クラウド移行方式(リフト&シフト/リファクタ/リビルド)を選ぶ方法

クラウド移行方式の全体像:結局「何を優先するか」で決まる

クラウド移行を検討するとき、多くの担当者が最初につまずくのが「方式が多すぎて選べない」という点です。代表的な選択肢は、リフト&シフト(そのまま持っていく)、リファクタ(中身を直して最適化する)、リビルド(作り直す)です。どれが正解というより、事業・業務で何を最優先したいかによって最適解が変わります。

ここで重要なのは、移行方式はITの流行ではなく「投資判断」だということです。例えば、早く移行してサーバ老朽化リスクを消したいのか、ランニングコストを大きく下げたいのか、将来の機能追加を速くしたいのか。優先順位が曖昧だと、移行後に「想定より費用が高い」「性能が出ない」「改修が遅い」といった不満が出やすくなります。

3方式を一言でまとめると

  • リフト&シフト:移行スピード重視。まずクラウドに“引っ越し”して延命する。
  • リファクタ:性能・コスト・運用性のバランス。必要な箇所から“改修しながら移行”する。
  • リビルド:将来価値重視。業務・UXも含めて“作り直し”で競争力を上げる。

本記事では、専門知識がなくても判断できるように、各方式のメリット・落とし穴・向くケースを整理し、最後に「選び方の手順(チェックリスト付き)」まで落とし込みます。情シスの方はもちろん、経営・事業側の方が社内合意を作る際にも使える内容を目指します。

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まず押さえる3方式:メリット・デメリットと「向いている会社」

リフト&シフト:最短でクラウド化したいときの現実解

リフト&シフトは、今のシステム構成を大きく変えずに、オンプレ(自社サーバ)からクラウドへ移す方法です。例えるなら、家具配置を変えずに「家ごと引っ越す」イメージです。移行が早く、初期の設計変更が少ないため、期限が迫っている場合に強い選択肢です。

  • メリット:短期間で移行しやすい/既存アプリの変更が少ない/まずはデータセンター契約や保守切れリスクを解消できる
  • デメリット:クラウドの利点(自動伸縮、運用自動化など)を活かしにくい/“移しただけ”でコスト最適化が進まないことが多い
  • 向くケース:サーバ更改期限が近い/データセンター退去・契約終了が迫る/とにかく停止リスクを下げたい

注意点は「クラウドにしたのに高い」問題です。オンプレ前提で組まれた構成をそのまま持っていくと、クラウドの従量課金と噛み合わず、想定より月額が上がることがあります。リフト&シフトを採るなら、移行後の第2フェーズとしてコスト見直し(サイジング、予約・割引、不要リソース削除)を計画に組み込むのが安全です。

リファクタ:運用負荷とコストを下げたい「現場向け」最適化

リファクタは、アプリの作りを部分的に見直し、クラウドに合う形へ調整する移行です。例えば、手作業運用を自動化しやすい構成に変えたり、クラウドのマネージドサービス(運用込みのサービス)を使って保守工数を下げたりします。スピードと効果のバランスが取りやすいため、最も現実的に選ばれやすい方式でもあります。

  • メリット:運用工数を減らしやすい/性能・可用性を上げやすい/長期的にコスト最適化が効きやすい
  • デメリット:設計・改修が必要で、リフト&シフトより期間と体制が要る/影響範囲の見積もりが甘いと遅延する
  • 向くケース:運用が属人化している/障害対応が多い/月次の手作業が多い/今後も機能追加していく予定がある

リファクタは「どこまで直すか」の線引きが肝です。全部を理想形にしようとすると、実質リビルド並みの規模に膨らみます。成功しやすい進め方は、費用対効果が出る箇所から直すことです。たとえば、バッチ処理の失敗が多い部分、ピーク時に遅くなる部分、保守が難しいデータ連携部分など、痛みの強いところから優先します。

リビルド:システムだけでなく業務も変える「攻め」の選択

リビルドは、既存システムを参考にしつつ、クラウド前提で新しく作り直す移行です。例えるなら、古い家をリフォームではなく建て替える判断です。将来の拡張性やUX、データ活用まで含めて設計し直せるため、事業成長や業務改革と相性が良い一方、期間・費用・意思決定の難易度は上がります。

  • メリット:技術的負債を一掃できる/セキュリティや権限設計を作り直せる/新機能追加が速くなる
  • デメリット:要件定義が重い/業務側の合意形成が必要/移行期間が長く、並走運用が発生しやすい
  • 向くケース:既存が老朽化して改修が限界/業務プロセス自体を変えたい/新規事業や顧客向けサービスの成長が見込める

リビルドは「やるなら勝ち筋を作る」ことが重要です。目的が“クラウド化すること”だけだと、投資が大きい割に成果が見えにくくなります。例えば「顧客対応をオンライン化して工数を削減」「データ統合で経営KPIを可視化」「障害対応を減らして機会損失を抑える」といった事業・業務の成果指標を先に置くと、判断がブレにくくなります。

