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なぜNext.js案件は「後から増額」になりやすいのか
Next.jsは「Webサイト」から「アプリに近いWeb」まで守備範囲が広いため、最初の発注時に「何を作るか」が曖昧だと、途中で想定外の作業が発生しやすいフレームワークです。特に中小企業や情シス部門では、見た目(デザイン)やページ数に目が行きがちですが、開発費を左右するのは「裏側の要件」です。たとえば同じ10ページでも、静的な会社紹介サイトと、ログイン・会員管理・検索・決済・外部連携があるサイトでは、工数が桁違いになります。
またNext.jsは、表示速度やSEOに強い一方で、サーバー実行(SSR)・事前生成(SSG)・クライアント側(CSR)など複数の作り方があり、最適解が要件次第で変わります。この「方式選定」が最初に固まっていないと、後半で「やっぱり予約一覧は検索エンジンに載せたい」「会員ページも高速化したい」となり、設計や実装の手戻りが起きます。
追加費用が出る典型パターン
- 要件が「ページ単位」ではなく「体験(ログイン、検索、購入、更新フロー)」で増えていく
- SEOや速度などの非機能要件が、後から重要だと気づく
- 運用(更新方法、権限、監査、障害対応)が契約範囲外になりやすい
この記事では、Next.jsの案件で追加費用が出やすい要件を「見落としやすい順」に整理し、発注前に潰す(=仕様として確定する)方法を、専門知識がない方でも確認できる形で解説します。
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追加費用が出やすい要件:レンダリング方式(SSR/SSG/ISR/CSR)とSEOのズレ
Next.jsの費用が膨らみやすい最大要因の一つが、ページごとの「表示の作り方」の選択です。専門用語に見えますが、発注側は次の問いに答えられれば十分です。「検索結果に載せたいページはどれか」「ログイン後だけのページはどれか」「更新頻度はどれくらいか」を最初に決めないと、後で構造ごと変えることになります。
- SSR(サーバーで毎回生成):ユーザーごとに内容が変わる、最新情報が重要、などに強い。サーバー費用や実装が重くなりがち。
- SSG(事前に生成):会社概要や記事など、更新頻度が低いページに向く。高速で安定しやすい。
- ISR(一定間隔で再生成):「基本は静的、ただし更新もしたい」の中間。キャッシュ戦略の理解が必要。
- CSR(ブラウザで生成):ログイン後の管理画面などに向く。SEOが必要なページには不向きになりやすい。
追加費用が出るのは、たとえば「当初はCSRでよい」として作った検索一覧が、途中で「やっぱりGoogleにインデックスさせたい」となり、SSR/SSGへ切り替えるケースです。データ取得方法や認証方式、URL設計まで変わることがあり、単なる微修正では済みません。
発注前に潰すチェック(そのままベンダーに投げられます)
- 検索エンジンに載せたいページ種別(例:記事、製品、店舗、求人、FAQ、一覧、詳細)を列挙
- ログイン必須ページの範囲(例:マイページ、購買履歴、管理画面)を列挙
- 各ページの更新頻度(毎日/週1/月1/不定期)と「即時反映が必要か」を整理
- 重要KPI(検索流入、CV、速度、運用負荷)の優先順位を決める
なお、Next.jsのSEOは「作っただけで強い」わけではありません。タイトルや構造化データ、OGP、サイトマップ、重複URL対策など、実務項目が多く、これらが見積に含まれていないと追加になりがちです。SEOを目的にNext.jsを選ぶなら、「SEO設定一式」をタスクとして契約に入れるのが安全です。
追加費用が出やすい要件:CMS・更新フロー(誰が何をどこまで更新するか)
コーポレートサイトやメディア、採用サイトなどで多いのが「公開後に更新が回らない」問題です。Next.jsはヘッドレスCMS(WordPress、microCMS、Contentfulなど)と相性がよい反面、CMS選定と権限設計、入力項目(コンテンツモデル)の設計を曖昧にすると、後から「想定外の項目追加」「編集画面の作り直し」が発生し、追加費用の原因になります。
たとえば「お知らせ」を作るだけでも、次のような論点があります。運用担当の業務に落とすと、必要な項目が見えてきます。
- カテゴリ、タグ、重要なお知らせ固定、公開日時指定、下書き、承認フローは必要か
- 添付ファイル、PDF、画像の差し替え、代替テキスト(アクセシビリティ)
- 一覧の表示順(手動/自動)、検索、アーカイブ
- 過去記事のURLを変えない要件(リダイレクト)
