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Next.jsのトラブルは「現象」ではなく「層」で切り分ける
Next.jsの不具合は「画面が真っ白」「ビルドが落ちた」「リンクが404になる」といった“現象”として見えますが、原因はだいたい決まった層にあります。非エンジニアの方が開発会社や社内の情シスに相談する際も、原因の層を先に絞ると、調査コストと復旧時間が一気に下がります。
切り分けは次の4層で考えるのが実務的です。
- ビルド層:コードを成果物にする段階で失敗(依存関係、型、設定、Node.jsの差分など)
- 実行層:起動はするが動かない(ランタイム、API通信、SSR/CSR差分)
- 設定層:環境変数・外部サービス・ドメイン・リダイレクトなど運用設定が原因
- ルーティング層:ページ遷移、パス解決、配下の構成、キャッシュやCDNの影響
Next.jsは開発環境(ローカル)では動くのに、本番環境(Vercel/サーバー/コンテナ)でだけ壊れるケースが珍しくありません。これは、「環境が違う=入力条件が違う」ため、同じコードでも結果が変わるからです。まずは「どの層の問題か」を見極め、次に「どの環境で再現するか(ローカル/ステージング/本番)」を揃えます。
以降では、特に相談が多い「ビルド失敗」「環境変数」「ルーティング」を中心に、Next.jsのトラブルを短時間で原因に近づける方法を、非専門の方でも理解できる粒度で整理します。
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まず確認すべきチェックリスト(最短で“責任範囲”を確定する)
障害対応で一番損をするのは、情報が足りない状態で関係者がそれぞれ別方向に調べ始めることです。ここでは、Next.jsに限らずWebシステム全般で効く「最初の10分チェック」をまとめます。この情報が揃うだけで、外部の開発会社に依頼しても初動が速くなります。
何が、いつから、どこで起きているか
- 現象:ビルドが失敗/デプロイは成功したが画面が真っ白/特定URLだけ404、など
- 発生タイミング:「昨日のリリース後から」「特定の設定変更後から」
- 影響範囲:全ユーザーか、社内だけか、特定ブラウザだけか
- 再現性:毎回か、たまにか
環境の差分を1つずつ潰す
Next.jsはNode.jsや依存パッケージの影響を受けやすいので、最低限次を確認します。
- デプロイ先:Vercel / AWS / さくら / 自社サーバー / コンテナ(Docker)
- Node.jsのバージョン:ローカルと本番で一致しているか
- パッケージマネージャ:npm / yarn / pnpm の違い
- Next.jsのバージョン:アップデート直後の不整合がないか
ログを“3点セット”で集める
口頭の説明より、ログは圧倒的に強い証拠になります。最低でも次の3つがあると、原因切り分けが進みます。
- ビルドログ:CI/CDやVercelのBuild Logs
- 実行ログ:サーバーログ、Functionsログ、Runtime error
- ブラウザログ:開発者ツールのConsole/Network(情シスで確認可能)
ここまでが揃ったら、次は典型トラブルの「当たり所」に進みます。
ビルド失敗:Next.jsが“成果物を作れない”ときの原因トップと見分け方
Next.jsのビルド失敗は、「コードが壊れている」だけでなく、「環境が合っていない」「依存関係が揃っていない」「設定が矛盾している」など、運用寄りの原因も多いのが特徴です。“ローカルでは通るのに本番で落ちる”は、ビルド層の代表的な症状です。
よくある原因
- Node.jsバージョン差:本番が古くてビルドできない、逆に新しすぎて挙動が違う
- 依存関係の不整合:lockファイル未更新、npm/yarn/pnpmの混在
- TypeScript/ESLintがCIで厳格:ローカルでは警告扱いでもCIはエラー扱い
- 環境変数不足:ビルド時に参照する値が本番に無い(後述)
- App Router/Pages Routerの移行途中:設定・ディレクトリの整合が取れていない
非エンジニアでもできる“見分け方”
ビルドログの末尾に注目し、次のどれに近いかを分類します。分類ができると、依頼先がすぐ手を動かせます。
- 「Cannot find module」系:依存関係(インストール・lockファイル)問題の可能性が高い
- 「Type error」「TS」系:型チェックの失敗。バージョンアップで厳格化することも
- 「ENOSPC」「out of memory」系:ビルド環境のリソース不足(メモリ/ストレージ)
