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「TypeScript対応」の一言が危ない理由:動くコードと“運用できる開発”は別物
ベンダーから「TypeScript対応できます」と言われると、発注側としては安心しがちです。ですが実務では、TypeScriptが書けること=品質の高い開発ができることではありません。特にWebでよく採用されるNext.jsは、TypeScript以外にも「設計」「ビルド運用」「デプロイ」「パフォーマンス」「セキュリティ」まで含めて、総合力が問われます。
現場で起きやすいズレは次のとおりです。
- TypeScriptは使っているが、型が薄くて結局バグは減らない(anyだらけ/型定義がない)
- Next.jsを使っているが、ページ表示が遅い・SEOが弱い・ビルドが不安定
- 納品後に、誰も触れない複雑さになって保守費が高騰
- サーバーやDB、認証、運用監視は別チーム任せで全体最適にならない
発注側(中小企業の経営者・情シス・業務担当)が確認したいのは、「TypeScriptが書けますか?」ではなく、TypeScript×Next.jsで、事業に必要な品質・速度・保守性を満たせますか?です。本記事では、非エンジニアでも判断しやすい“確認ポイント”に落とし込み、ベンダー選定や見積比較で使える形にまとめます。
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まず押さえる前提:Next.jsとTypeScriptの関係(超かみ砕き)
Next.jsは、ReactというUI技術を土台にした「Webアプリの枠組み」です。ログイン画面、管理画面、EC、予約、社内ポータルなどを作る際に、表示速度やSEO、開発体験を整えやすいのが特徴です。一方で、Next.jsは設定・選択肢が多く、作り方によって成果が大きく変わります。
TypeScriptは、JavaScriptに「型(データの形のルール)」を付けてミスを減らす仕組みです。例えるなら、Excelの入力規則のようなものです。入力規則が適切ならミスが減り、ルールが形だけなら意味がありません。TypeScriptも同様で、型を“きちんと設計して回す”文化がないと効果が出にくいです。
さらにNext.jsには、事業側の要件と直結する重要論点があります。
- 表示方式の選択:SSR(サーバーで作って返す)/SSG(事前生成)/ISR(一定間隔で更新)など
- データ取得設計:API設計、キャッシュ戦略、認証・権限
- 配信と運用:Vercel、AWS、コンテナ、CDN、監視、ログ
- パフォーマンス:画像最適化、バンドル分割、遅延読み込み
つまり、ベンダーの「TypeScript対応」は入り口に過ぎません。発注側は、Next.jsを使う“理由”と“運用までの責任範囲”を一緒に確認すると、失敗確率を下げられます。
ベンダー確認ポイント:口頭で終わらせない質問リスト(コピペ可)
ここでは「Yes/No」で終わらない質問にして、ベンダーの実力と姿勢が出るようにします。可能なら、回答は口頭ではなく、議事録や提案書に残してください。曖昧な返事を放置すると、後から“言った・言わない”のコストが発生します。
TypeScriptの“品質”を見抜く質問
- 質問:TypeScriptの設定(tsconfig)はどの厳しさで運用しますか? strictは有効ですか?
狙い:型チェックを本気で効かせる姿勢か。strictを避ける場合は理由を確認。 - 質問:anyの使用ルールはありますか? 例外的に使う場合、レビューやTODO管理は?
狙い:“型がある体裁”で終わらないか。any無制限は危険信号。 - 質問:APIレスポンスの型はどう管理しますか? 手書きですか、スキーマから生成しますか?
狙い:バックエンドとズレてバグる典型を潰せるか。OpenAPI等の設計力を見る。 - 質問:ユニットテストと型の役割分担はどう考えますか?(型があるからテスト不要、は正しい?)
狙い:TypeScript万能論に寄っていないか。現実的な品質設計か。
Next.jsの“設計”を見抜く質問
- 質問:このサイト/システムはSSR/SSG/ISRのどれが適切で、理由は何ですか?
狙い:Next.jsの使い分けができるか。SEO・更新頻度・会員制など要件と結び付く。 - 質問:ルーティング(画面構成)とディレクトリ設計はどうしますか? App Router(Next.jsの新しい方式)前提ですか?
狙い:技術の世代差で保守が詰まないか。採用方針とリスク説明の有無を見る。 - 質問:認証(ログイン)と権限(誰が何を見られるか)はどう実装しますか? NextAuth等の採用可否は?
