自社にSaaSは必要?向いている企業・向いていない企業の判断方法

「紙やExcelの管理が限界」「営業管理ツールを入れたいが失敗したくない」「IT担当がいないので運用できるか不安」——中小企業の現場では、こうした悩みが日常的に起きています。そこで候補に上がりやすいのがSaaS(サース)です。SaaSは、インターネット経由で使うソフトウェアのこと。自社でサーバーを用意せず、月額課金で使えるサービスが多く、代表例は会計、勤怠、メール、営業支援、顧客管理などです。

ただし、SaaSは「入れれば必ずうまくいく万能薬」ではありません。向いている会社はスピード感を出せますが、向いていない会社が急いで導入すると、現場が混乱したり、コストだけが増えたりします。この記事では、専門知識がなくても判断できるように、SaaSの向き不向き、見極めの質問、導入の手順、よくある失敗と回避策までを実務目線で解説します。結論は「SaaSを使うべきか」ではなく「どの業務を、どの範囲で、どの条件ならSaaSが合うか」を決めることです。

SaaSとは?中小企業にとってのメリット・デメリット

SaaS(Software as a Service)は、ソフトを買い切って自社PCに入れるのではなく、クラウド上の機能をログインして使う形です。アップデートは提供側が行い、スマホや外出先からも使えます。中小企業でSaaSが広がった背景には、「初期費用を抑えたい」「IT担当者が少ない」「テレワークや複数拠点が増えた」という事情があります。

メリットは大きく4つです。第一に、導入が早いこと。申し込み後すぐ使える製品も多く、サーバー調達やインストール作業が不要です。第二に、初期投資が小さいこと。月額課金で始められ、段階的にユーザー数を増減できます。第三に、保守運用の負担が軽いこと。セキュリティ更新や不具合対応の多くをベンダーが担います。第四に、標準機能が業務の型になること。勤怠・経費・営業管理など、ベストプラクティスが組み込まれた設計が多く、属人的な運用から抜けやすいです。

一方デメリットもあります。典型は「自社独自のやり方」をそのまま再現しにくい点です。SaaSは汎用サービスなので、細かな帳票の形式、承認フロー、例外処理が多い業務だと合わないことがあります。また、長期的には月額費用が積み上がり、ユーザー数が増えるほどコストが伸びます。さらに、データをサービス内に預けるため、解約時のデータ移行や、ベンダー都合の仕様変更への備えも必要です。「安いから」「有名だから」ではなく、業務と運用体制に合うかで判断するのが失敗しないコツです。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

SaaSが向いている企業の特徴

ここからは判断を具体化します。SaaSが向いている企業には、共通する“業務と組織の特徴”があります。まず、複数人が同じ情報を共有する業務が多い会社です。例えば営業で言えば、担当者のメモが個人のExcelに散らばっていると、引継ぎや上長の進捗把握が難しくなります。SaaSのCRM(顧客管理)やSFA(営業支援)を使うと、案件状況、次アクション、見積書、メール履歴を一元化しやすくなります。「情報が人についている状態」を減らしたい会社ほど効果が出ます

次に、拠点や働き方が分散している会社です。現場・事務所・在宅・外出先など、業務場所がバラバラだと、ローカルファイルや紙の回覧は破綻します。クラウド型のSaaSなら、権限に応じて最新データへアクセスでき、スマホでの入力も可能です。特に勤怠、経費精算、日報、問い合わせ管理など「その場で入力したい」業務は相性が良いです。

さらに、業務の“型”がある程度決まっている会社も向いています。例えば「見積→受注→請求→入金」という流れが標準的なら、販売管理SaaSで効率化しやすいです。逆に例外だらけの業務は、SaaSの標準フローに合わせるための社内調整が必要になります。SaaSが向いているのは、業務を整える意思があり、標準化に価値を感じる会社です。

最後に、IT人材が少ない企業ほどSaaSが現実的です。自社開発やオンプレミス(社内設置型)は自由度が高い一方、運用・保守・セキュリティ対応が重くなりがちです。SaaSならベンダーの更新に乗れるため、少人数でも回しやすい。もちろん設定・教育は必要ですが、「システムを維持する仕事」を最小化できる点は大きな利点です。

