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結局、何が違う?まず押さえるべき「AI製品の見え方」
情シスが生成AIを選定するとき、最初に混乱しやすいのが「名前が違う=性能が違うのか」「同じチャットAIなのに何が違うのか」という点です。結論から言うと、違いは“モデルの賢さ”だけではなく、どの業務にどう組み込めるか(統合先・管理・安全設計)に大きく出ます。
代表的な選択肢を、情シス視点でざっくり分類すると次のように整理できます。
- Gemini:Google WorkspaceやGoogle Cloudとの連携が主戦場。メール/ドキュメント/会議の文脈にAIを入れやすい。
- ChatGPT:汎用性が高く、社内の試行や企画に強い。API/拡張で業務組込みも可能だが、運用設計が要。
- Claude:文章の要約・整理・長文の取り扱いが得意とされ、社内文書・規程・議事録の整形で評価されやすい。
- Copilot:Microsoft 365(Outlook/Teams/Excel/PowerPoint)やWindows環境への統合が軸。既存のM365運用に乗せやすい。
つまり「どれが一番すごいか」ではなく、「自社の“日常の仕事場”に一番自然に差し込めるか」「その差し込み方を、情シスが管理できるか」を基準にするのが失敗しません。本記事では、開発知識がなくても比較できるように、情シスが使うべき比較軸をテンプレ化し、導入手順と落とし穴までまとめます。
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情シスが比較すべき軸:モデルではなく「運用の現実」で決める
生成AIの比較表を作ると、つい「回答の賢さ」「日本語の自然さ」だけに寄りがちです。しかし導入後に揉めるのは、権限・ログ・データ持ち出し・費用管理といった運用面です。そこで、比較軸を次の7つに固定すると、社内稟議でも説明しやすくなります。
- 統合先(従業員の主戦場):Google Workspace中心か、Microsoft 365中心か、Web/独自システム中心か
- データの扱い:入力内容が学習に使われるか、保存期間、管理者が制御できる範囲
- 権限・管理:SSO、利用者の払い出し、部門別の制限、監査ログ
- セキュリティ要件:機密区分、個人情報、契約・法務、社内規程との整合
- コスト設計:ライセンス課金、従量課金、予算配賦、利用上限
- 品質と再現性:同じ質問で結果がブレる度合い、業務テンプレ化のしやすさ
- 業務実装のしやすさ:API連携、RPA、社内ポータル、ナレッジ検索、問い合わせ対応への組込み
この7軸をベースにすれば、Gemini/ChatGPT/Claude/Copilotは「得意な職場」と「管理のしやすさ」が見えてきます。たとえば、Google Workspaceが中心の会社はGeminiの統合メリットが大きく、M365中心の会社はCopilotが自然です。一方で、複数SaaSや独自システムが多い会社は、ChatGPTやClaudeをAPI/業務フローに埋め込む設計が効きます。
情シスのゴールは“便利そう”ではなく“安全に、予算内で、習慣化できる”状態を作ることです。次章から、各製品の違いを「軸」に沿って具体化します。
Geminiの特徴:Googleの仕事環境に「文脈ごと」入りやすい
Geminiは、Googleのエコシステムに強みがあります。情シス視点で効くのは、従業員が普段触っている場所(Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシート、Meetなど)で、作業の前後を含めて支援しやすい点です。たとえば「メールの下書き」「会議メモの要約」「ドキュメントのたたき台作成」など、“作り始め”を高速化しやすくなります。
ただし重要なのは、導入時に「何をGeminiにやらせ、何はやらせないか」を先に決めることです。生成AIは便利ですが、入力する情報が増えるほどリスクも増えます。まずは機密を扱わない範囲(一般文書、定型メール、社内周知文、議事録整形)から始めるのが現実的です。
Geminiがフィットしやすい業務例
- 社内周知の文章(人事・総務・情シスからの案内)を読みやすく整える
- 問い合わせ対応の一次回答(手順書を参照して案内文を作る)
- 会議後のアクション項目の抽出・担当者の割り振り案の作成
- スプレッドシートのデータから要点を文章化(報告文の下書き)
注意点:統合が強いほど「ガードレール設計」が要る
