Copilotの権限・アクセス制御で「見えてはいけない情報」を守るやり方

Copilotで「見えてはいけない情報」が見えるのはなぜ?まず押さえる全体像

Copilot(Microsoft 365 Copilotなど)を業務に入れると便利になる一方で、情シスや管理者が最初に不安になるのが「本来見せたくない情報がAI経由で見えてしまうのでは?」という点です。結論から言うと、Copilot自体が新しい“覗き穴”になるというより、既存の権限設計の甘さが“AIで露呈しやすくなる”、という理解が重要です。

Copilotは、ユーザーがサインインしているMicrosoft 365の権限(SharePoint/OneDrive/Teams/Exchangeなど)を前提に、検索・要約・提案を行います。つまり「その人がアクセスできるファイルや会話・メール」を材料に回答します。ここで問題になるのは、日常運用では気づきにくい「共有しっぱなし」「リンク共有」「部署を跨いだTeamsのチャンネル閲覧」などの“権限のほころび”です。人間が一つ一つ探すより、AIのほうが横断的に見つけて要約してしまうため、結果として情報漏えいの体感リスクが上がります。

典型的な「見えてはいけない情報」の例は次の通りです。

  • 人事:評価シート、給与、採用候補者情報、休職・健康情報
  • 経理:支払予定、銀行口座、資金繰り表、税務資料
  • 法務:契約交渉履歴、M&A検討資料、訴訟・紛争関連
  • 営業:単価表、見積原価、未公開の提案書、顧客リスト
  • 開発:脆弱性情報、秘密鍵・APIキー、顧客環境の構成

これらは「フォルダは作っているが共有が雑」「Teamsに入れたら全部見える」「退職者の共有が残っている」など、運用上の理由で露出しがちです。本記事では、専門知識がなくても実務で進められるように、Copilotの権限・アクセス制御を“整理→制御→運用”の順に解説します。

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導入前にやるべき棚卸し:どこに何があり、誰が見える状態か

Copilotの対策は、いきなり設定画面で制限をかけるよりも、先に「情報がどこに散らばっているか」「共有がどうなっているか」を把握するほうが成功します。理由はシンプルで、AIの出力を止めるには、元データのアクセス権を正しくするのが最短だからです。

棚卸しは、次の3点セットで進めると迷いにくいです。

  • 保管場所:SharePointサイト、Teams(=SharePoint)、OneDrive、Exchangeメール、外部共有の領域
  • 機密区分:公開/社内/部門限定/役員限定/特機(人事・法務など)
  • 共有形態:グループ/個別付与/リンク共有/ゲスト共有/継承が切れている権限

例えば「経理の支払予定表が、過去に応援に入った別部署の担当者のOneDriveにコピーされ、リンク共有が残っていた」というケースはよくあります。Copilotは「経理フォルダ」だけを見ているわけではなく、ユーザーがアクセスできる範囲に散在する情報を横断的に拾いに行くため、こうした“飛び地”が事故につながります。

実務としては、最初の1〜2週間で次を決めると、後工程が一気にラクになります。

  • 「Copilotに要約されると困る情報」リスト:人事・法務・経理・開発で各10個程度
  • 保護優先度:「今すぐ」直す共有(全社閲覧/リンク共有)と「順次」直す共有(部門内)を分ける
  • 責任分界:情シスが統制する範囲と、部門が持つ運用(フォルダ管理者)を明確にする

この棚卸しができると、Copilot導入の説明も通りやすくなります。「AIが危ないから止める」ではなく、「権限が曖昧な場所を正すことで、Copilotも安全に使える」という筋が立つからです。

基本はMicrosoft 365のアクセス権:SharePoint/OneDrive/Teamsの“共有”を正す

Copilot対策の中心は、Microsoft 365側の権限(アクセス制御)です。Copilotは、あなたの組織で設定されたアクセス権の範囲で動きます。だからこそ、SharePoint・OneDrive・Teamsの共有設計を整えるだけで、情報露出リスクを大きく下げられます

「全社に共有」「リンクで誰でも」になっていないかを最優先で潰す

最も危険なのは、意図せず「組織内の全員がアクセス可能」や「リンクを知っていれば見られる」状態になっていることです。人間なら気づかなかったファイルも、Copilotが要約に混ぜてしまう可能性があります。まずは以下を重点的に点検します。

