API仕様書(OpenAPI/Swagger)の読み方と確認ポイント

API仕様書(OpenAPI/Swagger)とは?「何ができるか」を約束する設計図

API仕様書は、システム同士がやり取りするための「取り決め」をまとめた文書です。たとえば、基幹システムとECサイト、スマホアプリと予約管理、社内ツールとSaaSなど、異なるサービスをつなぐときに「どんなURLに、どんなデータを送ると、どんな返事が返るか」を明確にします。非エンジニアの方にとっては、API仕様書は“追加開発や連携の見積もり・品質・納期のブレを減らすための契約書”のような位置づけと考えると理解しやすいです。

OpenAPI(旧Swagger)は、そのAPI仕様書を機械にも人にも読みやすい形式で記述するための標準です。Swagger UIなどのツールを使えば、ブラウザ上で「API一覧」「入力項目」「返却例」を視覚的に確認でき、場合によっては試しに呼び出して動作確認までできます。つまり、OpenAPI/Swaggerの仕様書は、開発会社とのコミュニケーションを円滑にし、リスクを減らす武器になります。

一方で「仕様書があるのに、あとから追加費用が増えた」「連携できると思ったのにデータが足りない」「運用開始後に権限やセキュリティが問題になった」といったトラブルも少なくありません。原因の多くは、仕様書の読み方が分からず、重要な確認ポイントを押さえられていないことにあります。この記事では、OpenAPI/SwaggerのAPI仕様書を前提に、専門知識がなくても確認できる観点を、業務シーンに落とし込んで解説します。

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まず全体像をつかむ:Swagger UIで見るべき基本要素

Swagger UIでAPI仕様書を見ると、だいたい次の要素で構成されています。最初から細部に入らず、「どんな機能のAPIが、どの範囲で提供されるか」という地図を作るのが重要です。

  • Servers(接続先):開発環境/検証環境/本番環境のURL。どこに向けて呼ぶのか
  • Paths(エンドポイント):機能ごとのURL。例:/orders、/customers/{id} など
  • Methods(操作):GET(取得)、POST(作成)、PUT/PATCH(更新)、DELETE(削除)
  • Parameters(入力):URLに埋め込む値、検索条件、リクエストの項目
  • Request Body(本文):登録・更新などで送るデータ(JSONなど)
  • Responses(返却):成功時のデータ、エラー時の返答、ステータスコード
  • Schemas(データ定義):項目名・型・必須/任意・制約などの共通ルール
  • Security(認証):APIキー、OAuth、JWTなど。誰が使えるか

非エンジニアでも、PathsとMethodsの一覧を見るだけで「APIでできることの棚卸し」ができます。たとえば受発注の連携をしたいなら、注文(Order)・顧客(Customer)・在庫(Inventory)・請求(Invoice)など、必要な業務オブジェクトが揃っているかを確認します。ここで抜けがあると、後から「そのAPIはありません、追加開発です」となりがちです。

また、Serversの記載が曖昧だと、検証環境がなくて受入テストができない、あるいは本番でいきなり接続して事故が起きるといった運用リスクにつながります。仕様書の冒頭やServers欄で、環境が分かれているか、切り替え方法が明確かを見ておきましょう。

確認ポイント:エンドポイントとデータ項目は「業務の流れ」になっているか

API仕様書の読み方で最も重要なのは、APIの一覧を「業務フロー」に翻訳することです。たとえば「注文を作る」だけでは運用できません。一般的に必要なのは、作成→参照→更新→取消→検索→履歴確認といった一連の操作です。

具体的には、次の観点でOpenAPI/SwaggerのPathsを眺めてください。

  • 検索APIがあるか:一覧取得で絞り込み(期間、ステータス、担当者など)ができるか
  • 詳細取得があるか:一覧で見たIDから詳細を取れるか
  • 更新の粒度:全更新(PUT)だけでなく部分更新(PATCH)が必要か
  • キャンセル・再送・再計算:業務で起こる例外操作を想定できているか
  • 参照整合性:顧客IDや商品IDなど、関連データが取れる導線があるか