- 「ENV」「process.env」系:環境変数の不足/名前違い/参照タイミングの問題
現場で効く対処の方針(依頼時の指示例)
外部ベンダーや情シスに頼むときは、原因の“層”に応じて指示を出すと早いです。
- 環境の固定:Node.jsを指定し、CIも同じバージョンでビルドする
- 再現手順の統一:
npm ciなのかnpm installなのかを揃える - 品質ゲートの合意:ESLint/TypeScriptを「警告は許容」「エラーは停止」など運用ルール化
Next.jsのビルドは、いわば「製造ライン」です。製造ラインが止まると納品も止まります。“ビルドが通る状態を再現できる”ことが、最初のゴールです。
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環境変数:Next.jsで一番“見えない”設定ミスを潰す
環境変数は、APIキーや接続先URLなど「コードに書きたくない設定」を入れる仕組みです。一方で、Next.jsでは“いつ・どこで”環境変数が読まれるかが重要で、ここを誤ると「ローカルはOK、本番だけNG」が起きます。環境変数は、設定ミスがあっても画面上は静かに壊れるため、最優先で疑う価値があります。
まず押さえるべき前提(非エンジニア向け)
- ビルド時に必要な値:ビルド工程で参照される。デプロイ時に入っていないとビルド失敗になりやすい
- 実行時に必要な値:サーバー起動後に参照される。デプロイは成功しても動作時に落ちることがある
- ブラウザに渡る値:画面側(クライアント)で使う値は“公開される”前提で扱う必要がある
Next.jsでは、ブラウザ側で使ってよい環境変数には慣習(例:NEXT_PUBLIC_ で始まる)があります。これを間違えると「値がundefined」「API呼び出し先が空」などにつながります。
よくある事故パターン
- 名前の打ち間違い:本番側の変数名が1文字違う(大文字小文字も含む)
- 環境ごとの値の不一致:ステージングだけ古いURL、社内検証だけ別のID
- “設定したつもり”問題:Vercel等の管理画面で追加したが、再デプロイしていない
- 公開してはいけない値をフロントで使用:秘密鍵や管理者トークンを誤ってクライアントへ
- 改行・空白混入:証明書やJSONを貼り付けて末尾に空白が入る
切り分け手順(情シスが主導できる)
- 仕様の棚卸し:必要な環境変数一覧(名前、用途、環境別の値、秘密度)を表にする
- デプロイ先の設定確認:本番/ステージング/開発の各環境で差分を比較する
- 再デプロイ:環境変数変更後は必ず再ビルド・再デプロイが必要か確認する
- 影響範囲の確認:変更した値が「ビルド時」か「実行時」かを開発側に確認する
実務では「環境変数の一覧がない」ことが障害の長期化要因です。環境変数を“資産管理”すると、Next.jsのトラブル対応が属人化しにくくなります。
また、APIキーなどの秘密情報は、メールやチャットに貼り付けず、権限管理された保管庫(パスワードマネージャ、シークレット管理)で扱うのが安全です。
ルーティング:404・遷移不良・更新されない…の原因を整理する
ルーティングは「URLと画面の対応」を決める仕組みです。Next.jsでは構成によって挙動が変わり、特にApp RouterとPages Routerの混在・移行期に問題が出やすいです。“特定のページだけ404”は、ルーティング層の典型症状です。
よくある症状と原因の当たり
- 直リンクは404だが、トップから辿ると表示できる:ホスティング側のリライト設定、または静的配信の設定不足
- 本番だけ404:大文字小文字の違い(Linuxは区別されやすい)、ビルド成果物に含まれていない
- 古いページが表示される:CDN/ブラウザキャッシュ、ISR(段階的な再生成)の影響
- 動的ルートが想定と違う:パラメータの取り方、ルート定義の競合
“URLの正しさ”を先に確認する
業務で重要なのは「ユーザーがブックマークしたURL」「広告やメールに貼ったURL」です。まずは対象URLを列挙し、期待する画面が何かを決めます。そのうえで、次を確認します。
- 末尾スラッシュ:
/pageと/page/を統一しているか - 大文字小文字:
/Newsと/newsのどちらが正か - ベースパス:サブディレクトリ配下(例:
/app)運用の有無 - リダイレクト:旧URLから新URLへの転送が定義されているか
ルーティング問題を早く潰すための運用ポイント
Next.jsのルーティングは開発側の都合で変わりがちですが、ビジネス的にはURLは資産です。URL設計と変更ルールを先に決めることが、障害とSEOの両方を守ります。
- URL変更時は必ずリダイレクト:旧URLのアクセスを失わない
- 404監視:Search Consoleやログで404を定期確認
