RAGで営業資料・提案書を社内ナレッジから作る方法:探す時間を減らす使い方

営業資料づくりで「探す時間」が増える理由と、RAGが効く場面

提案書や営業資料を作るとき、最も時間を奪うのは「文章を書くこと」よりも、実は過去資料・社内ルール・事例・価格根拠を探して整合性を取ることです。ファイルサーバー、SharePoint、Google Drive、Box、Notion、Confluence、メール添付、チャットのピン留め……情報が分散しているほど、探す手間は指数関数的に増えます。

そこで注目されているのがRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)です。ざっくり言うと、生成AIに「社内の正しい情報を探させてから文章を作らせる」仕組みです。一般的な生成AIは、学習データや会話の文脈だけで回答を作るため、社内固有の価格体系や最新の製品仕様、過去の成功事例の表現などは取りこぼしやすく、誤りも起こり得ます。一方RAGは、事前に登録した社内ナレッジ(PDF、Word、PowerPoint、FAQ、議事録など)を検索し、見つけた根拠を参照しながら文章を組み立てます。

特にRAGが効くのは、次のような「社内情報に依存する」営業業務です。

  • 過去の提案書から類似案件を探し、構成を流用したい
  • 製品仕様・機能一覧・制約・FAQの最新情報を反映したい
  • 見積り前提、保守範囲、SLA、セキュリティ回答など、間違えられない定型情報を入れたい
  • 業界別(製造、医療、物流など)の事例や言い回しを整えたい

逆に、社内に参照すべきナレッジがほとんどない場合や、完全にゼロからアイデアを発想する用途では、RAGの価値は相対的に下がります。重要なのは、RAGを「魔法の文章自動化」ではなく、社内情報の検索と引用を前提にした“提案書の土台づくり”の省力化として捉えることです。

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RAGの仕組みを非エンジニア向けに:生成AI+社内検索の合体

RAGは難しく聞こえますが、イメージは「賢い社内検索に、文章作成係が付いた」状態です。流れはシンプルで、主に次の3ステップで動きます。

  1. 質問を受け取る:「物流業向けに、在庫可視化の提案書を作りたい」など
  2. 社内ナレッジを探す:関連する事例、機能説明、価格表、SLA、セキュリティ回答を検索して候補を集める
  3. 見つけた情報を使って生成する:集めた根拠をもとに、提案書の文章・構成・箇条書きを作る

ここで大事なのは、RAGは「社内にある情報」を優先して使うため、社内の正本(最新版)を用意できれば、提案書の品質が安定しやすい点です。営業資料では、表現の統一や、数字・条件の正確性が信頼に直結します。RAGにより、担当者ごとの経験差を埋め、同時に確認作業の負担を減らせます。

一方で注意点もあります。RAGは「検索して見つかった情報」を使うため、ナレッジ自体が古い、矛盾している、前提条件が抜けている場合、出力も不安定になります。つまりRAGの精度は、ナレッジの整備と運用ルールで決まるということです。ここを先に押さえると、導入後に「期待ほど使えない」を避けられます。

もう一つ、非エンジニアの方が押さえておきたいのが「RAG=必ず引用できる」ではない点です。ツールや設計によっては出典を表示できますが、設定次第で省略されることもあります。営業資料では「この数字はどこから?」が必ず問われるので、参照元(根拠)を提示できる設計を要件として明確にしておくと安心です。

営業資料・提案書でのRAG活用パターン:よくある3シーン

RAGを提案書に使うときは、「何を作るか」より「どこで時間が溶けているか」を軸に設計すると成果が出やすくなります。代表的な活用パターンを3つ紹介します。

提案書のたたき台を、過去資産から最短で作る

新規案件でも、完全に新しい構成になることは稀です。RAGを使うと、社内の過去提案書や事例集を横断検索し、似た構成や言い回しを抽出して、初稿(たたき台)を短時間で生成できます。たとえば「業界」「課題」「導入規模」「既存システム」などの条件で近い案件を探し、その章立てをベースに組み直すイメージです。

セキュリティ・運用・SLAなど“正確性が命”の章を固める

提案書で炎上しやすいのは、セキュリティ回答、運用体制、保守範囲、SLA、データ保持、障害時対応などの章です。担当者が独自に書くと、過去版のコピペや、言い切り表現のズレが起きがちです。RAGで社内の正本(最新の回答テンプレやポリシー)を参照して生成させると、表現の統一とヒューマンエラー削減に効きます。

顧客の業界特有の“刺さる言い回し”を事例から抽出する

同じ機能でも、業界で刺さる訴求は変わります。製造なら「トレーサビリティ」「設備稼働率」、物流なら「欠品率」「リードタイム」、医療なら「監査対応」「個人情報」など。RAGで業界別の過去資料・導入事例・営業トークを引き当てると、顧客の言葉に寄せた文章を作りやすくなります。特に経験の浅い担当者ほど効果が出ます。

これらはすべて、「探す→読む→抜き出す→整える」という手作業を、RAGがまとめて短縮してくれる領域です。重要なのは、最終成果物を丸投げするのではなく、作業の前半(調査・根拠集め)をAIに寄せることです。

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社内ナレッジから提案書を作る導入手順:小さく始めて失敗を避ける

RAG導入は、いきなり全社でやるより、まず「成果が測れる狭い範囲」から始めると失敗しにくくなります。非エンジニアの方でも進めやすい、実務ベースの手順をまとめます。

対象業務とゴールを決める(まずは1種類の資料から)

最初の対象は「提案書フルセット」より、たとえば「会社紹介+製品概要+導入事例+概算見積り前提」など、よく出る型に絞るのが現実的です。ゴールは作成時間の短縮(例:8時間→3時間)や、レビュー指摘の削減(例:セキュリティ章の差し戻し件数)など、数字で置くと判断がしやすくなります。

