要件が固まっていなくても外注を進める方法(RFPが弱い場合の進め方)

要件が固まらないのは普通:外注を止めるべきケースと進めるべきケース

新規システム開発や業務改善のプロジェクトでは、「何を作るか」を最初から言語化できないことが珍しくありません。現場の業務が複雑だったり、部署ごとに課題認識が違ったり、そもそも現状フローが整理されていなかったりするからです。特に、開発に詳しくない中小企業や情シスが兼務の組織では、要件が固まらないこと自体が失敗ではなく、前提条件になりがちです。

一方で「要件が固まっていない=外注してはいけない」と誤解されることがあります。正しくは、要件が固まっていなくても進められる方法があり、ただし進め方を間違えると炎上しやすい、というのが実態です。特にRFP(提案依頼書)が弱い状態で通常の一括見積もりに入ると、ベンダー側も前提を置いて見積もるため、後から前提が崩れて追加費用・納期延長・品質低下に繋がります。

まずは判断の目安です。外注を「一旦止めて整理した方がいい」ケースは、社内で目的が合意できていない(売上を上げたいのか、工数を減らしたいのか、法令対応なのかが曖昧)、意思決定者が不在、現場の協力が得られない、セキュリティ・個人情報の扱いが未整理、予算レンジが全く決まっていない、といった状況です。逆に「要件が固まっていなくても進めてよい」ケースは、目的は大枠合意できている、現場ヒアリングは可能、段階的に決める覚悟がある、契約を分割できる、の4つが揃っている場合です。

本記事では、RFPが弱い(もしくは未作成)状態でも、外注を安全に進めるための実務手順を解説します。ポイントは、最初から完璧なRFPを作るのではなく、「決まっていないこと」を前提にした発注の仕組みに作り替えることです。

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RFPが弱いと何が起きる?よくある失敗パターン

RFPが弱い状態とは、たとえば「業務を効率化したい」「Excel管理をやめたい」「顧客管理をデジタル化したい」など目的はあるが、対象業務の範囲、データの流れ、関係者、優先順位、制約(予算・納期・セキュリティ)が整理されていない状態です。この状態で外注すると、典型的な失敗が起こります。

失敗パターンの1つ目は「見積もり比較ができない」ことです。A社は必要最低限で見積もり、B社は将来拡張まで含めて見積もる、といったズレが起きます。金額だけを見て安い方に決めると、後から「それは範囲外です」と言われ、追加費用が膨らみます。2つ目は「スコープ(範囲)漂流」です。打ち合わせのたびに要望が増え、気づけば当初の目的から外れた機能に時間を使い、納期も品質も崩れます。

3つ目は「責任の押し付け合い」です。発注側は「プロなんだから提案してよ」、受注側は「要件が出ていないから作れない」。このすれ違いが続くと、プロジェクトは消耗戦になります。4つ目は「現場が使わないシステムができる」ことです。業務フローや例外処理が拾えていないまま画面だけが綺麗にでき、運用開始後に「結局Excelに戻った」という結末になりがちです。

こうした失敗は、担当者の能力不足というより、進め方の設計ミスです。要件が固まっていないなら、最初から“固める工程”をプロジェクトに組み込む必要があります。つまり、RFPが弱いときの最適解は「弱いRFPで無理やり一括発注」ではなく、「探索しながら確度を上げていく発注」です。

結論:一括発注ではなく「段階発注」に切り替える

要件が固まっていない状態で外注を進める現実的な方法は、契約と成果物を段階に分けることです。最初から全機能の請負契約(固定スコープ・固定金額)にすると、要件変更が即トラブルになります。そこでおすすめは、フェーズ0(要件整理・構想)→フェーズ1(最小構成の実装)→フェーズ2(拡張)という形で分割し、各フェーズの終わりに「続行判断」を入れる進め方です。

具体的には、最初の外注は「作る」ではなく「決める」ことにお金を使います。たとえば、業務ヒアリング、現状業務フローの可視化、課題の整理、データ項目の洗い出し、権限設計のたたき台、画面ワイヤーフレーム、MVP(最小実用製品)の定義、概算見積もりの精度向上、リスク洗い出し、といったアウトプットを作るフェーズです。

この段階発注のメリットは3つあります。1つ目は、要件が揺れてもプロジェクトが壊れにくいこと。2つ目は、予算の使い道が説明しやすいこと(「まずは要件整理に◯円、その結果を見て開発費を確定」)。3つ目は、ベンダー選定の精度が上がることです。フェーズ0の進め方や資料の質を見れば、相性や実力がかなり判断できます。

注意点として、段階発注は「いつまでも検討して開発に入れない」状態にもなり得ます。そのため、各フェーズに期限と判断基準を設けます。たとえばフェーズ0は4週間〜8週間、成果物が揃ったら「MVPで先に現場に当てる」か「要件が大きく変わったので企画を見直す」かを決める、という形です。“止める判断”も含めて設計することが、予算と時間を守るコツです。

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弱いRFPの代わりになる「ミニRFP」チェックリスト

RFPが立派である必要はありませんが、最低限の情報がないとベンダーは提案できません。そこで、要件が固まっていないときでも作れる「ミニRFP」を用意します。A4で2〜3枚でも構いません。重要なのは、決まっていないことを隠さず、決まっていること・前提・制約を短く明確にすることです。

ミニRFPに入れる項目(埋められる範囲でOK)