Google環境に深く入るほど、便利さと同時に「誤送信」「誤共有」「参照権限の誤設定」が事故要因になります。情シスとしては、権限設計(共有範囲)と、AIに渡してよい情報の線引きをセットで整えることが重要です。具体的には、プロンプト例(入力テンプレ)に「個人情報や顧客名を入れない」「契約書の原文は貼らない」などのルールを埋め込むと、現場に浸透しやすくなります。
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ChatGPT・Claude・Copilotの特徴:向き合うべき違いは「統合」と「設計自由度」
ここでは、Geminiと比較されやすい3つを、情シスが迷いがちなポイントに絞って整理します。大きな違いは、(1)従業員の作業場所への統合度、(2)業務への埋め込み自由度、(3)文章・要約などの得意領域の傾向です。
ChatGPT:試行と横展開が得意、ただし運用設計が勝負
ChatGPTは、部署横断の「アイデア出し」「文書作成」「調査の要約」などで使い始めやすく、成功パターンが見えるのが早い傾向があります。一方、社内で本格運用するなら、“誰が何を入れてよいか”を決めないと、便利さがそのまま情報リスクになる点に注意が必要です。情シスは、利用規程、プロンプト例、禁止事項、ログや監査の考え方までセットにして初めて安定します。
Claude:長い文章の整理・要約に強く、社内文書の整形で評価されやすい
Claudeは、規程・議事録・提案書・報告書など、長文を読み解いて構造化する用途で比較されやすい存在です。現場の体感として「読みやすくまとめる」「論点を抜き出す」方向で価値が出ることがあります。情シスとしては、文書の入力範囲(機密区分)と、出力物のレビュー責任(誰が最終責任を持つか)を明確にしておくと導入がスムーズです。
Copilot:Microsoft 365中心の会社は“既存運用に乗る”のが強い
Copilotは、Outlook/Teams/Excel/PowerPointなど、Microsoft 365が主戦場の企業で効果が出やすい選択肢です。既にM365のアカウント管理・権限・データ保護の運用が整っている場合、新しいツールを増やすより「今の業務導線にAIを載せる」方が定着しやすいのがメリットです。
ただし、Excelの自動化や会議要約などは「期待値が上がりやすい」領域でもあります。現場の期待に対し、できること・できないことの線引き(例:数式やデータの前提が曖昧だと誤る)が必要です。
まとめると、Google中心ならGemini、Microsoft中心ならCopilot、統合先がバラバラならChatGPT/Claudeを“業務設計で”使う、という発想が比較の出発点になります。
比較表を作る前に:情シス向け「評価テンプレ」とスコアリング方法
稟議や役員説明に耐える比較をするには、好みや印象ではなく、点数化できる軸が必要です。ここでは、開発知識がなくても作れる評価テンプレを示します。ポイントは「要件(Must)」「加点(Want)」「運用コスト」の3つを分けて評価することです。
Must(満たさないと導入不可)の例
- SSOに対応している(退職者・異動者の制御ができる)
- 利用者ごとの権限管理ができる(部門での制限含む)
- 監査・ログの考え方が社内規程に合う
- 機密情報・個人情報の取り扱い方針が説明できる
Want(満たすほど現場価値が高い)の例
- Google Workspace/Microsoft 365に自然に統合できる
- テンプレ(プロンプト)を配布しやすい、チームで使い回せる
- 社内ナレッジ検索(手順書・FAQ)に接続できる
- 日本語の文書作成・要約の品質が高い
運用コスト(見落とされがち)の例
- 利用者教育(30分で覚えられるか、マニュアルが要るか)
- 問い合わせ対応(情シスに質問が集まる設計になっていないか)
- シャドーIT化(個人アカウントで勝手に使われるリスク)
- 月次の費用管理(部門別配賦、利用上限、棚卸し)
このテンプレで、Gemini/ChatGPT/Claude/Copilotを同じ土俵に載せます。スコアリングは、各項目を「0:不可/1:条件付き/2:問題なし」の3段階にすると、細かい仕様が分からなくても議論が前に進みます。最後に「統合先(GoogleかMicrosoftか)」を重み付け(例:2倍)にすると、現場導線に合う選択をしやすくなります。
また、試験導入(PoC)では「賢い回答が出るか」より「誤ったときに誰が気づけるか」「現場が同じ聞き方を再現できるか」を評価してください。生成AIは、再現性の確保が運用品質を左右します。
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導入手順:PoC→小規模展開→全社展開で“事故らない”進め方
