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DXは「IT導入」ではなく、成果の出し方を変える取り組み
DXという言葉を聞くと、AIやクラウド、RPAなどのツール導入を思い浮かべがちです。しかし本質はデジタル技術を使って、仕事の進め方と成果の出し方を変えることにあります。つまり、同じ人員でも「速く・正確に・安く」回せるようになり、さらに「売上につながる打ち手」を回しやすくする活動です。
一方で、情シスや経営層が悩みやすいのが「DXで結局なにが変わるのか」を社内に説明できないことです。DX推進の稟議では、目的が「デジタル化すること」になってしまい、現場からは「今のやり方でも回っている」「ITは難しい」「追加業務が増えるだけでは?」と抵抗が出やすくなります。
そこで重要になるのが、DXの成果を業務(時間・品質)/コスト(固定費・変動費)/売上(獲得・継続)という経営と現場の共通言語で具体化することです。例えば「月末の請求処理が3日かかる」を「当日中に完了」へ変えるのは業務成果、「残業代・外注費を月◯万円削減」はコスト成果、「問い合わせから受注までの期間が短縮し失注率が下がる」は売上成果です。
本記事では、開発の専門知識がなくても、DXの成果イメージを定量化し、優先順位をつけ、社内合意を得て進めるための方法を、現場の業務シーンに落として解説します。
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成果を「業務・コスト・売上」で分解すると、失敗しにくくなる
DXがうまくいかない典型は、「何をどれだけ良くするのか」が曖昧なまま、システムだけが先に進むケースです。すると、現場にとってのメリットが見えず、入力や運用の手間が増え、結局使われなくなります。これを防ぐには、成果を3つの箱に分けて整理します。
DX成果の3分類(現場と経営で合意しやすい)
- 業務:作業時間短縮、ミス削減、引き継ぎ容易化、属人化解消、リードタイム短縮
- コスト:残業・外注費削減、紙・郵送・保管削減、システム運用費の最適化、在庫・ロス削減
- 売上:問い合わせ増、受注率向上、LTV向上、解約率低下、客単価向上、追加提案の成功率向上
ここでのポイントは、3分類を同時に追わないことです。たとえば最初の半年は「業務」の改善に振り切り、効果が見えたら「コスト」「売上」に広げる方が、現場の納得と定着が起きやすいです。売上インパクトをいきなり狙うと、マーケ施策や営業プロセスの変更が絡み、変数が増えて検証が難しくなります。
また、成果をこの3分類で書けるようになると、ベンダー比較もしやすくなります。「AIを入れます」ではなく、「入力工数を月80時間削減し、残業代を月10万円削減し、見積提出までの日数を5日→2日に短縮する」といった形に落とせるため、見積もりや要件定義の質が上がります。
成果イメージを数字にする:KPIの作り方(難しい数式は不要)
DXのKPIというと難しく聞こえますが、基本は「今(現状)→こうしたい(目標)」を数値で結ぶだけです。おすすめは、いきなり完璧を目指さず、現場で測れる指標を1〜3個に絞ることです。
業務KPI:時間・件数・ミスで作る
業務の成果は「作業時間」「処理件数」「ミス件数」「リードタイム」が中心です。例えば次のように作れます。
- 受注入力:1件あたり10分 → 5分(50%短縮)
- 請求書発行:月末3日 → 1日(リードタイム短縮)
- 問い合わせ対応:一次回答まで平均6時間 → 2時間
- 転記ミス:月20件 → 月5件
測り方が分からない場合は、まず1週間だけ「作業開始〜終了の時刻」をメモするだけでも十分です。完璧な工数管理ツールを入れる前に、現状が分かればDX設計は進みます。
コストKPI:人件費・外注費・紙のコストから積み上げる
コストは「削減したい対象」を決めるのが先です。例えば、残業・派遣・BPO外注・印刷郵送・保管・在庫ロスなど。計算式はシンプルで構いません。
コスト試算の例(概算でOK)
削減効果(円/月)=(削減できる時間h/月)×(平均人件費円/h)+(削減できる外注費)
