基幹システム・レガシーをAPI連携する方法(段階的に進める手順)

Contents

基幹システムのAPI連携が求められる背景(「変えたい」のに変えられない問題)

基幹システム(販売・在庫・会計・人事など、会社の中核業務を支えるシステム)は、長年の運用で業務に深く根付きます。その一方で、クラウドサービスや新しい業務アプリを導入しようとすると「データがつながらない」「二重入力が増える」「最新の分析ができない」といった壁にぶつかりがちです。そこで現実的な解として注目されるのが、基幹システム・レガシーをAPI連携して“つなぎながら少しずつ新しくする”アプローチです。

ただし、API連携は単に「APIを作れば終わり」ではありません。レガシー側は仕様書が古い・担当者がいない・改修に時間がかかるなど制約が多く、連携先もSaaSごとにデータ形式や権限が異なります。ここで重要なのは、いきなり全体最適を狙わず、影響範囲を限定して段階的に進めることです。小さくつないで価値を出し、運用を安定させながら対象を広げるほど、失敗確率は下がります。

この記事では、開発の専門知識がない経営者・マネージャー・情シスの方向けに、基幹システム(レガシー)をAPI連携する代表的な方法と、現場でつまずきやすいポイント、段階的に進める手順を整理します。結論から言うと、「どの方式でつなぐか」以上に、「どの順番で・どの粒度で・どこまで責任分界を決めるか」が成否を左右します。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

まず押さえる:API連携で実現できること/難しいこと

API連携とは、ざっくり言えば「別システム同士が決められたルールでデータを渡し合う仕組み」です。Excelの手作業やCSVの受け渡しを減らし、入力ミスやタイムラグを抑えられます。たとえば、受注が入ったら在庫を引き当て、出荷指示を出し、請求データを会計へ渡す、といった一連の流れを自動化しやすくなります。

一方、基幹システム・レガシーのAPI連携には「難しいこと」もあります。代表例は次の通りです。

  • データ定義が揺れている:同じ「顧客」でも部署やシステムごとに項目・コード体系が異なる
  • 整合性の責任が曖昧:どちらが正(マスタ)か、どのタイミングで更新するかが決まっていない
  • 性能・運用の制約:夜間バッチ前提、ピーク時間は改修不可、監査対応が必要など
  • 障害時の影響が大きい:連携が止まると受注・出荷・請求まで連鎖する

さらに誤解されやすい点として、APIは「リアルタイム連携」を連想しがちですが、実務では“準リアルタイム”や“バッチ連携”の方が安定し、費用対効果が高いケースが多くあります。重要なのはスピードよりも、業務が破綻しない整合性と運用品質です。

この前提を踏まえ、以降では「どんな方法でAPI連携するか(選択肢)」と「段階的にどう進めるか(手順)」を分けて解説します。

API連携の代表的な方式(レガシーと“どうつなぐ”か)

基幹システム・レガシーをAPI連携する方法は、大きく分けると「既存機能を活かしてつなぐ」か「外付けでつなぐ」か「システムを置き換えながらつなぐ」か、の選択になります。現場でよくある方式を整理します。

既存のインターフェースを活かす(ファイル/バッチ+API化)

レガシー側にすでにCSV出力や夜間バッチがある場合、それを起点に外側でAPIを提供する方法です。具体的には「基幹から出したファイルを連携基盤が取り込み、他システム向けにAPIとして提供する」などです。レガシー改修が最小で済む一方、リアルタイム性は限定されます。まずは二重入力を潰したいときに相性が良いです。

DB直結は最終手段(ただし現実解になることも)

APIがなく、画面改修も難しい場合に「データベースを直接参照して連携する」案が出ます。一般に推奨されにくいのは、スキーマ変更や負荷、監査面のリスクがあるためです。ただ、読み取り専用(参照系)に限定し、アクセス権限や負荷対策、変更検知の仕組みをきちんと設計できるなら、移行期の“暫定API”として機能することもあります。判断の要は、運用で守れるルールを前提にできるかです。

