社内FAQをCopilotで自動化する方法(ナレッジ整備と更新運用まで)

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社内FAQの「探せない・答えが揺れる」問題は、なぜ起きるのか

社内FAQは、作った直後は役に立つのに、数か月で「結局、詳しい人に聞いた方が早い」状態になりがちです。中小企業でも大企業の情シスでも、根っこは同じで、情報が増えるほど検索しづらくなり、内容の正しさに自信が持てなくなるからです。

典型的な症状は次のとおりです。

  • 同じ質問が、チャットやメールで何度も来る(例:「VPNつながらない」「アカウントロック解除」)
  • 回答が担当者によって微妙に違う(ルールが更新されても周知されない)
  • 手順書や規程が点在しており、リンク切れや版違いが混在する
  • FAQを更新する人が固定化し、異動・退職で更新が止まる

ここで「FAQページを増やす」「検索機能を強化する」だけだと、根本は解決しません。必要なのは、(1)社内の情報源を整理して、(2)質問に対して参照元をたどれる形で回答し、(3)更新が回る仕組みを作ることです。その上でMicrosoft 365 Copilot(以下、Copilot)を“答える窓口”として使うと、問い合わせ対応のスピードと品質が一段上がります。

この記事では、開発の専門知識がなくても実行できるように、Copilotを使った社内FAQ自動化を「ナレッジ整備」と「更新運用」まで含めて、実務手順で解説します。

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Copilotでできること・できないこと(まず期待値を合わせる)

Copilotは「社内の情報を読み取り、質問に応じて文章として回答を組み立てる」ことが得意です。一方で、何でも万能に正答するわけではありません。導入前にできること・できないことを線引きしておくと、社内説明や運用設計がスムーズになります。

Copilotで期待できること

  • 既存の社内資料を横断して要約・回答(SharePoint、OneDrive、Teamsのファイルなど、権限内の情報)
  • 手順の「次に何をするか」を会話で案内(例:「パスワードリセットの流れを新人向けに」)
  • 文体の統一(丁寧語、箇条書き、短文化など)
  • 問い合わせ対応の一次切り分け(例:「まずこの設定を確認してください」)

Copilotが苦手になりやすいこと(対策が必要)

  • 参照元が曖昧な情報(古い手順書、口頭ルール、更新日不明のドキュメント)
  • 例外ルールが多い業務(部署別・拠点別で違う手順)
  • 「してはいけない」判断(セキュリティ・法務・人事)を完全自動化
  • そもそも情報源がない質問(未整備の領域は答えが揺れる)

ここを補う鍵が、ナレッジの整備とガバナンスです。Copilotを「魔法の回答装置」ではなく、整理された情報を使って“迷いなく答えるアシスタント”として設計すると失敗しにくくなります。

ナレッジ整備:Copilotが参照しやすいFAQの土台を作る

Copilotの回答品質は、入力(参照元)でほぼ決まります。まずは「どこに何があるか」を整え、情報の信頼度を上げます。ポイントは、完璧を目指すより運用で改善できる最小構成を作ることです。

情報源を3階層に整理する(一次情報→手順→FAQ)

  • 一次情報:規程・ポリシー・契約・正式な通知(最も正)
  • 手順書:実際の操作や申請フロー(画面差分が出るので更新頻度高)
  • FAQ:質問→結論→手順→注意点→参照リンク(現場向け)

FAQに全てを書き込むのではなく、「結論」と「参照先」をはっきりさせます。Copilotが要約しても、元の参照先に戻れる状態が重要です。

FAQのテンプレを固定する(回答がブレない)

FAQ記事はテンプレ化すると、Copilotの生成が安定します。例えば次の項目を共通化します。

FAQテンプレ例

  • 質問:例)PCを入れ替えたらTeamsにサインインできません
  • 結論:まず多要素認証の再登録が必要です
  • 手順:1) 〜 2) 〜 3) 〜
  • よくある原因:旧端末が認証デバイスのまま
  • 注意:管理者に依頼が必要なケース
  • 参照:規程・手順書へのリンク、更新日、担当部署

この形にそろえるだけで、Copilotが「結論→手順→例外」を自然に組み立てやすくなります。特に更新日と担当部署は、運用で効いてきます。

置き場所を統一する(散在が最大の敵)

SharePointに「社内ナレッジ(公式)」の置き場を作り、Teamsのチャット履歴や個人フォルダにある“重要情報”をできる限り移管します。全部移すのが難しければ、まずは問い合わせが多いテーマからで十分です(アカウント、端末、ネットワーク、申請、請求精算など)。