狙い:セキュリティの要。丸投げ回答なら注意。 - 質問:SEOと表示速度の測定指標(Core Web Vitals等)は何を目標にしますか? 計測方法は?
狙い:“速いはず”ではなく、数値で管理できるか。
運用・保守を見抜く質問(非エンジニアほど重要)
- 質問:本番障害時、どのログを見て、誰が一次対応し、何分で連絡しますか?
狙い:運用体制の現実。SLA/SLOの考え方があるか。 - 質問:CI/CD(自動テスト・自動デプロイ)はどこまで入れますか?
狙い:手作業デプロイは事故の温床。次の改修が高くなる。 - 質問:脆弱性対応(ライブラリアップデート)は誰が、どの頻度で行いますか?
狙い:Next.js/React周りは更新が速い。放置するとセキュリティ・保守性が劣化。 - 質問:ドキュメントは何を納品しますか?(環境構築手順、運用手順、画面仕様、API仕様)
狙い:担当交代や内製化に耐えられるか。
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成果物でチェック:提案書・見積・設計書から“地力”を判定する見方
会話が上手いベンダーほど通ってしまうのが、発注の怖いところです。そこで、書面に出る“解像度”で判定します。専門知識がなくても、次の観点なら見抜けます。
見積の粒度:画面と機能が分解されているか
Next.js案件でよくある失敗は、見積が「一式」になっていて、後から追加費用が増えるケースです。見積は“機能ごと・画面ごと・運用項目ごと”に分かれているほど健全です。
- フロント(Next.js)だけでなく、API、DB、認証、管理画面、CMS連携が分かれている
- テスト(単体/結合/受入)やパフォーマンス改善が項目として存在する
- 運用(監視、ログ、障害対応、バックアップ)が別枠で明示されている
逆に「Next.js開発一式」「TypeScript対応一式」のような表現は、スコープが曖昧になりやすいです。曖昧さは、後で必ずコストになります。
設計の言語化:なぜその方式なのか説明があるか
Next.jsでは、SSR/SSG/ISR、キャッシュ、画像、データ取得などで性能と費用が変わります。良い提案書は、選定理由とトレードオフが書かれています。
提案書に書かれていると安心な例
- 会員制のマイページはSSR、公開ページはSSG/ISRなど、ページ特性で分ける
- 更新頻度が高い箇所はISRで、編集から反映までの期待値を決める
- 画像が多い場合、Next.jsの画像最適化を使いつつCDN方針を明示する
体制:誰が何を責任持つか(属人化のサイン)
「TypeScriptが書ける人がいます」は体制の説明になりません。見るべきは、役割分担とバックアップです。
- テックリード(設計責任者)は誰か、レビュー体制はあるか
- フロント(Next.js)とバックエンド、インフラの責任境界が明確か
- 担当者が休んだときに止まらないか(2名以上で理解しているか)
ベンチャーや少人数ベンダーが悪いわけではありません。ただし、属人化を前提にするなら、発注側がリスク(納期、品質、保守)を理解した上で契約条件に反映すべきです。
ミニ実例:TypeScript/Next.jsでよくある“できると言ったのに…”パターンと回避策
ここでは、発注後に揉めやすい典型パターンを、非エンジニア向けに具体化します。同じトラブルでも、事前の質問と契約の書き方で大半は防げます。
パターンA:納品後に改修が遅い(触るたびに壊れる)
原因:TypeScriptは導入しているが型が薄く、設計が場当たり。さらにテストやレビューが弱く、変更の影響範囲が読めない。
回避策:
- strict運用、anyルール、コードレビューの基準を事前に合意する
- 重要機能(決済、予約、権限など)はテスト範囲を明記する
- 納品物に「開発手順(README)」と「設計方針」を含める
パターンB:SEOが伸びない/表示が遅い
原因:Next.jsの表示方式選定が要件と合っていない、画像・スクリプトが重い、計測していない。さらに「公開後に改善しましょう」で先送りされる。
回避策:
- 公開ページはSSG/ISRを中心にし、SEO要件(タイトル・メタ・構造化など)を整理する
- 目標指標(LCPやCLSなど)と計測方法を合意し、改善作業も見積に入れる
- コンテンツ更新頻度が高いなら、CMS連携と運用フローまで設計する
パターンC:本番運用でトラブルが起きても“誰も分からない”