RPA・画面操作でつなぐ(緊急避難として)

基幹システムがブラックボックスで改修不能な場合、RPAで画面操作を自動化して連携するケースもあります。短期で成果は出ますが、画面変更に弱く、エラー時の復旧も難しいため、長期運用の本命にはなりにくいです。「まず止血する」「半年以内に本方式へ移行する」など期限付きの位置付けが安全です。

連携基盤(iPaaS/ESB)やAPIゲートウェイを挟む

連携先が複数(SaaS、データ分析基盤、モバイルアプリ等)に増えると、システム同士を都度つなぐのは破綻しやすくなります。そこで、連携基盤(iPaaS/ESB)やAPIゲートウェイを挟み、認証・ログ・変換・再送などを共通化します。特に情シス主導でガバナンスを効かせたい企業では効果が大きいです。「つなぐ数」が増えるほど、共通基盤の価値が上がると考えると判断しやすいでしょう。

段階的なモダナイゼーション(ストラングラー・パターン)

いきなり基幹システムを全面刷新するのではなく、周辺から新機能をAPIで切り出して置き換える進め方です。たとえば「まず顧客参照APIを新しく作り、次に受注登録、次に出荷…」というように、レガシーを少しずつ細らせます。投資を分割でき、失敗時のダメージを抑えられるのが強みです。一方で、移行期間は“新旧が共存”するため、データ整合性や運用設計が重要になります。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

段階的に進める手順(現場で失敗しにくいロードマップ)

ここからが本題です。基幹システム・レガシーをAPI連携するプロジェクトは、技術より「進め方」でこけます。以下は、専門知識がない立場でも判断しやすいように、段階的な手順としてまとめたものです。

業務起点で「連携の目的」を1つに絞る

最初にやるべきは「APIを作ること」ではなく、業務の目的を明確にすることです。例としては「受注の二重入力をなくす」「在庫の引当ミスを減らす」「請求締めの手作業を半減する」など。目的が曖昧だと、要件が膨らみ、関係者が増え、基幹システム改修の影響調整で止まります。最初は“1業務・1成果”に絞るのが現実的です。

対象データを棚卸しし、マスタの正(ゴールデンソース)を決める

API連携はデータの受け渡しです。つまり、顧客・商品・価格・在庫・取引先・請求先など、どのデータをどこが管理するかを決めないと事故が起きます。典型的な事故は「SaaS側で顧客名を修正したが基幹に戻らず、請求書の宛名が旧名のまま」などです。

  • どのデータが“マスタ”(正)か
  • どの更新は許可するか(片方向/双方向)
  • 更新のタイミング(即時/日次/締め処理後など)

これを合意してから設計に入ると、手戻りが激減します。

「参照系」から始めて、小さく成功させる

段階的に進めるうえで鉄板なのが、最初は参照(読むだけ)のAPI連携から始めることです。例えば「基幹の在庫を参照するAPI」「顧客情報を参照するAPI」など。更新(書き込み)を含めると、ロールバック、トランザクション、エラー時の復旧など難易度が跳ね上がります。まずは“見える化・参照”で価値を出し、次に更新を扱う順が安全です。

“境界”を作る:APIの入口を一本化し、内部を隠す

レガシーを直接いじるのが難しいほど、外側に「API層」を置いて境界を作る価値が上がります。これにより、連携先は「決まったAPI」だけを見ればよく、基幹側の変更(テーブル構造やファイル形式など)を内部に閉じ込められます。APIの入口を一本化すると、認証、アクセス制御、ログ、監視、レート制限なども共通化できます。

このとき大事なのが、APIを「基幹の内部構造の写し」にしないことです。たとえば、基幹の複雑なコード体系をそのまま返すと、連携先がその仕様に依存してしまい、将来の刷新が難しくなります。APIは“利用側が理解できる言葉”に翻訳する発想が重要です。

