AIベンダーの選び方:提案の良し悪しを見抜く評価軸の作り方

なぜ「AIベンダーの提案」は比較が難しいのか

AI導入を検討し始めたとき、多くの企業が最初につまずくのが「各社の提案をどう比べればいいかわからない」という問題です。見積金額、使うAIの種類、PoC(試験導入)の期間、画面イメージ、実績…提示される情報がバラバラで、しかも専門用語が多く、同じ土俵で評価しづらいのが実情です。

比較が難しくなる原因は、AIは「出来る/出来ない」が一言で決まりにくい技術だからです。例えばRPAやパッケージ導入なら、機能一覧で差が見えます。一方でAI導入は、データの質や業務フロー、現場の運用、例外処理の多さによって成果が大きく変わります。つまり、提案書の見栄えより「前提条件の整理」と「運用まで含めた設計」が成否を左右します

また、AIベンダー側も「失注したくない」ため、魅力的な表現で可能性を広く見せる傾向があります。もちろん悪意とは限りませんが、発注側が評価軸を持っていないと、①実現性が低い提案、②運用負荷が高い提案、③将来コストが膨らむ提案を選んでしまいがちです。

そこで本記事では、ITや開発に詳しくない方でも使える「提案の良し悪しを見抜く評価軸」の作り方を、AI導入の全体像(企画→PoC→本番→運用)に沿って解説します。最後まで読めば、ベンダーの提案を“価格”ではなく“成功確率”で比べられるようになります。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

AI導入の目的を「業務と数値」に落とし込む(評価軸の土台)

ベンダー選定の前にやるべき最重要ステップは、AI導入の目的を「業務のどこを、どれだけ良くするか」に翻訳することです。「生産性を上げたい」「DXを進めたい」だけだと、どの提案も良く見えてしまい、比較ができません。

おすすめは、目的を次の3点で言語化することです。

  • 対象業務:どの部署の、どの作業を対象にするか(例:問い合わせ一次対応、見積作成、検品記録の点検など)
  • 指標:改善を測る数字(例:対応時間、工数、ミス率、応対件数、リードタイム、教育コストなど)
  • 到達ライン:いつまでに、どこまで(例:3か月で月100時間削減、半年で誤入力を30%減など)

ここで重要なのは、「AIで何ができるか」から出発しないことです。AI導入は手段なので、先に業務課題と効果指標を置き、次に最適な手段(AI以外も含む)を検討するほうが失敗しにくくなります。目的が曖昧なまま提案依頼をすると、ベンダーは“それっぽいデモ”を作れてしまい、PoCは成功しても本番で効果が出ないという状況が起きます。

実務では「現場ヒアリング→業務フロー→課題→指標」の順がスムーズです。例えば、問い合わせ対応をAI化したい場合でも、「チャットボットを入れる」ではなく「一次回答で完結する割合を上げ、担当者の割り込み対応を減らす」と定義できれば、提案の評価軸が作れます。さらに、回答の正確性(誤回答のリスク)や、FAQの更新体制(運用)まで論点が自然に広がります。

この“土台”ができると、提案依頼書(RFP)も短くて済みます。長大なRFPより、目的と制約条件が整理されたRFPのほうが、良い提案を引き出せます。

提案の良し悪しを見抜く「評価軸」テンプレ(7つの観点)

ここからは、AIベンダーの提案を比較するための評価軸を、非エンジニアでも運用できる形で提示します。全社で同じ物差しを持てるよう、7つの観点に分けるのがコツです。評価軸は「技術の優劣」ではなく「目的達成に必要な条件が揃っているか」を見るためのものです。

課題定義と要件の明確さ(ゴールが合っているか)

良い提案は、まず課題の理解が深いです。提案書に「現状の業務フロー」「ボトルネック」「AIで置き換える範囲」「AIではなく運用で解く範囲」が明確に書かれています。逆に、「AIで自動化できます」「精度を高めます」だけで、対象業務の切り分けが曖昧な提案は要注意です。

  • 対象外のケース(例外処理)は定義されているか
  • 成果指標(KPI)と測り方が合意できるか
  • 責任分界(どこまでがベンダー、どこからが自社)が明確か

データ前提の確認(データが勝負の9割)

AI導入では、データが整っていないと精度も効果も出ません。良い提案は「必要なデータが何で、どこにあり、どの程度の品質か」を最初に確認します。例えば、文書検索AIなら「FAQ、マニュアル、対応履歴の更新頻度と表記揺れ」、需要予測なら「販売実績、欠品、販促、天候など外部要因」を見ます。

  • データ棚卸し:どのデータが必要で、入手方法は何か
  • データ整備:欠損・重複・表記揺れ・ラベル不足への対応
  • データの権利:利用範囲、持ち出し可否、契約終了後の扱い

データの話が薄い提案は、「PoCはデモデータで見栄え良く、本番で詰む」典型になりやすいです。

解決アプローチの妥当性(AIを使い過ぎていないか)

