APIのセキュリティリスクを減らす方法(基本対策チェックリスト)

APIが狙われる理由と、起きがちな事故

APIは、社内システムやSaaS、スマホアプリ、取引先のシステムなどをつなぐ「データの出入口」です。便利な一方で、外部からアクセスできる入口が増えるほど攻撃対象も増えます。特に近年は、APIを直接たたいて情報を盗む・改ざんする攻撃が一般化し、「Web画面は守っているのに、APIが弱点になっていた」という事故が起きやすくなっています。

よくあるインシデントは次の通りです。①認証が甘く、第三者がログインなしでデータを取得(設定ミスやテスト用APIの残存)。②権限チェックが不十分で、他人のデータまで見える(IDを1つ変えるだけで別ユーザーの情報が取れる、いわゆるIDOR)。③APIキーが漏れて、外部から大量に呼び出される(GitHubに誤公開、ログに出力、委託先の端末から流出)。④レート制限がなく、総当たりや大量アクセスでサービス停止(DoS/アカウントロック誘発)。⑤入力値の検証不足でSQLインジェクションやコマンド実行、あるいは想定外のデータ更新が起きる。⑥暗号化やログが不十分で、追跡できない・被害範囲が特定できない。

経営・情シスの視点では、APIの事故は「個人情報漏えい」「取引先への影響」「サービス停止」「委託先管理不備」として、損害賠償や監督官庁対応、ブランド毀損に直結します。重要なのは、APIセキュリティは一部のエンジニアの勘ではなく、チェックリスト化して仕組みで減らすことです。以下では、非専門の方でも判断できるよう、対策を「基本チェックリスト」として整理します。

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基本対策チェックリスト(まずはここから)

ここでは「今あるAPIのセキュリティリスクを下げる」ための最短ルートをまとめます。全部を一度に完璧にする必要はありませんが、優先順位は“認証・認可→通信→入力→悪用抑止→監視”の順が現実的です。

APIセキュリティ基本チェックリスト(要点)

  • 認証:ログイン・APIキー・トークンの方式が統一され、無認証APIが残っていない
  • 認可:ユーザーが「見てよい/更新してよい」範囲を毎回サーバ側で検証している(IDだけで判断しない)
  • 通信:HTTPS/TLSが必須、古い暗号設定が無効化されている
  • 入力検証:想定外の値(長すぎる、型違い、負数、HTML等)を弾く。SQL/コマンド/テンプレート注入対策がある
  • レート制限:IP・アカウント・APIキー単位で制限し、総当たりやスクレイピングを抑止
  • 秘密情報管理:APIキーやトークンをソース・ログ・ブラウザに置かない。期限とローテーションがある
  • CORS/ブラウザ対策:必要最小の許可設定。ブラウザから直接呼ぶAPIは特に注意
  • エラーハンドリング:詳細なエラーやスタックトレースを外部に返さない
  • ログ/監視:誰が何をしたか追える監査ログ、異常検知の通知がある
  • 変更管理:API仕様変更が棚卸しされ、使われていないAPIは停止できる

上の項目は、技術チームが行う作業に見えますが、情シス・管理側でも「運用ルール・契約・責任分界」を整えるだけで効果が出ます。例えば、APIキーの発行・失効・期限のルール、委託先が扱う場合の保管方法、障害時の連絡経路、ログ保管期間などです。“守り方が属人化している”状態が最大のリスクなので、チェックリストをベースに体制を作ることが第一歩になります。

認証と認可:APIセキュリティの最重要ポイント

APIのセキュリティ対策で最も事故が多いのが「認証はしているが、認可が弱い」パターンです。認証は「あなたは誰ですか?」、認可は「その人は何をして良いですか?」です。Web画面では自然にできていても、APIはエンドポイントごとに抜けが起きやすく、“ログイン済みなら全部OK”になっていないかが要注意です。

実務で多い例を挙げます。請求書PDFを取得するAPIで、URLに含まれる請求書IDを別の番号に変えると、他社の請求書が取れてしまう。顧客情報更新APIで、送信するユーザーIDを書き換えると他人の電話番号を変更できてしまう。これらは「ユーザーが所有しているデータか」をサーバ側で検証していないことが原因です。対策はシンプルで、“IDを受け取ったら、必ずサーバ側で所有者・権限を照合する”を徹底します。

認証方式としては、社内向け・取引先向け・一般ユーザー向けで選択肢が変わります。一般的には、ログインセッションよりもトークン(例:OAuth 2.0 / OpenID Connect)で管理し、短い有効期限と更新(リフレッシュ)を組み合わせます。APIキーは「機械同士の接続」には便利ですが、漏れると第三者も同じ権限で使えるため、権限を絞り、期限・ローテーション・失効を前提に設計します。情シス側の確認ポイントは、①権限が役割ごとに分かれているか(閲覧だけ、更新可、管理者など)②管理者権限を日常業務で使っていないか③退職・異動・委託終了時に失効できる手順があるか、です。

