RAGの全体構成を図解で理解する方法:データ→検索→生成→監査の流れ

RAGとは?「社内データを根拠に答える」ための全体構成

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、生成AIに社内資料や業務データを“根拠”として参照させながら回答させる仕組みです。ChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)は便利ですが、そのままだと「社内ルール」「最新の製品仕様」「契約条件」など、あなたの会社固有の情報を正確に言い当てることは苦手です。そこでRAGでは、回答の前に社内データを検索して関連箇所を取り出し、その情報を添えて生成させます。

想定読者である情シス・管理部門・現場マネージャーの方が最初につまずきやすいのは、「RAGは結局、何をどう繋げたら動くのか」という全体像です。細かい技術(ベクトルDB、埋め込み、プロンプトなど)を追う前に、まずは流れを一枚で捉えると理解が一気に進みます。

RAGの全体像(図解イメージ:データ→検索→生成→監査)

[社内データ] ──(整備/分割/権限)──▶ [検索用インデックス]
      │                                  │
      └───────(更新/版管理)──────────────┘
                       │
ユーザーの質問 ─▶ [検索(取り出す)] ─▶ [生成(まとめる)] ─▶ [監査(安全/品質)] ─▶ 画面/チャット
                       │                     │
                   (根拠本文)            (出典/ログ/権限)
  

この「データ→検索→生成→監査」は、導入後の運用(更新・権限・監査ログ)まで含めた“ビジネスで使える”RAGの基本形です。以降では、各工程で何を決め、何を作り、どこで失敗しやすいかを業務目線で解説します。

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データ:まず整備すべきは「正しさ・探しやすさ・権限」

RAGの成否は、LLMの賢さよりも「元データが業務で使える状態か」で決まります。多くの会社でデータは、ファイルサーバ、SharePoint/Google Drive、社内Wiki、メール、PDF、紙スキャンなどに散らばっています。ここを無理に一括移行する必要はありませんが、RAGに載せる範囲(スコープ)は目的から逆算して絞るのが現実的です。

たとえば「社内規程の問い合わせ対応を減らす」なら、就業規則、経費精算ルール、稟議フロー、セキュリティ規程、よくある例外対応のQ&Aが優先です。「製品サポート」なら、FAQ、手順書、障害対応履歴、リリースノート、サポート方針が優先になります。

データ整備で必ずやること

  • 最新版の特定:「どれが正本か」を決め、古い版を参照しないようにする(版管理・有効期限)
  • 粒度の調整:長いPDFをそのまま使うのではなく、章・項目単位に分割して検索しやすくする
  • メタデータ付与:文書種別、部署、日付、適用範囲、製品バージョンなどを持たせ、絞り込みに使う
  • アクセス権:人事・財務・顧客情報は権限が命。RAG側でも「誰が見てよいか」を引き継ぐ

ここでの落とし穴は、「とりあえず全部入れる」です。範囲が広すぎると、検索でノイズが増え、生成がそれらしく間違える確率も上がります。また、機密情報が混じると運用が止まります。RAGは“検索”が前提のため、データが整っていないほど検索精度が落ち、結果として「AIが使えない」という評価になりやすいのです。

検索:RAGの心臓部は「取り出し品質」を作り込むこと

検索(Retrieval)は「質問に関係する社内情報を、根拠として取り出す」工程です。検索が外れると、どれだけ生成が上手くても答えは外れます。逆に言えば、検索が当たれば、生成は“要約係”として機能しやすくなります。

検索の方法は大きく2系統あります。ひとつはキーワード検索(全文検索)。もうひとつがベクトル検索(意味検索)です。実務では両方を組み合わせたハイブリッド検索がよく使われます。たとえば「交通費 精算 タクシー 夜間」のように明確な語がある場合はキーワードが強く、「このケースは例外扱い?」のような曖昧な質問は意味検索が強いからです。