SaaSが向いていない企業の特徴(無理に入れると損するパターン)

SaaSが向いていないのは、単に「ITが苦手」な会社ではありません。問題は、SaaSの前提と現場の前提が噛み合わないことです。代表例は、業務が会社固有で、例外処理が多い場合。たとえば、取引先ごとに請求書のレイアウトが違う、社内の承認が案件ごとに変わる、値引きルールが複雑、といった状況では、SaaSの設定だけで再現できず、結局Excel併用になりがちです。「SaaS+Excelの二重管理」はコストだけ増える典型的な失敗です。

次に、データの扱いに厳格な制約がある業種・取引形態です。高度な機密情報を扱い、データ保管場所、アクセスログ、監査対応、権限設計などに厳しい条件がある場合、一般的なSaaSでは要件を満たしにくいことがあります。もちろんセキュリティが強いSaaSもありますが、契約・監査・運用ルールを含めて検討が必要です。ここを曖昧にすると、「取引先のセキュリティチェックに通らない」「後から要件が出て作り直し」になりやすいです。

また、社内に運用の責任者がいないケースも注意です。SaaSは導入が早い反面、初期設定(項目、権限、ワークフロー)、移行(顧客データ、商品マスタ)、定着(入力ルール、教育)をやらないと成果が出ません。よくあるのが「社長が契約したが現場が使わない」「入力がバラバラで数字が信用されない」。SaaSが向いていないというより、“運用設計をしない導入”が向いていないのです。

さらに、コスト構造が合わない場合もあります。ユーザー数が多い、あるいは短期で大幅増員が見込まれる場合、月額課金が効いてきます。逆に利用頻度が低い業務に高額なSaaSを入れると費用対効果が崩れます。「この業務は月に何回使うのか」「何人が使うのか」を具体化しないまま導入するのは危険です。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

自社にSaaSが必要かを判断する質問リスト(そのまま使える)

ここでは、会議でそのまま使える判断質問を用意します。ポイントは「好き嫌い」ではなく、業務・データ・運用・費用の4観点で確認することです。YESが多いほどSaaS適性は高いと考えてください。

  • 業務の痛み:同じ入力を二重にしている(例:受注をExcelと会計に両方入力)/検索に時間がかかる/ミスが売上や請求に影響する
  • 標準化:担当者ごとのやり方が違う/引継ぎが大変/誰が休むと止まる業務がある
  • 共有と可視化:上長が最新状況をリアルタイムで見られない/拠点間で数字が合わない/会議のために集計作業が発生している
  • データの整備:顧客名や商品名が表記揺れしている/マスタが存在しない/入力ルールがない
  • 運用体制:現場代表(キーマン)が決められる/週1回でも運用改善の時間を取れる/導入後のルールを守らせる権限がある
  • 外部要件:取引先からセキュリティ要件や監査要件を求められる/データ保管場所の指定がある
  • 費用対効果:月額費用を払ってでも削減したい工数が明確(例:経費精算に月40時間)/人員増より先に仕組み化したい

この質問に答えたうえで、もう一段深掘りすると精度が上がります。例えば「痛み」は“誰の何時間が減るか”まで数値化し、「標準化」は“例外は全体の何%か”を見ます。SaaSは標準が強いので、例外が全体の2割以内なら吸収できることが多い一方、例外が6割を超えると合わない可能性が高いです。例外の割合を把握するだけで、導入可否の見通しが立ちます

導入で失敗しない進め方(選び方・比較・社内定着まで)

SaaS導入の失敗は、製品選定より「進め方」で起きます。特に中小企業では、忙しさから“とりあえず契約”しがちですが、遠回りになります。まずやるべきは、対象業務の棚卸しです。「現状の流れ」「困りごと」「関係者」「使っている台帳(Excel/紙)」「例外」を書き出します。ここで重要なのは、現状を100点に整理することではなく、選定に必要な論点(必須要件・捨てる要件)を見える化することです。

次に、要件を「必須」「できれば」「不要」に分けます。必須の例は、権限管理、承認フロー、外部連携(会計ソフトやメール)など。できればの例は、スマホ対応、ダッシュボード、AI入力補助。不要も明確にしておくと、デモで機能に目移りしにくくなります。比較の際は、機能表だけでなく、運用の現実を確認してください。具体的には「初期設定に誰が何日かかるか」「データ移行のやり方は何が用意されているか」「入力ルールをどう強制できるか(必須項目・選択式)」などです。