  • 目的:何のためにやるか(例:月末の請求処理を3日→1日に短縮)
  • 対象範囲:どの部署・どの業務が対象か、対象外は何か
  • 現状の困りごと:現場の具体(例:二重入力、承認が口頭、履歴が残らない)
  • 理想像:将来こうなっていたい(ただし“全部入り”にしない)
  • 重要な制約:期限、予算レンジ、利用端末、セキュリティ、法務・監査条件
  • 既存システム:連携の必要有無(会計、勤怠、顧客DB、SaaS等)
  • データ:扱うデータの種類(個人情報、機微情報、ファイル、画像等)
  • 体制:意思決定者、現場キーマン、レビュー頻度
  • 未確定事項:決まっていない項目と、いつ誰が決める想定か
  • 依頼したいこと:要件整理からか、MVP開発からか、運用までか

ここでのポイントは「機能一覧を頑張って書かない」ことです。機能は後から増えますし、専門知識がない状態で書いた機能一覧は、現場の例外やデータの制約を落としやすい。代わりに、困りごとと目的、制約、未確定事項を明確にすると、ベンダーは適切な質問ができ、提案の方向性も揃います。

また、ベンダーに「提案してください」だけではなく、「このミニRFPを基に、①進め方(フェーズ設計)②概算費用レンジ③リスクと前提④必要な社内協力事項」を出してください、と依頼すると、比較しやすい提案が集まります。提案の型を指定するだけで、RFPの弱さをかなり補えます

進め方の実務:フェーズ0(要件整理・検証)でやること

要件が固まっていない案件で最も重要なのは、フェーズ0の設計です。フェーズ0は「会議をたくさんする期間」ではなく、意思決定に必要な材料を短期間で揃える期間です。ここでの成果物が、その後の見積もり精度・開発スピード・炎上リスクを決めます。

フェーズ0でよく効く進め方は、現場ヒアリング→業務フロー可視化→課題と優先順位→MVP定義→ワイヤー→データ定義→非機能(セキュリティ・権限・監査)→概算見積もり、の順です。たとえば顧客管理を作る場合、まず「誰が、いつ、どのタイミングで顧客情報を更新するのか」「例外(担当変更、重複、退会、キャンセル)をどう扱っているか」を押さえます。次に、入力項目や帳票だけでなく、承認・通知・履歴・検索といった日常運用の肝を整理します。

この段階で「MVP」を決めるのがポイントです。MVPとは“最小限でも業務に使える”ラインです。たとえば「顧客情報の一元化」が目的なら、最初は顧客基本情報+履歴+検索+権限までに絞り、分析ダッシュボードや自動メールは後回しにする、といった切り方をします。MVPは妥協ではなく、学習速度を上げる投資です。実際に現場が触れると、要件が一気に具体化します。

成果物としては、次の7点があると強いです。(1)目的とKPI(例:月次作業工数を30%削減)、(2)業務フロー図、(3)画面ワイヤー(主要画面だけでOK)、(4)データ項目一覧(必須/任意/重複ルール)、(5)権限・ロール案、(6)非機能要件のたたき台(ログ、バックアップ、SLA、端末、運用)、(7)リリース計画(MVP→拡張)。これが揃うと、開発の見積もりが「当てずっぽう」から「根拠のあるレンジ」に変わります。

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ベンダー選定・契約・運用で失敗しないためのコツ

要件が固まっていないときの外注は、ベンダー選定と契約の設計が勝負です。まず選定では、金額だけでなく「不確実性への強さ」を見ます。具体的には、質問が鋭いか(現場・データ・運用・例外に踏み込むか)、前提条件を明記するか、リスクを説明するか、フェーズ分割を提案するか、コミュニケーションが分かりやすいか、を確認します。

提案依頼時におすすめの依頼文は、「現時点で要件が未確定であること」「まずはフェーズ0として要件整理とMVP定義を行いたいこと」「フェーズ0の成果物と期間・体制・金額を提案してほしいこと」を明確に書くことです。これにより、最初から一括請負で囲い込もうとする提案を避けやすくなります。

契約面では、フェーズ0は準委任(時間・作業に対して支払う)で進め、フェーズ1以降は請負または準委任のハイブリッドにするケースが多いです。重要なのは、変更管理のルールを最初に決めることです。たとえば、仕様変更は「影響(費用・納期・品質)を見える化→承認→反映」の手順にし、口頭で増やさない。議事録・決定事項・未決事項を毎週更新する。“決めたことを残す仕組み”があるだけで炎上率は大きく下がります

また、発注側で用意したい体制があります。意思決定者(最終的に優先順位を決める人)、業務オーナー(現場の責任者)、実務担当(実際に使う人)、情シス/セキュリティ窓口(アクセス権やデータの窓口)の4役です。全員が毎回出る必要はありませんが、誰が何を決めるかが曖昧だと、打ち合わせは進んでも決まらず、結果的にコストが増えます。

最後に運用。要件が固まっていない案件ほど、リリース後の改善が前提になります。運用保守を「障害対応だけ」と考えず、問い合わせの一次受け、改善要望の整理、ログ分析、権限追加、軽微改修の枠(チケット制など)まで設計すると、現場のストレスが減り、投資対効果が出やすくなります。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
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まとめ

要件が固まっていない、RFPが弱い——この状態は珍しくありません。問題はそのまま一括発注に進み、見積もり前提のズレやスコープ漂流を起こすことです。対策はシンプルで、不確実性を前提にした「段階発注(フェーズ0→MVP→拡張)」に切り替えること。最初の外注は「作る」より「決める」に投資し、ミニRFPで目的・制約・未確定事項を共有し、成果物(業務フロー、MVP、データ定義、非機能のたたき台)を短期間で揃えます。

そのうえで、質問力と前提整理ができるベンダーを選び、変更管理・議事録・意思決定体制を整えると、要件が揺れてもプロジェクトは前に進みます。もし「何から手をつければいいか分からない」「社内調整に不安がある」という場合は、フェーズ0から伴走できるパートナーに相談し、まずは現状整理とMVP定義から始めるのが最短ルートです。

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