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Next.jsのアップデートで「急にサイトが壊れる」理由
Next.jsは進化が速く、表示速度や開発体験が改善される一方で、アップデートのたびに挙動が変わることがあります。とくに業務サイトや採用サイト、会員サイトなど「止められないWeb」においては、軽い気持ちでの更新が大きな障害につながります。原因は大きく3つです。
- 破壊的変更(Breaking Change)が入りうる:設定やルーティング、ビルド周りの前提が変わり、今まで動いていた実装が動かなくなる
- 周辺ライブラリの連鎖:Next.jsだけでなくReact、Node.js、UIライブラリ、認証SDKなども一緒に更新され、互換性問題が起きる
- 本番環境が開発環境と違う:ホスティング(Vercel、AWS、社内サーバなど)や環境変数、Nodeのバージョン差で「手元ではOK」が発生する
情シスや発注側の立場では、これが「エンジニアの都合で頻繁に更新が必要」と見えがちです。しかし実態は、セキュリティ対応や保守性のために必要な更新があり、放置すると“ある日まとめて”高額な改修になるケースが多いです。だからこそ、Next.jsのアップデート運用は「属人対応」ではなく、ルールと手順で再現できる運用設計にしておくことが重要です。
本記事は、開発の専門知識がなくても判断できるように、Next.js(Next.jsアプリ/Next.jsプロジェクト)のアップデート方針、保守ルール、実務的なチェックリスト、外注・内製どちらでも使える進め方をまとめます。
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保守ルール作りの前提:何を守り、何を変えるか
アップデート運用で最初に決めるべきは「技術」よりも「守るべき業務」です。たとえば、ECなら決済、採用サイトなら応募導線、会員サイトならログイン、社内ポータルなら閲覧権限など、止められない機能があります。Next.jsの更新は、それらの業務リスクを下げるための活動として設計します。
ルール作りで押さえる観点は次の通りです。
- 更新の目的を分ける:セキュリティ対応/機能改善/将来の大型変更への備え(技術的負債の返済)
- 更新対象を棚卸し:Next.js、React、Node.js、主要ライブラリ(認証、CMS、決済、UI、フォーム、分析)
- 影響範囲の分類:見た目(CSS)/画面遷移/API連携/SEO(メタ情報、構造化データ)/表示速度
- 許容できる停止時間:夜間メンテ可か、無停止必須か、段階リリースが必要か
ここが曖昧だと、現場は「いつ更新するのが正解か」判断できません。逆に言えば、方針さえ決まれば、Next.jsのバージョンアップや依存関係更新は“手順化”できます。
発注側・情シス側としては、次のような合意が取れると運用が回りやすいです。
- 更新頻度:小さく定期(例:月1回の依存関係点検+四半期ごとの計画アップデート)
- 責任分界:誰が判断し、誰が作業し、誰が検収するか(社内/ベンダ/混成)
- 品質基準:「主要導線が動く」「フォーム送信ができる」「主要ページの表示速度が落ちない」など
Next.jsのアップデートは“やるかやらないか”ではなく、「いつ・どこまで・どの手順で」やるかを決めるプロジェクトマネジメントの話に落とし込むのがコツです。
Next.jsアップデートの基本方針:LTS感覚で「小さく頻繁に」
Next.jsはメジャーアップデートで仕様変更が入ることがあります。そこでおすすめなのが「半年〜1年放置して一気に上げる」のではなく、小さく頻繁に追従し、差分を小さく保つことです。差分が小さいほど、テストも修正も限定され、費用も読みやすくなります。
実務で採りやすい方針例を紹介します。
- 日常運用:DependabotやRenovateで依存関係の更新PRを自動生成し、月1回まとめて確認
- Next.js本体:マイナー/パッチ更新は月次、メジャー更新は四半期〜半期に計画して実施
- Node.js:ホスティング要件に合わせて、サポート期間が残っているバージョンへ計画移行
次に、更新の粒度を判断するための“ざっくりルール”です。
- パッチ更新:基本は早めに取り込む(バグ修正や軽微な改善が中心)
- マイナー更新:事前にリリースノート確認、ステージングでの動作確認を必須にする
- メジャー更新:影響調査→検証環境→段階リリースまでを計画に組み込み、工数見積もりを取る
