AI導入の要件定義(RFP)の書き方:外注で失敗しない依頼方法

AI導入でRFP(要件定義)が重要な理由:発注の「ズレ」はここで決まる

AI導入を外注する際、最初に作るべき成果物がRFP(提案依頼書)です。RFPは「何を作ってほしいか」を伝える紙…と思われがちですが、実際は“AI導入で達成したい業務成果”と“実現手段の制約条件”を、発注者とベンダーの間で合意するための設計図です。ここが曖昧だと、提案内容の比較ができず、見積もりもブレて、結果的に「想定より高い」「精度が出ない」「現場で使われない」といった失敗に直結します。

特にAI導入は、従来のシステム開発より不確実性が高い領域です。理由は大きく3つあります。1つ目は、精度や品質が“要件”として書きづらいこと(例:正解率何%、誤検知率、業務の許容誤差などを定義しないと揉めます)。2つ目は、データ(量・質・権限・個人情報)次第で成果が変わること。3つ目は、PoC(概念実証)→本番化→運用改善のように段階的に価値を出す必要があることです。RFPが弱いと、PoCで止まり、現場に定着せず終わりがちです。

読み手がITに詳しくなくても、RFPには最低限「目的」「業務範囲」「現状」「期待するアウトプット」「データ状況」「運用条件」を書ければ十分です。技術の細部はベンダーが提案します。発注側が押さえるべきは、“業務として何を楽にしたいのか、誰がいつ使うのか、どこで失敗したくないのか”という実務の芯です。

よくある誤解:「AI導入=チャットボットを入れる」「生成AIを使えば何でも自動化できる」

実際は、業務によってはRPAや検索(ナレッジ基盤)の整備の方が効果が高いケースもあります。RFPは“AIありき”ではなく、まず業務課題の整理から書くと失敗が減ります。

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まず押さえるべき前提整理:AIで解決したい業務課題とスコープ

RFPの最初に書くべきは「AI導入で何を解決するか」です。ここが曖昧だと、ベンダー提案は“最新っぽい提案”になり、現場の課題解決とズレます。まず、業務課題を「困りごと」ではなく、測れる形に落とし込みます。たとえば「問い合わせ対応が大変」ではなく「月間2,000件の問い合わせのうち、定型質問が60%を占め、担当者3名が一次回答に毎日2時間使っている」のように書くと、AI導入の投資対効果が設計しやすくなります。

次に、対象スコープを明確にします。スコープは「業務範囲」「対象部門」「対象ユーザー」「対象チャネル(メール、電話、チャット、社内ポータルなど)」の4点で整理するとブレません。さらに重要なのが、“やらないこと”です。AI導入は広げようと思えば際限なく広がります。RFPには今回の範囲外(例:多言語対応は第二フェーズ、外部顧客向けは対象外、法務レビューは社内で実施)を明記すると、追加費用や炎上を防げます。

AI導入の目的は、大きく「コスト削減」「売上向上」「リスク低減」「スピード向上」に分類できます。目的ごとに成功指標(KPI)も変わります。例として、社内ヘルプデスクなら「一次回答の自動化率」「解決までの平均時間」「担当者工数削減」、営業支援なら「提案書作成時間」「商談化率」「リード対応速度」、品質検査なら「見逃し率」「検査時間」「不良流出の低減」などです。RFPでは、最終KPI(業務成果)と、途中KPI(AIの性能や運用指標)を分けて書くと、PoC段階でも評価ができます。

業務課題の書き方テンプレ(例)

  • 現状:誰が・何を・どのくらいの頻度で・どのくらい時間を使っているか
  • 課題:ボトルネック(属人化、確認工数、判断のばらつき、対応遅延など)
  • 影響:コスト、機会損失、品質、コンプライアンスの観点で何が起きているか
  • 理想:AI導入後にどう変えたいか(例:一次回答は自動、例外のみ人が対応)

RFPに必ず入れる項目:外注で見積もりと提案を比較できる書き方

AI導入のRFPは、ページ数が多いほど良いわけではありません。重要なのは、ベンダーが「作業範囲」「責任分界」「前提条件」を誤解なく把握できることです。以下の項目を入れると、提案比較が一気にしやすくなります。

  • 背景・目的:なぜ今AI導入を検討するのか、業務的な狙い、経営課題との紐づけ
  • 対象業務とユースケース:具体例(入力→処理→出力)と、例外パターン
  • 現行フロー・現行システム:使っている業務ツール、データの在り処、連携要否
  • 求める機能要件:例:検索、要約、分類、FAQ生成、レコメンド、異常検知、OCR、音声文字起こし等
  • 非機能要件:セキュリティ、権限、監査ログ、可用性、レスポンス、運用体制
  • データ要件:データ種類、量、形式、更新頻度、個人情報の有無、利用許諾
  • 成果物・スケジュール:PoC/本番の区分、納品物、検収条件、マイルストーン
  • 予算・契約条件:上限感、支払い条件、保守、SLA、知財・学習データの扱い
  • 提案依頼事項:提案書に必ず回答してほしい質問(後述)

