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TypeScriptの更新が「怖い」理由と、Next.jsで起きがちな影響
TypeScriptのアップデートは、セキュリティパッチのように「入れれば終わり」ではなく、開発体験やビルド結果(本番に出す成果物)に影響することがあります。特にNext.jsは、React・ビルドツール・型定義(@types)など複数の部品が組み合わさっており、どれか一つの更新が連鎖して「突然ビルドが通らない」「CIで落ちる」「本番デプロイが止まる」といった事故につながります。
非エンジニアの方が混乱しやすいポイントは、「TypeScriptを上げたのに、アプリの機能は変えていないのに壊れる」ことです。これは、TypeScriptがコードの正しさをより厳密にチェックするようになったり、周辺ライブラリの型が変わったりするためで、いわば社内ルール(型の規約)が改訂され、過去の書類が差し戻されるようなイメージです。
Next.js環境では、次のような影響がよくあります。
- ビルド時エラーの増加:型チェックが厳しくなり、今まで見逃していた曖昧なコードがエラーになる
- 型定義のズレ:ReactやNode.js、ライブラリの型定義が更新され、互換性が崩れる
- ESLint/formatterとの整合:lintやprettier、tsconfigの設定変更が必要になる
- 運用面の停止:CIでの型チェック、Vercel等のデプロイで失敗し、リリースが止まる
結論として、TypeScript更新は「勇気」ではなく「手順」で安全にできます。本記事では、Next.jsを前提に、アップデートで壊れないための保守運用(計画、検証、段階的導入、ロールバック)を、情シス・管理側の視点でも理解できる形に落とし込みます。
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更新運用の基本方針:止めないための「頻度」「範囲」「責任」を決める
TypeScriptの更新を成功させる鍵は、技術というより運用設計です。特に複数部署が関わる企業では、「誰が」「いつ」「どの範囲で」更新するかが曖昧だと、放置されて一気に大更新になり、結果として破綻します。
おすすめの基本方針は次の通りです。
- 更新頻度:四半期ごと、もしくは月1回の「メンテ日」を設定(小さく刻むほど安全)
- 更新範囲:TypeScript単体ではなく、Next.js・React・@types・ESLint関連を「同じ窓」で確認
- 責任分界:情シスは「メンテ枠の確保と承認」、開発は「影響評価と実施」、事業側は「リリース計画」
ここで重要なのは、「更新しないこと」はコスト削減ではなく、将来の一括負債化だという点です。古いTypeScriptを使い続けると、新しいNext.jsに追従できず、周辺の脆弱性対応も遅れ、採用や外注切り替え時にも足かせになります。結果的に「改修が高い」「期間が長い」という見積もりになりやすいです。
運用としては、次の「3つのレーン」を作ると事故が減ります。
- 監視レーン:依存関係の更新候補を定期的に洗い出す(自動化推奨)
- 検証レーン:ローカルとCIで型チェック・テスト・ビルドの再現性を担保
- 反映レーン:本番に入れる手順、戻す手順(ロールバック)をセットで持つ
このレーンが揃うと、TypeScript更新は「イベント」ではなく「定常作業」になります。Next.jsの運用でも、バージョン更新が怖い状態から抜け出せます。
事前準備:Next.js×TypeScriptの更新前に揃えるチェック項目
更新作業に入る前に、最低限の前提を揃えるだけで成功率が上がります。専門的な設定の細部まで理解していなくても、「何が揃っていれば安全に試せるか」を押さえることが重要です。
更新前のチェック項目(推奨)は次の通りです。
- バージョンの見える化:package.jsonとlockファイル(package-lock.json / yarn.lock / pnpm-lock.yaml)が管理されている
- Node.jsのバージョン固定:.nvmrcやVolta、CI設定でNodeのバージョンを揃える
- CIでの型チェック:「誰のPCなら通る」状態を排除し、CIで再現できるようにする
- 自動テストの最低ライン:E2Eが無理でも、主要ページのビルド/起動確認は自動化する
- ブランチ運用:更新専用のPR(Pull Request)を作り、差分を小さく保つ
Next.jsでは、型チェックの実行方法がプロジェクトによって異なります。一般的には以下を揃えると運用が安定します。
最低限入れておきたいコマンド例(プロジェクトに合わせて調整)
