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Excel/スプレッドシート×API連携で「集計作業」をなくす発想
毎週・毎月の売上や問い合わせ、広告、在庫、サポート状況などを、複数のSaaS(会計、CRM、MA、広告、EC、チャット、勤怠など)からCSVで落としてExcelに貼り付け、集計している――この運用は多くの企業で見られます。最初は手軽ですが、データ量・拠点・商材が増えるほど「人が作業すること」自体がボトルネックになります。
そこで有効なのが、ExcelやGoogleスプレッドシートを“集計の見える化画面”として使いながら、裏側はAPI連携で自動取得・自動集計するやり方です。APIとは、ざっくり言うと「別システムからデータを取り出すための公式の取り出し口」で、CSVダウンロードよりも安定的・定期的にデータを集めやすい仕組みです。
自動集計ができると、単に手作業が減るだけでなく、(1)集計ルールが統一される、(2)最新値がいつでも見られる、(3)人によるミスが減る、(4)監査・引き継ぎが楽になる、といった副次効果も大きいです。特に情シスや管理部門では「担当者が替わるたびにExcel職人技がリセットされる」問題が起きがちですが、API連携はこの属人化を解消します。
一方で、導入時に「どの方式が自社に合うか」を誤ると、運用が回らない・セキュリティ審査で止まる・費用が膨らむといった失敗も起きます。本記事では、開発知識がなくても判断できるように、Excel/スプレッドシートでのAPI連携の選択肢、導入手順、よくある落とし穴と回避策まで、実務目線で整理します。
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よくある課題:手作業集計が遅い・間違う・続かない
「集計が大変」という悩みは、実は“作業量”だけが原因ではありません。現場のヒアリングをすると、次のような問題が複合していることがほとんどです。
- 集計の手順が長い:複数サービスにログイン→期間指定→CSV出力→列の整形→貼り付け→ピボット更新…の繰り返し
- 入力・貼り付けミスが起きる:期間の指定ミス、列ズレ、重複貼り付け、通貨・税区分の違い、タイムゾーン差分など
- 数字の定義が揺れる:「売上」「受注」「請求」「入金」など部門で定義が違い、同じ指標でも数字が合わない
- 更新頻度が落ちる:忙しいと更新が後回しになり、会議の時点で数字が古い
- 属人化する:VLOOKUPやQUERY、マクロがブラックボックス化し、担当交代で止まる
この状態だと、意思決定が遅くなるだけでなく、現場が「数字は信用できない」と感じてしまい、改善のサイクルが回りません。だからこそ、Excel/スプレッドシートは残しつつも、データ取得をAPI連携で自動化し、集計プロセスを標準化する価値があります。
重要なのは、いきなり全社の全指標を自動化しないことです。最初は「毎週必ず使う」「工数が大きい」「データ源が少ない」領域から始めると成功確率が上がります。たとえば、広告費とCVの週次集計、問い合わせのチャネル別集計、在庫・受注の突合などは、効果が出やすい典型例です。
なお、API連携の目的は“Excelを捨てること”ではありません。多くの組織では、最終的に現場が見たいのはスプレッドシート上の表・グラフ・集計表であることが多いです。「見せ方はそのまま、データの運び方だけ自動化する」のが現実的な落としどころになります。
方式の選び方:Excel/スプレッドシートでAPI連携する代表的な4パターン
Excel/スプレッドシートとAPI連携して自動集計する方式は、大きく4つに分けて考えると整理しやすいです。ポイントは「どこまでノーコードでいけるか」「更新頻度」「セキュリティ」「運用担当が誰か」です。
代表的な方式
- スプレッドシートのApps Script(GAS)でAPI連携:中小〜中堅で最も導入されやすい。定期実行もしやすい
- ExcelのPower Query/Office Script等でAPI連携:Microsoft 365環境で相性がよい。社内標準がExcelの場合に強い
- iPaaS(Zapier/Make/Workato等)でAPI連携:開発なしでつなげやすい。複数SaaSをまたぐフローに向く
- サーバー側でETL→スプレッドシート/Excelに反映:データ量や監査要件が厳しい場合に強い。最も堅牢だが設計が必要
例えば「Google Workspaceを使っていて、週1〜日次で自動更新できれば良い」「作成者は情シスまたは業務担当」ならGASが第一候補です。逆に「社内標準がExcelで、SharePoint/OneDriveで管理」「Power BIも視野」ならPower Query中心の設計が向きます。