注意したいのは、Next.jsの更新がReactや周辺の変更と連動することです。発注側は「Next.jsだけ更新すればよい」と思いがちですが、実際はNext.js更新に伴い、Reactのバージョン、ESLint設定、TypeScript、画像最適化、ルーティング方式などに影響が波及します。だからこそ、更新のたびに「何が変わるか」を記録し、再現できる形にしておくと、担当者が変わっても運用できます。
この方針がハマるのは、企業サイト・サービスサイト・業務Webなど、安定稼働が優先のケースです。新機能を最速で使いたい場合でも、いきなり本番に入れず、検証環境で安全に試すルールを敷くと事故を避けられます。
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破壊的変更に備える「実務ルール」チェックリスト
ここでは、Next.jsのアップデート運用を回すためのルールを、非エンジニアでもチェックできる形に落とし込みます。キーワードは「可視化」「自動化」「段階化」です。
ルール:リリースノートと影響調査を“作業”として定義する
Next.jsの更新は、まずリリースノート(変更点の説明)を読むところから始まります。ここを「読んだつもり」にすると事故が起きます。社内ルールとして、更新のたびに次を残すと良いです。
- 対象バージョン:現行→更新後(例:Next.js 14.x→15.x)
- 影響候補:ルーティング、画像、ミドルウェア、ビルド、環境変数、SEO関連
- 自社の該当箇所:App Router/Pages Routerのどちらか、SSG/SSR/API Routes有無など
技術的な詳細は開発者が書くとして、発注側・情シス側が確認すべきは「影響があるかもしれない項目が列挙されているか」です。列挙がない見積もりや作業計画は、後から追加費用になりやすい傾向があります。
ルール:検証環境(ステージング)を必須にする
本番だけで運用していると、Next.jsのアップデートが怖くなり放置が進みます。最低限、以下を用意してください。
- ステージング環境:本番と同等の設定で動く検証用サイト(URLを分ける)
- 本番相当データの代替:個人情報を含まない形で同じ構造のデータを使う
- 環境変数の管理:本番・検証で同じキーが揃い、差分が一覧化されている
ステージングがあると、Next.jsのバージョンアップを「まず検証で試す→OKなら本番」の流れにできます。これだけで、破壊的変更のリスクは大幅に下がります。
ルール:自動テストと“手動チェック表”をセットにする
理想は自動テストですが、すべてを自動化するのは現実的でない場合もあります。そこでおすすめは、開発チームの自動テストに加え、業務側が確認できる手動チェック表を用意することです。
- 手動チェック例:トップ表示、主要下層ページ、検索、問い合わせフォーム、ログイン、決済、管理画面の主要操作
- SEOチェック例:タイトル/ディスクリプション、OGP、構造化データ、noindex設定、サイトマップ出力
- 速度チェック例:体感が遅くなっていないか、画像が崩れていないか
Next.jsの更新は、表示速度改善のはずが設定ミスで遅くなることもあります。“正常”の定義をテストとして持つのが、保守ルールの肝です。
ルール:ロールバック(戻す手順)を先に決める
アップデートの最大の保険は「問題が起きたら元に戻せる」ことです。たとえばVercel等のホスティングなら前のデプロイへ戻す、AWSなら前のイメージへ戻す、社内サーバなら前のビルド成果物へ戻す、など方式は様々です。
非エンジニアでも確認できるポイントは、「戻すボタンがあるか」ではなく「戻した後にデータ不整合が起きないか」です。フォーム送信や注文が絡む場合、戻す手順と合わせて「影響範囲(どの時間帯のデータが要確認か)」を決めておくと、復旧が速くなります。
実装担当が作るべき“更新の型”:依存関係・CI・観測のセット
ここからは、外注・内製の実装担当者が押さえるべき運用の型を、発注側にも分かる言葉で整理します。ポイントは「更新作業をイベントにしない」ことです。Next.jsのアップデートを都度お祭り騒ぎにすると、担当者が疲弊し、結果的に放置されます。
依存関係更新を自動で起票する
DependabotやRenovateを使うと、Next.jsや関連パッケージの更新PR(更新提案)を自動で作れます。これにより、更新漏れや“気づいたら古い”を防げます。発注側としては、次を要件に入れるとよいです。
- 更新PRの頻度:毎週/隔週/月次など(通知が多すぎると形骸化するため調整)
