「SaaS(サース)」は、会計・勤怠・顧客管理・営業支援などの業務を、インターネット経由で使えるサービスのことです。サーバーを買わずに始められ、月額で使えるため、以前より中小企業でも導入しやすくなりました。一方で実務の現場では、「結局、うちには難しいのでは?」という不安が消えず、導入に踏み切れないケースが多く見られます。
この記事では、ITに詳しくない経営者・営業マネージャーの方でも判断できるように、SaaS導入のハードル(費用・設定・運用・定着・セキュリティ)を具体的に分解し、解消する方法を手順としてまとめます。読み終えた時点で「何から決めればよいか」「どこに落とし穴があるか」「社内にどう説明すればよいか」が見える状態を目指します。
Contents
小規模事業者がSaaS導入でつまずく「5つのハードル」
SaaSは簡単に始められると言われますが、現場でつまずく点はだいたい決まっています。まずはハードルを言語化し、対策の方向性を揃えましょう。
- 費用が読めない:月額課金が積み上がり、気づくと想定以上。ユーザー数課金・機能課金・追加オプションが分かりにくい。
- 設定・移行が面倒:顧客リストや案件台帳がExcelに散在し、移すだけで一苦労。初期設定が分からない。
- 運用が続かない:最初は触るが、忙しい時期に入力が止まる。結局、紙・Excelに戻る。
- 社内の抵抗が強い:「今のやり方で困っていない」「入力が増えるだけ」と反発される。
- セキュリティ・権限が不安:クラウドに置くこと自体が怖い。取引先情報を預けて大丈夫か判断できない。
ここで重要なのは、これらの課題が「SaaSが悪い」のではなく、導入の進め方(設計)と運用の作り方(ルール)が未整備なことから起きる点です。次章から、ハードルを順番に崩していきます。
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導入前に決めるべきは「機能」ではなく「業務のゴール」
SaaS比較を始めると、つい「名刺管理ができる」「ダッシュボードが見やすい」など機能で選びがちです。しかし小規模事業者では、機能過多が定着を妨げることが少なくありません。最初にやるべきは「SaaSで何を達成するか」を1〜2個に絞ることです。
ゴールは「売上」ではなく「行動」に落とす
例として営業部門なら、ゴール設定は次のように具体化できます。
- 「案件の見える化」→毎週の会議で、全案件のステータスが5分で揃う
- 「引き継ぎを楽に」→担当変更時に、過去対応が時系列で追える
- 「失注理由を減らす」→失注理由が選択式で入力され、月次で傾向が出る
こうしたゴールが決まると、「入力項目は最小限にする」「会議の進め方も変える」など運用設計まで一緒に決まります。SaaSは導入して終わりではなく、業務の型を作る道具と捉えるのがコツです。
現場ヒアリングは「3つの質問」だけで十分
時間がない中小企業では、長い要件定義をやるほど形骸化します。まずは現場に次の3つだけ聞き、紙1枚にまとめましょう。
- 今、一番困っているのは「探せない」「漏れる」「遅い」のどれ?
- それが起きるのは、どのタイミング(受注前・受注後・請求・保守)?
- 改善できたら、週に何時間(または月に何件)減らせる?
この回答が、SaaS選定の軸になり、経営層が投資判断する材料にもなります。
費用の不安は「月額」ではなく「総コスト」で潰す
SaaSの費用が怖い理由は、月額が安い・高いの問題ではなく、何にいくら払っているのか見えづらい点にあります。小規模事業者がやるべきは、年間の総コストを「見える化」して、比較できる形にすることです。
見積り表はこの5項目で十分
- 基本利用料:月額×12か月
- ユーザー数課金:利用者数(今+増加見込み)
- オプション:帳票、外部連携、AI機能、ストレージなど
- 初期費用:初期設定、環境構築、オンボーディング
- 運用コスト:入力・整備にかかる人件費(ここが盲点)
特に見落としやすいのが運用コストです。例えば、営業が毎日10分入力するだけでも、10人なら月に約33時間。入力が増えるSaaSは、実質的なコスト増になります。逆に言えば、入力を減らす設計ができれば、SaaSは強い味方になります。
「無料トライアル」は費用ではなく“工数”を測る期間
無料期間は「無料だから使う」ではなく、現場の負担(入力、検索、会議)が減るかを測る期間です。トライアル中にチェックすべき観点は次の通りです。
- 入力が3分以内で終わるか(終わらないなら項目を削る)
- 検索で欲しい情報に30秒でたどり着けるか
- 会議資料を作る時間が減るか(自動集計できるか)
この3点が改善しないSaaSは、価格が安くても定着しません。
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設定・移行のハードルは「全部移さない」で一気に下がる
