社内用ChatGPTの作り方:中小企業でも月5,000円から始められる社内AI活用ガイド

なぜ今「社内用ChatGPT」を自前で持つべきか

ChatGPTを「社内の共通ツール」として整備すると、まず変わるのは、調べ物や文章作成にかかっていた時間です。営業メール、社内通知文、議事録の要約、マニュアルのたたき台作成など、どの会社にも共通する作業は、実はかなりの時間を奪っています。こうした定型作業を社内用ChatGPTに任せることで、担当者は本来注力すべき判断・交渉・企画といった仕事に時間を振り向けられるようになります。特に人手も時間も限られている中小企業では、1人あたりの生産性を底上げする手段として、社内AIの導入は非常に相性がよいといえます。

一方で、「社員がそれぞれ個人のChatGPTアカウントを勝手に使っている」という状態を放置すると、情報漏えいのリスクや、誰が何を入力したのか追えないガバナンス上の問題が生まれます。ソースコードや顧客情報を誤って外部サービスに入力してしまうといった事例も既に出ており、「無料だから」「便利だから」といった理由だけで個人利用に任せておくことは、会社としてはリスクが高くなりつつあります。

そこで重要になるのが、「会社として公式に用意した社内用ChatGPT環境を入り口にする」という発想です。専用の社内AIポータルを用意し、「業務でAIを使うときはここから」「この範囲の情報は入れてはいけない」とルールを決めることで、利便性と安全性の両方を確保できます。これは単なるツール導入にとどまらず、ナレッジ共有やDX推進の起点にもなります。社内のノウハウやマニュアルを少しずつ社内AIに覚えさせていけば、「質問すると自社のやり方で答えてくれる検索窓」が社内に1つできるイメージで、属人化(ある業務のフローやノウハウといった詳細を、特定の人しか把握していない状況)の解消にもつながります。

ポイント
・「なんとなく各自でChatGPTを使っている状態」は、コントロールしづらいリスク状態です。
・小さくてもよいので、会社として公式の社内用ChatGPTを用意し、入り口とルールを一本化することが安全への第一歩です。

月5,000円で始めるための全体像とコスト構造

「うちは予算が少ないから、社内AIなんて無理では?」と感じる経営者・マネージャーの方も多いですが、実は中小企業でも月5,000円程度から現実的に始めることができます。そのためには、まずコストの内訳を大きく三つに分けて考えるとわかりやすくなります。一つ目はChatGPTなどのモデルを利用するためのAPI料金、二つ目は社内用ChatGPTポータルを動かすためのサーバーやホスティング費用、そして三つ目が認証やログ管理に関する仕組みです。

API料金は「どれだけの量のテキストをAIに投げたり受け取ったりしたか(トークン量)」に応じて従量課金される仕組みが一般的です。導入初期は利用者を10名程度のパイロットチームに絞り、1人あたり1日10〜20回の質問、数千字程度のやりとりと仮定して試算すると、多くのケースで数千円の範囲に収まります。残りの予算で、簡易なWebサーバー(数百〜千円/月)を用意すれば、合計でおおよそ月5,000円前後の社内用ChatGPT環境が実現可能です。

また、多くの中小企業はすでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceといったクラウドグループウェアを利用しています。これらのアカウントをそのまま社内AIポータルのログインやアクセス制御に使えば、新たに高価な認証基盤を用意する必要はありません。「○○@yourcompany.co.jp でログインした人だけが使える社内AI」という形にしておくことで、退職時のアカウント停止とも連動させやすくなります。専任の情報システム担当がいない中小企業でも、ノーコード/ローコードツールやシンプルなWebアプリを使えば、十分運用可能なレベルの社内用ChatGPTポータルを構築できます

月5,000円で始めるための考え方
・最初は「10人 × 軽めの利用」を前提にトークン量を試算する。
・既存のMicrosoft 365 / Google Workspaceを認証や権限管理に活用して、追加コストを抑える。
・高機能を目指しすぎず、「最低限使える社内AIポータル」を作り、使いながら調整する。

最小構成でつくる社内AIシステム(アカウント・権限・ログ)

