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事例・ケーススタディ:ノーコードからの卒業でDB移行と業務効率化に成功したプロジェクト
「DXを進めろ」と言われてノーコードツールを導入したものの、データが増えるにつれて画面が重くなり、スプレッドシートや別システムとの二重管理が当たり前になってしまった――そんな声をよく耳にします。本記事では、ノーコードをいきなり捨てるのではなく、基幹データだけを計画的にDB移行(データベース移行)し、現場の画面や一部のワークフローはノーコードのまま活かすことで、作業時間削減と業務効率化を同時に実現したプロジェクト事例を紹介します。
ポイントは、「ノーコードか、DBか」という二者択一ではなく、「ノーコードをフロントに、DBリプレイスしたデータベースをバックエンドに」という役割分担です。この構成により、現場の素早い業務改善のスピードを維持しつつ、信頼性と保守性の高い基盤へのDB移行を両立しました。事業責任者・マネージャーの方が、自社でノーコードとDBをどのように組み合わせて業務効率化を進めていけばよいのか、実務レベルでイメージできる内容になっています。
なぜ今「ノーコード卒業」ではなく「使い分け」が重要なのか
ノーコードツールは、申請フローや簡易な顧客管理などを短期間で立ち上げるには最適です。エンジニアリソースが不足していても、現場主導で業務アプリを作れることは間違いなく業務改善につながります。しかし、導入から1〜2年が経ち、データ量が増え、利用部署が広がると、「動作が遅い」「履歴を追いづらい」「マスタがバラバラ」といった課題が表面化します。これはノーコード自体が悪いのではなく、ノーコードだけで全てをまかなう設計が限界を迎えているサインです。
このプロジェクトでは、「ノーコード卒業」と言いつつも、実際にはノーコードを完全にやめることはしませんでした。むしろノーコードツールは、画面レイアウトの変更や新しい業務フローの試行といったスピードが求められる部分で使い続け、更新頻度の低いマスタや大量の履歴データを扱う領域だけをDB移行しました。こうすることで、バックエンドは安定したデータベース移行のメリットを享受しつつ、フロント側ではノーコードの俊敏性を残す形で業務効率化を加速できたのです。
事業責任者にとって重要なのは、「どこまでノーコードで許容し、どこからDBリプレイスすべきか」という線引きです。全部をノーコードに乗せるのも危険ですが、全部をDB移行してフルスクラッチ開発するのもリスクが高い。そこで、本事例では「事業にとっての重要データ」「更新頻度が高い操作」「社内で連携される範囲」といった観点から、ノーコードとデータベース移行の役割分担を整理しました。この考え方を理解すると、自社でのDXや業務効率化プロジェクトを設計する際にも、現実的なロードマップが描きやすくなります。
ポイント:「ノーコードをやめる」ではなく「ノーコードを適材適所で使う」ことが、DB移行と業務効率化を両立させる鍵になります。
ノーコード運用が限界に達するサインと、そのまま放置するリスク
では、どのような状態になったらDB移行を真剣に検討すべきなのでしょうか。本プロジェクトで実際に起きていたのは、典型的な「ノーコード疲れ」の症状でした。例えば、ノーコードツール上の一覧画面に数万件のデータが溜まり、絞り込みやソートをするたびに数十秒待たされる状態。過去の履歴を検索するために条件を変えて再読み込みを繰り返す必要があり、担当者の作業時間削減どころか、ストレスが増える一方だったのです。
さらに、部署ごとに別々のノーコードアプリが乱立し、顧客情報や商品マスタが複数のアプリとスプレッドシートに分散していました。結果として、「どの値が正なのか分からない」「売上集計のたびに突合作業が発生する」といった問題が常態化。これは単なる不便さに留まらず、誤請求やコンプライアンス違反につながりかねない重大なリスクです。この状態を放置すると、どれだけノーコードで業務改善を重ねても、根本的な業務効率化は実現できません。
そこで、現場ヒアリングとログ分析を通じて、次のようなチェック項目を洗い出しました。「同じ項目が3つ以上のシステム・ノーコードツール・スプレッドシートに存在していないか」「データ抽出のために毎月手作業の加工が発生していないか」「検索や画面表示に10秒以上かかることが日常化していないか」。これらに多数該当した領域を、「ノーコードだけで維持するのは限界」「データベース移行が必要」と判定し、DBリプレイスの対象としました。
こうして対象を絞り込んだことで、「全部やりかえる」発想から脱却し、限られた予算と期間で最大限の業務効率化を生む現実的なDB移行計画を立てることができました。読者の皆さまも、自社のノーコード運用に同様の症状が出ていないか、チェックリスト感覚で見直してみるとよいでしょう。
このプロジェクトで採用したDB移行方針と、ノーコードを活かすアーキテクチャ
