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API連携開発とは?費用がブレやすい理由
API連携開発とは、社内のシステムや外部サービス同士を「データの受け渡し」でつなぐ開発のことです。たとえば「ECの受注データを会計ソフトへ自動連携」「SFA/CRMの顧客情報をMAへ同期」「基幹システムの在庫をWebサイトへ反映」など、日々の業務を裏側で自動化します。画面を作る開発より地味に見えますが、人手の転記や二重入力を減らし、ミスと工数をまとめて削れるため、投資対効果が出やすい領域です。
一方で、API連携の費用は「同じ連携に見えても見積もりが大きく変わる」ことで悩まれがちです。理由は、APIは“つなぐだけ”ではなく、現場の運用やデータの癖まで含めて設計・実装する必要があるからです。具体的には、次の要因で金額が上下します。
- APIの品質と制約:提供側のAPI仕様が安定しているか、レート制限が厳しいか、Webhookがあるか、認証方式(OAuth等)が複雑か
- データ変換の難しさ:項目名の違い、必須項目の不足、コード体系の不一致、住所・金額・税区分の整形など
- 同期方式:リアルタイム(即時反映)か、バッチ(定時)か、片方向か双方向か
- 例外処理の量:「一部だけ失敗」「重複」「削除」「差分」「取り消し」「再送」など業務上の“例外”が多いほど工数増
- 運用設計の有無:エラー通知、監視、ログ、再実行、権限管理、問い合わせ窓口などを整備するほど費用増(ただし障害時コストは減る)
つまりAPI連携の見積もりは、開発者の都合ではなく「現場のやりたいこと」と「API・データ・運用の現実」をどう折り合い付けるかの結果として決まります。本記事では、API連携開発の費用相場の見方、見積もり内訳の読み解き方、削ってはいけないポイント、発注前に確認すべき質問まで、非エンジニアの方でも判断できるように整理します。
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API連携開発の費用相場:よくあるパターン別の目安
API連携開発の費用は、連携の種類(片方向/双方向、リアルタイム/バッチ)、対象システム数、データの整合性、運用要件で変動します。ここでは、発注検討時に使いやすいよう「よくあるパターン」で相場感を示します。金額は一般的な国内の受託開発・準委任のケースを想定した目安で、要件が固いほど下振れ、曖昧・例外が多いほど上振れします。
小規模(30万〜150万円):単純な片方向・定時連携
例:MA→CRMへ日次でリードをCSV同等の形で同期、Slackへ通知を飛ばす、GASでの簡易連携など。APIが分かりやすく、データ項目が少なく、例外処理も最小で済む場合はこのレンジに収まることがあります。ただし、「止まった時に誰が気付くか」「失敗データをどう復旧するか」が未整備だと、運用コストが後から膨らみやすい点に注意が必要です。
中規模(150万〜500万円):業務で使える運用込みの1〜2連携
例:EC受注→基幹/会計へ連携、CRM↔MAの双方向同期、Webhookでリアルタイム反映+失敗時リトライ、管理画面は無し(ログ閲覧は最低限)など。多くの企業で「ちゃんと使えるAPI連携」がこのレンジに入ります。データ整形、差分更新、重複防止、エラー通知(メール/Slack)など運用要件が入り、テストも増えます。
大規模(500万〜2000万円以上):複数システム・複雑なデータ整合・高い可用性
例:基幹・在庫・受注・WMS・BIなど複数連携、双方向、整合性担保(ID採番・突合)、監視と再実行機能、権限、監査ログ、SLAに近い運用など。ここまで来ると「連携プログラム」ではなく、小さな統合基盤(iPaaS/ESB相当)を作る発想になります。要件定義とテストにかなりの比重が移り、初期費用に加えて運用費(監視・保守)も現実的に必要です。
コストを左右する3つの要点(先に押さえるとブレが減る)
- データの正:どちらを正マスターにするか(顧客はCRM、請求は会計など)
- 同期の粒度:リアルタイムが本当に必要か(業務上「当日中」で良いことも多い)
- 例外の扱い:失敗時に止める/スキップする/保留キューに積む、誰が直すか
相場はあくまで目安ですが、発注側が上の3点を決められるだけで、見積もりの振れ幅は大きく減ります。逆に未確定のまま進めると、後から「想定外の例外」が出て追加費用になりやすい構造です。
見積もり内訳の基本:どこにお金がかかっているのか
API連携開発の見積もりは、ざっくり「設計」「実装」「テスト」「運用準備」「管理」に分解できます。見積書での表記は会社ごとに違いますが、読み解く観点は共通です。金額の大小よりも、“何が含まれ、何が含まれないか”を確認するのが重要です。
要件定義・仕様策定(見積もりの前半が勝負)
