Contents
結論:Geminiは「設定と運用次第」で安全性が大きく変わる
Geminiを業務に取り入れたい一方で、「社内の機密情報が漏れないか」「入力した内容が学習に使われないか」「監査で説明できるか」が不安な情シス担当者や管理職は多いはずです。結論から言うと、Geminiは適切な契約形態・設定・運用ルールを選べば、一定の安全性を担保して活用できます。ただし、個人向けの利用感覚のまま社内導入すると、意図せずリスクを増やす点が最大の落とし穴です。
まず押さえるべきは、生成AIのリスクが「AIが勝手に社内データへ侵入する」ことではなく、主に次の3つに集約されることです。
- 入力(プロンプト)由来の漏えい:社員が機密情報・個人情報をそのまま入力してしまう
- 出力物の取り扱い:AIの回答を社外へ転送・資料に貼り付け、誤情報や著作権・機密の混入が起きる
- 権限と記録の不備:誰が何を入力したか追えない、退職者のアカウントが残る、共有PCで使い回す
つまり「Geminiが安全か?」という問いは、正確には「自社の使い方は安全か?」に置き換えるのが実務的です。本記事では、開発の専門知識がなくても確認できる観点として、①契約とデータの扱い、②管理者設定、③入力ルール、④運用(監査・教育・ログ)まで、機密情報を守るためのチェックポイントを体系的に整理します。社内稟議やセキュリティレビューで説明できるよう、実務で使える言い回し・例も交えて解説します。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
まず確認するポイント:無料版・個人利用と業務利用は別物
Geminiを安全に使うには、どの提供形態を使っているかを最初に切り分ける必要があります。多くのトラブルは、社員が個人のGoogleアカウントでGeminiを使い、業務情報を入力してしまうことで起きます。「個人で試す」と「会社として運用する」は、データの扱いと管理の有無がまったく違うためです。
業務利用で押さえるべき確認項目は次の通りです(難しい言葉は避け、実務上の意味に落とします)。
- 入力内容が学習に使われる可能性:個人向け・公開向けのサービスでは、改善目的で会話データが利用されることがあります。業務利用では「学習に使われない」条件のプランや設定を選び、社内ルールにも明記します。
- 会社が管理できるか:ユーザー追加・停止、2要素認証、端末制限、ログ確認など、管理者がコントロールできる環境(Google Workspace等)に寄せるのが基本です。
- データの保管場所・取り扱い:会話履歴がどこに残るのか、共有されるのか、消せるのか。監査やインシデント対応で重要になります。
- 連携機能(Drive/Gmail等)の挙動:便利な反面、権限が緩いと情報が引き出されやすくなります。「何にアクセスできる設定か」を最小化します。
情シスとしては、導入前に「社内で許可するGeminiの利用形態」を一本化するのが現実的です。例としては、(1)個人アカウントでの利用は禁止、(2)業務は会社管理のアカウントのみ、(3)機密データは入力禁止、(4)特定部署のみ段階導入、といった形です。社内に複数の使い方が混在すると、教育も監査もできなくなります。
また、生成AIはセキュリティだけでなくコンプライアンスにも関わります。個人情報、取引先の秘密保持、契約書の取り扱い、著作物の引用など、社内規程と紐づけて説明できるようにしておくと稟議が通りやすくなります。
機密情報を守るための「データ分類」と入力ルール(ここが最重要)
Geminiに限らず、生成AIの安全対策で最も効果が高いのは「何を入力してよいか」を決めることです。どれだけ高度な設定をしても、社員が顧客名簿や未公開の売上データをそのまま貼り付ければ事故になり得ます。そこで、開発知識がなくても運用できるよう、情報を3段階に分類し、入力可否を明確化します。
おすすめの分類例は以下です(自社の規程に合わせて言い換えて構いません)。
- レベルA(公開情報):自社Webに掲載済み、公開済みのプレスリリース、一般的な用語解説など。Geminiへの入力可。
- レベルB(社内限定だが機密度低〜中):一般化した業務手順、匿名化したFAQ、部署名をぼかした課題整理など。条件付きで可(個人名・顧客名・金額などを削除)。
- レベルC(機密・個人情報・契約秘密):顧客台帳、未公開の財務、ソースコード、設計書、契約書原本、個人情報。原則入力禁止。
