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Geminiで「コンプラ整理」を始める前に押さえる全体像
AIを業務に入れるとき、現場で最初につまずくのは「何がOKで、何がNGか」が曖昧なまま進んでしまうことです。特に個人情報、社内のルール(社内規程)、取引先との約束(契約)の3点は、担当者の感覚だけで判断するとブレが出ます。そこで役立つのが、GoogleのGeminiを「整理役」「チェックリスト生成役」として使い、社内の意思決定を早く・正確にするやり方です。
ここで重要なのは、Geminiに“判断そのもの”を任せないことです。Geminiは、資料を読みやすくまとめたり、抜け漏れの観点を洗い出したり、社内向けの説明文を整えたりするのが得意です。一方、法的な最終判断、契約解釈の確定、リスク受容の決裁は人(法務・情シス・責任者)が行う前提にすると安全に進みます。
この記事では、開発に詳しくない情シスや総務・管理部門でも実行できるように、以下の流れで「コンプラ整理」を進める実務手順をまとめます。
- まず何を集めるべきか(社内規程・契約・個人情報の棚卸し)
- Geminiに何をさせると効率が上がるか(要約、抽出、分類、チェック観点の生成)
- どんな入力(プロンプト)だと危険か、どう回避するか
- 最後に社内文書として整える(ガイドライン・手順書・承認フロー)
ゴールの定義:「AI利用を止める」ではなく、「安全に使える範囲を言語化し、現場が迷わない状態」を作ることです。
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準備:個人情報・社内規程・契約を「AI利用の観点」で棚卸しする
Geminiを活用する前に、入力情報(インプット)として何を用意するかで成果が決まります。コンプラ整理の棚卸しは、難しく考えずに「AIに関係しそうな資料」をまず集め、後から整理するのがコツです。ここでは3カテゴリで集めます。
個人情報(個情法・プライバシー)関連
顧客名簿、問い合わせフォーム、採用応募、従業員情報、サポート履歴など、氏名・メール・電話だけでなく、ID、端末情報、音声、画像、位置情報、組み合わせで個人が推定できるデータも対象です。AI活用では「Geminiに貼り付ける」「ファイルをアップロードする」「ログに残る」行為が起点になりやすいため、どの業務でどのデータを扱うかを先に一覧化します。
社内規程(セキュリティ・情報管理・端末利用など)
情報セキュリティ規程、個人情報取扱規程、クラウド利用規程、持ち出し・端末利用、パスワード、委託先管理、インシデント対応などを集めます。最新版がどれか、改定履歴、主管部門(情シス・総務・法務)も一緒にメモしておくと、後で合意形成が速いです。規程の文章は長く読みづらいことが多いので、Geminiでの要約・条項抽出が特に効きます。
契約(取引先・委託・SaaS)
秘密保持契約(NDA)、業務委託契約、個人情報取扱条項、データ処理契約(DPA)、SaaSの利用規約、セキュリティ付属書などを集めます。AIに関する条項が明示されていなくても、秘密情報の定義、再委託、目的外利用禁止、国外移転、ログ・監査、事故時報告などが影響します。「AIに入れる=第三者提供・再委託扱いになる可能性」があるため、契約観点は早めに押さえます。
棚卸しの最小セット:「扱うデータ(個人情報)」「守るルール(社内規程)」「外部との約束(契約)」の3つが揃うと、Geminiでチェック観点を作りやすくなります。
Geminiの使い方:コンプラ整理に効くタスクと「やらせない」タスク
Geminiは文章理解と構造化が得意です。つまり「規程や契約を読んで、要点を抜き出して、比較して、社内向けに分かりやすく言い換える」作業に向いています。一方で、法的結論を断定させたり、機密情報・個人情報をそのまま投入したりするのは避けるべきです。ここでは現場で役立つタスクを具体化します。
Geminiに任せると効果が高いタスク
- 要約:社内規程や契約書を「AI利用に関係する部分だけ」短くまとめる
- 条項抽出:秘密情報、個人情報、再委託、ログ、監査、事故報告、データ保存期間などの該当箇所を抜き出す
- 比較表作成:複数契約・複数規程の差分を表形式の素案にする(最終確認は人)
- チェックリスト化:業務フロー別に「入力して良い情報/ダメな情報」「承認が必要なケース」を箇条書きにする
- 社内説明文の作成:現場向けのFAQ、研修スライドの叩き台、稟議書の論点整理
Geminiにやらせない(または慎重に扱う)タスク
- 「このケースは合法/違法です」といった断定的な法判断
- 顧客名、社員番号、取引先名、契約金額などの機密情報の貼り付け
- 契約書全体をそのまま投入して「問題ある?」と丸投げ(情報漏えい・解釈ミスの両リスク)