iPaaSは“つなぐ”のは得意ですが、細かい集計ロジック(例:商談のステータス履歴から特定条件のものだけ集計、返品を差し引く等)が複雑になると、途中から管理が難しくなることがあります。最後のサーバー側ETLは、データ量が大きい、複数拠点で同時に使う、監査ログが必要、といった条件で選ばれます。
選定のコツは、(1)更新頻度(リアルタイムが必要か)、(2)取り込むデータ量(数千行か数百万行か)、(3)認証方式(OAuth/APIキー、IP制限の要否)、(4)運用体制(誰が直すか)を先に決めることです。「技術」より「運用の現実」に合わせて方式を決めると、長続きします。
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スプレッドシートでAPI連携して自動集計する手順(GASでの実務フロー)
ここでは、最も導入しやすいGoogleスプレッドシート+Apps Script(GAS)の例で、実務フローを説明します。細かいコードを覚えるというより、「何を決めて、どの順番で進めるか」を押さえるのが目的です。
要件を決める:どの指標を、どの粒度で、いつ更新するか
まず、集計表(スプレッドシート)に「欲しい最終形」を作ります。例:日別の売上、チャネル別の問い合わせ件数、担当者別の案件数など。次に、元データのシステム(例:CRM、広告、EC)を特定し、APIで取得できる項目を確認します。ここで指標の定義(除外条件、税抜/税込、キャンセル扱いなど)を文章で固定しておくと、後の揉め事が減ります。
認証方式を決める:APIキーかOAuthか
API連携では、どのように「正しい権限でアクセスするか」が重要です。APIキーは比較的シンプルですが、漏えい時の影響が大きいことがあります。OAuthは少し手間ですが、権限範囲を絞れたり、失効・更新の管理がしやすいです。情シスが関与する場合は、共有アカウントの扱い、退職者リスク、監査対応の観点でOAuthが推奨されるケースが多いです。
取得→整形→書き込みの流れを作る
GASでは、外部APIを呼んでJSON等でデータを受け取り、必要な列だけに整形してシートに書き込みます。大事なのは、(1)元データをそのまま保存する「Raw」シート、(2)集計用に整形した「Mart」シート、(3)最終のダッシュボードシート、のように分ける設計です。“生データを残す”設計にしておくと、後で集計条件が変わっても復元しやすいため、運用が安定します。
定期実行とエラー通知を入れる
自動集計は「動いたら終わり」ではなく、止まったときにすぐ気づける仕組みが必要です。GASのトリガーで毎朝実行し、失敗したらメールやチャット(Google Chat/Slack)に通知するのが定番です。API側の障害や認証切れは必ず起きるので、再実行ボタン(手動実行)や、失敗した日のみ再取得する仕組みも用意すると安心です。
権限と共有範囲を設計する
スプレッドシートは共有が簡単な反面、権限設計が曖昧だと情報漏えいに直結します。少なくとも「Rawシートは閲覧制限」「ダッシュボードだけ共有」「編集権限は最小限」の設計が望ましいです。加えて、APIトークンや秘密情報をシートに直書きしない(スクリプトプロパティ等に保存)など、基本的なガードを入れます。
ExcelでAPI連携して自動集計する手順(Power Query中心の実務フロー)
社内の標準がExcelの場合でも、API連携で自動集計は可能です。代表的なのがPower Query(データの取得・変換)です。Power Queryは「外部データを取り込んで整形する」ことに強く、CSV手作業を置き換えやすいのがメリットです。
Power Queryで「API→表」までを作る
多くのAPIはJSON形式で返ってきます。Power QueryではWebからデータ取得し、JSONをテーブルに展開して、必要な列だけを残します。ここで重要なのは、変換手順がクエリとして残る点です。つまり、誰が触っても「どんな手順で整形しているか」が追跡しやすく、属人化を避けやすいです。
更新方法(手動/自動)と配布形態を決める
Excelはローカルファイル運用になりがちで、更新操作が人に依存しやすいです。そこで、OneDrive/SharePointでの管理、更新担当の明確化、更新頻度(毎朝/週次)を先に決めます。場合によっては、Power BI(データセットの定期更新)と組み合わせて、Excelは閲覧用にする選択肢もあります。
認証・セキュリティ審査を先に通す