生成AI導入は、いきなり全社契約にすると失敗しやすい領域です。情シスとしては、PoC(小さく試す)→小規模展開(型を作る)→全社展開(統制を効かせる)の順で進めると、安全と定着の両立ができます。
PoCでやること(2〜4週間)
- 対象業務を3つに絞る(例:周知文作成、議事録整形、FAQ一次回答)
- 入力してよい情報・ダメな情報を明文化(例:顧客名、個人情報、契約書原文は禁止)
- プロンプトテンプレを配布し、同じ聞き方で比較できるようにする
- 成果指標を決める(時間削減、手戻り回数、現場満足度)
PoCで重要なのは、「上手くいった例」だけでなく「失敗した例」を集めることです。たとえば、もっとも多い失敗は「前提条件が抜けたままAIに作らせ、もっともらしい誤りが混ざる」ケースです。失敗事例をテンプレに反映して、現場が同じミスを繰り返さない仕組みにするのが情シスの価値になります。
小規模展開でやること(1〜2か月)
- 部門を限定してライセンス配布(例:総務、営業企画、情シス)
- 承認フロー(利用申請、用途、取り扱う情報区分)を用意
- FAQと禁止例を整備(「これを入れるのはNG」の具体例が効く)
- レビュー責任を明確化(AIの出力を誰が最終確認するか)
全社展開でやること(継続運用)
- ログ・監査の運用、棚卸し(利用者、用途、費用)
- プロンプトテンプレの社内ポータル化(最新版を一元管理)
- 定着施策(30分研修、事例共有会、成功例の横展開)
この流れにすると、GeminiであってもChatGPTであっても、Copilotであっても「ツール導入が目的化」しにくくなります。情シスがやるべきは、AIの賢さ比べではなく、業務が速くなり、事故が起きにくい運用の型を作ることです。
よくある失敗と回避策:情シスが先に潰すべき論点
最後に、現場導入で起きがちな失敗を、先回りで潰すチェックリストとしてまとめます。「ルールを作る」より「守れる形にする」ことが肝です。
失敗:社内で使い方がバラバラになり、効果が測れない
回避策は、用途別にテンプレを配ることです。たとえば「周知文」「議事録」「FAQ回答」「提案書の構成」など、5〜10個の定番プロンプトを用意し、入力項目をフォームのように固定します。これにより、GeminiでもChatGPTでもClaudeでも、品質の最低ラインが上がり、教育コストも下がります。
失敗:機密・個人情報をうっかり投入してしまう
回避策は、禁止ルールを抽象論にしないことです。「個人情報は禁止」では現場は迷います。“氏名・住所・電話・メール・社員番号・顧客名・取引条件・契約書原文”など、具体例で禁止し、代替手段(伏字、要約、ダミー化)もセットで教えます。
失敗:AIの出力をそのまま外部に出して炎上する
回避策は、レビュー責任を明確にすることです。「AIが作ったから」では免責になりません。対外文書(プレス、提案書、契約、回答メール)については、必ず人がチェックするルールを作り、チェック観点(事実、数字、固有名詞、法務観点)をテンプレ化します。
失敗:情シスが問い合わせ窓口になり疲弊する
回避策は、現場の“AI推進担当”を各部門に1人置き、一次対応を分散することです。情シスはルール・アカウント・監査・全体最適に集中し、現場の使い方相談は部門側が吸収できる体制にすると継続します。
これらの回避策は、どのツールでも共通です。Geminiを選ぶ場合でも、Google環境に統合される分だけ「共有範囲」「権限」「誤送信」の論点が効いてきます。CopilotならM365の権限設計、ChatGPT/Claudeなら業務埋め込みと利用統制が主戦場になります。
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まとめ
GeminiとChatGPT/Claude/Copilotの違いは、単なる“賢さ”ではなく、どの仕事環境に統合でき、情シスがどこまで管理できるかに強く表れます。比較に迷ったら、まずは「統合先(GoogleかMicrosoftか、または独自システム中心か)」を起点にし、次に「データの扱い」「権限・ログ」「コスト」「再現性」「業務実装」を7軸で点数化すると、稟議でも説明しやすい判断ができます。
導入は、PoC→小規模展開→全社展開の順で進め、プロンプトテンプレ、禁止例の具体化、レビュー責任の明確化で事故を防ぐのがコツです。情シスの成功は“ツール選び”ではなく“運用の型づくり”で決まります。自社の業務導線と統制要件に合う形で、Geminiや他ツールを比較・選定していきましょう。
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