併せて、次のルールを決めます。

  • 正式版はSharePointのみ(Teamsは導線・告知に使う)
  • フォルダは「部門別」より「テーマ別」(探す人は部門を知らないことが多い)
  • ファイル名に「更新日」を入れるより、本文やプロパティに更新情報を持たせる(リンクが死ににくい)

これでCopilotの参照対象が締まり、回答が古い資料に引っ張られるリスクが下がります。

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Copilotで社内FAQを自動化する設計:3つの提供形態(おすすめ順)

「CopilotでFAQ自動化」といっても、提供の仕方はいくつかあります。予算がある情シスほど、いきなり大規模ポータルを作りがちですが、まずは社内の使い方に合う形を選ぶのが近道です。

社内ユーザーが“自分で聞く”:Copilot Chat(最短で効果)

Microsoft 365環境が整っているなら、Copilot Chatを入口にするのが最も早いです。ユーザーは普段の業務の延長で「◯◯の申請方法教えて」と聞けます。情シス側は、参照元(SharePoint等)を整えることで回答品質を上げられます。最初のKPIは「問い合わせ件数の削減」ではなく「一次解決率」に置くと現実的です。

“決まったFAQ”を常に同じ形で返す:SharePointのFAQページ+Copilot

よくある質問(VPN、アカウント、端末貸与、入退社)などは、SharePoint上にFAQページを整備し、Copilotがそれを要約・案内する形が安定します。特に「この手順でやってください」と強く言いたい内容は、ページを正として持つのが安全です。

“問い合わせ窓口”を自動化:Copilot Studioで社内FAQボット化

人事・総務・情シスの問い合わせ窓口を「チャットボット」に寄せるなら、Copilot Studio(旧Power Virtual Agents)を使う選択肢があります。定型の分岐(部署別、申請の種類別)や、受付に必要な情報(社員番号、端末名、エラー画面)を質問項目として回収できます。開発が不要な範囲でも作れますが、設計を誤ると“使われないボット”になりやすいので、まずは小さく始めるのがおすすめです。

導入手順:小さく始めて、回答品質を上げる進め方(情シス向け)

ここからは「実際に何からやるか」を、非エンジニアでも進められる手順に落とします。目標は、3〜6週間でよくある問い合わせの一部をCopilotで自己解決できる状態を作ることです。

対象範囲を決める(最初から全社はやらない)

最初の対象は、問い合わせが多く、手順が比較的固定のものが向きます。

  • アカウント:パスワード、MFA、サインイン
  • 端末:キッティング、紛失、交換、ソフト配布
  • ネットワーク:VPN、Wi-Fi、リモート
  • 申請:入退社、権限申請、メーリングリスト

反対に、法務判断が絡むものや、例外が多いものは後回しにします。「まず勝てる領域」から始めるのが重要です。

ナレッジの棚卸しと「正」判定

対象範囲の資料を集めて、「正の情報源」を決めます。例えば同じ内容が複数ある場合は、次の優先順位で一本化します。

  1. 規程・公式通知
  2. SharePointの最新版手順書
  3. Teamsの過去回答(ただし根拠の再確認が必要)

ここで大切なのは、古い資料を削除できない場合でも、“公式”フォルダを作ってそこだけを育てることです。まず参照の中心を作ります。

「検索される質問文」を作る(ユーザーの言葉に寄せる)

FAQは、作る人の言葉より、聞く人の言葉で書くほど使われます。例えば「VPN接続エラー 720」だけでなく、「在宅で社内システムに入れない」「急にVPNが切れる」など、現場の表現を見出しや冒頭に入れます。Copilotも、自然文の質問に強いので、ここが効きます。

Copilotに“期待する答え方”を指示する(プロンプトの型)

ユーザー側の使い方も、最初に型を配ると成果が出やすいです。例えば社内アナウンスで次のような聞き方を推奨します。

質問:◯◯ができません。状況は△△です。
欲しい回答:最短の解決手順(3〜5ステップ)と、管理者依頼が必要な条件。
前提:端末はWindows/ブラウザはEdge、社内アカウントでログイン済み。

情シスとしては、「結論→手順→例外→参照先」の順で回答してもらうと、読み手が迷いません。社内向けに“Copilotの聞き方テンプレ”を配るだけで、自己解決率は上がります。

セキュリティと権限(ここを曖昧にしない)

Copilotは原則として、Microsoft 365の権限に従って情報へアクセスします。つまり、権限設計が甘いと「見えてはいけない情報が見える」リスクが出ます。最低限、次を確認します。

  • SharePointの閲覧権限:全社員向け/情シス限定/人事限定を分ける
  • 機密情報(個人情報、パスワード、秘密鍵、契約単価など)の保管場所を分離
  • FAQには「具体的なパスワード」や「迂回手順」を書かない