障害前提で設計する(止まっても業務が回る)

連携は必ず止まります。ネットワーク、証明書期限、基幹メンテ、SaaS側の障害など、原因は様々です。重要なのは、止まったときに業務が破綻しないことです。設計としては以下がポイントです。

  • 再送できる:失敗したデータを後で安全にやり直せる(キュー、リトライ、デッドレター等)
  • 二重登録しない:同じ受注を2回送っても結果が壊れない(冪等性)
  • 手動の逃げ道:緊急時の手順(暫定CSV、手入力、締め処理の延長)を用意
  • 監視できる:どこで止まっているかが一目で分かる(ログ、アラート)

情シスの方にとっては、「運用手順書が作れる設計か?」が判断軸になります。運用できないAPI連携は、導入後に必ず炎上します。

検証→パイロット→本番の順に“業務カレンダー”へ合わせる

基幹システムは締め処理・棚卸・決算など、触れない期間があります。API連携の切り替えは、業務カレンダーとセットで計画しないと進みません。おすすめは、検証環境でデータ整合性の確認をした後、1部署・1拠点・1商品カテゴリなど範囲を絞ったパイロットを行い、問題が出尽くしてから本番範囲を広げる流れです。“一斉切替”ではなく“段階展開”にすることで、現場の抵抗も下がります。

設計・実装で押さえる要点(専門用語をかみ砕いて)

ここでは、発注側が知っておくと失敗を避けやすい設計要点をまとめます。細かい実装言語の話ではなく、発注仕様・レビューで確認できる観点に寄せています。

APIの種類:同期(すぐ返る)と非同期(後で反映)を使い分ける

「在庫を見せたい」「顧客を検索したい」などは、APIを呼んだらすぐ結果が返る同期型が向きます。一方、「受注登録」「請求作成」などは、後続処理が重かったり失敗時の復旧が重要だったりするため、非同期(受け取ってキューに積み、順番に処理して結果を通知)にすると安定します。“すぐ返すべきもの”と“確実に通すべきもの”は別物と捉えると判断しやすいです。

データ変換と項目定義:最初に“辞書”を作る

連携では「項目の意味」がズレやすいです。例:基幹の「出荷日」が実は「出荷指示日」だった、など。そこで、APIの入出力項目について、項目名・型(文字/数値/日付)・必須/任意・桁数・コード体系・例外(未確定時は空)をまとめたデータ辞書を作ります。これがあると、ベンダー間・部署間で会話が揃い、品質が上がります。

セキュリティと権限:社内だから安全、ではない

基幹のデータは機密度が高く、API連携で漏えいリスクが増えることがあります。最低限、誰が何を呼べるか(認証・認可)、通信の暗号化、ログの保全、アクセスの制限(IP制限等)を設計します。加えて、個人情報を扱う場合はマスキングや参照範囲の制御も重要です。“便利になるほど攻撃面も広がる”点を前提に、情シス・セキュリティ部門と早めに合意しましょう。

監査・内部統制:ログと証跡を「後付け」しない

特に大企業では「誰が、いつ、何を変更したか」を追えることが求められます。API連携でデータ更新が発生する場合、更新要求のID、処理結果、エラー理由、再送履歴などが追える必要があります。運用が始まってから「ログが足りない」と気づくと、追加改修が高くつくため、最初から要件に入れておくのが得策です。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

よくある失敗パターンと回避策(予算を溶かさないために)

基幹システム・レガシーのAPI連携では、同じ失敗が繰り返されます。ここでは、発注側が気づきやすい形で紹介します。

「全部つなぐ」から始めて頓挫する

最初から販売・在庫・会計・物流・CRM…と範囲を広げると、関係者が増え、合意が取れず、要件が発散します。回避策は、最初のスコープを“業務の痛みが強いところ”に絞り、参照系から始めることです。成果が見えると、次の予算も取りやすくなります。