失敗しやすいポイント:方式選びでズレる3つの原因

クラウド移行でよくある失敗は、技術のミスというより「前提のズレ」です。特に専門部署ではない方が関わる場合、判断材料が不足しがちで、結果として移行後に期待外れが起きます。ここでは、方式選びでズレる典型パターンを3つに整理します。

「移行=コスト削減」と思い込む

クラウドは使い方次第で安くも高くもなります。オンプレのように“固定費中心”ではなく、リソース量・データ転送・バックアップ・監視などが積み上がります。リフト&シフトで構成を変えない場合、むしろ高く見える期間が出ることもあります。コスト削減が目的なら、最初からリファクタ(特にマネージド化や自動停止など)も視野に入れるのが現実的です。

「全部一気に変えたい」でスコープが爆発する

クラウド移行は、サーバ、ネットワーク、アプリ、運用、セキュリティ、権限、監査、BCPなど多領域にまたがります。そこへ「ついでに機能も追加」「画面も刷新」「業務も改善」を乗せると、リビルド級の難易度になります。方式の前に“移行の目的”と“やらないこと”を決め、段階的に成果を出す設計が重要です。

アプリより「データ移行」と「周辺連携」が難所になる

実務上つまずきやすいのは、システム本体よりも、データの持ち方・移し方と、周辺システム連携(会計、販売、SaaS、ファイルサーバ、メール、認証など)です。ここを軽視すると、移行直前で「データが合わない」「連携先が動かない」「切替日に止められない」が起きます。方式に関係なく、早い段階で“データと連携の棚卸し”を行うことが、成功確率を大きく上げます。

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選び方の実務手順:非エンジニアでも判断できるチェックリスト

方式選定を「感覚」から「再現性のある判断」に変えるために、以下の手順で整理するとスムーズです。会議体でも使えるように、質問形式でチェックできます。ポイントは、技術の正しさより社内の合意を取りやすい軸(期限・リスク・コスト・将来性)で揃えることです。

方式選定チェックリスト(まずはYes/Noで回答)

  • 期限:サーバ保守切れ・更改期限が12か月以内に迫っているか?
  • 停止制約:切替時に長時間止められない(夜間・休日も難しい)か?
  • 変更多さ:現行の改修を担当できる人材(社内/外注)が確保できるか?
  • 運用負担:障害対応・パッチ適用・バックアップなどが属人化/負担過大か?
  • 将来:今後2〜3年で機能追加や利用増が見込まれるか?
  • 業務改革:現行業務が非効率で、システム刷新を機に変えたいか?
  • 投資:初期費用よりも、3年総額(TCO)で最適化したいか?

目安として、期限が厳しく「まず止血」が必要ならリフト&シフトが現実的です。一方、運用負担や月次作業が重いならリファクタで効果が出やすいです。業務改革や新規サービスが絡むならリビルドを検討します。

  1. 目的を1行で定義:例「サーバ更改を回避し、障害リスクを下げる」「月次処理を自動化して工数を半減」
  2. 制約を列挙:停止可能時間、予算上限、リリース時期、監査要件、社内体制
  3. 現状棚卸し:システム構成、データ量、バッチ処理、外部連携、利用部門、運用手順
  4. 3年総額で比較:初期費用+月額+運用工数(人件費換算)+変更コスト
  5. 段階計画に落とす:「今やること」「移行後にやる最適化」「将来の刷新」の3層に分ける

特に「3年総額で比較」は重要です。リフト&シフトは初期が安い反面、運用が重い・クラウド料金が下がりにくい場合があります。逆に、リファクタや一部リビルドは初期が増えても、運用工数と障害コストが減り、結果として総額が下がることがあります。社内説明は“初期費用”ではなく“総額とリスク”で行うと合意を作りやすいです。

方式別の進め方:スケジュールと成果物のイメージ

方式を決めたら、次は「何をいつまでに決めるか」を具体化します。ここでは、非エンジニアの方でも進捗判断ができるように、方式ごとの進め方と成果物(確認すべき資料)を示します。外注する場合も、この成果物が揃っているかで品質を見やすくなります。

リフト&シフトの進め方

  • 最初の山:現行構成の把握(サーバ台数、OS、DB、ミドルウェア、ネットワーク、監視、バックアップ)
  • 設計の要点:クラウド側の同等構成、VPN/閉域、権限、ログ保管、バックアップ方式
  • テストの要点:性能劣化がないか、夜間バッチが時間内に終わるか、外部連携が切れないか

確認したい成果物は、移行手順書(切替手順と戻し手順)、クラウド構成図、運用設計(監視・障害時対応)、費用見積もり(想定使用量の前提付き)です。「戻せる計画」があるかは必須チェックポイントです。

リファクタの進め方

  • 最初の山:ボトルネックと運用負担の特定(頻発障害、手作業、ピーク遅延、属人運用)
  • 設計の要点:マネージドサービスの採用、バッチの再設計、冗長化、自動スケール、IaC(構成のコード化)
  • 移行の要点:段階リリース(機能単位/サービス単位)で影響範囲を小さくする