非エンジニアの方が軽視しやすいのが要件定義です。しかしAPI連携は「例外」「運用」「データの正」を決めないと作れません。ここが薄い見積もりは初期費用が安く見えても、追加費用・納期遅延の原因になりがちです。要件定義には次のような作業が含まれます。
- 現行業務のヒアリング(転記・確認・承認の流れ、締め時間、担当者)
- 対象データの棚卸し(項目、桁数、必須、コード体系、ユニークキー)
- 連携方式の決定(Webhook/ポーリング/バッチ、片方向/双方向)
- エラー時の運用(通知先、復旧手順、再送の可否、手動補正の手順)
基本設計・詳細設計(「どのデータを、どう変換し、どう守るか」)
設計では、APIの呼び出し順序、認証情報の管理、データマッピング、冪等性(同じデータを2回送っても壊れない設計)、再実行の仕組みを決めます。ここが弱いと、後で「二重計上」「重複顧客」「在庫が戻らない」などの事故につながります。見積書で「設計一式」と書かれていても、データマッピング表や例外パターン一覧が成果物に入っているかを確認すると安心です。
実装(APIコールより“周辺”が効く)
実装費は、単にAPIを叩くコードだけでなく、トークン更新、レート制限対策、ページング、差分取得、リトライ、キュー、ログ出力などの“周辺機能”で増えます。連携先が増えるほど、環境(本番/検証)の設定や鍵管理も増えます。ここは削りすぎると運用で詰むため、どこまで作り込み、どこを割り切るかを先に合意しておくのがポイントです。
テスト(工数が大きい=悪ではない)
API連携のテストは、画面テストより難しいことが多いです。なぜなら「正常系」だけでなく、「失敗系」「境界値」「重複」「取り消し」「部分成功」など、業務上の例外を再現する必要があるからです。見積内訳に以下が入っているかを見てください。
- 単体/結合テスト
- テストデータ作成(現場のデータに近い形が必要)
- 受入テスト支援(UAT支援、手順書、立会い)
「テストが高い」と感じたら、削るのではなくどのケースを守るのか(守らないのか)を明確にする交渉が現実的です。
運用準備・保守(監視、通知、障害対応)
運用準備には、監視(死活監視・エラー監視)、通知(メール/Slack)、ログ保管、手順書、権限、バックアップなどが含まれます。保守契約が別途の場合も多いので、見積段階で「初期費用にどこまで含まれるか」「月額で何をしてくれるか」を確認しましょう。“止まった時に誰が気付くか”が決まっていない連携は、ほぼ確実に現場の負担になります。
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見積もりで必ず確認したいチェックリスト(非エンジニア向け)
見積書は専門用語が多く、比較が難しくなりがちです。ここでは、情シスや経営者の方が「判断に必要な質問」をそのまま使える形でまとめます。相見積もりの場でも、同じ質問を投げるだけで提案の質が見えやすくなります。
スコープ確認:何が“含まれている/いない”のか
- 連携対象はどこまで?(本番・検証環境、サンドボックスの有無、APIキー取得支援)
- データ項目は何件?(マッピング表の有無、変換ルールの明記)
- 同期頻度と方式は?(リアルタイム/バッチ、双方向/片方向)
- エラー時の挙動は?(自動再送、保留、スキップ、手動復旧)
- ログはどこに残る?(検索できるか、保存期間、個人情報の取り扱い)
品質確認:事故を防ぐための設計が入っているか
- 二重登録の防止策は?(冪等キー、突合ロジック)
- レート制限・タイムアウト対策は?(リトライ、バックオフ、キューイング)
- API仕様変更への備えは?(バージョニング、影響範囲の切り分け)
- セキュリティは?(秘密情報の保管、IP制限、権限分離)
体制確認:誰が責任を持つか(ここが曖昧だと揉めやすい)
- 窓口は誰?(PM、テックリード、サポート)
- 受入テストは誰が何をする?(現場・情シス・ベンダーの役割分担)
- 保守の範囲は?(障害一次対応、原因調査、改修、API変更追随)
成果物確認:後任でも運用できる状態か
API連携は「作って終わり」になりやすい領域です。納品物として、最低限これが揃うと運用が安定します。
- データマッピング表(項目、変換、必須、例外)
- 処理フロー図(正常系/異常系)
- 運用手順書(再実行、手動補正、問い合わせ時の確認観点)
- テスト結果(何を確認したか)
費用を最適化する進め方:削るべきは開発ではなく“不確実性”
API連携開発でコストが増える最大要因は、実は「作業量」よりも「不確実性」です。要件が固まらないまま着手すると、後から例外が見つかり、設計・実装・テストが雪だるま式に増えます。費用を抑えたい場合は、値引き交渉より先に、不確実性を小さくする段取りを作るのが効果的です。
最初に決める:業務のゴールとKPI(“便利そう”で始めない)
「とりあえず連携したい」だと、要件が拡散します。たとえば「二重入力をゼロにする」「月次締めの前日作業を2時間削減」「受注から出荷指示までのリードタイムを半減」など、業務ゴールを言語化するとスコープが絞れます。API連携は、削減したい手作業とミスの発生地点を特定できるほど、安く早く成功しやすいです。