機能要件は「画面やボタンの仕様」よりも、「どんな入力を、どんなルールで、どんな出力にしたいか」を文章で書く方がAI導入では効果的です。例:受信メールを自動分類し、カテゴリ別に担当部署へ振り分け、対応期限を設定し、返信案を提示する—のように業務の流れで書きます。

非機能要件は軽視されがちですが、情シスや大企業ほど重要です。たとえば生成AIを使う場合、「入力した情報が学習に使われない設定にできるか」「社内のみアクセスできるネットワーク構成にできるか」「回答の根拠(参照文書)を提示できるか」などが運用の安心材料になります。ここをRFPで触れておくと、提案の質が上がります。

提案比較をしやすくするコツ

  • 同じ前提で見積もれるよう、必須条件(Must)と希望条件(Want)を分ける
  • ベンダーの裁量領域(例:モデル選定、学習方法)は「提案してください」と明記する
  • 納品物(設計書、ソース、学習済みモデル、運用手順書)の範囲を具体化する

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データと評価設計が成否を分ける:PoCで終わらせない要件定義

AI導入で最も多い失敗が「PoCでは動いたが本番で使えない」です。原因の多くは、RFPにデータ要件と評価方法が書かれていないことにあります。AIは“データで性能が決まる”ため、システム要件より先に、データの現状を棚卸しすることが重要です。

RFPには、少なくとも次を記載しましょう。どれも完璧である必要はありませんが、分からない項目は「不明・要調査」と書いておくと、ベンダーは調査計画を提案できます。

  • データの種類:文書(PDF/Word)、FAQ、チケット履歴、画像、音声、ログ、センサーデータなど
  • 量と期間:件数、ファイル数、保存年数、季節変動の有無
  • 品質:表記揺れ、欠損、誤記、重複、ラベルの有無(正解データ)
  • アクセス:保存場所(ファイルサーバ、SharePoint、Google Drive、基幹DB等)、取得方法、権限
  • 制約:個人情報・機微情報、社外持ち出し不可、匿名化の必要性

次に評価設計です。AI導入では「精度が高い」を合意しないまま進むと、納品時に揉めます。RFPで最低限決めたいのは、評価対象(何を当てるか)、評価データ(どのデータで測るか)、合格ライン(許容水準)、運用時の監視指標です。

例えば問い合わせ分類AIなら、正解ラベル付きの過去チケットを用意し、分類精度だけでなく「重要カテゴリの取りこぼしゼロに近づけたい(再現率重視)」「多少の誤分類は許容(適合率はほどほど)」のように業務リスクに合わせて合意します。生成AIの回答支援なら、正解率よりも「根拠文書の提示率」「誤回答時の抑止(分からない時は分からないと返す)」「禁止回答(法務・規約違反)をしない」などが重要になることもあります。

評価の書き方例(生成AIの社内ナレッジ検索)

  • 目的:社内規程・手順書の検索時間を短縮
  • 評価観点:回答の妥当性、根拠の提示、検索時間、利用者満足度
  • 合格ライン:トップ20問のうち、根拠文書付きで業務上問題ない回答が15問以上、平均検索時間が現状の半分以下
  • 運用:月次で誤回答をレビューし、ナレッジ追加・プロンプト改善を実施

外注先選定と提案依頼のポイント:ベンダーに聞くべき質問集

AI導入の外注は「技術力」だけで選ぶと失敗しやすいです。なぜなら、AIは開発して終わりではなく、運用で改善して価値が伸びるからです。選定基準は、業務理解(現場ヒアリング力)・データ対応力・セキュリティ設計・運用設計・コミュニケーションまで含めて総合的に見る必要があります。

RFPには「提案書に必ず回答してください」という質問を入れておくと、比較しやすくなります。以下はそのままコピペして使える質問例です。

  • 実現方針:今回の業務課題に対し、AI導入の全体アーキテクチャ案(クラウド/オンプレ、利用サービス、連携方式)を提示してください。
  • データ対応:必要データ、前処理、匿名化、ラベル付けの進め方、発注者側の作業を明確にしてください。
  • PoC設計:PoCの目的、期間、評価方法、合否判定、PoC後の本番化ステップを提示してください。
  • 精度・品質の扱い:精度目標の決め方、改善サイクル、誤回答対策(ガードレール)を説明してください。
  • セキュリティ:データの保管場所、アクセス制御、監査ログ、情報持ち出し制限、生成AI利用時の情報漏洩対策を提示してください。
  • 運用:運用体制(誰が何をするか)、問い合わせ対応、障害対応、改善提案の頻度、保守費用の考え方を提示してください。
  • 実績:同業種または近い業務でのAI導入実績、失敗事例と回避策を提示してください。