実務では「原文は社内で管理し、Geminiには必要最小限の抜粋・匿名化テキストだけを渡す」運用が現実的です。たとえば契約の相手先名を「A社」、サービス名を「SaaS X」に置き換えるだけでも扱いやすくなります。入力データを整えること自体がコンプラ対策だと考えると、導入がスムーズです。
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個人情報の観点:Gemini利用時の「入力禁止」基準を作る
個人情報で一番起きやすい事故は、「便利だから」と問い合わせ文や顧客メールを丸ごとGeminiに貼り付けてしまうことです。特に情シスが全社展開する場合、現場は善意でやってしまいます。そこで、まずは分かりやすい入力基準(社内ルール)を作ります。
入力を原則禁止にする情報の例
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、口座、免許証番号などの直接識別子
- 社員番号、顧客ID、チケット番号など、社内で個人に紐づく識別子
- 健康・給与・評価などのセンシティブ情報
- 問い合わせ内容に含まれる個人の状況(病歴、家族構成、トラブル詳細等)
一方で、業務改善としてGeminiを使いたい場面も多いはずです。その場合は「匿名化・要約してから入力する」「テンプレ化した分類だけを依頼する」などの代替策を用意します。たとえばサポート対応の改善なら、個別メール本文ではなく、担当者が要点を抽象化した箇条書きをGeminiに渡し、返信文のトーンや構成だけを整える形にします。
Geminiに渡す前の「匿名化」手順(現場向け)
- 氏名・会社名・住所・電話・メールを削除し、置換する(例:山田太郎→顧客A)
- 番号やIDは末尾だけ残すなど、個人に戻れない形にする
- 日時・場所・固有の経緯が特定につながる場合は範囲表現にする(例:2026/2/1→2月上旬)
- それでも迷うときは入力しない(上長・情シスに相談)
運用の要点:「入力禁止リスト」だけだと現場が止まるので、「代替のやり方(匿名化・要約・テンプレ)」をセットで提示すると定着します。
また、Geminiの利用形態(ブラウザ、Workspace連携、拡張機能、APIなど)で、データの扱い・管理機能が変わることがあります。ここは契約・設定に依存するため、社内の利用環境に合わせて「誰が・どの環境で・何を入力してよいか」を1枚に整理し、都度見直せる状態にしておくのが現実的です。
社内規程の観点:既存ルールを「AI利用ガイド」に翻訳する(Geminiで時短)
多くの会社は既に情報管理・セキュリティの規程を持っています。ただし、その規程が「AI利用」を前提に書かれていないため、現場が読んでも判断できないのが問題です。そこで、既存の社内規程を捨てるのではなく、AI利用に必要な部分だけを抜き出し、現場で使えるガイドに翻訳します。この翻訳作業でGeminiが特に役立ちます。
Geminiで作ると便利な社内ドキュメント
- AI利用ガイド(OK/NG例、判断フロー、承認が必要なケース)
- プロンプト入力ルール(入力禁止情報、匿名化の手順、ログ取り扱い)
- 部門別FAQ(営業・サポート・人事・経理など)
- インシデント時の一次対応(誰に連絡、何を止める、何を記録)
ポイントは、規程の言葉をそのまま引用しても現場は動けないことです。「秘密情報を第三者に開示してはならない」と書いてあっても、現場は「Geminiに貼るのは開示なの?」で止まります。そこで、Geminiに規程文の抜粋を渡し、次のような形式に言い換えさせると実務に落ちます。
あなたは社内向けITガイドの編集者です。
以下の規程抜粋を、非エンジニア向けに書き換えてください。
要件:
- 「AI(Gemini)に入力する行為」を想定した具体例を追加
- OK例/NG例を各3つ
- 迷ったときの相談先と判断手順を追記
- 断定しすぎず、最終判断は主管部門と明記
(ここに規程の該当箇所を匿名化して貼る)
このやり方だと、規程の趣旨を保ちながら現場向けに落とし込めます。さらに、複数の規程(セキュリティ規程、持ち出し規程、委託先管理など)にまたがる場合は、Geminiに「矛盾して見える点」「追加で決めるべき点」も洗い出させると、改定の論点整理が一気に進みます。規程改定の前段として“解釈の統一”を作るのが狙いです。
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契約の観点:NDA・業務委託・SaaS利用規約をGeminiでチェックする手順
契約まわりは「相手がいる」ため、社内だけで完結しないのが難しさです。特に取引先から受け取った情報(秘密情報)や顧客データを、Geminiのような外部サービスに入力する行為は、契約上の制約に触れる可能性があります。ここでは、契約をGeminiで効率的に点検するための現実的な手順を示します。
