クラウドで社内AI/社内GPT基盤を作る方法(全体像と注意点)

社内AI/社内GPTを「クラウド」で作ると何が変わるのか

社内向けAI(社内GPT)は、社員が普段使っている資料やルール、過去の問い合わせ、ナレッジを参照しながら回答・要約・下書き作成をしてくれる仕組みです。ChatGPTをそのまま使うのではなく、自社データを安全に扱える形で“業務に組み込む”ことで、現場の生産性が一段上がります。

そこで選択肢に上がるのがクラウドです。クラウドを使う最大のメリットは「早く始めて、段階的に育てられる」点にあります。オンプレ(自社サーバー)で同じことをやろうとすると、GPUサーバー調達、冗長化、バックアップ、監視、セキュリティ対策などの初期負担が大きく、PoC(試し導入)で詰まりがちです。クラウドなら、必要な機能(ID管理、ログ、暗号化、ネットワーク分離、AI API、検索基盤など)を組み合わせて、まずは小さく作って効果を見ながら拡張できます。

一方で、クラウドは「置くだけで安全・便利になる」わけではありません。特に情シスや経営層が押さえるべきは、データをどこに置き、誰がアクセスでき、何がログに残るのかという設計です。これを曖昧にしたまま進めると、情報漏えいリスクや利用定着の失敗(使いにくい、回答が不正確、現場が怖くて使わない)につながります。

この記事では、専門知識がなくても全体像をつかめるように、社内AI/社内GPT基盤をクラウドで作る方法を「構成要素」「進め方」「注意点」「運用」に分けて整理します。読者の皆さまが社内説明やベンダー選定で困らないよう、判断軸も具体的に示します。

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全体像:社内GPT基盤を構成する6つの要素

社内AI/社内GPTの基盤は、ざっくり言うと「LLM(大規模言語モデル)に、社内情報を安全に渡し、業務画面から使えるようにする」仕組みです。クラウド上では次の要素を組み合わせます。どれか1つ欠けると“実務で使える社内AI”になりません

社内GPT基盤の主要コンポーネント

  • フロント(UI):チャット画面、Teams/Slack連携、社内ポータル、業務システム画面など
  • 認証・権限:SSO(Azure AD/Google Workspace等)、部署別・役職別の閲覧制御
  • データ連携:SharePoint/Google Drive/Box、ファイルサーバー、CRM、社内Wiki等からの取り込み
  • 検索(RAG):社内文書を検索し、関連箇所をLLMに渡して回答精度を上げる仕組み
  • LLM実行:外部API型(例:マネージドAI API)または自社専用のホスティング
  • 監査・運用:ログ、監視、コスト管理、品質評価、改善サイクル

非エンジニアの方が誤解しやすいのは「LLMさえあれば賢い社内GPTができる」という点です。実務では、社内の文書や手順書が最新でない、同じ言葉でも部署で意味が違う、ファイル権限がぐちゃぐちゃ、といった“情報の現実”があります。そこで重要になるのがRAG(検索して根拠を添える)と権限設計です。たとえば「人事評価の資料」と「全社共有の就業規則」を同列に扱うと、権限事故が起きます。クラウドではID連携とアクセス制御を組み込みやすい反面、設定ミスがそのまま事故になるため、最初に“守るべき情報”の棚卸しが欠かせません。

また、現場定着という意味ではUIが非常に重要です。ブラウザの別サイトに行かないと使えない社内GPTは、忙しい部署ほど使われません。Teams/Slackのボット化、社内ポータルへの埋め込み、問い合わせフォームの横に「下書き生成」ボタンを置くなど、業務導線に溶かす設計が成否を分けます。

クラウド選定の考え方:何を基準に決めるべきか

「AWS・Azure・Google Cloudのどれが良いか」はよく聞かれますが、結論は“御社の前提と運用体制で最適が変わる”です。大切なのはブランド比較ではなく、社内AI/社内GPTに必要な条件を満たせるかを、クラウドの機能と運用で判断することです。比較軸を先に決めれば、選定はブレません