  • SharePointドキュメントの「Everyone」「全員」相当の権限が付いていないか
  • OneDriveのリンク共有が「組織内のすべてのユーザー」になっていないか
  • Teamsの標準チャネルに機密資料を置いていないか(参加者=閲覧可能)
  • 退職者・異動者の共有が残っていないか

“部署別サイト+グループ”で管理し、個別付与を減らす

権限事故の多くは「Aさんにだけ見せたかった」などの個別対応が積み重なり、誰が見られるか追えなくなることが原因です。おすすめは、SharePointサイト(またはTeams)を部署や業務単位で整理し、Microsoft 365グループ(セキュリティグループ)で付与する運用です。人を直接足す運用を減らし、グループで管理するだけで、監査性が上がります。

例:経理サイトは「経理メンバー」「経理管理者」グループだけに許可。監査法人対応フォルダは「経理管理者」に限定。部門横断PJは専用Teamsを作り、標準チャネルではなく、必要に応じて共有範囲を分けます(機密は別サイトに隔離するのも有効)。

外部共有(ゲスト)を前提にする場合はルールと技術をセットで

取引先とSharePoint/Teamsで共同作業する場合、外部共有は便利ですが、設定が曖昧だと情報が滞留しやすい領域です。最低限、次のようなルール化が必要です。

  • ゲストを許可する部門・サイトを限定する(全社一律にしない)
  • 期限付き共有、定期レビュー(半年ごと等)を運用に入れる
  • 外部共有する資料は機密区分を下げる、もしくは別領域に出す

Copilotが外部ゲストの視点で何を見られるかも意識しましょう。社内ユーザー向けのCopilotとは別に、「社外の共同編集者が見える範囲」も事故の起点になり得ます。

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“見せない”を仕組み化:機密ラベル・DLP・条件付きアクセスで制御する

権限を整えるだけでは、ヒューマンエラー(誤共有、誤送信、置き場所ミス)をゼロにできません。そこで効くのが、Microsoft Purview等で提供される機密ラベル(Sensitivity Label)とDLP(情報漏えい防止)、そして条件付きアクセスです。これらは「守りたいデータにルールを貼る」発想で、Copilot時代に相性が良い対策です。

機密ラベル:ファイルに“扱いのルール”を持たせる

機密ラベルは、文書やメールに「社外秘」「機密(役員限定)」「個人情報」などのラベルを付け、暗号化やアクセス制限を適用できます。ポイントは、場所(フォルダ)だけでなく、データそのものに制御を付けられることです。コピーされても制御が残る設計に近づきます。

運用例:

  • 「人事(極秘)」ラベル:人事部・役員のみ閲覧可、印刷禁止、転送制限
  • 「社外秘」ラベル:社内ユーザーのみ、ゲスト共有不可
  • 「公開」ラベル:制限なし(社内Wikiや告知など)

ラベルは増やしすぎると現場が迷います。最初は3〜5段階に絞り、「貼る基準」を例で示すのが現実的です。

DLP:個人情報や機密文字列を“出さない・送らない”

DLPは、クレジットカード番号やマイナンバー相当、特定のキーワード、取引先情報などを検知して、共有や送信をブロック/警告できます。Copilot対策の文脈では、そもそも危険なデータが広く共有されない状態を作るのに役立ちます。

例として、次のようなルールが考えられます。

  • 個人番号や口座情報を含むファイルは外部共有を禁止
  • 「給与」「評価」「懲戒」など特定語が含まれるファイルは、社内共有でも警告を出す
  • 重要顧客リスト(パターン化した列)を検知したら、リンク共有をブロック

条件付きアクセス:端末・場所・サインイン状況で制御する

「権限は合っているが、端末が私物PCだった」「海外出張中の不審アクセスだった」など、アクセス環境が原因の事故もあります。条件付きアクセスを使うと、会社管理端末からのみアクセス許可、MFA必須、リスクが高いサインインはブロックといった制御ができます。Copilotを安全に使うには、AI以前にIDと端末の衛生管理が土台になります。

運用で差が出る:Copilot導入時のガバナンスと“よくある失敗”の避け方

設定が整っていても、運用が追いつかないと「いつの間にか共有が崩れる」状態に戻ります。特にCopilotは便利なので、現場が自発的に使い始め、情報の置き場所・共有が増えやすいのが特徴です。ここでは情シスが押さえるべき運用ポイントをまとめます。

最初に決めるべき社内ルール(難しくしない)

