API連携の要件定義で決めるべき項目を漏れなく整理する方法

API連携の要件定義が難しい理由と、先に決めるべき「境界線」

API連携は「システム同士をつなぐ」取り組みですが、要件定義が難しく感じられる最大の理由は、話題が業務・データ・運用・セキュリティまで一気に広がる点にあります。たとえば「顧客データをCRMへ送る」だけでも、どの顧客を・いつ・どの項目で・失敗したらどう復旧するか、まで決めないと運用が回りません。

非エンジニアの方が迷わないコツは、最初に「境界線(スコープ)」を引くことです。API連携の要件定義では、次の2つを先に言語化すると整理が進みます。

  • 何を達成したいか(業務目的):売上計上の二重入力をなくす、請求漏れをなくす、問い合わせ対応を短縮する等
  • 何はやらないか(除外範囲):今回はCSVの移行は対象外、基幹側の画面改修はしない、など

境界線が曖昧なまま進むと、「APIでできると思っていたのに、相手側が対応していなかった」「データ形式が合わず、結局手作業が残った」といった手戻りが起きます。要件定義の初期に、関係者(業務担当・情シス・ベンダー・接続先サービスの管理者)で目的と除外を合意しておくことが、最短ルートです。

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まずは業務から逆算する:連携対象と業務シナリオの書き方

API連携の要件定義は、APIの仕様書を読む前に「業務の流れ」を固める方がうまくいきます。おすすめは、現場で起きている一連の作業を「シナリオ(ユースケース)」として箇条書きにする方法です。専門用語は不要で、誰が見ても同じ理解になる文章を目指します。

業務シナリオのテンプレ(例)

  • トリガー:受注が確定したら(いつ/誰が/どの画面で)
  • 入力:受注番号、顧客ID、商品、金額、税区分、請求先 など
  • 処理:会計システムに売上として登録し、結果を受注側に返す
  • 例外:在庫切れ/顧客ID不一致/会計側が停止中の場合
  • 完了条件:会計側に登録され、受注側に仕訳番号が記録される

次に、「どのシステムとどのシステムをつなぐのか」を整理します。ここで重要なのは、システム名ではなく「役割」です。たとえば、販売管理(受注の正)、会計(仕訳の正)、CRM(顧客の正)など、どこが“正”のデータを持つか(マスタの所在)を決めます。これを曖昧にすると、同じ顧客情報が複数のシステムで増殖し、どれが正しいのかわからなくなります。

最後に、連携対象データを大分類で良いので洗い出します。典型は「顧客」「商品」「受注」「請求」「入金」「在庫」「問い合わせ」「従業員・権限」です。要件定義の時点では細目まで完璧にしなくて良いですが、どの業務データが動くかを把握しておくと、後のAPI選定・設計がスムーズになります。

漏れなく整理するチェックリスト:要件定義で決めるべき項目(全体像)

ここからが本題です。API連携の要件定義で決めるべき項目は多いですが、カテゴリに分けてチェックすれば漏れにくくなります。以下は実務で使える「骨格」のチェックリストです。情シスの方はそのままベンダーへの確認観点として使えます。

  • 目的・KPI:何が改善されれば成功か(工数、ミス件数、リードタイム、売上計上の締め遅れ等)
  • 対象範囲:対象システム、対象拠点、対象ユーザー、対象データ、対象期間、除外条件
  • 連携方式:リアルタイム/定期バッチ/イベント駆動(Webhook等)/手動実行
  • データ要件:項目、形式、桁、必須、コード体系、タイムゾーン、文字コード、添付ファイル有無
  • 整合性:どちらが正(マスタ)、重複排除、突合ルール、再送時の扱い(同じデータを二重登録しない)
  • 非機能要件:性能(件数/秒)、上限、応答時間、可用性、メンテ時間、監視、ログ、バックアップ
  • セキュリティ:認証方式、権限、暗号化、IP制限、個人情報、監査証跡、保管期間
  • エラー・運用:失敗時の通知、リトライ、手動復旧手順、問い合わせ窓口、SLA/サポート
  • 制約・前提:APIの利用制限、同時接続数、提供時間、料金、バージョン変更、利用規約
  • 体制・進め方:決裁者、承認フロー、テスト計画、本番切替手順、リリース後の改善

この全体像を先に示し、関係者で「どれをいつ決めるか」を合意しておくと、要件定義が“抜け漏れ探し”から“意思決定”に変わります。特に非エンジニアの方にとっては、議論の土台(論点表)を持つことが最大の武器になります。

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データ要件の決め方:項目定義・マスタの所在・データ品質を固める

API連携で最もトラブルが起きやすいのがデータです。画面上は同じ「顧客名」でも、片方は全角、片方は半角、住所は結合/分割、税率は別テーブル、など現場ではよくあります。要件定義では、まず「データの翻訳表」を作るイメージで整理します。

最低限そろえたいデータ定義(項目ごと)

  • 項目名(業務での呼び方)と、各システムのフィールド名
  • 型(文字/数値/日付)、桁、必須/任意、許容値(コード一覧)
  • 変換ルール(例:郵便番号のハイフン、敬称、税込/税抜)
  • キー(照合に使うID):顧客ID、商品コード、受注番号など
  • 作成・更新の責任:どのシステムが正で、どこから同期するか