また、CMSを入れると「プレビュー(公開前確認)」が重要になります。Next.jsでプレビューを実装する場合、認証や下書きデータの取得などの仕組みが必要で、要件に入っていないと追加になりやすい領域です。
事前に決めると追加費用が減る「更新要件」テンプレ
- 更新担当者(部署/人数/ITリテラシー)
- 更新対象(ページ種別:記事、製品、事例、店舗、採用、FAQ、バナー等)
- 更新頻度と公開ルール(即時公開/予約/承認)
- 必要な入力項目(テキスト、画像、CTA、メタ情報、構造化データの有無)
- 公開前プレビューの必要性(誰が確認するか)
CMS選定も追加費用の火種です。たとえば「WordPressをヘッドレスで使う」のは可能ですが、プラグイン前提の運用はそのまま移植できないことがあります。現行サイトの更新手順をそのまま再現したい場合は、移行方針(何を捨て、何を残すか)を先に合意しておくと、見積のブレが小さくなります。
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追加費用が出やすい要件:認証・権限・会員機能(BtoBほど要注意)
「ログインがあるだけ」と思っていても、実際の会員機能は論点の塊です。Next.js自体はフロントエンド(画面側)なので、ログイン・権限・ユーザー管理の“本体”は別途(認証基盤やバックエンド)を組み合わせます。ここを曖昧にすると、途中で「想定より安全性が必要」「社内規程に合わない」となり、追加費用が発生します。
特に情シスが関与する企業では、次が後出しになりやすいです。セキュリティ要件は後から足すほど高くつくため、最初に確認しましょう。
- ログイン方式:メール+パスワード、SSO(Microsoft Entra ID/Google Workspace)、多要素認証
- 権限:一般/管理者だけでなく、部署別、拠点別、閲覧のみ、編集のみ等が必要か
- 監査:誰がいつ何を更新したか(監査ログ)
- ロックアウト、パスワードポリシー、退職者アカウントの無効化手順
- 個人情報の扱い:保管期間、削除依頼対応、同意文言
また、会員向けページがSEO対象外でも、速度や安定性は重要です。アクセス集中時の挙動、セッション切れ、APIのタイムアウトなどは、運用開始後に問題化しやすく、結果として改修費用につながります。本番稼働後の想定利用者数(同時アクセス)と、ピーク要因(キャンペーン、請求書公開日など)を事前に共有すると、適切な設計になりやすいです。
発注側の確認質問(Yes/Noで答えるだけ)
- 社内アカウント(Microsoft/Google)でログインしたいか
- 管理者がユーザーを招待・停止できる必要があるか
- 操作ログ(誰が何をしたか)の保存が必要か
- 個人情報を扱うか(氏名、電話、住所、購買履歴など)
- 退職・異動の運用が頻繁か
追加費用が出やすい要件:外部API連携・既存システム連携(基幹/CRM/在庫/決済)
Next.js案件の見積が跳ねるのは「外部連携」が入った瞬間です。理由は、画面を作るだけでなく、相手システムの仕様確認、認証方式、エラー時の挙動、検証環境の整備、場合によっては先方ベンダー調整まで発生するからです。連携は“つなぐ”より“運用できる状態にする”ほうが工数がかかります。
たとえば、よくある連携で追加費用になりやすい論点は次の通りです。
- API仕様が未確定:項目が足りない、検索が遅い、ページングがない、更新に制約がある
- 認証・ネットワーク制約:IP制限、VPN必須、mTLS、社内プロキシなど
- データの整合性:商品マスタとサイト表示名が違う、在庫の更新タイミングが合わない
- 障害時のルール:APIが落ちたらどう表示するか、再試行、通知、手動復旧
- テスト環境:ステージング用のAPI、ダミーデータ、決済のテストカードなど
決済(クレジットカード、コンビニ、請求書)や、受発注・在庫・会員ポイントなどが絡むと、仕様の確定とテストが急に重くなります。見積時点で「APIはある前提」としていても、実際には「必要なAPIが足りない」「既存システム側の改修が必要」なケースがあり、ここが追加費用の主要因になります。
事前に潰す方法:連携要件を「画面」ではなく「業務フロー」で書く
- 現行業務の流れを1枚にする(例:問い合わせ→見積→受注→請求)
- どのタイミングでどのシステムを参照/更新するかを明記
- 失敗時の対応(手動で復旧できるか、誰がやるか)を決める
- 必要なAPI一覧(取得/検索/登録/更新/削除)をベンダーに作ってもらい、双方合意する
発注側で難しければ、要件定義フェーズで「既存システム調査・API棚卸し」を作業項目として切り出すのがおすすめです。調査を省いて制作に突入するほど、後半での増額リスクが上がります。