  • 保存先ルール:個人OneDriveに置いてよいもの/部門SharePointに置くもの/隔離領域に置くもの
  • 共有ルール:リンク共有は原則禁止(または期限必須)、外部共有は申請制など
  • ラベル運用:「契約書は社外秘」「人事評価は極秘」など、迷いやすいものだけ具体例を明記
  • Teams運用:機密は標準チャネルに置かない、ゲスト入りチームには機密資料を置かない

ここで重要なのは、100点の規程を目指さないことです。守れる最低限を決め、違反が起きたら直せる仕組み(監査・通知)を用意するほうが実装できます。

よくある失敗と回避策

  • 失敗:Copilotを導入してから慌てて権限を見直す → 回避:少人数のパイロット(情シス+機密部門)で棚卸し後に展開
  • 失敗:「とにかく制限」で業務が止まる → 回避:部門別に例外フローを作り、チケットで可視化
  • 失敗:ラベルが多すぎて使われない → 回避:3〜5段階に絞り、既定値(デフォルト)を設定
  • 失敗:共有のレビューが形骸化 → 回避:四半期ごとの棚卸し、所有者不明の共有は自動的に制限

教育は「AIの使い方」より「共有の考え方」を中心に

非エンジニアの現場に対しては、プロンプトのテクニックよりも「そのファイル、誰が見られる?」の意識づけが効きます。例として、次のような一言ルールは浸透しやすいです。

  • 「迷ったら部門SharePoint。個人OneDriveは一時置き場」
  • 「リンク共有は期限付き。期限がない共有は放置される」
  • 「ゲストがいるTeams=社外に見せてもよい資料だけ」

Copilotは“答えを作る”道具ですが、材料はあなたの社内データです。材料の管理が整えば、Copilotは強力な生産性ツールになります。

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ケース別:中小企業・大企業情シスでの現実的な進め方

同じCopilot導入でも、組織規模やIT体制で最適解が変わります。ここでは「予算はあるが詳しくない」読者を想定し、現実的な手順をケース別に整理します。

中小企業(情シス兼務・IT担当が少ない)

中小企業では、細かな統制よりも「事故が起きやすい穴を先に塞ぐ」ことが重要です。おすすめの順番は次の通りです。

  1. Copilot対象ユーザーを限定:最初は管理職+情シス+一部部門に絞る
  2. 外部共有を絞る:全社で外部共有を許可しない、必要なチームだけ例外
  3. SharePointの置き場を統一:部門サイトを作り、個人OneDrive依存を減らす
  4. リンク共有を期限付きに:無期限共有を禁止(運用で勝てる)
  5. 最小限の機密ラベル:「公開/社内/社外秘/極秘」程度から開始

中小企業の勝ち筋は、ルールを増やすことではなく、“置き場所と共有の型”を決めることです。型が決まると、Copilotの出力も安定し、誤って機密が混ざる確率が下がります。

大企業(情シス・セキュリティ部門があるが部門が多い)

大企業では「部署ごとの運用差」が最大の敵です。統一しきれない前提で、次の考え方が現実的です。

  • 全社共通の最低基準:MFA必須、条件付きアクセス、外部共有の既定値、ラベル体系
  • 部門別の追加統制:人事・法務・開発などは追加ルール(隔離サイト、監査強化)
  • 監査と可視化:所有者不明の共有、ゲストの棚卸し、機密ラベルの未適用をレポート

また、展開方法は「一斉導入」より「業務シナリオ別」が失敗しにくいです。例えば、議事録要約、提案書の下書き、社内規程の検索など、価値が出やすい領域から始め、同時にデータガバナンスを整えます。

まとめ

Copilotの権限・アクセス制御で「見えてはいけない情報」を守るポイントは、AIだけを特別扱いしないことです。Copilotは“今ある権限”に従って動くため、元データの共有設計と運用を正すほど安全になる、という整理が最短ルートになります。

  • まずは棚卸しで「どこに機密があり、誰が見えるか」を可視化する
  • SharePoint/OneDrive/Teamsの共有を整え、個別付与や無期限リンク共有を減らす
  • 機密ラベル・DLP・条件付きアクセスで“ミスしても漏れにくい”仕組みにする
  • ルールはシンプルにし、定期レビューで共有が崩れない運用を作る

「便利さ」と「安全」を両立するには、技術設定だけでなく、置き場所・共有・教育をセットで回すことが欠かせません。自社の状況に合わせた設計や、段階的な導入計画が必要であれば、専門家の伴走支援も検討するとスムーズです。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

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