安全な社内用ChatGPT運用のカギは、「誰が」「何に」「どこまでアクセスできるか」を最初に決めておくことです。まず前提として、社員一人ひとりに会社のメールアドレス単位でアカウントを割り当て、「この人がこの時間に社内AIにこういう質問をした」という最低限の履歴が追えるようにします。退職者のアカウントを残したままにしないよう、メールアドレスやシングルサインオン(SSO)の仕組みと連動させておくと安心です。

システム構成としては、社員がブラウザでアクセスする社内用ChatGPTポータル(Web画面+チャットUI)と、実際に回答を生成する外部のAIサービス(例:OpenAI API、Azure OpenAIなど)の間に、自社のゲートウェイを一枚挟むイメージです。ポータル側では、「営業部は営業ナレッジにだけアクセス」「バックオフィスは経理・総務ナレッジにアクセス」といった形で、部署ごと・役割ごとに参照できる社内データを制御します。これにより、同じ社内AIでも、見る人によって回答に含まれる社内情報の範囲を変えられます。

ログ設計も大切です。「すべてのログを永遠に残す」とすると、プライバシーや管理コストの面で現実的ではありません。おすすめは、「不正利用の監査とトラブル対応のために必要な範囲だけ」「90日など期間を区切って保存する」といった方針です。具体的には、プロンプト(質問文)とAIの回答、利用者ID、日時の4点を一定期間だけ保存し、それを超えたものは自動的に削除するようにしておくと、中小企業でも運用しやすくなります。また、こうしたルールは「社内AIポリシー」として文書化し、社内規程やハンドブックに組み込んでおくと、あとからの説明もしやすくなります。

情報漏えいを防ぐ社内AIの設定・運用ルール

社内用ChatGPT導入時に多くの中小企業が気にするのが、「機密情報が外に漏れないか」という点です。ここで重要なのは、技術的な設定と人の運用ルールの両輪で考えることです。まず技術面では、「入力データを学習に利用しない」「ほかの顧客と共有しない」と明示しているビジネス向けプランやAPIを選択することが前提になります。企業向けサービスでは、データ保持期間の設定や暗号化、専用環境での処理など、社内AIとして使うための安全策が用意されているケースが多くあります。

次に、人の運用ルールです。「絶対に社内AIに入力してはいけない情報」を具体的にリスト化し、社内研修やマニュアルで徹底します。個人情報、マイナンバー、クレジットカード番号、特定顧客の実名や契約条件、上場前のIR情報など、自社にとってセンシティブな情報を整理し、「これは社内用ChatGPTにも入れないでください」と明文化しておくことが重要です。また、「もし誤って入力してしまった場合は、◯◯部門に報告し、ログから影響範囲を確認する」といった対応フローも事前に決めておきます。

さらに、社内AIを安全に使うには、「業務でAIを使うのは社内AIポータル経由に限定する」「個人のChatGPTアカウントを業務に使うことは禁止する」といったルールを就業規則や情報セキュリティポリシーに組み込むことも有効です。これにより、「誰がどのAIに何を入力しているのか」が会社として把握しやすくなり、万が一トラブルが起きても原因を追いやすくなります。

情報漏えい対策のチェックポイント
・ビジネス向けプランやAPIを前提にした社内用ChatGPT構成になっているか。
・「絶対に入力してはいけない情報」の具体例を、社内で共通認識にできているか。
・業務利用は社内AIポータル経由に限定し、個人アカウント利用は禁止できているか。

30日で社内展開するロードマップ

社内AIは「とりあえず入れてみたが、誰も使っていない」という状況になりがちです。これを避けるには、「30日で一通り回してみる」という短期ロードマップを引くのがおすすめです。特に中小企業では、ダラダラ進めるよりも、短期間で成功パターンと課題を洗い出すほうが、社内の納得感を得やすくなります。

1週目は、対象業務とパイロットチームを決める段階です。営業メール作成、議事録要約、マニュアルのたたき台作成など、成果がわかりやすくリスクが小さい業務を2〜3個に絞ります。そのうえで、「この1か月は社内用ChatGPTを積極的に使ってみよう」というメンバーを10名程度選び、簡単な利用ガイドとNGルールを共有します。