加えて、強い認証としてMFA(多要素認証)も重要です。全ユーザーに必須が難しくても、少なくとも管理画面・管理API・高権限の操作には必須にします。「重要操作だけMFA」でも被害は大きく減ります。API単体ではMFAが見えにくいので、管理UIとセットで設計されているか確認しましょう。

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通信・秘密情報・CORS:漏えいを防ぐ“衛生管理”

APIのセキュリティは、派手な攻撃より「うっかり漏えい」が現実的な脅威です。例えば、HTTPSが強制されていない、古いTLS設定が残っている、APIキーがログに出ている、フロントエンドに埋め込んだキーが誰でも見える、などです。これらは運用での再発が多いため、ルールと自動チェックが効きます。

通信は原則すべてHTTPS(TLS)にし、HTTPはリダイレクトではなく拒否するのが安全です。社内ネットワークだから大丈夫、VPNがあるから大丈夫、という前提が崩れるケース(端末のマルウェア感染、委託先環境、クラウド間通信の経路誤設定)は珍しくありません。証明書の更新漏れも現場で起きがちなので、監視(期限アラート)を入れると事故が減ります。

秘密情報(APIキー、クライアントシークレット、署名鍵、DBパスワードなど)は、ソースコード・設定ファイル・スプレッドシート・チャットに散らばりやすいので、保管場所を統一します。クラウドのシークレット管理(例:Secrets ManagerやKey Vault等)を使い、アクセス権限を最小にし、定期的にローテーションします。さらに「開発環境のキーが本番と同等の権限」になっていないかも確認してください。“開発環境の漏えいが本番被害につながる”のは典型的な落とし穴です。

ブラウザからAPIを呼ぶ場合はCORS設定が重要です。CORSは「どのWebサイトからの呼び出しを許可するか」を決める仕組みで、設定が緩いと、悪意あるサイトからユーザーのブラウザ経由でAPIが呼ばれるリスクが増えます。必要なドメインだけに限定し、ワイルドカード(*)の安易な許可は避けます。また、Cookieを使う場合はCSRF対策(SameSite設定、トークン等)も含めて検討が必要です。ここは専門領域になりやすいので、既存システムの構成(SPA、モバイルアプリ、サーバ間通信)を整理してから対策設計すると混乱しません。

入力値検証と安全な実装:改ざん・侵入の入口を閉じる

APIは「データを受け取って処理する」ため、入力値の検証が弱いと、情報漏えいだけでなく改ざんや侵入につながります。専門用語としてはSQLインジェクション、コマンドインジェクション、パストラバーサル、テンプレートインジェクションなどがありますが、要点は共通で、“受け取った値を信用しない”ことです。

実務では、次のような確認が有効です。①パラメータの型・範囲・桁数の制限(例:金額は0以上、文字列は最大長、日付形式は固定)。②許可リスト方式(想定した値だけ通す)。③ファイルアップロードがある場合、拡張子だけでなくMIMEや内容もチェックし、保存先を分離する。④DB操作はプレースホルダ(パラメータ化クエリ)を使い、文字列連結でSQLを作らない。⑤外部コマンドを呼ぶ設計を避け、やむを得ない場合は引数を固定し、ユーザー入力を渡さない。

また、APIのレスポンスにも注意が必要です。エラー時にスタックトレースや内部のテーブル名、クラウド設定が出ると、攻撃者にヒントを与えてしまいます。ユーザー向けには簡潔なエラー、内部ログには詳細、という分離が基本です。さらに「存在しないユーザー」と「パスワード違い」のメッセージを分けると、アカウントの有無が推測されるため、認証エラーの出し分けも慎重にします。

情シス・管理者ができる現実的な一手は、開発・委託先に対して「API仕様書に入力制約(型・必須・最大長・許可値)を書き、テスト項目に含める」ことを契約・受入基準に入れることです。“仕様に書いてあるものだけが守られる”という前提で、仕様とテストを整えるだけでも品質が上がります。

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悪用抑止(レート制限・WAF・ボット対策)と、監視・ログの実務

認証や入力検証を整えても、APIは「叩かれ続ける」ことで被害が出ます。例えば、パスワード総当たり、認証トークンの推測、在庫・価格のスクレイピング、予約枠の買い占め、ポイント不正などです。ここでは、攻撃の成功確率を下げ、被害拡大を防ぐための“運用系”対策を押さえます。ポイントは、“止める仕組み(抑止)”と“気づく仕組み(監視)”をセットにすることです。