手順:契約チェックを「論点抽出→確認→合意」に分解
- 論点抽出:契約書のうちAI利用に関係しそうな条項(秘密保持、目的外利用、再委託、データ保管、国外移転、監査、事故報告)を抜粋する
- Geminiで整理:抜粋を渡し、「AI入力に該当しうる行為」「許可が必要そうな点」「社内運用で回避できる点」を箇条書き化する
- 人が確認:法務・情シスが原文で確認し、社内の運用(匿名化、利用禁止範囲、承認フロー)に反映する
- 相手と合意:必要なら覚書・運用合意・セキュリティチェックシートで取り決める
Geminiへ入力する際は、契約書全体を渡さず、該当条項だけを最小限で渡すのが基本です。相手先名や製品名は置換し、金額や固有条件は伏せます。その上で次のように依頼すると、チェック観点が揃います。
あなたは企業の法務・情シスの補助担当です(最終判断はしない)。
以下の契約条項抜粋について、生成AI(Gemini)利用の観点で論点を整理してください。
出力形式:
- 重要論点(箇条書き)
- 社内運用で回避できること(例:匿名化、入力禁止、要約のみ)
- 相手方に確認すべき質問案(5〜10個)
- リスクの高い行為の例
(ここに条項抜粋:秘密情報、再委託、データ保存、監査、事故報告 など)
相手方に確認すべき「質問テンプレ」例
- 当社が貴社提供情報を要約・分類する目的でGeminiを使用することは、第三者提供や再委託に該当しますか
- 個人情報を含まない形(匿名化・統計化)でもAI入力は制限対象ですか
- ログ保存や学習利用の取り扱いに関して、許容条件はありますか
- 当社内での利用範囲(部門・権限)に条件はありますか
これらを先に用意しておくと、法務の確認が速くなり、取引先とのやり取りも整理されます。結果として、AI活用を止めずに「守るべき約束」を明確化できます。契約は“禁止事項探し”ではなく“条件の言語化”と捉えると進めやすいです。
導入後に事故を減らす運用:チェックリスト・承認フロー・監査ログ
コンプラ整理は、文書を作って終わりではありません。運用に落とさないと「最初だけ守って、半年後に形骸化」が起きます。特にGeminiのようなAIツールは便利なので、ルールが弱いと現場が自己流で使い始めます。そこで、最小の運用セットを作ります。
現場が迷わないチェックリスト(例)
- 入力内容に個人情報(氏名・連絡先・ID)が含まれていない
- 取引先から受け取った秘密情報をそのまま入力していない
- 契約で第三者提供・再委託が禁止されていないか確認した
- 目的は「文章整形・要約・分類」など限定的で、機微な判断は人が行う
- 迷ったら入力しない、主管部門に相談する
承認フローを作る(軽量でOK)
すべての利用に承認を必須にすると現場は使えません。おすすめは「ハイリスクだけ承認」です。たとえば、顧客データを扱う業務、契約上の制約が強い案件、社外公開物(プレス・採用・IR)の生成などは事前確認にし、それ以外はチェックリスト運用にします。止めるのではなく、リスクに応じて手続きを変えるのがポイントです。
教育とログ(最低限)
研修は長時間でなくて構いません。「入力禁止の具体例」「匿名化のやり方」「困ったときの相談先」の3点を、部署別の実例で短く伝えるのが効果的です。あわせて、組織としては「誰が、どの用途でGeminiを使っているか」を把握できる形にしておくと、事故時の切り分けができます。ログの取り方は環境により異なるため、情シス側で現実的な方法(申請制、チーム単位の管理、利用状況の定期アンケートなど)を選びます。
定着のコツ:ガイドラインは1回で完璧を目指さず、月次・四半期で「ヒヤリハット」「質問の多い点」を追記して育てると、運用が強くなります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
Geminiは、社内規程・契約・個人情報のルールを「読みやすく整理し、現場が使える形に翻訳する」作業で大きな力を発揮します。一方で、個人情報や機密情報をそのまま入力したり、法的判断を丸投げしたりするとリスクが跳ね上がります。そこで、棚卸し→論点抽出→社内ガイド化→運用(チェックリストと承認)の順に進めるのが安全で現実的です。
まずは、(1)入力禁止基準(個人情報・秘密情報)、(2)契約で確認すべき条項、(3)現場向けの匿名化手順、の3点を最小セットとして整備し、Geminiで要約・抽出・FAQ化を進めてください。迷いが減るほど、AI活用は加速し、同時にコンプライアンスも強くなります。
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