- 重大更新の扱い:メジャーアップデートは自動マージ禁止、レビュー必須
- 変更内容の説明:PRテンプレートで「影響範囲」「確認手順」を自動で埋める
これにより、Next.jsのバージョンアップが「急に言われた緊急対応」ではなく、「定例のメンテナンス作業」になります。
CI(自動チェック)で“最低限の品質ゲート”を作る
CIとは、コード変更時に自動でチェックを走らせる仕組みです。Next.jsの更新では、少なくとも次があると安心です。
- ビルドが通るか:Next.jsのビルド・型チェック・Lint
- 主要テスト:最低限の画面テストまたはAPIテスト(難しければスモークテスト)
- セキュリティ:依存関係の脆弱性スキャン(高リスクのみブロックなど運用設計)
ここで大切なのは完璧を目指しすぎないことです。「落ちたら止まる」最小セットを作り、更新が積み上がるほど強くしていくのが現実的です。
監視・観測(エラーと速度)を更新運用に組み込む
アップデート後の障害は、ユーザーからの連絡で気づくのが最悪です。そこで、エラー監視と速度監視を入れます。具体的な製品名は環境により異なりますが、考え方は同じです。
- エラー:画面で発生する例外、APIエラー、ログイン失敗の増加など
- 速度:表示が遅くなったページ、画像やJSの読み込み増加
- アラート:閾値を決め、更新直後は通知を強める
Next.jsはパフォーマンス改善が売りのフレームワークですが、設定・依存関係・ビルド方法の変化で“逆に遅くなる”こともあります。更新後1週間は重点監視する、といったルールが有効です。
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外注・内製どちらでも失敗しない進め方(発注側の確認ポイント)
Next.jsのアップデート運用は、実装者の技量だけでなく、発注側の確認観点で成功率が変わります。ここでは、情シス・経営者・マネージャーが、専門知識がなくても使える確認ポイントをまとめます。
- 見積もりに「調査」が入っているか:破壊的変更の有無確認、影響範囲の洗い出し、検証計画
- 検証環境があるか:ステージングで動作確認→本番の順になっているか
- 検収条件が明文化されているか:手動チェック表、主要導線、フォーム、ログイン、SEO項目
- 戻す手順が合意されているか:ロールバックの方法、戻した場合の確認事項
- 担当交代に耐えるか:更新履歴、設定、環境変数、手順書が残るか
よくある失敗は「更新したら動かない→直す→また別が壊れる→納期が伸びる」というドミノです。これは、Next.jsのアップデートが悪いのではなく、更新の設計が“プロジェクト化”されていないことが原因です。
また、経営判断として押さえたいのがコストの考え方です。アップデートを放置すると、いずれ大きな移行(例:Next.jsのメジャー2回分+ReactやNodeの追従)が必要になり、テスト範囲も膨らみます。定期的に小さく更新する運用は、月々の保守費は発生しますが、結果として大きな障害・炎上・機会損失を避けやすくなります。
最後に、社内の合意形成で効く言い方を用意しておきます。Next.jsの更新は「新機能を追うため」だけではなく、セキュリティと事業継続のための保険です。情シスが主導し、定例のメンテ枠を確保できると、Web運用の安定度は一段上がります。
まとめ
Next.jsのアップデート運用は、技術の話でありながら、実際には「業務を止めないための運用設計」です。破壊的変更はゼロにできませんが、ルールと手順で影響を限定できます。
- 方針:小さく頻繁に更新し、差分を小さく保つ(Next.js・React・Node.js・周辺ライブラリを一体で管理)
- ルール:リリースノートの影響調査、ステージング必須、手動チェック表+自動テスト、ロールバック手順
- 運用の型:依存関係更新の自動起票、CIの品質ゲート、エラー/速度の観測
- 発注側の確認:調査が見積に含まれるか、検収条件が明確か、担当交代に耐えるドキュメントがあるか
「今は動いているから大丈夫」と思っている間に、Next.jsの更新差分は積み上がります。次のアップデートが怖くなった時点が、保守ルール作りの始めどきです。自社の体制に合わせた運用設計から整理したい場合は、現状の棚卸し(Next.jsバージョン、構成、ホスティング、更新頻度)から一緒に進めるのが近道です。
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