RAG導入の費用相場(PoC/本番/運用):見積もり内訳と妥当性の判断方法

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RAGとは何か:なぜ「費用が読みにくい」のか

RAG(Retrieval Augmented Generation)は、生成AI(LLM)が回答を作る前に、社内文書やナレッジベースから関連情報を検索して根拠を添える仕組みです。たとえば「社内規程を踏まえた回答」「製品マニュアルの該当箇所を引用したサポート返信」「過去の議事録に沿った要約」など、業務の文脈を反映した出力ができるのが特徴です。

一方で、RAGの費用が読みにくい理由はシンプルで、「AIモデル」だけでなく「データ整備・検索基盤・運用設計」がコストの中心になるからです。チャットUIにLLMをつなぐだけなら比較的早く安くできますが、業務で使えるRAGにするには、次の要素が絡み合います。

  • どの文書を対象にするか(規程、FAQ、契約書、設計書、メール等)
  • 文書の形式(PDF、Word、スキャン画像、Box/SharePoint/Google Driveなどの保管場所)
  • 検索の精度要件(「関連しそう」ではなく「根拠が必ず当たる」必要があるか)
  • 情報漏えい・権限(部署ごとに閲覧範囲を分ける必要があるか)
  • 更新頻度(毎日更新か、四半期に一度か)
  • 想定ユーザー数と利用量(同時アクセス、1日あたりの質問数)

さらに、RAGは「作って終わり」ではありません。運用で文書が増え、業務ルールが変わると、検索対象や回答品質のチューニングが必要になります。つまり、見積もりではPoC(試作)だけでなく、本番化と運用保守までを分けて考えることが重要です。

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RAG導入の費用相場:PoC/本番/運用の目安

費用は要件次第で大きく変わりますが、社内向けの検索・QA用途を想定したときの目安を示します。「どこまで業務システムとして作るか」で桁が変わる点を押さえてください。

費用レンジの目安(一般的なケース)

  • PoC(2〜6週間):50万〜300万円程度(小さく検証)/300万〜800万円程度(データ整備や権限まで検証)
  • 本番導入(2〜4か月):300万〜1500万円程度(標準的)/1500万〜3000万円程度(権限管理・監査・複数部門展開)
  • 運用(月額):10万〜80万円程度(保守+軽微改善)+利用量課金(LLM・検索の従量)

PoCは「実データで、回答がどれくらい当たるか」を確かめる段階です。ここで重要なのは、見栄えの良いデモではなく、現場が困っている質問で評価することです。たとえば「就業規則の例外規定」「返品条件の例外」「製品の型番ごとの差分」など、曖昧さが混ざる質問で精度が出るかを見ます。

本番では、ログイン連携、権限(部署・役職)、監査ログ、データ更新、問い合わせ導線、SLA(障害対応)などが追加され、実装範囲が一気に広がります。運用は「月額固定+従量課金」の組み合わせが多く、従量部分は主にLLMのトークン(入力/出力文字量)とベクトル検索のリクエスト、データ保管量が効いてきます。

なお、既存のSaaS(例:社内ナレッジ検索SaaS)で代替できる場合もあります。自社に合うのが「RAGを作ること」なのか「RAG機能のある製品を使うこと」なのか、費用相場を見る前に整理すると判断が早くなります。

見積もりの内訳:何にお金がかかるのか(項目別チェック)

RAGの見積もりは、ざっくり「データ」「検索」「生成」「アプリ」「運用」に分けると理解しやすいです。見積書を受け取ったら、どの項目がどれくらいの比率かを確認してください。費用の妥当性は“工数の根拠が説明できるか”で判断できます

データ整備(取り込み・前処理・品質)

RAGは検索できる状態に文書を整えるのが肝です。PDFが多い、スキャンが多い、表や図が多い、文書が分散している、といった条件があると工数が増えます。主な作業は、文書収集、OCR、重複排除、メタデータ付与(部署、版数、公開範囲)、そして「チャンク分割」(文章を検索単位に切る)です。

  • データソース連携:SharePoint/Box/Google Drive/ファイルサーバ等
  • 変換:PDF/Office→テキスト化、OCR、表の扱い
  • 権限メタデータ:閲覧制御のための属性付与

