社内ChatGPTにRAGは必要?通常の生成AIと比較して判断する方法

社内ChatGPTで「通常の生成AI」と「RAG」は何が違うのか

社内で使うChatGPT(生成AI)を検討するとき、多くの方がつまずくのが「RAGを付けるべきか、付けなくても十分か」という判断です。結論から言うと、通常の生成AIは「一般知識や文章作成の相棒」として強く、RAG(検索拡張生成)は「社内の正しい情報を根拠付きで引っ張って答える」ことに強みがあります。

通常の生成AIは、学習済みの一般的な知識をもとに、要約・文章生成・アイデア出し・コードの雛形作成などを高速にこなします。一方で、社内ルールや最新の製品仕様、顧客ごとの契約条件のような「あなたの会社だけの情報」は、モデルが知らないか、知っていても古い可能性があります。ここで起きがちなのが、もっともらしいが誤っている回答(いわゆるハルシネーション)です。

RAGは、この弱点を補う設計です。社内規程、手順書、FAQ、議事録、製品ドキュメント、問い合わせ履歴などを「検索できる形」に整え、質問に応じて関連文書を取り出し、その内容を根拠として回答を生成します。イメージとしては「社内版Google検索+ChatGPT」を一体化したものです。生成AIが“想像で答える”のではなく、“社内資料に基づいて答える”状態を作れるのがRAGの価値です。

ただしRAGは万能ではありません。文書の整備、アクセス権、検索精度、運用ルールなど、導入後も継続して面倒を見るポイントが増えます。つまり「RAGが必要か」は技術の話というより、業務要件とリスク許容度の話です。以降では、専門知識がなくても判断できるように、比較観点、判断フレーム、導入手順、失敗しやすいポイントまで整理します。

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RAGが必要になる業務・いらない業務の見分け方

RAGが必要かどうかは、「その回答に社内固有の根拠が必要か」「間違えたときの損失が大きいか」でほぼ決まります。まずは業務を次の2つに分けてみてください。

RAGが効果を発揮しやすい業務

  • 問い合わせ対応(情シス・総務・人事・CS):社内規程、手順、申請フローなど、根拠となる文書が存在する
  • 製品・サービスの仕様確認:バージョン差分、オプション可否、制約条件などが頻繁に更新される
  • 法務・契約・コンプライアンス:条項や社内ルールに沿った回答が必須で、誤りのリスクが高い
  • 営業・提案書作成:最新の価格表、事例、標準機能・非標準機能など、社内の一次情報が必要
  • ナレッジ共有(引き継ぎ・教育):散らばったドキュメントを横断して、手順や背景を説明したい

これらに共通するのは、回答が「社内資料のどこに書いてあるか」を示せると強い点です。RAGは引用元を提示しやすく、“説明責任”を果たしながら業務を自動化できるのが利点です。

RAGなしでも成果が出やすい業務

  • 文章のたたき台:メール文面、社内通知、議事録の整形、要約
  • アイデア出し・壁打ち:施策案、ネーミング、構成案など正解が1つでない
  • 一般的な調査の整理:公開情報を前提とした整理(ただし社内での最終確認は必要)
  • プログラミング補助:雛形生成、エラー原因の候補出し(社内リポジトリ参照が必要なら別)

これらは「正確な社内固有情報が必須ではない」ため、通常の生成AIでも十分に投資対効果が出ます。むしろRAGを急いで作り込むより、利用ルールやプロンプトテンプレ、機密情報の取り扱いを整備した方が効果的なケースが多いです。

通常の生成AI vs RAG:比較のチェックリスト(情シス・経営向け)