検索の精度を上げる実務ポイント

  • 分割(チャンク)設計:1チャンクが大きすぎると拾っても読みにくく、小さすぎると文脈が切れる
  • 絞り込み:部署、文書種別、製品バージョン等でフィルタできるようにする
  • 同義語:「稟議=承認申請」「ICカード=交通系カード」のような表現揺れを吸収する
  • 再ランキング:候補が多い時に“より根拠として良い順”に並べ替える

検索品質の確認は、技術者でなくてもできます。代表的な質問(現場が実際に投げる質問)を20〜50個ほど用意し、検索結果に「正しい根拠が上位に出るか」を見ます。ここで重要なのは、AIの回答ではなく根拠として表示される本文が適切かを評価することです。根拠が合っているのに回答が微妙なら生成側の調整で改善できますが、根拠が違うならデータ/検索側の問題です。

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生成:根拠を添えて「業務で使える文章」に変換する

生成(Generation)は、検索で取り出した根拠を使って、ユーザーが読みやすい形にまとめる工程です。ここで誤解されがちなのは「LLMが勝手に答える」のを許す設計です。業務利用では、生成は“自由作文”ではなく、根拠に基づいて説明する編集作業に寄せたほうが安全で運用品質が上がります。

実務でよく効くのが、回答フォーマットの固定です。たとえば「結論→条件→手順→例外→出典」の型にすると、読み手は迷いませんし、監査もしやすくなります。情シスが社内展開する場合も、テンプレがあると問い合わせ対応が標準化できます。

生成工程で決めるべきルール(非エンジニアでも決められる)

  • 出典を必ず示す:「どの文書のどの箇所か」を提示し、確認可能にする
  • 不確実なときは保留:根拠が薄い場合は「追加情報が必要」「担当部署に確認」と返す
  • 社内向け表現:部署名・申請画面名など、社内で通じる言い方に統一する
  • やってはいけない内容:法務・人事・セキュリティ等は断定しない、承認が必要な作業を勝手に許可しない

また、生成の品質は「正しい/間違い」だけでなく、「読みやすい」「短い」「次の行動がわかる」も重要です。RAGは回答を作れるようになった瞬間がゴールではなく、現場が使い続けることで問い合わせや作業時間を減らせて初めて価値が出ます。現場の業務シーン(例:経費精算の締め日前、監査前、障害時)に合わせて、説明の粒度や注意書きを調整しましょう。

監査:安全・権限・ログが揃って「社内導入」になる

監査(Auditing/Guardrails)は、RAGを「便利なお試し」から「業務システム」に引き上げる工程です。特に情シスや管理部門が気にするのは、情報漏えい、誤回答による業務事故、内部統制、説明責任です。ここを設計しないと、PoCは通っても本番で止まります。

監査の要点は3つです。第一に権限管理(アクセス制御)。第二にログ(誰が何を聞き、何が根拠として使われ、どう答えたか)。第三に安全策(危険な指示や個人情報を扱う時のブロック/マスキング)です。RAGは「検索で社内データを取り出す」以上、権限が崩れると事故になります。

監査でチェックすべき項目(最低限)

  • 権限の継承:元の文書の閲覧権限がRAGでも守られるか
  • 出典の表示:回答に根拠が表示され、クリック/参照できるか
  • ログと保管:質問・検索結果・生成結果・利用者を記録し、保管期間を決める
  • 禁止領域:個人情報、機密、契約、セキュリティ設定などの扱いをルール化
  • 誤回答時の導線:フィードバックボタン、訂正依頼、担当部署へのエスカレーション

さらに運用面では、データ更新と評価の仕組みが必要です。規程が改定されたのにRAGが古い版を参照すると、最も危険な“それっぽい間違い”が起きます。更新頻度の高い文書は自動同期、更新頻度が低い文書は定期棚卸し、といった運用設計が現実的です。監査の観点は「AIの賢さ」より組織のリスク許容度に合わせたガードレールを作れるかにあります。