  • 認証基盤との相性:既にMicrosoft 365中心ならAzure AD(Entra ID)連携が自然。Google Workspace中心ならGoogle側の連携が楽
  • データ所在地・コンプライアンス:国内リージョン、ログ保管、監査対応、業界規制(金融・医療など)
  • ネットワーク分離:社内ネットワークからのみアクセス、閉域、Private Link/エンドポイントで外部露出を減らせるか
  • LLMの使い方:外部APIを使うのか、クラウド内のマネージドLLMを使うのか、専用環境でホストするのか
  • 検索・データ基盤:RAG用の検索(全文検索/ベクトル検索)、データ取り込みの仕組み、更新頻度に耐えられるか
  • 運用性とコスト:監視、アラート、コスト可視化、権限管理、IaC(設定の自動化)のしやすさ

予算がある企業ほど見落としやすいのが、クラウド利用料の大半が「AIの推論費」よりも「データ連携・検索・ログ・保管・ネットワーク」に寄るケースがあることです。特にRAGで大量文書を取り込むと、インデックス更新やストレージ、ETL(取り込み処理)のコストが積み上がります。対策として、最初から全社文書を入れるのではなく、“使われる業務”から段階的に対象を広げるのが安全です。

もう一つのポイントは「クラウド内で完結する設計」にこだわりすぎないことです。例えば、既存のファイルサーバーを無理に全てクラウドへ移行してから社内GPTを始めると、移行プロジェクトが重くなり、AI導入のスピードが落ちます。現実的には、最初はSharePoint/Google Driveなど既にクラウドにある情報から始め、効果が見えたタイミングで段階的に範囲を広げるのが成功パターンです。

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作り方(実務フロー):小さく始めて安全に拡張する導入手順

社内AI/社内GPT基盤は、技術よりも進め方が重要です。特に非エンジニア主導の場合、いきなり「全社で使えるAI」を目指すと、権限・データ・品質・責任分界が複雑になり失速します。おすすめは、クラウドを前提にPoC→限定公開→本番展開の三段階で進めることです。

業務テーマを絞る(最初の勝ち筋を作る)

まず「どの業務で、何分短縮するか」を決めます。例としては、情シスの一次対応(パスワード/申請/PCトラブル)、営業の提案書下書き、法務の契約レビュー観点の提示、経理の規程照会などが分かりやすいです。ポイントは、質問パターンが繰り返し発生し、根拠文書が存在する業務を選ぶことです。

データ棚卸しと権限設計(事故を防ぐ土台)

次に「何を参照させるか」を決めます。ここで必要なのは、ファイルの分類(公開/社内/部門/機密)と、アクセス権の確認です。社内GPTは“答えを作る”ので、誤って機密を参照すると、回答に混ざって漏えいします。したがって、最初は公開範囲が明確な文書(全社規程、FAQ、手順書)だけで始めるのが安全です。

RAGで根拠付き回答にする(ハルシネーション対策)

業務利用で最も困るのが、AIが自信ありげに間違える現象です。これを減らす基本がRAGです。社内文書を検索し、関連箇所を引用したうえで回答させます。実務では「回答の最後に“参照した文書名・該当箇所”を表示」させると、現場が安心して使えます。“当てるAI”ではなく“根拠を出すAI”にするのがコツです。

UIを業務導線に入れる(使われる形にする)

限定公開の段階では、Teams/Slack連携や社内ポータル埋め込みが効果的です。例えば情シスなら「問い合わせチケット作成前に社内GPTに聞く」導線、営業なら「提案書テンプレの横に要約/下書きボタン」など、行動のついでに使える形にします。別サイトでログインが必要だと、継続利用率が落ちやすいです。

評価指標を決めて改善する(精度ではなく業務成果)

最後に、評価は“モデル精度”ではなく業務KPIで見ます。例:一次対応の自己解決率、問い合わせ件数の減少、作成時間の短縮、回答の根拠提示率、誤回答の報告件数など。クラウド上ならログから改善点を見つけやすい一方、ログの扱い自体が個人情報・監査対象になり得るため、ログの保存期間と閲覧権限も決めておきます。

注意点:セキュリティ・情報漏えい・法務をどう押さえるか

社内AI/社内GPTで最も避けたいのは「便利にした結果、情報事故が起きる」ことです。クラウド利用では、設定と運用の合わせ技で守ります。特に情シス・管理部門が押さえるべき注意点を整理します。“AIだから特別”ではなく、情報システムとして当然の統制をAIに適用するイメージです。