判断を早くするために、実務で効く比較ポイントをチェックリスト化します。「Yes」が多いほどRAGの優先度が上がると考えてください。

  • 回答に社内規程・手順書・仕様書などの根拠が必要:YesならRAG向き
  • 内容が頻繁に更新される:最新情報が重要ならRAG向き(更新運用が前提)
  • 誤回答の損失が大きい:監査、契約、請求、セキュリティ等はRAGが安心
  • 同じ質問が繰り返し発生:問い合わせ削減に直結しやすい
  • 社内文書が散在して検索が大変:RAGで横断検索+要約が効く
  • 文書のアクセス権が複雑:RAGは設計が必要(ここが難所)
  • “誰が見ても同じ答え”が求められる:属人化解消にはRAGが有利

一方で、RAGを入れる前に確認したい「落とし穴」もあります。

  • 文書が古い/矛盾している:RAGは“正しいもの”を引けない。誤情報が強化される
  • PDFスキャンだらけで文字が取れない:OCRなど前処理が必要
  • 質問の仕方が曖昧:検索が外れると回答も外れる。UIやガイドが重要
  • 「何でも答える」期待:RAGでも未知の領域は答えられない。対象範囲を決める

要するに、RAGは「社内ナレッジを整えるプロジェクト」でもあります。AIだけ導入しても成果が出ないのは、ナレッジの品質・更新・権限がボトルネックになりやすいからです。

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判断フレーム:RAG導入の意思決定を“3つの質問”で決める

「比較は分かったが、結局うちには必要?」という方向けに、会議でそのまま使える判断フレームを提示します。次の3つの質問に答えるだけで、方向性がかなり明確になります。

質問1:社内の“正”がどこかに書いてありますか?

例として、情シスの「PC交換申請」や「アカウント発行」などは手順書があるはずです。人事なら就業規則、総務なら稟議・購買ルール、営業なら価格表や提案テンプレ、サポートならFAQや過去チケット。一次情報が存在するなら、RAGで“答えを固定化”できます

逆に、正が文書化されていない(担当者の経験に依存している)場合は、RAGより先に「まず文書化」が必要です。ここを飛ばすと、AIがそれっぽい文を作ってしまい、現場は余計に混乱します。

質問2:誤答が発生したとき、どれくらい困りますか?

「少し手戻りが出る」程度なら通常の生成AIでもよく、最終確認を人が行う前提で回せます。一方で、誤答が原因で請求ミス、契約違反、情報漏えい、監査指摘につながるなら、RAGで根拠を示す仕組み(+回答の制約)が必要です。リスクが大きい領域ほど、RAGの投資対効果は高くなります

質問3:情報はどれくらいの頻度で更新されますか?

RAGは「更新して初めて強い」仕組みです。更新が月1回程度でも、担当部門が更新フローを持てるなら運用可能です。逆に、更新頻度が高いのに更新者が不明、更新が属人化している、そもそも最新版がどれか分からない場合は、RAG以前に情報ガバナンスが課題です。

この3つに加え、社内稟議の観点では「どの部署の何時間が削減できるか」を試算しておくと通りやすくなります。問い合わせ件数×平均対応時間×人件費で概算し、RAGでの削減率(まずは20〜40%程度を現実ラインに)を置くと、投資判断が現実的になります。

社内RAGの導入手順:小さく始めて、失敗を避けて広げる

RAGは“作って終わり”ではなく、運用で差が出ます。情シスや経営が押さえるべきは、最初から全社を狙わず、対象業務を絞って小さく成功させることです。以下は実務で再現性の高い進め方です。

対象業務を1つに絞る(最初はFAQ型がおすすめ)

初期は「問い合わせ対応」や「手順案内」のように、質問が定型化しやすい領域が向きます。例:情シスのアカウント申請、SaaSの権限申請、VPN接続、端末キッティング、パスワードリセットなど。質問のパターンが見えやすく、効果測定もしやすいからです。

情報源を棚卸しし、最新版・正本を決める

RAGの精度は、情報源の品質にほぼ比例します。SharePoint、Google Drive、Box、Confluence、社内ポータル、ファイルサーバ、メール添付…と散らばっている場合は、まず「正本はどれか」「更新責任者は誰か」を決めます。“どれを参照すれば正しいか”が曖昧だと、AI以前に人も迷います