- キャッシュ戦略の合意:更新頻度の高いページはキャッシュ設定を慎重に
特に「更新したのに反映されない」は、Next.js特有というよりCDNやキャッシュ層の影響であることも多いです。ルーティングの問題に見えて、実は配信設定の問題というケースもあるため、次の章の“再現環境の作り方”が重要になります。
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再現できない不具合に効く:本番に近い検証と“差分の見える化”
相談で多いのが「担当者のPCでは直らない」「一部の社員だけ起きる」「特定の時間帯だけ遅い」といった“再現しない不具合”です。Next.jsは、ビルド結果・キャッシュ・環境変数・外部APIなど複数要因が重なるため、原因を当てにいくのではなく、差分を減らして再現性を作るのが王道です。
本番同等のステージングを用意する
ステージング(検証環境)がない場合、障害対応が「本番で試す」になりがちで、リスクが高くなります。最低限、次を揃えると切り分けが劇的に楽になります。
- 同じホスティング:本番と同じVercelプロジェクト構成、または同等のサーバー構成
- 同じNode.jsと依存:ビルド・実行の差分をなくす
- 環境変数を“本番のコピー”から開始:必要なものだけ安全に差し替える
- 外部APIの検証用:本番データに触れない検証アカウント
「いつ変わったか」を追えるようにする
不具合対応は結局、直前に何が変わったかが重要です。変更履歴が追えると、原因が候補として浮かびます。
- 変更の種類:コード変更、依存パッケージ更新、環境変数変更、DNS/CDN設定変更
- 変更者:担当者、ベンダー、情シス、外部運用
- 変更時刻:障害発生と相関があるか
特にNext.jsは、依存パッケージやNode.js更新で急にビルドが通らなくなることがあります。「いつ」「何を」更新したかが残る運用(リリースノート、チケット、PR)にしておくと、障害が短期で収束します。
ベンダーに渡すと喜ばれる情報
- 対象URL一覧:404や遷移不良が起きるページのリスト
- 発生条件:ログイン有無、特定ロール、特定ブラウザ
- ログ一式:ビルドログ、実行ログ、ブラウザConsole/Networkのスクリーンショット
これらが揃うと、調査が「推測」ではなく「検証」になります。結果として、復旧も恒久対策も早くなります。
トラブルを減らす運用設計:Next.js導入・保守で押さえるべきポイント
Next.jsはスピード感のある開発に向きますが、その分「運用の型」がないとトラブルが増えます。特に、予算はあるが専門人材が少ない組織では、技術力より“運用の仕組み”で安定性が決まることが多いです。
最低限決めたいルール
- 環境変数の台帳:名前、用途、所有者、更新手順、秘密度
- リリース手順:誰が、どこで、何を確認してから本番へ出すか
- 監視と通知:ビルド失敗、エラー率、404、外部API障害の検知
- 障害時の連絡網:一次対応、ベンダー連絡、意思決定者
“よくある落とし穴”への先回り
- 権限が分散:ホスティング・DNS・リポジトリの管理者が別々で、復旧が遅れる
- 担当者依存:特定の開発者しか環境変数やルーティングを把握していない
- ステージングなし:本番で試して事故が拡大する
運用設計は地味ですが、ここを整えると「障害が起きない」だけでなく、SEOや広告の成果にも影響します。例えば、ルーティング変更時に適切なリダイレクトができれば、検索流入の損失を防げます。Next.jsは“作る”だけでなく、“守る”設計が成果を左右します。
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まとめ
Next.jsのトラブル対応は、闇雲に調べるよりも「どの層の問題か」を先に決めるのが近道です。特に多いのは、ビルド失敗(製造ラインの停止)、環境変数(見えない設定ミス)、ルーティング(URL資産の崩れ)です。ログ(ビルド・実行・ブラウザ)と環境差分を揃えるだけで、原因特定は一気に進みます。
- ビルド失敗:Node.js/依存/品質ゲート/設定の不整合を疑い、ログ末尾で分類する
- 環境変数:一覧表で管理し、ビルド時・実行時・公開範囲を整理する
- ルーティング:URLを資産として扱い、404監視とリダイレクトを運用に組み込む
社内に専門家がいない場合でも、切り分けの型があれば、情シスや外部ベンダーと短時間で同じ地図を持てます。もし「ステージングがない」「環境変数が属人化している」「本番だけ壊れる」が続くようなら、運用設計から見直すのが効果的です。
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