レート制限は最優先です。IP単位だけだと社内ネットワークやプロキシ環境で誤検知が起きるため、APIキー単位、ユーザー単位、エンドポイント単位など複数軸で設計します。ログインAPI、パスワード再設定、検索系API、決済系APIは特に厳しめにします。加えて、一定回数の失敗で遅延(レスポンスを意図的に遅くする)や一時ブロックを入れると、総当たりのコストが上がります。

WAF(Web Application Firewall)やAPI Gatewayの保護機能も有効です。これは「怪しいリクエストを入口で弾く」仕組みで、既知の攻撃パターンや異常なアクセスを抑えられます。ただし万能ではなく、誤検知で業務が止まることもあるため、最初は検知モード→段階的に遮断、という運用が現実的です。ボット対策(CAPTCHA等)はAPI単体では使いにくい場合がありますが、ユーザー操作を伴う重要手続き(新規登録、問い合わせ、予約など)には有効です。

監視・ログは「事故の早期発見」と「説明責任」に直結します。最低限ほしいのは、①監査ログ(誰が、いつ、どのデータに、どんな操作をしたか)②アクセスログ(IP、ユーザーエージェント、認証情報の種別、レスポンスコード、処理時間)③アラート(失敗率の急増、特定IPの急増、通常ない国・時間帯からのアクセスなど)です。ログは個人情報を含む場合があるため、必要最小限にしつつ、改ざんされにくい保管(権限分離、追記専用)にします。“ログがないと、被害範囲が特定できず対応が長期化”しがちです。

最後に、棚卸し(APIの可視化)も重要です。使われていないAPI、古いバージョン、テスト用エンドポイントは事故の温床になります。API一覧、利用者(アプリ・取引先)、用途、認証方式、データ種別(個人情報の有無)を台帳化し、廃止手順を決めると、APIセキュリティの運用が回り始めます。

導入・運用の進め方:予算がある情シスが失敗しない段取り

「何をすれば良いか」は分かっても、社内外の関係者が多いと進みません。特に中小企業や、情シスが少人数の大企業では、APIセキュリティは“理想論の整備”になりがちです。そこで、現実的な進め方を段取りとしてまとめます。重要なのは、全APIを一度に完璧にするのではなく、重要度で分けて順番に潰すことです。

まず、対象の切り出しです。「個人情報・決済・請求・認証」に関係するAPI、または取引先に公開しているAPIを最優先にします。次に、現状把握として、認証方式、データ種別、外部公開範囲、利用者(どのアプリが呼ぶか)、運用担当(誰が鍵を発行するか)を整理します。ここまでができると、対策が“具体的な作業”に落ちます。

次に、実装と運用の責任分界を決めます。自社開発なら開発チーム、委託開発ならベンダー、SaaS連携なら提供企業との契約範囲が混ざります。APIキーの発行・失効、ログの保管、障害時の連絡、脆弱性対応のSLA、緊急遮断の可否(スイッチを誰が持つか)を明文化します。“事故のときに決める”は遅いため、平時に決めておくのが最大のリスク低減です。

テストの導入も効果が高いです。専門ツールの導入が難しければ、最低限「権限のないユーザーで他人のデータが取れないか」「大量アクセスで落ちないか」「想定外の入力でエラーが漏れないか」を受入テストに含めます。可能なら、年1回でも第三者のセキュリティ診断(API診断)を入れると、見落としが減ります。診断は“ダメ出し”ではなく、改善リストを得る投資と捉えると進めやすいです。

運用面では、鍵のローテーション、退職時の失効、APIバージョン廃止の告知、アラートの対応手順(誰が一次対応するか)、インシデント時の報告テンプレートを作っておくと、少人数でも回せます。APIセキュリティは一度整備して終わりではなく、変更が入るたびに崩れます。だからこそ、運用手順を“文章とチェック”に落とすのが最も効きます。

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まとめ

APIはビジネスを加速させる一方で、セキュリティリスクの“入口”にもなります。事故の多くは、難解なハッキングよりも、認証・認可の抜け、秘密情報の扱い、レート制限やログ不足といった基本の不備から起きます。まずはチェックリストで現状を可視化し、重要APIから順に「認証・認可」「通信・秘密情報」「入力検証」「悪用抑止」「監視」を整えるのが最短ルートです。

情シス・管理側が主導できるポイントは、ルール化(キー管理、失効、ログ保管)、受入基準(入力制約とテスト)、責任分界(委託先・SaaSとの範囲)です。専門的な実装はエンジニアが担うとしても、運用設計と優先順位付けは非専門の方でもリードできます。APIセキュリティに不安がある場合は、まず「どのAPIが、誰に、どんなデータを出しているか」の棚卸しから始めてください。

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