段階導入:まずは片方向・当日バッチで価値を出す
リアルタイム双方向は魅力的ですが、例外処理と整合性の難易度が一気に上がります。最初は「片方向」「日次/数時間ごと」など、業務的に許される範囲で簡素な方式にし、運用を回してから高度化するのが定石です。“完璧な連携”より“止まらず回る連携”が先です。
PoC/調査を別見積にする(API仕様の地雷を早期発見)
外部SaaSのAPIは、ドキュメント通りにいかないことがあります。権限制約、Webhookの不足、想定より厳しいレート制限、検索APIの条件不足などです。これを本開発で踏むと追加費用になります。おすすめは、短期間の調査(APIでできる/できない、制約、代替案)を先に切り出すことです。小さな調査費で、後工程の大きな手戻りを避ける投資になります。
既製品・iPaaSの活用判断(作るべき/買うべき)
Zapier、Make、Power Automate、各種iPaaS、ETLなどで解決できる場合もあります。ただし、iPaaSは「簡単な連携ほど得意」で、「複雑な例外や厳密な整合性」は結局カスタム開発が必要になりがちです。判断軸は次の通りです。
- 標準コネクタで足りるか:必要なAPI操作(検索、更新、削除、Webhook)が揃うか
- 例外処理の複雑さ:保留キュー、再処理、突合、監査ログが必要か
- 運用コスト:月額費、シナリオ改修のしやすさ、属人化リスク
「買う」でも「作る」でも、運用で困らない形を先に定義できると失敗しにくくなります。
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失敗しがちな落とし穴:追加費用・炎上を避けるポイント
API連携開発は、規模の大小にかかわらず“炎上パターン”が似ています。ここでは、発注側が知っているだけで回避しやすい落とし穴をまとめます。
「APIで全部できる前提」で進めてしまう
外部サービスは、画面でできる操作がAPIではできない、あるいは権限が必要、ということが普通にあります。たとえば「検索条件が足りない」「一括更新ができない」「添付ファイルが扱えない」などです。対策は、要件定義の段階で“APIでできること/できないこと”を検証し、代替手段(運用/別API/中間DB)を決めることです。
データの“正”が決まらず、二重管理になる
顧客情報がCRMと基幹の両方で更新される、在庫がWMSと基幹でズレる、といった状態は連携で悪化します。双方向同期は特に危険で、「どちらが最新か」を決めるルールが必要です。マスターを一つに寄せるか、更新できる項目を分けるなど、業務ルール込みで設計します。
例外データが“静かに落ちる”
一部のデータだけ失敗しても気付かない設計は、最も実害が出ます。月末に請求漏れが発覚するなど、後戻りが大きいからです。対策は、エラー通知と、失敗データの一覧化(CSV出力でも可)を最低限入れること。これだけで運用品質が大きく上がります。
テストデータが用意できず、検証が曖昧なまま本番へ
API連携は「本番データの癖」で壊れます。住所の全角半角、会社名の長さ、税区分、NULL、古いコードなどです。発注側が協力できるとしたら、実データを匿名化したサンプルを用意することが最も効果的です。これにより、後工程の修正が激減します。
保守契約がなく、API変更で突然止まる
SaaS側のAPI仕様変更や廃止は起こり得ます。連携が止まったときに「誰がいつ直すか」が決まっていないと、業務が止まります。対策は、保守の範囲(監視、障害対応、軽微改修)を月額で合意するか、最低限のスポット対応条件を決めておくことです。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
まとめ
API連携開発の費用相場は、単純な片方向・定時連携なら数十万〜、運用込みの実務連携で150万〜500万円、複数システムや高い整合性・可用性が必要なら500万円以上と、要件次第で大きく変わります。見積もりを見るときは金額だけでなく、要件定義(例外と運用を決める工程)・テスト・運用準備が含まれているかを確認するのがポイントです。
費用を最適化したい場合は、値引きよりも「不確実性を減らす」ことが効きます。業務ゴールを言語化し、マスター(データの正)を決め、まずは片方向・バッチなど段階導入で価値を出す。必要に応じて事前調査(PoC)を挟む。これだけで追加費用と炎上リスクを大きく下げられます。
API連携は、正しく設計すれば“裏方”ながら最も堅実に効くDXです。自社の状況でどの方式が最適か、見積もりの妥当性をどう判断するか迷う場合は、現行業務とデータの棚卸しから一緒に整理して進めると、最短距離で成果につながります。
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