最大の効果が出る構成から一緒に設計するのがおすすめです。
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