# 型チェック(Next.jsのビルドとは分離しておくと原因特定しやすい)
npx tsc --noEmit
# Lint
npm run lint
# Next.jsのビルド(本番相当)
npm run build
また、TypeScriptは「tsconfig.json」の設定により厳しさが変わります。更新時に突然エラーが増えるケースでは、TypeScript本体の更新に加えて、型定義や設定の影響も重なっていることが多いです。ここでの実務的なコツは、更新と同時にルールを大きく変えないことです。たとえばstrictを突然ONにするなどは、別案件として切り出すと安全です。
非エンジニアの管理者が押さえるべき観点は「検証できる状態か」です。検証に必要な時間(数時間〜数日)をメンテ枠として確保し、止められない繁忙期にまとめて更新を当てない、という運用だけでも失敗が激減します。
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実作業の手順:段階的アップデートで壊れない進め方
TypeScript更新で一番危険なのは、「Next.jsもReactもTypeScriptも一気に最新版へ」など、変更点を増やしすぎることです。トラブルが起きたとき原因が追えず、結局ロールバックして放置、になりやすいです。ここでは、Next.jsを使う前提で、段階的に進める手順を紹介します。
更新は「小さく」分割し、原因を1つに絞る
おすすめは次の順序です(プロジェクト事情で前後します)。
- TypeScript単体の更新:tscのエラー増減を確認する
- @typesの更新:react/nodeなど型定義の更新で追加エラーが出ないか確認
- ESLint/関連プラグイン:lintのルール変更を確認する
- Next.js本体:最後にNext.jsを更新し、build/route動作を確認
ただしNext.jsは内部で推奨TypeScriptバージョンが変わることもあります。更新対象が多い場合は、まず「Next.jsが求める最低限の範囲」を満たす程度に揃え、次のメンテ日に追加で追従する、という2段構えが現実的です。
ブランチとPRの作り方(管理側にも見える形)
更新PRは、差分が読めることが重要です。社内承認や外注管理でも、次の形式にすると判断がしやすくなります。
- PRタイトル:「chore: TypeScript 5.x update」など目的が明確
- PR本文:更新理由、影響範囲、検証結果、ロールバック方法を記載
- 差分の粒度:更新と無関係なリファクタは混ぜない
検証の観点は「動いた」ではなく、決めた確認項目が全部通ったが重要です。たとえば、ログイン導線、問い合わせフォーム、管理画面の主要操作など、業務上のクリティカル機能に絞ってチェックリスト化します。
ロールバックを“手順”として用意する
更新に失敗したときに戻せないのが最悪です。理想は、リリース前に「戻し方」を決めておくことです。
- 依存関係:lockファイル込みで元のコミットへ戻す
- デプロイ:Vercel等のプラットフォームなら、前のデプロイへ戻せる状態にする
- 検知:監視(エラー率、Sentry等)でリリース後の異常を早期に見つける
TypeScript更新はランタイムの挙動を変えないことも多い一方で、ビルドが通らずデプロイできない事故が起きやすいです。つまり「本番障害」よりも「リリース停止」が痛い。だからこそ、段階的更新とロールバック設計が効きます。
よくあるトラブルと対処:TypeScript更新で詰まりやすいポイント
TypeScript更新で発生しやすいトラブルを、業務目線で整理します。原因がわかると、外注先・開発担当との会話もスムーズになります。ここではNext.js案件で頻出のものを中心に扱います。
ビルドは通るのにCIで落ちる
よくある原因は、開発PCとCIでNode.jsやパッケージ解決がズレていることです。対策はNode.jsバージョン固定と、CIでのクリーンインストール(lockファイル厳守)です。特にpnpm/yarn/npmで挙動が異なるため、社内標準を決めると安定します。
型エラーが大量に出て収拾がつかない
この場合は、更新幅が大きすぎるか、型のルール(strict系)を同時に変えている可能性があります。対処の基本は次の通りです。
- 更新を分割:TypeScript本体だけ戻して比較し、増えたエラーの原因を特定
- 影響範囲の切り分け:特定ディレクトリから直す(例:/pages、/app、/components)
- 一時回避の可否判断:本質的修正が必要か、暫定的に型注釈で逃がせるかを判断