導入は一気に全社展開しないのが鉄則です。おすすめは、パイロット(小さく試す)→修正→拡大の順。例えば営業部の1チームだけでCRM/SFAを使い、入力項目を絞って運用し、会議で見たい指標(商談数、受注率、失注理由)を揃えてから広げます。最初から完璧を狙うと、入力負担が増えて定着しません。最初は「これだけ入れれば回る」という最小項目にすることが鍵です。

定着の決め手は、ルールと習慣です。ルールは「いつ入力するか」「何を入力するか」「未入力の場合どうするか」を明文化します。習慣は、SaaSに入ったデータが意思決定に使われる状態を作ること。たとえば営業会議で、SaaSのダッシュボードだけを見て話すようにすると、入力が“仕事の一部”になります。逆に会議でExcelを参照すると、現場はそちらを正と見なします。経営・マネジメント側がSaaSを使う姿勢を示すことが定着の最短ルートです。

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

よくあるSaaSの活用例(営業・バックオフィス・情報共有)

「結局、うちだと何から始めるべき?」という問いに答えるため、現場で成果が出やすい代表パターンを紹介します。まず営業領域。CRM/SFAのSaaSを入れると、顧客情報、商談状況、見積、次回アクションが一箇所にまとまり、引継ぎや進捗管理が改善します。特に、商談の“今どこ”が見えるだけで、フォロー漏れが減り、受注率が上がる会社は多いです。強い営業担当者の暗黙知を項目化できると、教育コストも下がります。営業のSaaSは「管理のため」ではなく「取りこぼしを減らすため」に入れると成功しやすいです。

バックオフィスでは、会計・請求・経費・勤怠のSaaSが定番です。ここは「処理件数が多い」「締め日がある」「ミスが致命的」という特徴があるため、効果が数字で出やすい領域です。例えば経費精算をSaaSにすると、領収書の提出・承認・仕訳が一連でつながり、月末の残業が減るケースがあります。勤怠も同様で、集計の手間だけでなく、打刻漏れの確認や労務リスクの低減にもつながります。

情報共有では、社内ポータル、チャット、オンラインストレージ、問い合わせ管理のSaaSが効きます。例えば「ファイルサーバーに最新版がない」「メール添付で混乱する」などは、クラウドストレージ+権限管理で改善します。ただし共有系は、ルールがないと散らかります。フォルダ命名、保存場所、公開範囲を決め、定期的に整理する仕組みが必要です。“ツールを入れる”より“情報の置き方を決める”ことが効果の8割と考えてください。

なお、SaaSで賄えない部分が出たときの選択肢も持っておくと安心です。たとえば、SaaS間のデータ連携が弱い場合は連携ツールやAPI連携を検討します。帳票や独自フローが必要なら、周辺を小さくカスタム開発して補うという方法もあります。SaaSと開発は対立ではなく、「標準はSaaS、差別化や例外だけを開発」で全体最適を狙うのが現実的です。

まとめ

SaaSは、中小企業にとって「早く・小さく始められ、運用負担も軽い」選択肢になり得ます。一方で、業務が例外だらけだったり、運用責任者がいなかったりすると、二重管理や定着失敗で損をします。判断のポイントは、業務の痛みの大きさ、標準化の意思、データ整備の状況、運用体制、そして費用対効果です。導入は製品選びよりも、進め方(棚卸し→要件整理→小さく試す→定着ルール)が成否を分けます

もし「SaaSを入れたいが、どこから整理すればいいかわからない」「選定や運用設計まで手が回らない」「SaaSだけでは足りない部分を連携・開発で補いたい」という場合は、第三者の伴走支援が有効です。現場の業務フローを踏まえて、SaaSの適否判断から導入設計、必要なら小規模な開発まで一気通貫で進めると、無駄な回り道を減らせます。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

3分でできる! 開発費用のカンタン概算見積もりはこちら

自動見積もり

CONTACT

 

お問い合わせ

 

\まずは15分だけでもお気軽にご相談ください!/

    コメント

    この記事へのコメントはありません。

    関連記事