AIベンダーの提案は、最先端モデルの名前が並びがちです。しかし、目的が工数削減なら「ルール化」「入力フォーム改善」「検索性向上」で十分なこともあります。良い提案は、AI以外の選択肢も含めて比較し、AIを使う理由を説明します。

  • 生成AI(文章作成)なのか、分類・予測なのか、検索・要約なのかが整理されているか
  • 精度が必要な箇所は人手確認(Human-in-the-loop)を設計しているか
  • 業務フローに自然に組み込めるUXになっているか

実現性とリスクの扱い(「できる」ではなく「条件付き」を言えるか)

AIは確率的に動くため、100%を約束しにくい領域があります。誠実な提案ほど「できること/できないこと」「精度が落ちる条件」「運用でカバーする方法」を明記します。逆に、何でもできます型の提案は、プロジェクト後半でトラブルになりやすいです。

  • 失敗パターン:何が起きると精度が落ちるか(例:入力が短すぎる、例外が多いなど)
  • 回避策:入力ガイド、確認画面、例外のエスカレーション設計
  • 検証計画:何をもってPoC成功とするか、事前に合意できるか

セキュリティ・コンプライアンス(情シス観点の必須項目)

AI導入で見落とされがちなのが、情報の取り扱いです。顧客情報、社内機密、個人情報が含まれる場合、クラウド利用規約やデータ保管場所、アクセス制御が重要になります。良い提案は、技術だけでなく運用ルールまで含めたガバナンスを示します。

  • データはどこに保存され、誰がアクセスできるか
  • ログ(入力・出力)をどこまで残すか、監査対応は可能か
  • モデル学習にデータが利用されない設計になっているか(必要に応じて)

体制・コミュニケーション(AIは「伴走」が成果を決める)

AI導入は、要件が途中で固まり、運用しながら改善する性格があります。良いベンダーは、プロジェクト体制(責任者、窓口、レビュー頻度)と意思決定プロセスを明確にします。提案内容が良くても、進め方が悪いと現場に定着しません

  • 週次・隔週の定例、デモの頻度、レビューの方法があるか
  • 仕様変更の扱い(追加費用・スケジュール影響)が透明か
  • 現場教育(利用ルール、プロンプト例、よくある誤り)の計画があるか

費用の内訳と将来コスト(安い提案ほど“後で高い”ことがある)

見積は「開発費」だけでなく、運用費、クラウド利用料、モデル利用料、保守、改善サイクルの工数まで含めて比較しましょう。特に生成AIは、利用量(トークン)や同時アクセスでコストが変動します。

  • 初期費用と月額の内訳が明確か(何が固定で、何が変動か)
  • 追加データ、機能追加、利用部署拡大時の価格体系が妥当か
  • 解約・乗り換え時のデータ移行、ソースコードの扱いが明確か

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

PoC(試験導入)で「成功しやすい提案」かを判定するチェックリスト

AI導入の提案を評価する際、PoCの設計が最も重要な判断材料になります。PoCは「小さく試す」フェーズですが、単なるデモで終わると、時間と費用を使って“分かった気になる”だけになります。良いPoCは、本番の成果に直結する条件を短期間で検証します

以下のチェックリストを、提案比較の質問としてそのまま使えます。

  • PoCの目的:精度検証なのか、運用フロー検証なのか、費用対効果検証なのかが明確か
  • 評価指標:正答率・再現率のような技術指標だけでなく、業務指標(処理時間、手戻り、現場満足度)を入れているか
  • 対象範囲:対象業務の一部を切り出し、例外も含めて検証できる設計か
  • データ準備:自社側の作業(データ抽出、匿名化、ラベル付け)がどれくらい必要か提示されているか
  • 現場参加:実際の利用者が触ってフィードバックできる場(デモ会、試用期間)があるか
  • 失敗時の扱い:精度が出ない場合の打ち手(データ追加、ルール併用、UI改善)と撤退基準があるか

例として、社内文書検索のAI導入でPoCをする場合、単に「検索できました」では不十分です。現場が求めるのは「必要な回答にたどり着けるか」「誤情報が混ざらないか」「文書更新があったときに反映できるか」です。そのため、PoCでは、よくある問い合わせ上位20件を使って、検索結果の妥当性と運用手順(文書の追加・差し替え)の手間まで検証するのが現実的です。

また、生成AIを使う場合は、プロンプト(指示文)を作って終わりではなく、回答の根拠提示、禁止事項(個人情報の出力など)、確認フローをPoCで試すべきです。提案書にその視点が入っているかどうかで、ベンダーの経験値が見えます。

提案依頼(RFP)に入れると失敗しにくい質問集

評価軸を作っても、提案書に必要な情報が揃っていなければ比較できません。ここでは、AI導入の提案依頼時に入れておくと、提案の質が一段上がる質問をまとめます。難しい技術の質問ではなく、意思決定に必要な情報を引き出す質問です。