ここが弱いと、どれだけ良いモデルでも「参照すべき文書を取って来られない」ため、RAGの体験が崩れます。

検索基盤(ベクトルDB、キーワード検索、ハイブリッド)

検索は、ベクトル検索(意味検索)だけでなく、キーワード検索(BM25等)を併用する「ハイブリッド検索」が有効なケースが多いです。型番、条文番号、製品コードなどはキーワード検索が強く、曖昧な質問はベクトル検索が強い、といった性質があるためです。検索基盤では、インデックス作成、再ランキング、フィルタ(権限・部署・期間)、評価指標(正解率/再現率)などがコスト要因になります。

生成(LLM選定、プロンプト、ガードレール)

LLMはAPI利用が一般的で、モデル選定(精度・速度・価格・データ保持ポリシー)やプロンプト設計(出力フォーマット、引用ルール、禁止事項)に工数がかかります。業務では「断定しない」「根拠がないときは答えない」「参照元を示す」などのガードレールが重要です。

  • 回答テンプレート(例:結論→根拠→該当文書→注意点)
  • 引用表示(該当箇所の抜粋、リンク)
  • ハルシネーション抑制(根拠がない場合のエスカレーション)

アプリ実装(UI、認証、ログ、連携)

現場に使ってもらうには、チャット画面だけでなく「何が根拠か」「どこを見ればよいか」が分かるUIが必要です。SAML/SSO、Microsoft Entra ID、Google Workspaceなどの認証連携、監査ログ、問い合わせフォーム、既存業務システム(CRM、FAQ、チケット管理)との連携があると費用は上がります。

運用設計(更新、評価、改善、保守)

運用では、文書更新の反映(差分取り込み)、利用ログの分析、質問の未解決リスト化、回答品質の評価、プロンプト・検索の改善が継続的に発生します。ここを見積もりに入れずに導入すると、「最初は動いたが、数か月で使われなくなる」状態になりがちです。

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妥当性の判断方法:見積もりを“良い/悪い”でなく“合う/合わない”で見る

RAGの見積もりは、金額だけ比較すると判断を誤ります。大切なのは「自社のリスクをどこまで潰してくれる見積もりか」です。妥当性は“成果物・評価方法・責任範囲が明確か”で判断できます。

PoCの妥当性チェック(成果が数値で定義されているか)

  • 評価データ:実際の社内質問を何件用意するか(例:50〜200件)
  • 合格基準:正答率、根拠一致率、回答不能時の適切な拒否率など
  • 範囲:どの文書群を対象にするか、更新は含むか
  • アウトプット:検証レポート、課題一覧、次フェーズの設計案

「PoC一式」とだけ書かれている場合は要注意です。PoCは失敗しても学びが残る形にしておくべきで、評価設計がないPoCは、意思決定に使えない結果になりやすいです。

本番見積もりの妥当性チェック(非機能が抜けていないか)

本番では、機能よりも非機能要件がコストを左右します。たとえば、部署別の閲覧制御、監査ログ、バックアップ、障害時対応、SLA/受付時間、データ保持ポリシー、社外秘データの扱いなどです。見積もりにこれらが含まれていない場合、後から追加費用になりやすいです。

運用費の妥当性チェック(固定費と従量課金の分離)

運用費は「保守(固定)」と「利用(従量)」が混ざると比較できません。月額の内訳として、(1)障害対応・監視、(2)軽微改修、(3)問い合わせ窓口、(4)モデル/検索の利用料、(5)インフラ費、が分かれているか確認しましょう。特にLLM利用料は、利用者数よりも「1人あたりの質問回数」「1回の回答の長さ」で効いてきます。

ベンダー比較のコツ(安い見積もりが高くつくパターン)

  • データ整備を顧客側に寄せすぎて、結局社内工数が膨らむ
  • 権限管理が後付けになり、作り直しが発生する
  • ログ・評価がなく、改善できずに利用が止まる
  • 特定クラウド/特定製品に強く依存し、拡張が難しい