大企業の情シスでは、外部APIへの接続や資格情報の扱いに審査が入ることが一般的です。どのサービスのどのエンドポイントにアクセスし、どんな権限で、どこに保存されるかを説明できるようにします。「誰が・何に・どこまでアクセスできるか」を文章化すると、社内承認が進みやすくなります。
ExcelでのAPI連携は、ユーザーのPC環境差(Excelのバージョン、アドイン制限、ネットワーク制限)に影響されやすい点が注意です。まずは情シス管理下の標準環境で動く形を作り、展開範囲を徐々に広げるのが安全です。
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失敗しないための注意点:認証切れ・データ不整合・運用負荷を潰す
API連携の自動集計が止まる原因は、だいたいパターン化できます。導入前に手当てしておくと、運用が安定します。
- 認証トークンの期限切れ:OAuthの更新、リフレッシュトークンの扱い、退職者アカウント紐づけを避ける
- APIの制限(レート制限):短時間に大量取得しない。差分取得、ページング、キャッシュを設計
- 項目名・仕様変更:APIのレスポンスが変わることを前提に、必須項目の存在チェックを入れる
- 重複と欠損:主キー(ID)での突合、取得日時の管理、再実行時の上書きルールを決める
- タイムゾーン問題:日次集計の境界がズレる。UTC/日本時間の扱いを統一する
- 集計定義の変更:「いつから定義が変わったか」を残せるよう、変更履歴とRaw保持を徹底
また、「自動化したのに結局メンテが大変」というケースは、最初の設計で“運用者”を置いていないことが原因です。運用者は開発者でなくても構いませんが、エラー通知を受けて一次対応し、必要に応じて外部ベンダーや情シスにエスカレーションできる体制が必要です。運用の役割分担(見る人・直す人・判断する人)を決めるだけで、プロジェクトは前に進みます。
最後に、API連携は「何でも取れる」わけではありません。サービスによってはAPIで取得できる項目が限られたり、追加契約が必要だったりします。PoC(小さく試す)で、目的の指標が実際に作れるかを早めに検証するのが確実です。
導入例:現場で効く「自動集計」ユースケース3選
ここでは、Excel/スプレッドシートとAPI連携の自動集計が特に効果を出しやすいユースケースを紹介します。イメージを持つことで、社内提案もしやすくなります。
広告・GA4・CRMをつないで「費用対効果」を毎朝更新
広告(Google広告/Meta等)から費用とクリック、GA4からセッション・CV、CRMから商談・受注を取り込み、同一のキャンペーンIDやUTMで突合します。手作業だと“貼り付けミス”が頻発しがちですが、API連携で自動集計すれば、会議前に最新の数値が揃います。特に「数字が更新されている状態」がチームの改善を加速させます。
問い合わせ(フォーム/チャット/電話)を統合して、対応遅れを可視化
フォーム、チャット、ヘルプデスクのチケットをAPI連携で集め、未対応・対応中・解決の件数、初動時間、担当者別の滞留をスプレッドシートで見える化します。現場はスプレッドシートが慣れていることが多く、ダッシュボードを別ツールにすると定着しない場合があります。見慣れた表のまま自動集計するのがポイントです。
受注・請求・入金の突合を自動化して、月末の締めを短縮
販売管理や会計システムのAPIから、受注・請求・入金のデータを取り込み、キー(請求番号等)で突合して差異を抽出します。月末に「どれが未請求か」「どれが未入金か」を探す作業は負荷が高いですが、API連携+自動集計により、例外処理だけに集中できます。締め作業は工数削減効果が大きく、投資対効果を説明しやすい領域です。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
ExcelやGoogleスプレッドシートは、多くの現場で「最終的に見たい場所」です。その一方で、CSV貼り付け中心の運用は、ミス・遅延・属人化を招きます。API連携を使ってデータ取得を自動化すると、集計作業を減らすだけでなく、数字の定義と運用を標準化でき、意思決定の速度と品質が上がります。
方式は、(1)スプレッドシート+GAS、(2)Excel+Power Query、(3)iPaaS、(4)サーバー側ETLの4パターンで整理すると選びやすくなります。成功の鍵は、更新頻度・データ量・認証・運用体制を先に決め、まずは効果が出やすい指標から小さく始めることです。
「自社の場合どの方式が最適か」「セキュリティ審査をどう通すか」「運用が止まらない設計にしたい」といった検討が必要であれば、要件整理からPoC、本番運用まで段階的に進めるのが近道です。
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