不安がある場合は、まず「全社員向けに公開して問題ないFAQ」だけで始め、段階的に広げます。

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更新運用:FAQを“育つ仕組み”にして、回答精度を落とさない

社内FAQは作って終わりではなく、更新が止まった瞬間に価値が下がります。Copilot活用では特に、古い資料が残ると回答が揺れやすくなるため、更新運用を先に決めておくのが重要です。

更新のトリガーを決める(いつ直すか)

  • システム変更:Microsoft 365の設定変更、VPN機器更新、SSO切替
  • 組織変更:窓口・承認者・申請フローの変更
  • 問い合わせ増:同じ質問が週に一定回数を超えた
  • 事故・インシデント:誤案内、セキュリティ指摘

おすすめは「問い合わせログから改善する」運用です。Teamsの問い合わせチャンネルやチケットの内容を週1回だけ見て、「FAQ化する質問」を選びます。全てを直そうとしないのが継続のコツです。

オーナーとSLAを決める(属人化を防ぐ)

FAQごとに「担当部署」と「更新責任者」を明記し、更新期限の目安を決めます。例として、情シスFAQは「重大変更は翌営業日、軽微修正は1週間以内」など。責任の所在が明確だと、Copilotの回答の信頼性が上がる(=社内が使い続ける)ようになります。

版管理とアーカイブ(古い情報を参照させない)

古いページを削除できない事情がある場合は、「アーカイブ」へ移動し、検索や導線から外します。FAQ本文の冒頭に「適用期間」「対象ユーザー」「最終更新日」を入れると、Copilotが文脈判断しやすくなります。

“危険な質問”のガードレールを用意する

社内FAQで特に事故が起きやすいのは、権限・セキュリティ・費用に関する回答です。以下のような質問は、Copilotに任せきりにせず、FAQに必ず人間の承認ルートを含めます。

  • 権限付与(管理者権限、共有設定の例外)
  • 端末の初期化、データ削除、退職者のアカウント処理
  • 外部共有、機密ファイルの送付

FAQの書き方としては、「手順」を書きすぎず、「何を確認し、どこへ依頼するか」を中心にします。これで誤操作を防ぎつつ、問い合わせの往復も減らせます。

導入効果を出すコツ:現場が使う“体験”を設計する

Copilotで社内FAQを自動化しても、使われなければ意味がありません。情シスや管理部門の自己満足で終わらせないために、利用定着のポイントを押さえます。重要なのは、現場の「困った瞬間」に最短で到達できる導線です。

「入口」を1つにする(迷わせない)

Teamsの固定タブ、社内ポータルの目立つ場所など、入口を絞ります。「困ったらここ」になれば勝ちです。FAQページがあっても、どこにあるか分からないと使われません。Copilotを入口にする場合も同様で、リンクやショートカットを用意します。

“5分で直る”成功体験を作る

最初の成功体験は、簡単なものが向きます。例えば「パスワード変更」「Outlookの検索が遅い」「Teamsの通知が来ない」など。Copilotが手順を短く提示し、参照先も示せると、利用者は「聞けば早い」と感じます。結果的に、問い合わせ窓口の負荷が下がります。

よくある失敗と回避策

  • 失敗:ナレッジが散在したまま導入して、回答がブレる → 回避:公式フォルダを作り、まずそこだけ育てる
  • 失敗:例外だらけの業務を最初に自動化 → 回避:定型・高頻度から開始
  • 失敗:更新担当が決まらず放置 → 回避:更新責任者と更新トリガーを明文化
  • 失敗:権限が曖昧で情報漏えいが怖くなり停止 → 回避:公開範囲を分け、機密を分離

こうした設計を踏まえると、Copilotは「ただの生成AI」ではなく、社内の“回答品質を標準化する仕組み”になります。

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まとめ

社内FAQをCopilotで自動化する近道は、「AIに答えさせる」より先に参照元となるナレッジを整備し、更新運用を回すことです。Copilotは権限内の情報を横断して回答を作れる一方、情報が古い・散在している・例外が多いと回答が揺れやすくなります。

  • まずはFAQの対象範囲を絞り、勝てる領域(定型・高頻度)から始める
  • SharePoint等に「公式ナレッジ」の置き場を作り、テンプレで統一する
  • Copilotの聞き方テンプレを配り、現場の自己解決を促す
  • 更新トリガーと責任者を決め、古い情報を参照させない
  • 権限と機密情報の分離で、安心して使える状態にする

「自社のどこから手を付ければいいか分からない」「情報整理と権限設計まで含めて進めたい」という場合は、現状棚卸しから小さく実装し、効果測定しながら拡張するのが現実的です。

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