「でも、それだと仕事に使えないのでは?」という懸念には、入力の工夫で対応できます。例えば「顧客名をA社/B社に置換」「金額はレンジ化」「固有名詞を削る」「要点だけ箇条書きにする」など、匿名化・抽象化すればGeminiでも十分に価値が出ます。営業メールの改善なら、顧客名や案件名を伏せたテンプレートだけを入力し、汎用的な改善案を出させる。議事録要約なら、登場人物を役職名に置き換え、決定事項と宿題だけを抽出する。これだけでリスクは大きく下がります。
社内ルールとして書くなら、次のように「禁止」と「代替手段」をセットにするのがコツです。
- 禁止:顧客名・個人名・メールアドレス・電話番号・住所・契約条件・未公開数値の貼り付け
- 推奨:固有名詞のマスキング、要約してから入力、テンプレ化して汎用部分だけ入力
- 必須:出力をそのまま外部送信しない(必ず人がレビュー)
最後に、よくある「うっかり」を防ぐため、入力欄の直前に置ける短い注意文も用意しましょう。例:「機密情報・個人情報は入力しない。入力前に固有名詞と数値を削除する」。短いほど守られます。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
情シスが押さえるべき管理設定:アカウント、権限、ログ、端末
次に、Geminiを組織で使うなら「人が守らない前提」でガードレールを作ります。具体的には、会社管理のアカウント基盤(Google Workspace等)で、利用者を制御し、退職・異動に追随し、問題が起きたときに追える状態にすることです。ルールだけに頼らず、設定で事故を起こしにくくするのが情シスの役割です。
設定・運用のチェックリスト(代表例)は以下です。
- アカウント統制:個人アカウントでの業務利用を禁止し、SSO(シングルサインオン)と2要素認証を必須化。共有アカウントは禁止。
- 最小権限:GeminiがDriveやGmail等に連携できる場合、最初はオフまたは限定。必要性が確認できた部署から段階的に解放。
- ログと監査:誰がいつ利用したか、管理者が把握できる状態を作る。インシデント時に「入力内容そのもの」まで追えるかはサービスと設定次第なので、追えない前提で入力制限を強める判断も必要。
- 端末・ネットワーク:会社管理端末(MDM)からのみ許可、社外端末はブロック、社外ネットワークからは追加認証、など段階的に。
- データ保持:会話履歴の保存・削除ポリシーを決める。残すなら目的(教育、監査、ナレッジ化)を明記し、期間と閲覧権限を限定。
ここで重要なのは、管理者が「どこまで守れるか」を過信しないことです。生成AIは便利な反面、入力・出力がテキストで流れます。スクリーンショットやコピペで外に出る可能性もゼロではありません。だからこそ、①入力しない、②出力をレビューする、③外部送信前にチェック、という運用とセットで固めます。
また、導入初期は利用範囲を絞るのが現実的です。例えば「社内FAQの文章改善」「議事録の体裁整え」「企画のたたき台」「コードを書かない部門の資料作成」など、機密度が低い用途から開始し、運用が回ることを確認してから対象業務を広げます。最初から全社展開すると、教育不足とルール不徹底で事故が起きやすくなります。
安全に成果を出す運用:教育、テンプレ、レビュー、インシデント対応
Geminiを安全に使いながら成果を出すには、日常業務に溶け込む「仕組み」を作る必要があります。ポイントは、社員に長文の規程を読ませるのではなく、守るべきことをテンプレとフローに埋め込むことです。
まず、最低限の教育は30分で構いません。内容は「入力禁止の例」「匿名化のやり方」「出力の注意(誤情報・出典確認)」「外部送信前のチェック」の4点に絞ります。加えて、現場がすぐ使えるプロンプト(指示文)テンプレを配布すると、危険な入力を減らしつつ効果も出せます。
そのまま使える安全寄りプロンプト例(匿名化前提)
- メール文面:「以下のメール案を、丁寧で簡潔な表現に改善してください。固有名詞は入れず、一般化した表現にしてください。」
- 議事録:「以下は匿名化したメモです。決定事項・未決事項・担当者(役職)・期限に分けて要約してください。」
- 社内規程の説明:「以下の規程文を、新人にも分かるように箇条書きで説明してください。重要な禁止事項は太字相当の強調で示してください。」