次に決めるべきは「ID戦略」です。非エンジニアの方にも重要で、ここが曖昧だと後で必ず痛みます。たとえば顧客を「メールアドレスで同一判定」すると、担当変更や共有アドレスで破綻します。原則は、不変の一意キー(顧客ID等)をどこかで発行し、それを連携で使うことです。

また、データ品質の扱いも要件に入れましょう。現実には「住所が空」「電話番号が全角」「都道府県が自由入力」といった汚れが混ざります。要件定義で、(1)連携前にクレンジングする、(2)不備はエラーとして止めて通知する、(3)不備でも通して後で修正する、のどれにするかを決めます。ここは業務判断で、正解は一つではありません。ただし“止める/通す”の基準を決めないと、運用が炎上します。

最後に、個人情報や機微情報の扱いです。連携項目を増やすほど便利になりますが、漏えい時の影響も増えます。本当に必要な項目だけに絞り、保存期間・マスキング・閲覧権限まで含めて合意することが、E-E-A-Tの観点でも信頼につながります。

連携方式・非機能・セキュリティ:運用で困らないための決めどころ

API連携は「つながった瞬間」より「回し続けること」の方が難しいです。要件定義では、方式・性能・運用の3点セットを決めておくと、リリース後の混乱を大きく減らせます。

まず連携方式です。リアルタイムは便利ですが、接続先が遅い/止まると自社業務も巻き込まれます。一方、定期バッチは安定しやすいですが、反映遅延が許容できるかの判断が必要です。現場向けに言うと、「今すぐ反映されないと困る業務」だけリアルタイムにし、その他は定期同期にするなど、業務の緊急度で分けると合理的です。

次に非機能要件です。最低限、次の数値は決めましょう。

  • 処理件数:1日あたりの件数、ピーク(例:月末・朝一)
  • 応答時間:画面操作に影響するか(何秒まで許容か)
  • 上限・制限:APIのレート制限(1分あたり何回まで等)、1回で送れる件数
  • 可用性:止まって良い時間帯、メンテ時間、復旧目標

セキュリティは、特に情シスの方が押さえるべきポイントです。認証(APIキー、OAuth、SAML連携等)、通信暗号化(HTTPS/TLS)、IP制限、権限(読み取り専用か書き込み可か)、そしてログ(誰がいつ何をしたか)を要件として明文化します。加えて、外部SaaSの場合は「APIの権限範囲(スコープ)」を必要最小限にし、退職者や委託先のアクセス権を定期的に棚卸しする運用まで含めると、事故を防げます。

最後にエラー対応です。APIは必ず失敗します。ネットワーク断、相手側の障害、入力値不備、レート制限などです。要件定義で、失敗時に「自動再試行する回数」「それでもダメなら誰に通知するか」「どの画面/ログで追えるか」「二重登録をどう防ぐか(冪等性)」を決めます。ここを決めていないと、現場は原因不明の未反映に振り回されます。

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要件定義を“漏れなく”進める実務手順:ヒアリング→可視化→合意→テスト設計

チェックリストがあっても、進め方が曖昧だと抜け漏れは起きます。非エンジニアの方でも進行できるように、実務の手順を型として紹介します。ポイントは、早い段階で「図と表」に落とし、関係者の認識差を潰すことです。

  1. 現状業務の棚卸し:二重入力、転記、締め作業、ミスが起きる箇所を現場から回収
  2. To-Beシナリオ作成:トリガー→処理→完了条件→例外を文章で作る(前述テンプレ)
  3. データ対応表(項目マッピング):最低限の項目、キー、変換ルールを表にする
  4. 運用設計(失敗した日の動き):「止まったら誰が何を見て、どう復旧するか」を決める
  5. 受入基準(テスト観点):正常系だけでなく異常系を先に定義する
  6. 合意形成:決裁者が判断できるよう、費用・リスク・代替案を添えて承認

テストは要件定義の延長です。おすすめは「業務シナリオ=テストシナリオ」にすること。たとえば「受注確定→会計登録→仕訳番号が戻る」が通るだけでは不十分で、「同じ受注を誤って2回送った」「会計側がメンテ中」「顧客IDが存在しない」など、現場で起きる事象をテストに含めます。要件定義で異常系の期待結果を決めておけば、開発後の“想定外”を減らせます。

さらに、外部SaaSは仕様変更が起きます。APIバージョン変更、項目追加、廃止などです。要件定義の段階で「変更通知の受け取り方法」「影響調査の担当」「改修の予算枠(保守契約の有無)」を決めておくと、長期運用が安定します。

まとめ

API連携の要件定義を漏れなく整理するコツは、API仕様から入るのではなく、業務目的→業務シナリオ→データ→運用の順に“境界線”を引いて意思決定していくことです。特に「マスタの所在」「ID戦略」「失敗時の復旧手順」は、後回しにすると高確率で手戻りになります。

  • 最初に目的と除外範囲を合意し、スコープを固定する
  • 業務シナリオ(トリガー/例外/完了条件)で関係者の認識を揃える
  • 項目マッピングとキー設計でデータ整合性を担保する
  • 方式・非機能・セキュリティ・エラー対応まで要件に含め、運用で詰まらない設計にする

「何を決めればいいか分からない」「ベンダーに丸投げで不安」「見積が妥当か判断できない」といった場合は、要件定義の段階で第三者目線を入れるだけでも失敗確率が下がります。自社の業務に合うAPI連携を最短で形にするために、論点整理から一緒に進めることが重要です。

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