投資回収(月)= 初期費用 ÷ 月次効果
注意点は、削減した時間が必ずしも人件費削減に直結しないことです。その場合は「削減できた時間を、付加価値業務(提案・改善・顧客対応)に回せる」ことを成果として書きます。これもDXの重要な価値です。
売上KPI:受注までの“歩留まり”を改善する
売上は「新規を増やす」だけではありません。DXの現実的な第一歩は、機会損失(失注・取りこぼし・対応遅れ)を減らすことです。例としては次の通りです。
- 問い合わせ対応遅れによる失注を減らす:一次返信までの時間を短縮
- 見積スピード改善で受注率を上げる:見積提出までの日数を短縮
- 営業の属人化を減らす:商談のステータスと次アクションを可視化
- 更新・リピート率を上げる:顧客の利用状況や課題を定期的に把握
売上KPIは「件数 × 率 × 単価」で分解すると、改善余地が見えます。例えば「問い合わせ件数は増やせないが、返信スピードで成約率は上げられる」など、現場が動ける形に落ちます。
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現場の業務で考える:DXで変わりやすい業務パターン
DXのテーマ選びでは、「会社のど真ん中の業務」から着手したくなりますが、最初は難易度が上がりがちです。おすすめは、データが散らばっている・転記が多い・承認が遅いといった“よくある詰まり”が起きている業務から始めることです。ここでは代表的なパターンを紹介します。
転記だらけの業務:Excel・メール・紙を行き来している
例:受注情報をメールで受け、Excelに転記し、基幹へ二重入力し、納期確認をチャットでやり取りする。このような業務は、入力ミス・確認漏れ・属人化が起きやすいです。DXでは、フォーム入力→自動で台帳化→関係者に通知→基幹連携、のように「一度入力したら使い回せる」状態を作ります。成果は工数削減とミス削減が同時に出やすい領域です。
承認待ちが長い業務:決裁・稟議・見積・契約
例:見積書の承認が紙・メールで回り、誰の手元にあるか分からず止まる。DXでは、申請→承認ルート→差戻し→履歴、を一貫管理します。ここで重要なのは「電子化」だけでなく、承認基準を明文化して迷いを減らすことです。システム化すると、承認者の判断が詰まりとして可視化されるため、ルール設計とセットで進めると効果が出ます。
問い合わせ対応・社内ヘルプ:同じ質問に何度も答えている
総務・情シス・営業事務などに問い合わせが集中し、対応が属人化している場合、ナレッジ整備とチケット管理が効きます。さらに、FAQの検索性を上げたり、社内向けのチャットボットで一次対応を自動化したりすると、工数だけでなく対応品質も改善します。ただし、いきなりAIに任せるのではなく、まずは質問の分類とテンプレ回答を整えるのが成功の近道です。
現場の進捗が見えない業務:案件・工事・制作・配送
進捗が見えないと、催促・確認・調整の連絡が増えます。DXでは、ステータスの標準化(例:未着手/対応中/保留/完了)と、更新タイミングのルール化が効きます。可視化により「遅れが起きてから対応」から「遅れそうな兆候で先に手を打つ」へ変わり、結果として納期遅延やクレームの減少にもつながります。
成果を出すDXの進め方:小さく作って、数字で育てる
DXは一度に全社最適を狙うと、要件が膨らみ、完成まで時間がかかり、途中で状況が変わって失敗しやすくなります。特に「予算はあるが詳しくない」組織では、ベンダー任せになってズレが発生しがちです。そこで有効なのが、小さく作って早く使い、数字で改善する進め方です。
ステップ:現状整理→成果定義→最小構成→検証→展開
- 現状整理:対象業務の流れをA4一枚に書き出す(担当・入力・承認・出力を列挙)
- 成果定義:業務・コスト・売上のどれを狙うか決め、KPIを1〜3個に絞る
- 最小構成:「なくても回るが、あると確実にラクになる」範囲で作る(最初から全部やらない)
- 検証:2〜4週間で試し、KPIが動くか確認。現場の不満・例外処理を集める
- 展開:ルール・教育・権限設計を整え、対象部門や業務範囲を広げる