導入が止まる最大の原因の一つが「データ移行」です。顧客、案件、見積、請求、メール履歴…と全てを完璧に移そうとすると、作業量が爆発します。小規模事業者では、最初から100点の移行を狙わない方が成功率が上がります。
移行は「必要最小限の3種類」から始める
- 顧客マスター:会社名、担当者、連絡先、業種、住所など最低限
- 進行中の案件:今追っているものだけ(過去案件は後回し)
- 商品・サービスの基本情報:見積テンプレに必要な範囲
過去の履歴は、必要になった時に参照できれば十分なケースも多いです。例えば「過去の見積PDFは共有フォルダに保管し、SaaSからリンクを貼る」だけでも運用できます。
入力ルールを先に決める(ここが“設定”の本体)
ツールの設定よりも重要なのが、社内ルールです。最低限、次のようなルールを作ります。
- 案件ステータスの定義(例:初回接触/提案中/見積提示/交渉中/受注/失注)
- 入力のタイミング(例:当日中、または翌営業日の午前中)
- 必須項目を3つに絞る(例:次回アクション日、金額、確度)
入力が面倒=項目が多いがほとんどです。最初は必須項目を絞り、運用が回ってから増やす方が定着します。
定着しない問題は「運用の仕組み化」で解決できる
SaaS導入で最も多い失敗が「使われない」ことです。原因は、社員の意識が低いからではなく、使う理由が業務フローに組み込まれていないからです。定着のポイントは、SaaSを“入力する場所”ではなく“仕事が進む場所”にすることです。
「会議」と「承認」をSaaSに寄せる
営業会議の資料をExcelで作る限り、SaaS入力は二度手間になります。次のように設計すると、入力が自然に行われます。
- 週次会議はSaaSの案件一覧を画面共有して実施(資料作成を廃止)
- 上長への相談・承認はSaaS上のコメントやタスクで実施
- 次回アクションが未入力の案件は会議で必ず埋める
会議の型が変わると、入力が“仕事の一部”になります。これが定着の最短ルートです。
担当者に丸投げしない「オーナー役」を置く
小規模事業者では、情シスがいないことも多く、担当者が孤立しがちです。そこで、次の役割分担を最小構成で置きます。
- 業務オーナー(営業Mgrなど):入力ルールと会議運用を決める
- ツール担当(現場の1名):アカウント管理、軽微な設定変更
- 経営(または部長):目的と期待効果を社内に宣言し、優先順位を担保
特に経営の一言は強力です。「このSaaSに入っている情報が正」と宣言するだけで、現場の迷いが減ります。
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セキュリティ不安は「チェック項目」を知れば判断できる
クラウド=危険という印象は根強いですが、実際には、適切に管理されたSaaSの方が個人PCのExcelより安全なこともあります。重要なのは、感覚ではなく確認ポイントを持つことです。
最低限チェックしたいポイント
- アクセス権限:役職・部署ごとに閲覧/編集を分けられるか
- 二要素認証:パスワードに加えて追加認証が使えるか
- ログ(操作履歴):誰がいつ何を見た/変更したか追えるか
- データのバックアップ:障害時の復旧方針、エクスポート手段があるか
- 退職者対応:アカウント停止や権限変更がすぐできるか
ここまで押さえれば、多くのSaaSは業務利用の判断が可能です。加えて取引先からセキュリティ要件を求められる業種では、提供会社のセキュリティ方針や運用体制も確認しておくと安心です。
小規模でも失敗しないSaaS導入の進め方(最短ルート)
最後に、導入を“止めない”ための進め方を、実務向けに短くまとめます。ポイントは、小さく始めて、数字で効果を確認し、広げることです。
- 対象業務を一つに絞る:例)営業案件管理だけ、勤怠だけ
- ゴールを行動で定義:例)会議資料作成ゼロ、引き継ぎ30分短縮
- 必要最小限のデータだけ移行:顧客+進行中案件
- 必須入力を3項目に制限:次回アクション、金額、確度など
- 会議・承認をSaaSに寄せる:入力の理由を業務フローに組み込む
- 2〜4週間で効果測定:入力時間、検索時間、会議時間が減ったか
- 広げる前に整える:権限、テンプレ、項目追加はこのタイミング
この流れで進めれば、「移行が終わらない」「使われない」「現場が疲れる」といった失敗を避けやすくなります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
小規模事業者がSaaS導入で感じるハードルは、「費用」「移行」「運用」「社内抵抗」「セキュリティ」に集約されます。解消のコツは、ツール選びの前に業務ゴールを決め、移行は最小限に抑え、会議や承認をSaaS側に寄せて定着させることです。無料トライアルは価格ではなく工数削減を測る期間として使い、2〜4週間で効果を見てから段階的に広げましょう。
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