アクセス権(誰が何を見てよいか)を先に設計する

社内ChatGPTで最も重要なのはセキュリティです。RAGは社内文書にアクセスするため、閲覧権限と同じ制御が必要です。部署別、役職別、プロジェクト別などのアクセス制御がある場合、RAG側でも同等の制御(ユーザー認証、文書の権限メタデータ、ログ管理)を設計します。

ここを曖昧にすると「見えてはいけない情報がAI経由で見える」事故につながります。逆に、権限制御を過剰に複雑にすると検索が当たらず、現場が使わなくなるため、最初は対象範囲を狭くしてシンプルに始めるのがコツです。

評価方法を決める(正答率だけでなく“使えるか”)

RAGの評価は、単なる正答率だけだと失敗します。現場が求めるのは「短時間で自己解決できたか」「根拠が示されて安心できたか」です。おすすめ指標は、回答の根拠提示率、解決までのターン数、有人対応へのエスカレーション率、問い合わせ件数の推移です。現場の業務時間が減ったかどうかをKPIに置くと、投資判断がブレません。

プロンプトとUIで“聞き方”を支援する

専門知識がない社員ほど、質問が曖昧になりがちです。「〇〇ができない」だけでは原因が特定できません。フォーム形式で「どのシステム?エラー文は?いつから?」を補助したり、よくある質問ボタンを用意したりすると、RAGの検索が当たりやすくなり、回答品質も安定します。

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よくある失敗と対策:RAGを入れたのに使われない原因

RAGは導入の“見た目”は派手ですが、現場で使われなくなる典型パターンがあります。先に対策を知っておくと、無駄な作り直しを防げます。

失敗:回答が長くて結局読まれない

RAGは根拠文書を大量に引いてしまうと、要点が埋もれます。対策として、回答フォーマットを固定し「結論→手順→注意点→根拠(リンク/引用)」の順にします。“まずやること”が1分で分かる形が、業務では重要です。

失敗:検索が外れて自信満々に間違える

検索が外れると、AIはそれっぽい文章を生成してしまうことがあります。対策は「分からないときは分からないと言う」ガードレールを入れること、根拠が薄い場合は回答を保留し、有人窓口へ誘導することです。また、検索ヒットが少ない領域は、文書の粒度(章立て)やタイトル、用語ゆれ(例:稟議/りんぎ/承認申請)を整えると改善します。

失敗:文書が更新されず、古いルールを案内する

RAGは更新されないと陳腐化します。対策は、文書の更新フローを業務に組み込むことです。たとえば規程改定時に必ず「ナレッジ更新チェック」をタスク化し、更新者・期限・レビュー者を決める。運用責任が曖昧なRAGは、時間とともに信用を失います

失敗:権限設計が甘く、セキュリティ部門で止まる

RAGは情報アクセスの仕組みなので、後から権限を継ぎ足すと設計が歪みます。最初は対象文書を「全社員に公開してよい範囲」に絞ってPoCし、次に部署限定、最後に機微情報…と段階的に広げると、審査も通しやすくなります。ログ(誰が何を聞いたか、どの文書を参照したか)を残せる設計にしておくと、監査対応にも有利です。

まとめ

社内ChatGPTにRAGが必要かどうかは、「社内固有の正しい情報に基づく必要があるか」「誤答のリスクがどれほどか」「情報更新を回せるか」で判断できます。通常の生成AIは文章作成や壁打ちなどの“汎用業務”で即効性があり、RAGは規程・手順・仕様などの“社内ナレッジ業務”で真価を発揮します。

導入のコツは、いきなり全社を狙わず、問い合わせ対応などの定型領域から小さく始めることです。情報源の正本化、アクセス権、評価指標、質問UI、更新運用まで含めて設計すると、RAGは「便利そう」から「実際に時間を減らす」仕組みに変わります。AI導入はツール選びではなく、業務設計と運用設計が成功の分かれ目です

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