「Glideで社内アプリを作りたいけれど、あとから“できない”が発覚して作り直しになったら困る」──中小企業の現場では、この不安が一番の障壁です。Glideは、スプレッドシートやデータベースを元に業務アプリを素早く作れるノーコードツールとして有名ですが、万能ではありません。得意領域を外すと、要件を満たせずに時間とコストを失う可能性があります。
この記事では、専門知識に詳しくない経営者・営業マネージャーの方でも判断できるように、Glideでできないこと(できても不向きなこと)を業務シーンに即して整理します。さらに「代替案(運用で回避・別ツール併用・開発に切り替える基準)」まで踏み込み、導入前のチェックリストとして使える形にしました。Glide(グライド)を検討中の方は、まずここで地雷を避けてください。
Contents
Glideの前提:得意なこと・向いている業務
Glideの「できないこと」を正しく理解するには、まず前提としてGlideが得意なことを押さえる必要があります。Glideは、社内の“ちょっとした業務アプリ”を短期間で作るのに強いツールです。たとえば、営業の訪問記録、問い合わせ管理、見積もり状況の共有、在庫の簡易管理、店舗のチェックリスト、日報、簡単な申請フローなど「入力→一覧→検索→集計→共有」が中心の業務に向きます。
特に中小企業では「Excelが散らばっている」「担当者ごとに管理がバラバラ」「共有フォルダの最新版が分からない」といった課題が起きがちです。Glideはこの“散らかった情報”を、スマホでも見やすいアプリに整えやすいのが魅力です。さらに、フォーム入力、写真添付、簡易な権限設定、通知、外部サービス連携などを使い、現場の運用を一段引き上げられます。
一方で、Glideは「業務システム全般を置き換える」ための万能ツールではありません。多人数同時利用での複雑な更新、厳格な監査ログ、基幹システム級のデータ整合性、重い計算や複雑な会計ロジック、特殊なUIなどは苦手になりやすいです。つまり、Glideは“業務の中心に据える大規模システム”よりも、“現場の手間を減らす業務アプリ”で力を発揮します。
この前提を踏まえ、次章から「Glideでできないこと/やると後悔しやすいこと」を具体的に見ていきます。読む際は「自社の業務で、どれが必須要件か」を意識してください。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
Glideでできないこと(または不向きなこと)一覧
ここでは、導入後に「想定と違った」となりやすいポイントを、業務要件に落として整理します。結論から言うと、Glideで“完全にできない”というよりも、「できても運用上つらい」「設計が複雑になり保守できない」という形で失敗します。
複雑な権限・承認フロー(役職/拠点/案件ごとの細かい制御)
Glideにはユーザーごとのアクセス制御や表示制御の仕組みはありますが、たとえば「拠点Aの人は拠点Aの案件だけ編集可能」「マネージャーだけ承認ボタンが出る」「承認後は経理のみ修正可能」「差戻し時は理由必須」など、段階的で例外の多い承認フローを作ると、条件式が増えすぎて破綻しやすいです。承認履歴の改ざん防止や監査にも限界が出ます。
基幹システム級の厳格なデータ整合性(会計・請求・在庫の正確性)
請求書発行、仕訳、締め処理、棚卸などは「間違えたら損失になる」領域です。Glideで近いことは作れても、トランザクション管理(途中失敗時の巻き戻し)、複雑な制約(同時更新の競合防止)、監査ログ、改ざん耐性など、基幹システムに求められる堅牢性は確保しづらいです。特に在庫は「同時に複数人が出庫入力」するだけでズレが起きやすく、運用設計の難易度が上がります。
高度な帳票出力(自由なレイアウトのPDF、複雑な見積/納品/請求の様式)
現場でよくあるのが「取引先指定のフォーマットで印刷したい」「会社のロゴ・押印欄・明細の改ページ・税率の表示を細かく調整したい」というニーズです。Glideは“アプリ内の表示”は作りやすい一方、印刷・PDF帳票の自由度は制約が出やすいです。外部サービス連携で回避できる場合もありますが、帳票が事業の生命線なら専用設計が安全です。
