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Excelが苦手でも「分析できる」状態を作る:Copilotは“操作代行”ではなく“思考の補助輪”
Excelの分析が苦手な理由は、関数やピボットの知識不足というより、どこから手を付けるべきか分からない「段取り」の難しさにあります。売上データを渡されても、集計軸(商品別・担当別・月別など)をどう切り替え、異常値や抜けをどう扱い、どの順番で結論に近づくかが見えないと、Excelは急に難易度が跳ね上がります。ここで役立つのがCopilot(AIアシスタント)を“分析の進行役”として使う考え方です。
Microsoft 365のCopilotは、自然文で意図を伝えることで、表の整形、集計の提案、要約の作成、グラフ案の提示などを支援してくれます。ただし、重要なのは「AIが出した結果をそのまま鵜呑みにしない」こと。特に経営判断や監査に関わる集計では、誤りが混ざると痛手が大きいので、AIの出力は“仮説”と見なし、Excel側で検算して安全に運用する設計が必要です。
本記事では、Excelが得意でない方でも、Copilotを使いながら分析を前に進め、最後は検算で品質を担保する手順を、現場の業務シーンに寄せて解説します。対象は、開発知識がない中小企業の経営者・マネージャー・担当者、または予算はあるがAI運用に自信がない情シスの方です。専門用語は必要最小限にしつつ、実務で「明日からできる」形に落とします。
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最初に押さえる前提:Copilotの得意・不得意と「検算前提」の意味
Copilotは、データの意味を人間のように推測し、次に何を見ればよいかを提案するのが得意です。一方で、データの欠損や表記ゆれ、集計条件の曖昧さがあると、意図と違う集計をしてしまうことがあります。これはCopilotが悪いというより、AIが「文脈を推測して補う」性質を持つためです。したがって、業務で使うなら“AIの推測を、Excelの計算で確認する”運用が安全です。
検算前提とは、Copilotの結果を最終成果物とせず、「別ルートで同じ数字になるか」を必ず確かめることです。たとえば、Copilotが「月別売上」を出したなら、ExcelのピボットやSUMIFSで同じ集計を作り、数字が一致するか確認します。一致しない場合は、条件(対象期間、返品の扱い、税込/税抜、除外条件など)を言語化し、Copilotへの指示(プロンプト)を修正して再実行します。
安全運用のために、次の3点を最初に社内ルールとして決めると、混乱が減ります。
- Copilotのアウトプットは「下書き」扱いにし、最終の意思決定資料は検算後に確定する
- 集計条件(期間、除外、粒度)を日本語で明文化してから分析する
- 個人情報や機密情報の扱いを決め、必要なら匿名化や列の削除をしてから利用する
「AIに任せる」のではなく「AIに段取りを手伝わせる」ことで、Excelが苦手でも分析が進み、かつ誤りのリスクを抑えられます。
準備で9割決まる:データを“Copilotが誤解しにくい形”に整える
Copilotで分析をうまく進めるには、入力データが整っていることが重要です。Excelが苦手な方ほど、複雑な関数を覚える前に、まず「AIが読みやすい表」を作るだけで結果が変わります。ポイントは、表を“名簿”のように縦に積むことです。よくある失敗は、月別の列が横に並び、途中に小計行が混ざり、セル結合や注釈が入っているパターンです。人間は読めても、集計条件が曖昧になりやすくなります。
最低限、次の整形を行うと、Copilotの提案も安定します。
- 1行目は見出し、2行目以降はデータ(途中に見出しの繰り返しを入れない)
- セル結合を避け、1セルに1情報(例:住所と郵便番号を同じセルに入れない)
- 列名は具体的に(例:「金額」ではなく「売上金額(税抜)」)
- 日付は日付形式、金額は数値形式、コードは文字列などデータ型を揃える
- 空白行・小計行・注釈行は可能なら別シートへ分離
さらに、分析の目的に合わせて「辞書(定義)」を一緒に用意すると、Copilotへの指示がブレにくくなります。たとえば「売上=出荷ベース」「粗利=売上−原価」「キャンセルは売上から除外」など、社内の当たり前が部署で違うことはよくあります。これを先に文字で固定し、Copilotに渡すと、集計の前提が揃いやすいです。
実務で効く“定義メモ”の例(そのままCopilotに貼れる)
- 対象期間:2025/01/01〜2025/12/31(受注日ベース)
- 売上金額:税抜。返品・値引きはマイナスで計上
- 除外:テスト取引(取引先名に「TEST」を含む)
- 粒度:取引明細(1行=1商品×1伝票)
この準備ができると、Copilotは「次に何を見ればよいか」を提案しやすくなり、Excel操作の迷子状態から抜け出しやすくなります。
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Copilotへの指示(プロンプト)の型:曖昧さを減らして“再現性”を上げる
Copilotの出力品質は、指示の書き方で大きく変わります。Excelが苦手な方ほど、「いい感じに分析して」と依頼しがちですが、これだとAIが推測で補完し、結果がブレます。おすすめは、誰が見ても同じ解釈になるように「目的→条件→出力形式→確認観点」をセットで伝えることです。ここでいうプロンプトは難しいものではなく、業務指示書のミニ版だと思ってください。
たとえば、売上データの基本分析なら次のように依頼します。
このシートの取引明細を使って、2025年の月別売上を集計してください。
条件:
- 日付列は「受注日」
- 金額列は「売上金額(税抜)」
- 返品・値引きはマイナスとして含める
出力:
- 月(YYYY-MM)と売上合計の2列の表
- 上位3か月/下位3か月のコメントも付ける