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図解で腹落ちさせる:導入検討で使える「1枚の設計図」

社内でRAGを説明するとき、技術説明から入ると意思決定が遅れがちです。代わりに「業務の流れ」と「責任の所在」が見える図にすると、稟議が通りやすくなります。ここでは、会議でそのまま使える“1枚の設計図”の作り方を紹介します。

設計図に入れるべき箱(最小セット)

  1. データソース:どの文書群を対象にするか(例:就業規則、経費ルール、申請手順)
  2. 整備/更新:誰が、どの頻度で、どの版を正とするか
  3. 検索:キーワード/意味検索、フィルタ条件(部署・版・日付)
  4. 生成:回答テンプレ、出典提示、保留条件
  5. 監査:権限、ログ、フィードバック、禁止事項
  6. 利用画面:Teams/Slack/社内ポータルなど、現場が使う入口

この設計図で「どこにコストが乗るか」も見えてきます。一般に、初期費用はデータ整備と検索精度の作り込みに寄ります。運用費はデータ更新・監査ログ・評価改善に寄ります。LLMの利用料だけで見積もると、後で運用負担が顕在化して失速します。

社内向けの説明では、たとえば次のような例えが効きます。RAGは「社内の図書館で本を探して(検索)、見つけたページを引用しながら(根拠)、司書が要点をまとめて渡す(生成)。そして貸出記録と閲覧制限がある(監査)」というイメージです。これなら非エンジニアにも一度で伝わります。

失敗しがちなポイントと、最小の成功ルート

RAG導入でありがちな失敗は、技術以前に「目的・範囲・評価基準」が曖昧なまま進むことです。特に予算がある企業ほど、最初から全社横断を狙ってスコープが膨らみ、権限とデータ整備で止まります。まずは成功確率が高い領域に絞り、効果が見えたら横展開するのが定石です。

よくある失敗

  • 全部入れて、全部答えさせる:ノイズ増加、誤回答増加、権限事故のリスク
  • 評価が「なんとなく便利」:改善点が特定できず、PoCで終わる
  • 出典なし回答:現場が信じられず、結局人に聞く運用に戻る
  • 更新が回らない:改定に追随できず、回答が古くなって信用を失う

最小の成功ルート(おすすめ)

まずは問い合わせが多く、文書が比較的整っている領域(例:経費精算、情報セキュリティ手順、情シスの申請手続き)を選びます。次に、代表質問を集めて検索評価を行い、根拠が当たるようにチャンクやメタデータを調整します。そのうえで、回答テンプレと出典提示を固定し、監査ログと権限を整えてクローズドに展開します。最後に、フィードバックから改善サイクルを回します。「検索が当たる」「出典が見える」「権限が守られる」の3点が揃うと、現場定着が一気に進みます。

このルートは、開発知識がなくても意思決定できます。必要なのは、対象業務のオーナー(総務・経理・情シスなど)と、データ管理者、そして運用の責任者を決めることです。RAGはツール導入ではなく、情報の扱い方を整えるプロジェクトでもあります。

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まとめ

RAGは「データ→検索→生成→監査」という流れで捉えると、非エンジニアでも全体像が掴めます。データは正本・粒度・権限が要で、検索はRAGの精度を決める心臓部、生成は根拠に基づく編集作業、監査は社内導入に不可欠な安全装置です。特に情シスや管理部門の方は、LLMの性能よりも運用できる仕組み(更新・権限・ログ)を先に設計することで、PoC止まりを避けられます。

社内説明では、1枚の設計図(データソース、整備更新、検索、生成、監査、利用画面)に落とし込み、どこにコストと責任があるかを見える化すると合意形成が進みます。最初は範囲を絞り、「検索が当たる」「出典が見える」「権限が守られる」の最小セットで成功体験を作り、横展開するのが現実的です。

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