注意点として、anyで逃げすぎると「更新は通ったが品質は下がった」状態になります。短期的に止血する場合でも、どこに暫定対応を入れたかを一覧化しておくと、後から負債になりにくいです。
Next.jsの型周り(ルーティング/Server Components等)で詰まる
Next.jsはバージョンによって推奨の書き方や型の扱いが変わります。App Router、Server Components、Server Actionsなどの機能を使っている場合、TypeScript更新と同時にエラーが顕在化しやすいです。ここでの対処は「正しい型に寄せる」が王道ですが、業務都合で工数が取れない場合は、対象機能を限定して段階的に修正するのが現実的です。
また、フロント(ブラウザ)とサーバ(Node.js)で型の前提が違う箇所も要注意です。たとえばfetchやRequest/Response、環境変数の扱いなど、ランタイムが異なると型の期待も変わります。更新時は「どこで動くコードか」を整理し、サーバ側コードの型エラーから優先して潰すと、ビルド停止の解消が早いです。
外部ライブラリが追従しておらず型が壊れる
社内開発でも外注でもよくあるのが「依存しているライブラリの型定義が古い」ケースです。この場合は、(1)ライブラリ更新、(2)代替ライブラリ検討、(3)型のパッチ(型定義の上書き)という順で検討します。特に(3)は応急処置として有効ですが、将来の更新で再度壊れるため、期限付きの対応として管理するとよいです。
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継続運用の仕組み:アップデートを“イベント”から“習慣”へ
一度アップデートに成功しても、次の更新でまた怖くなるようでは意味がありません。TypeScript更新を定常運用にするには、仕組み化が重要です。ここでは、情シス・管理側でも導入しやすい運用を紹介します。
「メンテナンス枠」をカレンダーに固定する
更新は、障害対応と違って計画できます。四半期に1回でも良いので、業務影響が少ない期間にメンテ枠を確保します。これにより「更新が必要だが時間がない」が減り、結果として大更新の爆発を避けられます。
更新の判断基準を言語化する(経営判断しやすくする)
どの程度の更新をいつやるか、判断基準があると意思決定が早くなります。例として、次のような基準が使えます。
- 原則:TypeScript/Next.jsはサポートが継続している範囲に保つ
- 優先度高:CIが不安定、脆弱性対応、採用/外注で「古すぎる」と言われた
- 優先度中:開発効率改善(型推論改善、エディタ補完向上)
- 優先度低:大きな機能追加がない単なる追従(ただし放置はしない)
この基準があると、担当者が変わっても継続運用しやすいです。特に情シスがベンダー管理をする場合、見積の妥当性チェックにも使えます。
自動化できるところを自動化する
依存関係の更新候補の検出や、PR作成の自動化(例:DependabotやRenovateのような仕組み)は、運用負荷を大きく下げます。ここでのポイントは、自動化の目的は「勝手に本番反映」ではなく、更新の可視化とレビューを早くすることです。
実務で効果が大きいのは以下です。
- 自動PR作成:更新差分が定期的に出るので、放置しにくい
- CIテンプレ:型チェック・lint・build・主要テストを必ず走らせる
- 変更履歴の確認ルール:TypeScript/Next.jsのリリースノートをざっと見る担当を決める
さらに、更新後のトラブルに備えて、監視(エラー通知)やログ基盤を整えておくと、リリース判断がしやすくなります。更新運用は「開発の話」に見えますが、実際は業務の継続性(止めない)の話です。
まとめ
TypeScriptの更新は、Next.jsのように複数技術が絡むほど怖く見えます。しかし、壊れる原因の多くは「一気に更新する」「検証環境が揃っていない」「戻す手順がない」という運用面にあります。今回のポイントは次の通りです。
- TypeScript更新は小さく分割し、原因を1つに絞って検証する
- Next.js案件ではTypeScriptだけでなく、@types・ESLint・Node.jsなど周辺も含めて運用設計する
- CIで型チェック・ビルドを回し、再現性を担保する
- ロールバックを先に決め、更新を「イベント」ではなく定常運用にする
社内に詳しい人が少ない場合でも、メンテ枠・チェックリスト・更新PRの型を整えるだけで、アップデートの成功率は大きく上がります。Next.jsとTypeScriptを使った開発を長期で安定させるために、まずは「次の更新を小さく、安全に回す」体制づくりから始めてください。
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