レガシーの仕様が分からず、見積もりがブレる

基幹が古いほど「触ってみないと分からない」部分が出ます。その結果、当初見積もりから膨らみ、信頼関係が崩れます。回避策は、いきなり本開発に入らず、短期間の調査フェーズ(現状解析・データ確認・性能確認)を切り出して契約することです。調査の成果物(データ辞書、連携方式案、概算スケジュール)が揃えば、次フェーズのブレが減ります。

連携後の運用が回らない(属人化・夜間対応地獄)

連携は作って終わりではなく、エラー対応・再送・問い合わせ対応が必ず発生します。属人化すると担当者が休めず、結局手作業に戻ります。回避策は、監視・アラート・運用手順(一次切り分け、再送手順、エスカレーション)まで含めて要件化することです。情シスが運用するのか、ベンダーが運用するのか、責任分界も明確にしましょう。

データ整合性が崩れて現場が混乱する

二重登録、反映遅延、コード不一致などが重なると「どれが正しいの?」となり現場の信頼を失います。回避策は、マスタの正を決める、双方向更新を避ける、同期のタイミングを業務に合わせる、例外時の扱い(未確定、取消、返品)を事前に決めることです。“例外こそ仕様”という意識で設計しましょう。

導入イメージ:段階的API連携のミニ事例(現場で起こる変化)

ここでは、段階的に基幹システム・レガシーをAPI連携したときの進み方を、業務シーンでイメージできるように例示します(業種を問わず起こりやすい形にしています)。

段階1:在庫・受注の参照APIで二重確認を削減

営業やコールセンターが在庫を確認するたびに基幹画面へログインし、検索し、転記していた状況を想定します。まずは在庫・納期の参照APIを用意し、Web画面やCRMから呼べるようにします。これにより、問い合わせ対応が早くなり、転記ミスも減ります。参照のみなので、基幹への影響が限定され、初期の成功体験を作りやすいです。

段階2:受注登録を非同期化し、エラー再送を標準化

次に、受注登録をAPI連携にします。ただしリアルタイム同期で基幹へ直書きすると、基幹側の一時停止や性能劣化に引きずられます。そこで、受注は一旦キューに受け、順番に基幹へ登録。失敗したら理由付きで一覧化し、担当者が再送できるようにします。これにより、現場は「止まったら終わり」ではなく「後で確実に通す」運用ができます。

段階3:請求・会計連携を締め処理に合わせて安定運用

請求や会計は締め処理があり、ルールが複雑です。ここは“準リアルタイム”にこだわらず、締めタイミングに合わせたバッチ+API(もしくはファイル連携をAPI化)で安定運用を狙うのが現実的です。監査・証跡要件も強い領域なので、ログと突合(何件送って何件反映されたか)を標準化します。段階を踏むことで、基幹の刷新を待たずに業務の自動化を広げられます。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

まとめ

基幹システム・レガシーをAPI連携する成功のコツは、「最適な技術」よりも「段階的な進め方」にあります。最初は目的を1つに絞り、データの正(マスタ)を決め、参照系から小さく始める。次に、APIの入口を一本化して境界を作り、障害前提の運用(再送・監視・手順)を設計する。最後に、業務カレンダーに合わせてパイロット展開し、範囲を広げていく。この順番を守るだけで、炎上リスクと手戻りは大きく減らせます。

「全面刷新は怖いが、現場の手作業は限界」「SaaSを増やしたいが基幹がボトルネック」と感じている場合、API連携は現実的な第一歩になります。まずは“どの業務の、どのデータを、どの頻度でつなぐか”を整理し、調査フェーズから小さく始めることをおすすめします。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

自動見積もり

CONTACT

 

お問い合わせ

 

\まずは15分だけでもお気軽にご相談ください!/

    コメント

    この記事へのコメントはありません。

    関連記事