確認:
- 年間売上合計も出し、月別合計の合計と一致するか確認手順も提案して
ポイントは、Copilotに「確認手順も提案して」と頼むことです。AIに検算観点を出させると、人間の確認漏れも減ります。さらに、やり直しが必要になったときは、結果を否定するのではなく、「条件の解釈が違った」ことを明示して修正します。
先ほどの集計は「出荷日」ではなく「受注日」が正です。
また、取引先が空欄の行は除外してください。除外件数も表示して再集計してください。
このように、Copilotを“会話で育てる”というより、条件を文章化して固定し、再現性のある集計に寄せるのが業務向きです。情シス側でプロンプトのテンプレートを作り、現場は穴埋めで使えるようにすると、部署間で品質が揃います。
実務フロー:Copilotで仮説→Excelで検算→レポート化まで一気通貫
ここからは、現場で使いやすい「安全運用フロー」を紹介します。目的は、Copilotで分析を前に進めつつ、最後にExcelで数字を固め、社内説明に耐える資料にすることです。分析のテーマは、どの会社でも起きやすい「売上が伸びない理由を特定したい」を例にします。
仮説のたたき台をCopilotに作らせる
まず、Copilotに「どんな切り口で見ればよいか」を出させます。ここでの成果物は“仮説メモ”です。
売上が伸びない要因を調べたいです。
このデータで確認すべき切り口(例:商品、担当、地域、既存/新規、単価、数量)を優先度つきで提案し、
それぞれの確認に必要な集計表のイメージを箇条書きで出してください。
次に、提案された切り口のうち、社内で説明しやすいものから着手します。たとえば「商品カテゴリ別×月別」「担当別×粗利」「新規顧客の件数推移」などです。
Copilotで集計案を作り、Excelで検算する
Copilotが月別売上表を作ったら、同じ条件でピボットテーブル、またはSUMIFSで確認します。Excelが苦手でも、検算は“型”を決めてしまえば運用できます。検算の王道は次の3つです。
- 合計一致:月別合計の合計=年間合計、担当別合計の合計=全体合計
- 件数一致:集計対象の行数(件数)をCOUNTで出し、除外条件の件数も把握
- スポットチェック:ランダムに数件の明細を選び、集計に正しく入っているか確認
たとえばSUMIFSで月別売上を検算するなら、月の開始日・終了日を条件にする、または年月列を作って集計します。ここで難しい関数を増やす必要はありません。目的は「同じ数字になる」ことで、見た目のスマートさではありません。
レポート化:結論→根拠→次の打ち手の順で出す
最後に、Copilotに文章化を手伝わせます。数値は検算済みの表・グラフを使い、Copilotには「説明の組み立て」を任せると安全です。
検算済みの月別売上と商品カテゴリ別売上の表をもとに、
経営会議向けに「結論→背景→原因仮説→打ち手(3案)→追加で見るべきデータ」をA4 1枚相当で要約してください。
注意:断定しすぎず、仮説と事実を分けて書いてください。
この使い方なら、Copilotが間違っても致命傷になりにくく、むしろ「資料作成の時間」を大きく短縮できます。数字はExcelで固め、文章と構成はCopilotで整える、が現実的です。
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失敗しがちなポイントと対策:情シス・管理職が押さえるべきガードレール
Copilot導入でよく起きる失敗は、「便利そうだから現場に丸投げ」してしまい、部署ごとにやり方がバラバラになることです。結果として、同じ会議で同じ指標の数字が一致しない、AIの出力を誰も説明できない、という状況が起きます。ここでは、情シスや管理職が最小限のルールで品質を上げる“ガードレール”を紹介します。
- 指標の定義を統一:売上、粗利、受注、出荷、キャンセルなどの定義を1枚にまとめる
- データの正本(Single Source of Truth)を決める:集計元のファイルと更新タイミングを固定
- プロンプトのテンプレート化:月次レポート、営業KPI、在庫分析など用途別に用意
- 検算チェックリスト:合計一致・件数一致・除外件数・期間条件を必ず確認
- 権限と情報管理:個人情報・取引先情報の扱いを決め、必要なら匿名化してから分析
また、Copilotの出力をそのまま貼り付けると「それ、根拠は?」と問われたときに詰まります。資料には、集計条件(期間、対象列、除外条件)を必ず記載し、再計算できる状態を残しましょう。AIの文章は読みやすい一方で、断定が強くなる場合があります。“事実(数値)”と“解釈(仮説)”を分けるだけで、社内の信頼性は大きく上がります。
最後に、現場が安心して使うためには教育も必要です。ただし大掛かりな研修より、30分のミニ講習+テンプレ配布のほうが定着します。「このプロンプトを使う」「この検算だけはやる」という最小運用から始めるのが、失敗しない近道です。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
まとめ
Excelが苦手でも、Copilotを「分析の進行役」として使えば、段取り(何を見て、どう比較し、どう結論に近づくか)を大きく短縮できます。一方で、業務で使う以上はAIの推測に依存しすぎないことが重要です。安全運用の要点は、Copilotで仮説と叩き台を作り、Excelで検算して数字を確定することに尽きます。
具体的には、データをAIが誤解しにくい表に整え、指標定義を文章で固定し、プロンプトをテンプレート化します。そのうえで、合計一致・件数一致・スポットチェックの検算を回し、レポート文章は「事実」と「仮説」を分けてCopilotに整形させると、社内説明に耐える品質になります。まずは月次の定例レポートなど、範囲が小さく成果が見えやすい業務から始めると定着しやすいでしょう。
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