複雑な計算・最適化・AI推論をアプリ内で完結
「配送ルート最適化」「在庫の需要予測」「見積単価の自動算出(複雑な条件)」「画像判定のAI」など、計算量が多い処理をGlide単体で完結させるのは難しいです。外部APIや別のAIサービスに処理させ、結果をGlideに戻す構成は可能ですが、設計と運用が“ノーコードの範囲”を超えます。Glideはあくまで業務の入口・画面・データの器と捉え、重い処理は外出しが基本です。
複雑なUI/UX(独自の画面遷移、細かい入力補助、ドラッグ&ドロップ等)
「見積作成をExcelのようにサクサク」「入力中にリアルタイムでエラーを細かく表示」「ドラッグ&ドロップで並べ替え」「複数ウィンドウを使った作業」など、作り込みUIはGlideが苦手です。用意されたコンポーネントの範囲で素早く組むのが強みなので、UIが競争力(顧客向けアプリ等)になる場合は、Web開発やネイティブアプリのほうが向きます。
オフライン前提の業務(圏外でも入力して後で同期)
建設現場・倉庫・屋外作業など、通信が不安定な環境では「オフラインでも入力したい」という要望があります。Glideは基本的にオンライン利用を前提とするため、オフラインでの完全な業務継続は難易度が上がります。現場利用が中心の場合は、通信環境・端末・運用(電波がある場所でまとめて入力)まで含めて検討が必要です。
大量データ・高頻度更新・多数同時アクセス
「顧客10万件」「明細100万行」「秒単位で更新」「同時に数百人が入力」などになると、表示・検索・更新の体感速度や制限、コスト面が課題になりやすいです。中小企業の現場アプリではそこまで大きくないことが多い一方、将来的に全社展開し“日々増えるデータを何年も貯める”場合は、早めにデータ基盤(外部DB)や分割設計を考えるべきです。
厳格なセキュリティ・法規制対応(監査、医療/金融レベル)
Glideにも基本的なセキュリティ機能はありますが、業種によっては「監査証跡の厳密さ」「アクセスの多層防御」「データ保持ポリシー」「規制要件」などが求められます。医療・金融・公共など、要件が厳しい領域は、ツール選定時点で専門家の確認が不可欠です。社内利用でも、個人情報・契約情報を扱うなら権限設計と運用ルールを先に決めることが重要です。
「できない」を回避する現実的な代替案(併用・設計・開発の切り替え)
Glideでできないことが見つかったとき、すぐに諦める必要はありません。多くの場合、現実的な落としどころは「Glideを捨てる」ではなく、Glideを“現場の画面”として活かしつつ、弱い部分を補うことです。ここでは代表的な代替案を3つ紹介します。
代替案1:運用で割り切る(要件を軽くする)
例:厳密な承認フローをやめ、「申請→承認」はGlide上でステータス管理し、最終承認は別途メール通知+管理者確認にする。請求は会計ソフト側を正とし、Glideは“請求予定の一覧”に留める。これは、導入スピードを優先する中小企業で現実的な選択です。
代替案2:外部サービス連携で補う(帳票・自動処理・通知)
例:PDF帳票は外部の帳票サービスや自動生成サービスで作成し、Glideにはリンクだけ持たせる。複雑な計算はクラウド関数やスクリプト側で実行し、結果をGlideに返す。通知や承認はチャットツールと連携する。Glideは入口のUIとして活かし、背後に“仕組み”を置く考え方です。
代替案3:最初からシステム開発に切り替える(作り直しを防ぐ)
もし「帳票が必須」「在庫の正確性が必須」「監査が必須」「複雑な権限が必須」など“外せない要件”があるなら、Glideでの回避策は結局コスト増になります。早い段階でWebシステムとして設計したほうが、運用負荷もリスクも下がります。特に、社外ユーザー向けサービスや売上に直結する業務は、ノーコードで無理をしない判断が重要です。
ポイントは「何をGlideに任せ、何を外に出すか」を最初に決めることです。中途半端に作り始めると、後から要件が膨らみ、複雑な条件式・例外処理・データ構造の継ぎ足しで保守不能になります。経営者としては、“作れるか”ではなく“回せるか”で判断してください。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