「安い=得」ではなく、自社の制約(情報セキュリティ、監査、部門間調整)に適合しているかで判断するのが現実的です。

費用を抑えつつ失敗しない進め方:小さく始めて、運用を前提に広げる

RAG導入で最も多い失敗は、「最初から全社の文書を入れて、全員が使えるものを作ろうとする」ことです。費用を抑える鍵は“対象業務と文書を絞り、評価→改善→拡張”の順に進めることにあります。

最初に決めるべき3点(これで見積もりが安定する)

  • 用途:問い合わせ対応、規程確認、営業支援、設計レビューなど、最初は1つ
  • 文書:最新版が管理されている文書群から(例:FAQ、マニュアル、規程)
  • 成功指標:一次回答率、回答作成時間短縮、問い合わせ件数削減など

たとえば「情シスへの問い合わせ(パスワード、端末申請、SaaS利用申請)」に絞ると、文書が比較的整っており、効果測定もしやすいです。

PoCでやるべき現実的な範囲

PoCは、UIの作り込みよりも「検索と回答の品質」を優先します。現場のよくある質問を収集し、RAGで回答を作って、根拠が正しいかを人が判定します。さらに、答えられない質問が出たときに「どの文書が足りないのか」「チャンクの切り方が悪いのか」「権限で落ちているのか」を切り分けられる設計にしておくと、本番の見積もり精度が上がります。

本番で効く設計(後からの作り直しを減らす)

  • 権限設計:部署/役職/プロジェクトで閲覧範囲を定義
  • 更新フロー:文書の版管理と自動取り込み(差分更新)
  • 監査:誰が何を質問し、何を参照したかのログ
  • 回答の責任境界:「最終判断は規程/担当へ」など注意書きの標準化

特に権限と更新は、後から追加するとデータ構造ごと変更が必要になることがあります。最初から「最低限の運用」を設計に含めると、結果的に費用を抑えられます。

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よくある質問:見積もり前に押さえるポイント

クラウド利用とオンプレ(社内設置)で費用は変わりますか?

変わります。一般にクラウドは初期費用を抑えやすく、オンプレは初期費用が上がりがちです。ただし、社内ポリシーや監査要件でオンプレや専用環境が必要な場合もあります。「どのデータを外に出せないか」を先に整理すると、不要な検討コストを減らせます。

LLMの利用料(従量課金)はどれくらい見ておくべき?

利用状況で変動します。目安を出すには、「1日あたりの質問数」「1回の回答の平均文字数」「参照文書の長さ」「同時利用」を仮置きし、上限を決めるのが現実的です。見積もり時点で、月次の上限予算(ガード)を設定できるかも確認しましょう。

RAGを入れれば、学習(ファインチューニング)は不要ですか?

多くの業務用途では、まずRAGで十分な成果が出ます。ファインチューニングは、文章のトーン統一や分類精度などに効く一方、データ準備や評価が難しく費用も上がります。まずはRAGで「正しい根拠を引ける」状態を作り、その上で必要があれば追加する、の順が安全です。

精度が出ない原因は何が多いですか?

多いのは、文書が最新版でない、PDFの文字が取れていない、チャンクが不適切、権限で参照が落ちる、質問の言い回しが現場と違う、などです。RAGの精度は「モデルの性能」より「データと設計」に左右されることが多いです。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

まとめ

RAG導入の費用相場は、PoC・本番・運用で分けて考えると見通しが立ちます。PoCは50万〜800万円程度、本番は300万〜3000万円程度、運用は月額10万〜80万円程度に加えてLLM等の従量課金が乗るのが一般的です。金額の大小だけでなく、見積もりが「データ整備」「検索」「生成」「アプリ」「運用」に分解され、成果物と評価方法、責任範囲が明確になっているかが妥当性判断の軸になります。

費用を抑えつつ失敗しないコツは、用途と文書を絞って小さく始め、評価と改善の仕組みを先に作ることです。RAGは“導入して終わり”ではなく、更新・権限・ログ・改善を回せるほど、現場で使われ続けて投資対効果が出ます。自社の要件でどこがコスト要因になるかを整理し、納得できる内訳と運用計画のある提案を選ぶことが成功への近道です。

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