原因:Next.jsのホスティング(Vercel/AWS等)や環境変数、ログ、監視が整理されていない。担当者のPC依存・手作業が残っている。
回避策:
- 障害対応フロー(連絡、一次対応、復旧、原因報告)を契約前に確認する
- 監視・ログ・バックアップを運用項目として切り出し、月額でも良いので責任者を決める
- デプロイは自動化(CI/CD)し、手順をドキュメント化する
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発注側が用意すると成功率が上がる情報:要件定義の“最低限セット”
ベンダーの力量も重要ですが、発注側の情報が揃っていると、見積精度と品質が上がります。特にNext.jsは作り方の選択肢が多いので、前提が曖昧だと、ベンダーが安全側に盛る(高額化)か、逆に抜け漏れ(追加費用)になります。
これだけは用意したい最低限セット
- 目的:問い合わせ増、採用、社内業務効率化など(優先順位も)
- 対象ユーザー:誰が使うか、ITリテラシー、利用端末(PC/スマホ)
- 画面一覧:公開ページ、ログイン後ページ、管理画面の有無
- 更新頻度:毎日更新か、月数回か(SSG/ISRの判断材料)
- 外部連携:既存DB、基幹、MA、SFA、決済、チャット等
- 運用体制:社内で誰が更新するか、夜間対応が必要か
加えて、情シスや管理部門が関わる場合は、次も早めに確認すると手戻りが減ります。
- ドメイン・DNS・SSL証明書の管理者は誰か
- アクセス権(Git、クラウド、解析ツール)の付与フロー
- 個人情報の扱い(プライバシーポリシー、ログの保存期間)
契約・発注で揉めないためのポイント:成果物と責任範囲を固定する
技術の話以上に揉めるのが、「どこまでが費用に含まれるか」です。特にTypeScriptやNext.jsは、品質向上のための施策(型の整備、テスト、性能改善)をどこまでやるかで工数が変わります。そこで、成果物と運用責任を“言葉”で固定します。
成果物(納品物)を明記する
- ソースコード一式(リポジトリの所在、権限移譲)
- 環境構築手順(README)とローカル起動方法
- デプロイ手順(CI/CD含む)と環境変数一覧
- 画面仕様(最低限の画面遷移と入力項目)
- API仕様(OpenAPI等があれば理想)
- 運用手順(監視、障害時連絡、バックアップ)
品質基準を“測れる形”で合意する
「高品質に作ります」では判断できません。以下のように、合意しやすい形へ落とします。
- TypeScriptのstrict運用の有無、anyの上限ルール
- テスト範囲(重要機能だけでも可)と実施タイミング
- 表示速度の目標(公開ページだけでも可)と計測方法
- 対応ブラウザ、スマホ表示の要件
保守の入口を作る(納品して終わりにしない)
Next.jsはライブラリ更新が多く、放置すると脆弱性やビルド失敗が起きやすくなります。なので、保守の契約形態(スポット/月額)を最初から決めると、結果的に総コストが下がります。
保守で最低限入れておきたい項目
- ライブラリアップデート(Next.js/React含む)方針
- 障害時の一次対応(時間帯、連絡手段、初動時間)
- ログ・監視の確認頻度とアラート設計
- 軽微改修の進め方(チケット、見積、優先順位)
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
「TypeScript対応できます」は、ベンダー選定の合格点ではなく“入口”です。特にNext.jsは、表示方式(SSR/SSG/ISR)・データ取得・認証・運用まで含めて設計することで、SEOや速度、保守性が大きく変わります。
- 確認すべきは言語スキルではなく、品質・設計・運用の具体策
- 口頭ではなく、提案書・見積・納品物の粒度で判断する
- strict運用やanyルール、テスト範囲、性能指標など“測れる合意”を作る
- 納品後を見据え、ログ・監視・更新対応まで責任範囲を固定する
もし「今のベンダー提案で大丈夫か不安」「Next.jsで作るべきか、別の選択肢が良いかも含めて相談したい」という段階なら、要件整理から一緒に進めるだけでも失敗確率は下がります。事業目的と運用体制に合わせて、無理のない設計と発注条件を整えることが、結果的に最短ルートです。
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