次に、Schemas(データ定義)やRequest/Responseの項目を見て「現場が必要とする情報が揃っているか」を確認します。たとえば、注文連携でよく起きる不足は、配送希望時間帯、領収書区分、税区分、明細の割引内訳、担当者コード、取引先の締め日など“現場特有の属性”です。UI画面に出ている項目がAPIに含まれるとは限りません。現行業務で使っているCSVや帳票の項目一覧を横に置いて照合すると、抜け漏れが見つかりやすくなります。

また、項目名が英語や略語になっていて意味が分からない場合は、仕様書内のdescription(説明文)やexample(例)を見ます。それでも不明な場合は「この項目は業務的に何を表すのか」「誰がいつ入力するのか」「空欄でもよいのか」を質問しましょう。ここを曖昧にしたまま進めると、運用開始後に“データは入っているが使えない”状態になりがちです。

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失敗が減る:必須/任意、型、制約、例(example)で「入力ミスの地雷」を潰す

OpenAPI/Swaggerの強みは、データのルールを細かく定義できることです。非エンジニアの方が見るべきポイントは、必須項目(required)と制約(validation)が妥当かです。ここが甘いと、現場で入力が揺れて後工程が詰まります。逆に厳しすぎると、登録できず業務が止まります。

  • required(必須):本当に必須か。運用上「後から確定する値」を必須にしていないか
  • type(型):数値・文字列・日付時刻などが業務の実態に合うか
  • format:date-time(時刻含む)かdate(日付のみ)か、タイムゾーンの扱いはどうか
  • enum(取り得る値):ステータスが固定値になっている場合、運用上の例外が漏れていないか
  • maxLength/minLength:住所や備考が短すぎないか、文字数超過時の扱いはどうするか
  • nullable:空欄を許すかどうか。空欄の意味(未設定/不明/対象外)を区別できるか

さらに、example(例)が実務に即しているかを見てください。例が貧弱だと、開発者は解釈で実装してしまい、認識違いが起きます。たとえば金額が「123」とだけ書かれていて通貨が不明、日時が「2026/01/01」なのかISO形式なのか不明、顧客名の文字種制限が不明、といった状態です。業務で実際に発生するデータ例(桁数、記号、全角半角、NULL)を例に反映させると、後戻りが減ります。

加えて、レスポンス(Responses)の成功例だけでなく、エラー例が揃っているかも重要です。「入力が不正」「権限がない」「対象が存在しない」「二重登録」など、現場で起こりうるエラーに対して、どのコードで返し、どんなメッセージで表示するかが整理されていると、運用問い合わせが激減します。

セキュリティと運用の要:認証・権限・監査ログ・レート制限を仕様書で確認する

API連携は便利な反面、権限設定を誤ると情報漏えいや不正操作の入口になります。OpenAPI/SwaggerではSecurity(認証方式)や、エンドポイントごとのsecurity要件が書かれます。ここは技術任せにせず、発注側の責任範囲として押さえておくべきです。「誰が、どのデータに、どの操作までできるか」を説明できる状態を目指しましょう。

  • 認証方式:APIキーなのかOAuth2なのか、トークンの有効期限や更新方法はあるか
  • 権限(スコープ):閲覧のみ/更新可/管理者など、役割に応じて分離できるか
  • IP制限:社内ネットワークや特定サーバからのみ許可する必要はあるか
  • 個人情報:氏名・住所・電話などを返すAPIは最小化されているか、マスキング要否
  • 監査ログ:いつ誰がどのAPIを叩いたか追跡できるか(ログ項目、保管期間)
  • レート制限:短時間に大量呼び出しされたときの制限、429の扱い、再試行方針

運用面では、タイムアウトや再試行のルール、冪等性(同じリクエストを複数回送っても結果が重複しない性質)が重要です。たとえばネットワーク不安定時に「登録APIを再送したら二重登録になった」は典型的な事故です。OpenAPI上ではIdempotency-Keyヘッダの有無、重複排除の仕様、ユニーク制約(注文番号など)を明記しておくと安全です。

また、APIのバージョン管理(/v1/ など)や廃止予定の告知(deprecate)があるかも確認してください。大企業の情シスでは特に、ベンダー変更やシステム刷新時に“APIが読める状態”が資産になります。バージョン戦略が曖昧なAPIは、将来の改修コストが膨らみやすいです。

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受入テストで見る:ステータスコード、エラー設計、サンプルリクエストの有無