導入前に確認したいチェックリスト(経営者・営業マネージャー向け)
ここからは、会議でそのまま使えるように「Glideで後悔しないための事前チェック」を質問形式でまとめます。すべてにYESが必要ではありませんが、重要な項目でYESが多いほど、Glide単体での実現は難しくなります。
- 帳票(見積・納品・請求)のレイアウトが取引先指定で厳密:YESなら、帳票周りは別途仕組みが必要になりやすい。
- 在庫・請求など、数字のズレが許されない:YESなら、基幹側を正とし、Glideは補助にする設計が安全。
- 承認フローが複雑(役職、拠点、金額、例外が多い):YESなら、要件を削るかワークフロー専用の仕組みを検討。
- オフライン環境での入力が必須:YESなら、運用や別アプリを含め再検討。
- データが年単位で膨らみ続ける(数万〜数十万件以上):YESなら、外部DBやアーカイブ設計を前提に。
- 社外ユーザーにも提供し、UI/UXが差別化要因:YESなら、Web/アプリ開発を視野に。
- 個人情報・契約情報などセンシティブなデータを扱う:YESなら、権限設計・運用ルール・監査方針を先に決める。
また、導入可否は「機能」だけでなく「体制」でも決まります。Glideはスピードが出る反面、現場主導で作れるために“属人化”が起きやすいです。最低限、①アプリ責任者(業務側)、②運用ルール(変更申請・テスト・公開手順)、③データ設計の責任者(IT側または外部)を決めると失敗確率が下がります。作った瞬間より、運用が始まってからが本番です。
よくある失敗パターンと、最初にやるべき設計
Glide導入でよくある失敗は「作れるから作った」結果、現場で回らなくなるケースです。特に多いパターンを3つ挙げます。
失敗1:Excelの見た目をそのまま再現しようとする
GlideはExcelのような自由な表計算UIを再現するツールではありません。無理に近づけると入力動線が悪化し、結局Excelに戻ります。最初は「入力フォーム→一覧→詳細→集計」というGlideが得意な形に業務を寄せるほうが成功しやすいです。
失敗2:例外処理を最初から全部盛りにする
「この場合はA、ただしBのときはC…」を最初から全部入れると条件式が雪だるま式に増えます。まずは“80%の通常業務”を回す最小機能で開始し、例外は運用で吸収しながら必要なものだけ追加するほうが、結果的に短期で安定します。
失敗3:データ構造を考えずに画面から作り始める
Glideでは画面を作りながらデータを足せてしまうため、列が増えすぎ、同じ情報が複数箇所に存在し、後で整合が取れなくなります。最初にやるべきは「データの正(マスタ)を決める」ことです。顧客、案件、商品、担当者、ステータス、履歴…どれを1つの正にするか決め、重複を避けます。データ設計が良いアプリは、画面を増やしても壊れません。
もし社内に設計できる人がいない場合は、最初の1回だけでも外部に壁打ちする価値があります。「Glideで作る」自体は簡単でも、「壊れない業務アプリにする」には設計が要るからです。短期で作って長期で回すために、最初の設計に投資してください。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
まとめ
Glideは、現場の業務アプリを素早く作れる強力なノーコードツールです。しかし、導入後に後悔しないためには、Glideでできないこと(または不向きなこと)を先に把握し、要件の優先順位を決める必要があります。
- 複雑な権限・承認、基幹レベルの厳密性、帳票の自由度、重い計算、作り込みUI、オフライン前提、大量データ・高負荷、厳格な規制対応は苦手になりやすい
- 回避策は「運用で割り切る」「外部サービス連携」「最初から開発に切り替える」の3方向で考える
- 成功のカギは、画面より先に“データ設計”と“運用ルール”を決めること
「Glideでどこまでいけるか」を見極められれば、ノーコードのスピードを活かしながら、作り直しを防げます。自社の必須要件がどこにあるか不安な場合は、要件整理の段階で第三者に相談するのが近道です。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
コメント