  • 目的・KPI:当社の目的に対し、KPIをどう定義し、どう測定しますか
  • 対象範囲:AIで自動化する範囲と、運用で対応する範囲をどう切り分けますか
  • 必要データ:必要なデータ一覧、形式、量、品質条件、準備工数を提示してください
  • 精度の考え方:精度が落ちる条件と、その回避策(確認フロー、ルール併用)を提示してください
  • PoC設計:PoCの期間、手順、成功基準、成果物、撤退基準を提示してください
  • セキュリティ:データ保管場所、アクセス制御、ログ、監査、契約終了後のデータ扱いを提示してください
  • 運用:リリース後の改善サイクル、問い合わせ対応、モデル・プロンプトの更新方法を提示してください
  • 費用:初期費用と月額費用の内訳、変動費の条件、拡張時の価格体系を提示してください

ポイントは、相手の言葉で語らせることです。例えば「セキュリティ対策は万全です」では比較になりません。「どこに保存し、誰がアクセスし、ログは何を残し、何日保管するか」を聞くと、具体性で差が出ます。

また、提案の提出形式も揃えると比較が楽になります。例えば「A4で10枚以内、上記質問に沿って回答、見積は内訳必須」と指定するだけで、情報の粒度が揃い、選定会議が進めやすくなります。RFPはベンダーを縛るためではなく、成功に必要な情報を同じフォーマットで集めるための道具です。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

ありがちな失敗パターンと回避策(AI導入あるある)

AI導入で起きやすい失敗は、技術が原因というより「前提のズレ」「運用設計の不足」「期待値の管理不足」から生まれます。ここでは、ベンダー選定の段階で回避できる代表例を整理します。

見積が安い提案を選んだら、後から費用が増えた

初期費用が安い提案は魅力的ですが、運用費や追加開発が別立てで、結果的に高くなることがあります。回避策は、将来コストを含めた比較です。例えば、利用部署が増えた場合の費用、データ更新が増えた場合の費用、問い合わせが増えた場合のサポート費用など、拡張シナリオで見積条件を揃えましょう。

PoCは成功したのに、本番で使われなかった

原因は「PoCがデモ止まり」「現場の運用に乗っていない」「例外処理が設計されていない」ことが多いです。回避策として、PoCの時点で現場が実際に触り、入力の手間、確認フロー、誤り時の対応を含めて検証します。UI/UXや業務フローに落ちないAIは、どれだけ精度が高くても定着しません

精度の議論だけが続き、意思決定できない

AIの精度は重要ですが、無限に改善できます。意思決定のコツは「業務で許容できる誤り」と「人が確認するポイント」を決めることです。例えば、請求書の自動仕訳で100%を目指すと終わりません。高リスク項目だけ人が確認し、低リスクは自動化する設計なら、現実的に効果を出せます。

社内の合意形成が遅れ、プロジェクトが止まる

AI導入は、情シス、現場、法務、セキュリティ、経営の利害が交差します。回避策は、提案段階で「意思決定者」「承認が必要な論点(個人情報、クラウド、ログ)」を洗い出し、ベンダーに説明資料やレビュー会をセットで提案させることです。体制の提案が薄いベンダーは、進行面で苦労しがちです。

ベンダーに丸投げして、社内にノウハウが残らない

特に生成AIや業務AIは、運用しながら改善することで価値が出ます。回避策は、プロンプト例、運用マニュアル、改善ログ、教育コンテンツなど「社内資産」が成果物に含まれているかを確認することです。契約上、成果物の帰属や再利用範囲も明確にしておくと安心です。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

まとめ

AIベンダーの提案は、見栄えや最新技術の名前だけでは比較できません。AI導入を成功させるには、まず「どの業務を、どの数値で改善するか」を定義し、その上で提案を同じ物差しで評価する必要があります。

評価軸としては、課題定義、データ前提、解決アプローチ、実現性とリスク、セキュリティ、体制、費用と将来コストの7観点が有効です。特にPoCは、デモで終わらせず、本番運用に直結する条件(例外処理、現場の使い勝手、更新フロー)まで検証できる設計かどうかが重要になります。

提案の良し悪しは「AIがすごいか」ではなく「目的達成に必要な前提が揃い、運用まで設計されているか」で決まります。本記事の質問集とチェックリストを使い、複数ベンダーの提案を同じフォーマットで揃えて比較すると、選定会議の納得感も高まるはずです。

もし「自社の目的整理から一緒に進めたい」「RFPを作る段階で壁打ちしたい」「PoCの設計が妥当か第三者視点で見てほしい」といった状況があれば、株式会社ソフィエイトまでご相談ください。業務理解からAI導入の設計、開発・運用まで一気通貫で伴走します。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

自動見積もり

CONTACT

 

お問い合わせ

 

\まずは15分だけでもお気軽にご相談ください!/

    コメント

    この記事へのコメントはありません。

    関連記事