API仕様書は「実装の説明書」であると同時に、「受入テストの基準書」でもあります。発注側としては、納品前後の確認で揉めないように、OpenAPI/Swaggerにテスト観点が落ちているかを見ます。ポイントは、成功だけでなく失敗時の挙動まで定義されているかです。

まずステータスコードです。一般に、GET成功は200、作成成功は201、入力不備は400、認証失敗は401、権限不足は403、存在しないは404、競合は409、サーバエラーは500などが使われます。仕様書上、同じ種類のエラーなのにエンドポイントごとにコードがバラバラだと、画面側や連携側の実装が複雑になり、障害時の切り分けも難しくなります。

次にエラーレスポンスのフォーマットです。たとえば以下のように、機械処理できる形で統一されていると運用品質が上がります。

{
  "errorCode": "VALIDATION_ERROR",
  "message": "必須項目が不足しています",
  "details": [
    {"field": "customerId", "reason": "required"}
  ]
}

この形式があれば、画面に分かりやすいメッセージを出したり、ログから原因を自動集計したりできます。「messageだけ」だと解析が難しく、問い合わせ対応が属人化します。Swagger UI上でResponsesにエラーのschemaやexampleが載っているか確認しましょう。

また、サンプルリクエスト(curl例)や、実際に叩けるTry it outが提供されている場合は、受入テストの効率が上がります。情シスや業務担当でも、用意された例をそのまま実行して「期待通りの項目が返るか」「検索条件が効くか」を確認できます。もしサンプルがない場合は、最低限“代表的な業務パターン”のリクエスト/レスポンス例を仕様書に追記することを提案するとよいです。

よくある落とし穴:仕様書があっても失敗するケースと対策

OpenAPI/SwaggerのAPI仕様書が整っていても、プロジェクトがうまくいかないことがあります。非エンジニアの立場で遭遇しやすい落とし穴と、その対策をまとめます。

  • 用語が業務と一致していない:「client」と「customer」が混在、社内の“取引先”がAPIでは“顧客”になっている等。対策は用語集(Glossary)を作り、descriptionに日本語補足を入れる
  • 一部機能が画面仕様に寄りすぎ:画面に必要な項目だけで、連携・バッチ・帳票に必要な項目が不足。対策はCSV/帳票/現行DB項目から逆算して照合する
  • 非機能が書かれていない:性能(1分あたり呼び出し回数)、タイムアウト、保守時間、SLA等が抜ける。対策はAPI仕様書とは別に運用設計書で合意する
  • ページング・並び順が曖昧:一覧取得で件数が増えると破綻。対策はlimit/offsetやcursor、sortの仕様を明記する
  • 文字コード・改行・全角半角の扱いが不明:住所や備考で文字化け・連携エラー。対策はUTF-8前提の明記と、許容文字のルール化
  • Webhook/非同期の説明不足:「更新通知が来る前提」なのに無い。対策はポーリングかWebhookか、再送・署名検証まで決める

重要なのは、仕様書を「開発者のための資料」ではなく「発注者・利用者・運用者も含めた合意形成の道具」として扱うことです。レビュー会では、API仕様書を画面に映しながら「この操作は業務でいつ使う?」「例外は?」「権限は?」と業務側の言葉で確認していくと、見落としが減ります。

もし社内にレビューできる人がいない場合でも、外部の開発会社やコンサルに第三者レビューを依頼する価値があります。仕様の穴は、実装後に見つかるほど高くつくためです。

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まとめ

API仕様書(OpenAPI/Swagger)は、システム連携の成功確率を上げ、見積もり・品質・運用のブレを減らすための重要な資産です。非エンジニアでも、Swagger UIの「API一覧」「必須項目と制約」「レスポンスとエラー」「認証と権限」「運用(レート制限・ログ・冪等性)」を押さえることで、プロジェクトの手戻りを大きく減らせます。

確認のコツは、APIを技術ではなく業務フローとして読むことです。現行のCSV・帳票・運用ルールと照らし合わせて、データの抜けや例外対応、セキュリティを具体的にチェックしましょう。疑問点は「この項目は何のため?」「空欄は許される?」「失敗したらどう返る?」と問い、仕様書に反映して合意を残すのが安全です。

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