また、提案比較の観点として、見積もりの内訳粒度も重要です。「PoC一式」ではなく、要件整理、データ調査、開発、テスト、導入、運用引継ぎなどに分かれているかを見ましょう。粒度が粗い見積もりは、後から追加費用になりがちです。契約形態も、PoCは準委任(時間課金)で柔軟に、開発は請負で成果物を明確に、といった分け方が有効な場合があります。

相見積もり時の注意

  • 同じRFPでも、各社が前提を変えて提案すると比較できません。「前提条件は提案書冒頭に明記」と指定しましょう。
  • AI導入は“安い提案が最適”とは限りません。データ整備や運用改善を削ると、結局使われないリスクが上がります。

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RFPひな形(コピペ可):そのまま使える構成サンプル

ここでは、AI導入のRFPとして最低限の構成を、ひな形として提示します。社内稟議やベンダー依頼にそのまま転用しやすいよう、文章は短めにしています。自社の状況に合わせて括弧内を埋めてください。

■RFP:AI導入(提案依頼書)

1. 背景・目的
- 背景:(例:問い合わせ増、属人化、採用難、品質要求の上昇)
- 目的:(例:一次対応の自動化、文書作成の短縮、検査の精度向上)
- 成功指標KPI:(例:工数▲30%、平均対応時間▲50%、誤検知率◯%以下)

2. 対象業務・スコープ
- 対象部門/ユーザー:(例:CS部門、情シス、営業、現場監督)
- 対象チャネル/画面:(例:社内ポータル、Teams、メール)
- 対象外:(例:多言語対応、外部公開、24h対応は次フェーズ)

3. 現状(As-Is)
- 現行フロー概要:(例:受付→分類→担当割当→回答→記録)
- 現行システム:(例:kintone、Salesforce、Google Workspace、基幹DB)
- 課題:(例:検索できない、回答品質がばらつく、二重入力)

4. 要求事項(To-Be)
4-1. 機能要件
- 必須:(例:ナレッジ検索、回答案提示、履歴保存、権限別表示)
- 希望:(例:FAQ自動生成、トーン統一、翻訳)

4-2. 非機能要件
- セキュリティ:(例:SSO、権限、監査ログ、データ持ち出し禁止)
- 性能:(例:通常時3秒以内、同時アクセス◯人)
- 可用性:(例:業務時間帯の安定稼働)
- 運用:(例:月次レビュー、改善提案、問い合わせ窓口)

5. データ要件
- データ種別/形式:(例:PDF、HTML、CSV、画像)
- データ量:(例:規程200件、FAQ500件、チケット3万件)
- 制約:(例:個人情報あり、匿名化が必要、社外持ち出し不可)
- 提供方法:(例:VPN経由、共有フォルダ、API)

6. 進め方・スケジュール
- 想定フェーズ:調査→PoC→本番開発→導入→運用改善
- 希望スケジュール:(例:PoC:1-2ヶ月、本番:3-4ヶ月)
- 成果物:(例:提案書、設計書、実装物、運用手順書)

7. 契約・予算
- 予算感:(例:PoC◯◯万円、本番◯◯万円)
- 契約形態希望:(例:PoCは準委任、本番は請負/準委任併用)
- 知財・データの扱い:(例:学習データは当社に帰属、再利用不可)

8. 提案依頼事項(必須回答)
- 全体方針/アーキテクチャ
- データ整備の進め方と役割分担
- 評価方法と合格ラインの提案
- リスクと対策(精度・セキュリティ・運用)
- 見積内訳と前提条件

このひな形を使う際のポイントは、完璧に埋めようとしすぎないことです。AI導入では、調査して初めて見える課題(データ欠損、権限の壁、業務例外)が必ず出ます。RFPに「不明点は初期調査で明確化し、要件を更新する」旨を入れておくと、現実的な計画になります。

まとめ

AI導入を外注で成功させる鍵は、RFP(要件定義)で「目的」「スコープ」「データ」「評価」「運用」を合意してから走り出すことです。AIは魔法ではなく、業務とデータに合わせて設計し、段階的に改善して価値を積み上げます。だからこそ、発注者側は技術詳細よりも、業務成果と制約条件を明確にし、提案比較できる形に整えることが重要です。

RFPには、背景・目的、対象業務、現状、機能/非機能要件、データ要件、PoCと本番化の進め方、評価方法、運用体制、契約条件を入れましょう。さらに「提案依頼事項(必須回答)」を置くことで、ベンダーごとの差が見え、納得感のある選定ができます。PoCで終わらせないためにも、最初から運用改善まで見据えたAI導入計画にしておくことが、結果的に最短ルートになります。

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