方針検討フェーズでは、「何をDB移行するか」だけでなく、「ノーコードをどこまで残すか」を同じくらい重要なテーマとして扱いました。まず実施したのは、既存ノーコードアプリの棚卸しです。画面単位ではなく、データ単位で見ていくのがポイントでした。顧客マスタ、商品マスタ、契約情報、請求履歴といった、事業の根幹となるデータ群を特定し、それらを中心にデータベース移行することを決めました。一方で、キャンペーン用フォームや一時的なアンケート、部署独自のメモ欄などは、ノーコードツールに残す判断をしました。
アーキテクチャとしては、バックエンドにRDBを置き、その上にAPI層、フロントには既存のノーコード画面と必要に応じたカスタムWebアプリを組み合わせる構造を採用しました。これにより、現場の操作感を大きく変えずにDB移行を進めることができます。また、将来的に他システムとの連携やBIツールへの接続が必要になった場合でも、DBリプレイスされた基盤を経由すればよいため、拡張性の高い構成になります。
優先順位の付け方も重要です。プロジェクトでは、「業務を止めない」「移行コストを最小限にする」「将来の拡張性を確保する」「セキュリティと権限管理を強化する」という4つの軸を明文化しました。ノーコード時代に曖昧になっていた権限やログ管理のルールも、このタイミングで整備しました。これにより、単なるDB移行ではなく、権限設計や運用ルールの見直しも含めた業務改善プロジェクトとして位置付け直すことができ、経営層にも投資対効果を説明しやすくなりました。
アーキテクチャ設計のTips:
ノーコードを「プロトタイピングとUIのためのレイヤー」、DBを「信頼できる唯一のデータソース」と位置付けると、役割分担が明確になり、業務効率化と保守性を両立しやすくなります。
実務で再現できるDB移行ステップと、ノーコードとの連携プロセス
次に、実際にどのような手順でDB移行を進めたのかを具体的に見ていきます。まず行ったのは、現行データの整理です。スプレッドシートやノーコードツールからすべてのエクスポートデータを取得し、どの項目がどのような意味を持っているのかを明文化した「データ辞書」を作成しました。ここで、似ているが意味が異なる項目や、担当者ごとに解釈が違うフィールドが浮き彫りになります。これらを一つひとつ現場とすり合わせることで、データベース移行後のテーブル定義を固めていきました。
次に、論理設計と物理設計を行います。顧客、契約、請求、入金といったエンティティを洗い出し、主キーとリレーションを定義します。ノーコードの画面構成をそのままテーブル構造にするのではなく、正規化と使い勝手のバランスを取りながら、検索や集計がしやすい形を意識しました。そのうえで、段階的なDB移行を実施しました。初期段階では、ノーコードツール側にデータを残したまま、新しいデータベースへ一方向の同期を行い、レポートや分析用途での利用から開始しました。これにより、いきなり本番トランザクションをデータベース移行するリスクを避けつつ、性能やデータ品質を検証できます。
並行稼働期間を設け、一定期間はノーコードと新DBの両方にデータを登録し、突合テストを行いました。この期間に、不整合が発生しやすいケースや運用フロー上の抜け漏れを洗い出し、必要に応じてテーブル構造やAPIを調整していきます。最終的には、「この日以降の登録は新DBのみ」とするカットオーバー日を設定し、その日を境にDBリプレイスを完了させました。カットオーバー後も、しばらくは読み取り専用として旧ノーコードの画面を残しておくことで、利用者の不安を軽減しつつ、問い合わせ対応の負荷を抑えることができました。
この一連のプロセスを通じて、現場側からは「データ移行は怖いもの」というイメージが徐々に薄れ、「段階的に進めれば、リスクを抑えつつ業務効率化できるもの」という認識に変わっていきました。同様のアプローチは、別記事「小さく始めるDXロードマップ(仮)」で紹介するステップとも共通しており、DX全体の中でDB移行をどう位置付けるかを考える際にも役立ちます。
作業時間半減を実現した要因と、明日から使えるチェックリスト
このプロジェクトでは、月次レポート作成やデータ突合、履歴検索などの作業時間削減を中心に、平均して約50%の業務効率化を実現しました。作業時間削減の内訳を見ていくと、単純に画面表示が速くなったというだけでなく、DB移行をきっかけに「無駄な作業」をやめられたことが大きく寄与しています。例えば、これまでノーコード画面からエクスポートしたデータをスプレッドシートで集計し直していた業務は、データベース移行後はビューやBIツールで自動集計できるようになりました。また、マスタが統合されたことで、「同じ顧客を3回検索し直す」といったムダも削減されました。
一方で、全てが順風満帆だったわけではありません。DBリプレイス直後は、検索条件の指定方法や画面レイアウトの違いから、現場で戸惑いの声も上がりました。そこで、簡単な操作マニュアルとショートトレーニングを実施し、「以前はこの手順だったものが、今はこの画面でこのボタンを押せばよい」といった対応関係を示しました。また、運用初期の1〜2か月は、利用者からの問い合わせを素早く受け止められるよう、チャットやFAQを整備することで、混乱を最小限に抑える工夫をしています。
明日から使えるセルフチェック例:
・毎月同じ集計作業に2時間以上かかっていないか?