このステップで大事なのは、最小構成の時点で「入力が増える」「結局二重管理になる」といった現場の痛みを作らないことです。最初のDXでは、現場が毎日触るポイントを1つだけでも確実に改善すると、社内の空気が変わります。
要件定義で押さえるべき「3つの線引き」
発注側が苦手でも、次の3点を決めるだけで、プロジェクトのブレが大幅に減ります。
- やること/やらないこと:対象業務の範囲と、今回は手を出さない範囲を明確化
- 入力の責任者:誰がいつ入力し、入力されない場合どうするか(運用ルール)
- 正のデータはどこか:Excel・基幹・CRMなど、参照元を一つに寄せる方針
DXは技術より運用が成否を分けます。システムの出来が良くても、入力されなければ成果は出ません。だからこそ、現場の負担とメリットを見える化し、納得の設計にする必要があります。
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DXでありがちな失敗と回避策:情シス・現場・経営のズレをなくす
DXの現場では、「良いツールを入れたのに使われない」「データが整わない」「結局Excelに戻った」といったことが起きがちです。ここでは、よくある失敗と回避策を、実務目線で整理します。
失敗:目的が“デジタル化”になっている
紙を電子にしただけで、承認が遅いまま、入力が増えただけ、という状態です。回避策は、最初に成果をKPIで定義し、KPIに効かない機能は後回しにすることです。「電子稟議にする」ではなく「稟議の平均滞留日数を5日→2日にする」のように置き換えます。
失敗:現場ヒアリングが“要望の寄せ集め”になり、要件が肥大化
現場の声を拾うほど、機能が増え、納期が伸び、コストが膨らみます。回避策は「よくある例外処理」をすぐにシステム化しないことです。まずは頻度が高く、効果が大きい流れを優先し、例外は運用で逃がします。例外の頻度が高いと分かった段階で、第二弾として取り込めば十分です。
失敗:データの品質が低く、分析も自動化もできない
入力項目がバラバラ、担当者によって表記ゆれ、更新されない、という状態ではDXが進みません。回避策は、入力項目を増やすのではなく、必須項目を絞り、選択式(プルダウン)を増やすことです。自由記述を減らすだけで、後工程が一気にラクになります。
失敗:情シスが全部抱え、運用が回らない
問い合わせ・権限・設定変更が情シスに集中し、改善が止まります。回避策は「業務側の運用責任者」を置き、権限設計を最初に決めることです。情シスはガバナンスとセキュリティの要所を押さえ、日々の業務運用は現場が回す形にすると、DXが継続します。
失敗:ベンダーに丸投げで、社内にノウハウが残らない
回避策は、打合せの成果物を「運用ルール」「KPIダッシュボード」「改修の優先順位表」など、社内資産として残すことです。さらに、月1回でも良いので、数字を見て改善点を決める定例を持つと、DXが“イベント”ではなく“習慣”になります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
まとめ
DXで何が変わるかを社内で説明できないと、予算はあっても前に進みません。成功の近道は、DXを「IT導入」ではなく成果(業務・コスト・売上)を変える取り組みとして定義し、現場と経営の共通言語に落とすことです。
- 成果は3分類:業務(時間・品質)/コスト(削減・最適化)/売上(失注減・継続増)
- KPIは少なく:現場で測れる指標を1〜3個に絞る(作業時間、ミス件数、リードタイムなど)
- 進め方は小さく:最小構成で早く使い、数字で改善して展開する
- 失敗回避の鍵:目的の明確化、要件の線引き、データ品質、運用責任の分担
もし「何から着手すべきか分からない」「現場の抵抗が強い」「ベンダー選定や要件定義が不安」という場合は、業務の棚卸しとKPI設計から伴走できるパートナーがいると、DXの成功確率が大きく上がります。ソフィエイトでは、業務整理から開発・運用まで一貫して支援できますので、まずは現状の課題整理からご相談ください。
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