  • データの持ち出し:プロンプトに機密情報を入れないルールだけでは不十分。入力時に警告、機密語の検知、コピー制限などの仕組みを検討
  • 学習への利用有無:外部AI API利用時に「入力が学習に使われるか」「保存されるか」を契約・設定で確認(ベンダーにより異なる)
  • 権限の継承:SharePoint/Driveの権限を検索・回答側に正しく反映できるか。反映できないなら、対象データを限定する
  • ログと個人情報:会話ログは業務改善に有用だが個人情報を含み得る。保存期間、マスキング、閲覧者、目的を明確化
  • 監査対応:誰がいつ何を参照し、どんな回答が返ったか。クラウドの監査ログと社内規程を整合させる
  • プロンプトインジェクション:文書内に悪意ある指示が混ざるとAIが誤動作する可能性。外部持ち込み文書の扱いとガードレールが必要

特に「社内文書をAIに食わせる」という表現が独り歩きしがちですが、実際には“食わせる”のではなく、検索で必要部分だけを一時的に参照させる設計(RAG)が主流です。これにより、全文を丸ごと外部へ送るリスクを下げられます。ただしゼロにはなりません。だからこそ、クラウドのネットワーク制御(外部接続の制限、Private接続)、暗号化、鍵管理、DLP(情報漏えい対策)などを組み合わせます。

また法務観点では、出力物の著作権・機密・責任分界を明確にします。社内GPTが生成した文章をそのまま対外資料に貼り付ける運用は危険です。「社内向けの下書き」「最終責任は人がレビュー」をルール化し、特に契約書・IR・プレスなどは必ず人の承認フローに通す設計にします。

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運用の勘所:コスト・品質・定着を回す仕組み

社内AI/社内GPTは、導入して終わりではなく“育てるシステム”です。クラウドは拡張しやすい反面、放置するとコスト増や品質低下が起きます。運用設計で差がつくポイントをまとめます。最初から運用の担当とルールを決めるだけで失敗確率が下がります。

コスト管理:使われるほど費用が増える前提で設計する

AIの利用は変動費になりがちです。対策として、部署別の利用上限、時間帯別の制限、長文入力の抑制、キャッシュ(同じ質問の再利用)、モデルの使い分け(軽量モデルで十分な業務は切り替え)などを行います。クラウドのコスト可視化機能で、どの部署・どの機能が費用要因かを見える化し、“費用対効果の良いユースケース”を伸ばすのが現実的です。

品質管理:回答精度より「業務で困らない」を目標にする

品質は、正答率だけでは測れません。「根拠が提示される」「不確実なときは分からないと言う」「最新文書を参照する」「禁止領域(人事評価・個人情報など)には答えない」などの振る舞いが重要です。運用では、現場からのフィードバック(この回答は役立った/誤り/古い)をボタンで回収し、月次で改善します。文書更新が頻繁な部署では、取り込みの自動化(定期同期)と、古い文書を参照しない仕組み(版管理)が鍵です。

定着:教育より「使う理由」を作る

研修だけしても使われません。定着のコツは、社内GPTを“検索の代替”ではなく“仕事の一部”にすることです。例えば、問い合わせフォームに「入力内容を要約して送信」「関連規程を提示」、議事録作成フローに「要点抽出」「決定事項/宿題の整理」を組み込みます。さらに、プロンプト例(よくある聞き方)をテンプレ化し、現場の迷いを減らします。最初の2週間で“便利”体験を作れるかが勝負です。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

まとめ

クラウドで社内AI/社内GPT基盤を作る最大の利点は、必要な機能を組み合わせて小さく始め、効果を見ながら安全に拡張できる点です。一方で、成功の鍵はLLM選びではなく、データ棚卸し・権限設計・RAGによる根拠提示・業務導線への組み込み・運用体制にあります。

進め方としては、対象業務を絞ったPoCから始め、限定公開で現場フィードバックを取りつつ、ログとKPIで改善を回しながら全社展開するのが現実的です。注意点は、情報漏えいを「ルール」だけで防ごうとせず、クラウドの認証・ネットワーク・監査ログ・DLPなどを用いて仕組みで担保すること。さらに生成物の利用ルール(最終責任は人がレビュー)を整備し、法務・コンプライアンスと整合させましょう。

「自社ではどこから始めれば良いか」「既存のMicrosoft 365/Google Workspace環境で最短ルートは何か」「セキュリティ要件を満たした設計にしたい」といった段階で迷ったら、要件整理から一緒に進めるのが近道です。

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