・同じマスタ情報を、ノーコードとスプレッドシートに二重に入力していないか?
・過去履歴の検索に、毎回10秒以上かかっていないか?
いくつも当てはまる場合は、DB移行やデータベース移行を検討するタイミングかもしれません。
こうしたチェックを通じて、「どこから手をつければ業務効率化のインパクトが大きいか」を可視化できます。そのうえで、「このマスタだけDB移行する」「このレポートだけDBリプレイス基盤から作る」といった小さな一歩から始めることで、DXやノーコード活用の成功体験を積み重ねていくことが可能です。
まずは小さく始める:ソフィエイトが支援できること
ここまで読んで、「自社もノーコードだけでは限界に来ている」「DB移行が必要そうだが、どこから手をつけるべきか分からない」と感じた方も多いのではないでしょうか。いきなりフルスクラッチ開発に踏み切る必要はありません。重要なのは、「現状を棚卸しし、インパクトの大きい範囲から小さくデータベース移行する」ことです。例えば、「顧客マスタだけをDBリプレイスする」「請求データだけを新しいDBから出力する」といった、限定的なスコープからのDB移行でも、十分な作業時間削減と業務効率化が期待できます。
株式会社ソフィエイトでは、こうした段階的なDB移行・ノーコード連携を得意としています。「現状棚卸し&課題洗い出しワークショップ」「DB設計レビュー」「ノーコードからDBへのミニPoC」など、小さな単位でのご相談も歓迎です。事業責任者やマネージャーの方が、「まずはどこから手をつけるべきか」「今のノーコード構成でどの程度まで業務効率化できるのか」「どの範囲をデータベース移行すべきか」といった疑問を一緒に整理し、現場の声も踏まえた現実的なロードマップを描くお手伝いをします。
まずは相談から:
・ノーコードツールの現状診断
・DB移行・DBリプレイスのスコープ検討
・業務効率化につながる小さなPoCの企画
など、「いきなり大規模刷新」ではない現実的な一歩をご提案します。
まとめ:ノーコードとDB移行を組み合わせて、現実的な業務効率化を
本記事では、ノーコードツールを完全にやめるのではなく、基幹データだけをDB移行・DBリプレイスし、フロントの柔軟な改善はノーコードに任せるというアプローチで、作業時間削減と業務効率化を実現した事例を紹介しました。重要なのは、「ノーコードがダメだから全部データベース移行する」のではなく、「何をノーコードに残し、何をDBに任せるか」を事業目線で判断することです。
ノーコードの限界サインとして、データの分散、画面の重さ、マスタ不整合、手作業の集計などが見られる場合、それはDB移行を検討すべきタイミングかもしれません。一方で、ノーコードは試行錯誤や画面改善という面では非常に強力な武器です。両者の得意分野を理解し、「ノーコード × DB移行」という組み合わせで、リスクを抑えながら業務改善を進めるのが、現実的かつ効果的なDXの進め方と言えるでしょう。
株式会社ソフィエイトは、こうした段階的なDB移行とノーコード活用の両立を支援しています。「自社の状況がどこに当てはまりそうか知りたい」「まずは相談だけしてみたい」と感じたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。一緒に、現場の負担を減らし、本当に価値のある業務効率化への一歩を踏み出していきましょう。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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