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追加費用が出やすい要件:インフラ/運用(ホスティング、監視、障害対応、性能)
Next.jsはVercelのようなホスティングと相性が良い一方で、企業要件によってはAWSや社内基盤、特定クラウド縛りがあり、ここで費用が変動します。見積書に「デプロイ一式」とだけ書かれている場合、どこまで含むかで認識ズレが起きやすいです。公開後の“保守運用”まで含めて初めて、総コストが見えると考えるのが安全です。
追加費用になりやすい運用論点は次の通りです。
- 環境の数:本番/検証/開発の3環境が必要か、検証は誰が触るか
- 監視:死活監視、エラー監視、性能監視、通知先(メール/Slack/Teams)
- バックアップ:DB、CMS、アップロードファイルのバックアップと復元手順
- 障害対応:SLA、一次切り分け、休日夜間の対応範囲
- 性能:同時アクセス、画像最適化、キャッシュ、CDN、APIのレート制限
特に「表示速度」は、SEOだけでなく広告運用やCVにも直結します。ただし速度改善は、実装だけでなく画像・計測・キャッシュ・API応答など複合要因です。後半で「遅いので改善して」となると、原因調査から入り追加費用になりやすいので、最初から目標値(例:主要ページの表示体感、LCP改善方針)を合意しておくとよいです。
見積に入れておくと揉めにくい運用タスク
- デプロイ手順書(誰が見ても復旧できるレベル)
- 監視・アラート設定(最低限:エラー通知、稼働確認)
- ログの保管期間と閲覧方法
- 月次の軽微改修枠(バナー差し替え、文言修正等)
- 脆弱性対応方針(依存パッケージ更新の頻度)
情シスの方は、社内規程(クラウド利用、ログ保管、個人情報、委託先管理)との整合も確認ポイントです。社内チェックが後ろ倒しになると、公開直前で作り直しが発生しやすいため、早い段階でレビューを挟むのがコスト面でも有利です。
追加費用を防ぐための進め方:要件定義で「見積の前提」を固定する
追加費用をゼロにするのは現実的ではありませんが、「増額の理由が妥当で、発注側が納得できる状態」にすることは可能です。その鍵が、見積前に“前提”を固定することです。Next.js案件では、デザインより先に「方式・運用・連携」を決めるほど、ブレが小さくなります。
発注側が用意すると効果が高い資料は、立派な仕様書ではなく、次のような実務メモで十分です。
- 目的と優先順位:SEO、問い合わせ増、採用、会員向け業務効率化など(優先度を付ける)
- ページ種別一覧:一覧/詳細/フォーム/マイページ/管理画面など(SEO対象かも書く)
- 運用体制:誰が更新し、誰が承認し、どれくらいの頻度で触るか
- 連携先一覧:CRM、MA、基幹、決済、在庫、SFA、メール配信等(担当窓口も)
- 制約:利用クラウド、ドメイン、セキュリティ、社内審査、公開希望日
ベンダー側には、次を必ず確認してください。「含まれるもの」と「含まれないもの」を文章で列挙してもらうだけで、後からの揉め事が大幅に減ります。
- SEO設定はどこまでか(サイトマップ、構造化データ、リダイレクト、計測設定など)
- CMSの範囲(入力項目設計、プレビュー、権限、移行作業)
- 外部連携の範囲(相手調整、検証、障害時対応)
- 保守運用の範囲(監視、月次更新、障害対応時間帯)
さらに、契約の工夫として「フェーズ分割」も有効です。最初から全額を固定見積にするのではなく、要件定義(調査)→設計→実装→運用と区切り、要件定義の成果物(ページ種別、方式、連携一覧、運用要件)が確定してから実装見積を出す形にすると、追加費用が「想定外」ではなく「合意の上での拡張」になります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
Next.jsは高速で拡張性の高い選択肢ですが、その分「どこまで作るか」を曖昧にすると追加費用が出やすくなります。特に増額の原因になりやすいのは、レンダリング方式とSEOの前提、CMSと更新フロー、認証・権限、外部連携、インフラ運用の5領域です。
発注前にやるべきことは、専門的な仕様書を書くことではありません。「検索に載せたいページはどれか」「誰が何を更新するか」「どのシステムとどの業務でつなぐか」「公開後に誰が面倒を見るか」を、業務の言葉で整理し、見積の前提として合意することです。これにより、追加費用が発生しても理由が透明になり、意思決定が速くなります。
もし社内で整理が難しい場合は、要件定義(調査)フェーズを切り出し、Next.jsの方式選定と運用設計まで含めて伴走してくれるパートナーを選ぶのが近道です。
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