確認したい成果物は、改善対象の優先順位表(効果・難易度・リスク)、新旧比較の運用フロー、SLA/可用性方針、セキュリティ設計(権限・ログ・鍵管理)です。特に運用がどう楽になるかが文章化されているかを見ると、実効性が判断しやすくなります。

リビルドの進め方

  • 最初の山:業務要件の再定義(現行踏襲ではなく、あるべき業務から設計)
  • 設計の要点:ドメイン設計、データモデル、権限、監査、API連携、将来拡張の方針
  • 移行の要点:並走運用(新旧同時)とデータ同期、段階切替、教育・マニュアル整備

確認したい成果物は、業務フロー(現状→理想)、要件定義書、画面や権限のプロトタイプ、移行計画(データ移行と並走期間)、受入基準です。リビルドは特に、「いつ何が使えるようになるか」をマイルストーンで明確にし、途中で価値を出す設計(段階リリース)が重要です。

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ケーススタディ:あなたの会社ならどれ?よくある3パターン

抽象論だけだと判断しづらいので、よくある状況別に「選び方の目安」を示します。実際には混在が多いですが、まずは自社に近いパターンを見つけると整理が進みます。

パターンA:更改期限が近い、まず止めたくない(リフト&シフト寄り)

「来年で保守が切れる」「データセンター契約更新が難しい」「現担当が退職しそう」など、時間制約が強い場合は、リフト&シフトでリスクを先に下げるのが現実的です。ただし移行後に、コスト最適化と運用標準化を必ず入れます。“移して終わり”にしない二段構えが成功の形です。

パターンB:運用がつらい、障害が多い、でも業務は大きく変えたくない(リファクタ寄り)

手作業が多く、月末月初が炎上しがち、監視アラート対応が止まらない、という会社はリファクタが効きます。例えば、バッチ処理をキュー化して失敗時の再実行を簡単にする、DBをマネージドにしてパッチ適用を減らす、ログを集約して原因特定を早くするなど、業務を変えずに運用品質を上げられます。現場の痛みを減らす投資として説明しやすいのも利点です。

パターンC:既存が限界、業務も変えたい、競争力を上げたい(リビルド寄り)

「改修のたびに時間と費用がかかる」「画面が古く現場が使いにくい」「データが分断され意思決定が遅い」といった状態なら、部分改修では焼け石に水になりがちです。リビルドは大変ですが、業務プロセス・データ・権限を整理し直せるため、将来的な変更スピードが上がります。ここでは“何を速くしたいのか(開発か、業務か、意思決定か)”を明確にし、投資対効果を言語化するのがポイントです。

外注・ベンダー選定で見るべきポイント:見積もりを“比較可能”にする

情シスや経営層が困るのが、ベンダー見積もりの比較です。方式が違えば当然価格も違い、提案の粒度も異なります。比較可能にするには、見積もりの前提条件を揃えることが重要です。

  • 前提を明記:対象範囲(どのシステム・どの連携まで)、停止可能時間、データ量、性能要件、運用時間帯
  • 成果物の定義:構成図、手順書、運用設計、テスト計画、教育資料、移行後の最適化計画
  • 費用の内訳:初期(設計・構築・改修・テスト・移行)と、月額(クラウド利用料・運用保守・監視)
  • 体制と責任分界:誰が障害対応するか、セキュリティ運用(権限管理・ログ監査)は誰が担うか

また、提案内容で見たいのは「移行後をどう運用するか」まで踏み込んでいるかです。クラウドは運用が変わります。監視・ログ・バックアップ・権限・変更管理が設計されていない移行は、後から必ず手戻りが起きます。

最後に、方式は混ぜられます。例えば「基幹はリフト&シフトで期限対応し、周辺のレポート基盤はリファクタ、顧客向け画面はリビルド」のように、業務影響と投資対効果で分けるのが合理的です。全部を同じ方式で揃える必要はありません。

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まとめ

クラウド移行方式(リフト&シフト/リファクタ/リビルド)は、技術選定というより期限・リスク・運用・将来価値の優先順位で決まります。最短でリスクを下げたいならリフト&シフト、運用負荷やコストを下げつつ改善したいならリファクタ、業務やサービスを変えて競争力を上げたいならリビルドが有力です。

失敗を避けるコツは、目的を1行で定義し、制約(停止時間・期限・体制)を先に固め、データと周辺連携を早めに棚卸しすることです。さらに、初期費用だけでなく3年総額(TCO)とリスクで比較すると、社内合意が作りやすくなります。

「自社はどこから手を付けるべきか」「リフトで急ぐべきか、リファクタで効果を狙うべきか」「部分的にリビルドすべきか」など、状況によって最適解は変わります。方式選定の整理や、移行計画の作成・見積もり比較から進めたい場合は、第三者視点での棚卸し・要件整理が有効です。

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