次に、レビュー体制です。生成AIの出力はもっともらしく見えるため、誤りや不適切表現に気づきにくいことがあります。特に対外文書(提案書、プレス、契約関連、採用、顧客回答)では、必ず人が最終責任を持つフローにします。おすすめは「用途別のレビュー観点」を用意することです。
- 対外メール:事実誤認、過剰な約束、機密の混入(社内事情・単価・固有名詞)
- 資料:引用・著作権、根拠のない数値、社内用語の誤用
- 手順書:実際の運用と一致するか、例外ケースの記載漏れ
最後に、インシデント対応を決めておくと安心して使えます。「誤って機密を入力したかもしれない」「出力を社外に送ってしまった」などの報告が上がったときに、誰が何をするかを事前に決めます。報告先(情シス/法務/上長)、初動(当該文書の回収依頼、送信先への連絡、アカウント停止)、再発防止(入力ルールの更新、教育)までを簡単なフロー図レベルで良いので整備します。重要なのは、報告が萎縮しないよう「正直に報告した人を責めない」運用にすることです。
3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら
よくある不安Q&A:情シス・管理職が判断しやすい形に整理
Gemini導入の稟議やセキュリティレビューでは、同じ質問が繰り返し出ます。ここでは、現場でそのまま説明に使えるよう、論点と回答の型をまとめます。「不安」を「確認事項」に変換できると、導入が進めやすくなります。
Q1. 入力した内容は外部に漏れますか?
A. 外部漏えいの多くは「サービスが勝手に漏らす」よりも「人が入力・転送する」ことで起きます。したがって、(1)個人情報・機密の入力禁止、(2)会社管理アカウントでの利用、(3)外部送信前のレビュー、の3点をセットにします。また、利用形態によりデータの扱いが異なるため、業務利用は契約・設定で「学習に使われない」「管理者統制が効く」条件を選びます。
Q2. どんな情報なら入力してよいですか?
A. 「公開情報はOK、社内情報は匿名化してOK、機密・個人情報はNG」という3段階にすると運用できます。例えば、顧客名・担当者名・メールアドレス・契約条件・未公開の数値は入力しない。一方で、固有名詞を削ったテンプレ、一般化した業務手順、文章改善の依頼などは安全に使えます。
Q3. Geminiの回答をそのまま使ってよいですか?
A. 原則そのままは推奨しません。誤情報や不適切表現、根拠不明の断定が混ざる可能性があるため、対外文書や意思決定に使う場合は人が確認します。特に法務・労務・医療・金融などは「参考」に留め、最終判断は専門家へ、という線引きを明確にします。
Q4. どの部署から始めるのが安全ですか?
A. 機密度が低く、効果が見えやすい業務からがおすすめです。例:社内文章の推敲、会議メモの要点整理(匿名化)、FAQの表現統一、研修資料のたたき台。個人情報を扱う部署や契約書を扱う業務は、ルールとレビュー体制が整ってから段階導入が無難です。
Q5. 導入後にやるべきことは?
A. 利用状況の棚卸し(どの用途で使っているか)、ルール違反が起きやすい場面の特定、テンプレ更新、教育の追加です。生成AIは業務に浸透すると「例外」が増えるので、四半期に一度でも運用を見直すと事故を防ぎやすくなります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
まとめ
Geminiは「危険だから使えない」か「便利だから何でも入れてよい」かの二択ではありません。業務で安全に使う鍵は、利用形態(会社管理)、入力ルール(データ分類)、設定(権限とログ)、運用(教育とレビュー)をセットで設計することです。
- 個人アカウントの業務利用は混乱の元。会社管理のアカウントに統一する
- 機密・個人情報は原則入力禁止。匿名化・抽象化で価値を出す
- 連携機能や権限は最小から開始し、段階的に拡張する
- 出力は必ず人がレビューし、外部送信前のチェックを徹底する
- 事故が起きたときの報告・初動フローを先に決めておく
この「確認ポイントと運用方法」を押さえれば、Geminiを過度に恐れず、かつ無防備にもならず、現場の生産性向上に繋げられます。自社の規程や情報資産の状況に合わせて設計したい場合は、情シス・法務・現場を巻き込んだ導入フローから整備するとスムーズです。
コメント