2週目は、実際の業務の中で社内AIを使ってもらう期間です。「1日3回は必ず何かしらの仕事を社内AIに投げてみる」といったミニ目標を設定し、うまくいったプロンプトや逆に失敗した使い方をメモしてもらいます。その結果をもとに、社内で使える「業務別プロンプト集」のたたき台を作っていきます。

3週目には、そのプロンプト集や成功事例をもとに、社内説明会やハンズオンを実施します。このタイミングで、パイロット以外の社員にも社内用ChatGPTポータルへのアクセスを広げ、「まずはこの3つの使い方から始めてください」と入口を絞って案内すると、現場の心理的ハードルを下げやすくなります。

4週目は、利用ログや現場の声を整理し、「どれだけ時間が短縮されたか」「どの部署で特に効果が高かったか」といった視点で簡単なレポートを作成し、経営陣と次の方針を決めていきます。

30日ロードマップのポイント
・最初から全社展開せず、「まずは10人で試す」パイロットを明確にする。
・成功事例を見える化し、「この業務でこれだけ楽になった」という具体的なストーリーを作る。
・30日後に「続ける/広げる/見直す」を判断する場を必ず設ける。

よくある失敗パターンと外部パートナーの活用タイミング

社内用ChatGPTや社内AIを導入する際によくある失敗のひとつは、「個人アカウントの寄せ集めで始めてしまう」パターンです。社員それぞれが自分のChatGPTアカウントを使ってしまうと、誰がどのデータをどこに入力したのか把握できず、あとから社内用ChatGPT環境を統合しようとしたときに大きな手戻りが発生します。また、「とりあえず全社開放」でスタートし、ルールや教育が追いつかず、結局ほとんど使われなくなるケースも少なくありません。

もうひとつの典型的な失敗は、セキュリティ担当や経営層の合意を得ないまま、現場主導でツール導入を進めてしまうことです。後から情報漏えいリスクが問題視され、「一旦全部止めてくれ」という話になってしまうと、せっかくの社内AIへの信頼が損なわれ、再チャレンジしづらくなります。特に中小企業では、経営者が「うちとしてこの方向で活用していく」というメッセージを出すかどうかが、現場の温度感に直結します。

もし、自社だけで「システム構成」「利用規程」「プロンプト集」まで一気通貫で設計するのが不安な場合は、早い段階で社内AI構築の支援実績がある外部パートナーに相談するのも有効です。予算感に合わせた月5,000円前後の構成案や、他社の成功・失敗事例を踏まえた実務的なルール作りを、一緒に検討してもらえます。「よく分からないから何もしない」で時間を失うよりも、「小さく始めて学びながら改善する」ほうが、結果的にリスクもコストも小さく抑えられます。

まとめ

本記事では、中小企業が月5,000円程度から始められる社内用ChatGPT構築の考え方と、実務で押さえるべきポイントを整理しました。ポイントは、「個人のChatGPT利用を放置しないこと」「コスト構造をざっくり把握し、小さく始めること」「アカウント・権限・ログ・ルールの4点を最初に決めること」「30日で一通り回してみるロードマップを引くこと」です。これらを意識すれば、特別なIT部門がない中小企業でも、現実的な範囲で安全な社内AI環境を整えることができます。

社内AIは、「導入した瞬間に劇的な成果が出る魔法のツール」ではありません。しかし、定型業務や文章作成の負荷を減らし、社内ナレッジの共有を加速する「地味だが強力なインフラ」にはなり得ます。まずは自社の現場でどの業務に効きそうかを見極め、パイロットチームとともに「うちならではの使い方」を探りながら、少しずつ改善していくことが何より重要です。そのプロセス自体が、会社のDXやナレッジマネジメントの第一歩にもなっていきます。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

社内用ChatGPTの構成や、自社に合った社内AIの始め方について具体的に相談したい場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。現場の業務フローや既存システムの状況に合わせて、無理のない一歩目をご提案します。


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