ナレッジの“正本”を作る(散らばった情報を束ねる)

RAGの土台は社内ナレッジです。まずは次のように「正本」を決めます。

  • 製品仕様・制約:最新版がどれか、改訂履歴はあるか
  • 価格・見積り前提:値引き条件、オプション、除外項目
  • セキュリティ回答:定型Q&A、クラウド設定方針
  • 導入事例:業界別、規模別、成果指標の表現

この段階で「古いファイルを消す」までやろうとすると止まるため、最初は参照してよいファイル群を決めるだけでも十分です。運用が回り始めたら棚卸しに進みます。

検索しやすい形に整える(章・見出し・Q&A化)

RAGは検索が命なので、文章が長すぎる資料や、画像だけのスライドは拾いにくいことがあります。そこで、次を意識すると改善します。

  • 1スライド1メッセージをテキストで補う(図の説明文を入れる)
  • セキュリティや運用はQ&A形式にしておく
  • 用語の揺れを減らす(例:「保守」「運用」「サポート」の定義)

完璧な整備は不要です。重要なのは、よく聞かれる質問に答えられる情報が、検索で出てくる状態を先に作ることです。

RAGツール(または仕組み)を選ぶ:要件は「権限・出典・更新」

選定時に非エンジニア側が押さえるべき要件は3つです。

  • 権限:部署や案件で見せてよい資料が違う。アクセス制御ができるか
  • 出典表示:生成文の根拠となった資料名や該当箇所を示せるか
  • 更新反映:資料更新がどのくらいで検索に反映されるか(再取り込みの手間)

「とりあえずチャットで使えればOK」にすると、後で監査や情報漏えいの懸念が出ます。情シスやセキュリティ担当がいる企業ほど、最初にルールと要件を握ることが近道です。

プロンプト(指示文)をテンプレ化して、成果物の型を固定する

RAGは「聞き方」で出力が変わります。提案書用途では、次のようなテンプレ指示が有効です。

提案書生成の指示テンプレ例

あなたは当社の営業支援担当です。社内ナレッジのみを根拠に、提案書の章立てと本文を作成してください。
- 対象業界:〇〇
- 顧客課題:〇〇
- 提案する製品/サービス:〇〇
- 必ず含める章:課題整理、解決方針、機能概要、導入ステップ、体制/役割、費用の前提、セキュリティ/運用、類似事例
- 数字や条件は出典を示し、出典が見つからない場合は「要確認」と書く
- 文章は社外向け、丁寧な敬体、断定しすぎない

ここでのポイントは、出典がない場合の扱いをルール化することです。「それっぽい文章」を作らせないことで、現場の信頼が上がります。

失敗しがちなポイントと対策:精度・情報漏えい・現場定着

RAG導入でつまずく理由は、技術そのものより運用面がほとんどです。よくある失敗と対策を整理します。

「答えが薄い」→ ナレッジ不足ではなく、検索単位とメタ情報が原因

資料があるのに拾えないケースは多いです。原因は、長文PDFのまま、図だけ、見出しがない、用語がバラバラなど。対策は、重要資料だけでも章ごとに区切る/見出しを入れる/用語辞書を作ることです。特にセキュリティ回答や価格前提は、Q&A化すると劇的に効きます。

「間違いが混ざる」→ “正本”が複数ある、または更新が追いついていない

社内に「同じテーマの資料が3種類」ある状態は危険です。RAGは検索で引いたものを使うため、古い資料が混ざれば出力も古くなります。対策として、最初は参照対象を限定し、更新フロー(誰が、いつ、どこを更新するか)を決めます。提案書では、最新であることが価値です。

「情報漏えいが怖い」→ 送信先と権限設計を分けて考える

生成AI利用で不安になりがちなのが機密情報です。ここは「どのAIに送るか」と「誰がどの資料を参照できるか」を分けて設計します。たとえば、社外の汎用チャットに機密PDFを貼る運用は避け、社内の権限管理された環境でRAG検索を行い、出力もアクセス制御する形が基本です。情シスが押さえるべきは、データの保存場所、学習への利用有無、監査ログです。

「現場が使わない」→ 便利さより“責任の所在”を先に解く

提案書は対外的な責任が伴うため、現場は「AIが書いた文章をそのまま出す」ことに抵抗があります。対策は、RAGの役割を下書き・根拠集め・抜け漏れチェックに寄せ、最終判断は人が行う前提を明確にすることです。また、出典が出る、要確認が明示される、レビュー観点が付く、といった「安心材料」を用意すると定着します。

運用を回すコツは、月1回でも「よく使う質問」「追加すべきナレッジ」「間違えた出力」を振り返り、ナレッジを増やすことです。RAGは一度作って終わりではなく、使うほど賢くなる社内の提案基盤として育てるものです。

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まとめ

営業資料・提案書の作成で時間がかかる本当の原因は、文章力よりも社内情報の探索と整合性確認にあります。RAGは、生成AIに社内ナレッジ検索を組み合わせることで、「探して、根拠を集めて、たたき台を作る」工程を短縮し、提案品質のブレも抑えます。

  • RAGは「社内情報に依存する提案書」に特に有効
  • 成功の鍵は、ナレッジの正本化、出典提示、更新運用
  • 小さく始め、テンプレ化して成果物の型を固定すると定着しやすい

もし「社内の資料は多いのに活用できていない」「セキュリティ章や価格前提の差し戻しが多い」「提案書作成の属人化を解消したい」と感じているなら、RAGは投資対効果が見えやすい選択肢です。まずは対象資料を絞り、出典が追える形で試作するところから始めてみてください。

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