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外注がうまくいかない原因は「要件の未整理」にある
開発を外注するとき、失敗の多くはベンダーの技術力以前に、発注側の要件整理が曖昧なまま進むことで起きます。社内で「何を作るのか」「なぜ作るのか」「誰のためか」が揃っていないと、見積もりはブレ、途中で追加費用が増え、完成しても「思っていたのと違う」になりがちです。
特に、開発に詳しくない中小企業や情シス部門では、次のような状態が起きやすいです。
- 経営層は「売上を伸ばしたい」「コストを下げたい」と言うが、現場は「入力が面倒」「二重管理がつらい」と言う
- 部門ごとに理想が違い、会議では声の大きい意見に引っ張られる
- 「とりあえず作って、あとで直せばいい」が積み重なり、結果的に高くつく
ここで押さえたいのは、要件整理とは「仕様書を完璧に書くこと」ではありません。まずは意思決定できる材料を揃えることです。具体的には、目的・対象業務・スコープ・優先順位・制約(予算/期限/体制)を社内で合意し、外注先が見積もれるレベルまで解像度を上げる作業です。
この記事では、社内の意見をまとめるための進め方を、非エンジニアでも実行できる形に分解して説明します。結果として、外注の見積もり比較が可能になり、開発中の揉め事や追加費用を減らせます。
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要件整理で最初に決めるべき「5つの合意ポイント」
社内調整が難しいのは、議論の軸が揃っていないからです。意見が割れるのは自然なので、先に「何を合意対象にするか」を明確にします。外注前の要件整理では、最低限次の5つを合意しましょう。
- 目的(Why):何のために作るのか。売上/コスト/品質/スピード/リスク低減など
- 対象ユーザー(Who):誰が使うのか。社内のどの職種/拠点/取引先/顧客か
- 範囲(What):今回やること・やらないこと。現状課題の全部を一度に解決しない
- 優先順位(Priority):Must/Should/Could(必須/重要/できれば)で整理
- 制約(Constraints):予算、期限、社内体制、セキュリティ、既存システム連携の縛り
この5つが揃うと、会議で「それは目的に効く?」「今回の範囲に入れる?」「Mustなの?」と問い直せるようになり、意見の交通整理ができます。逆に、ここが曖昧だと「欲しい機能大会」になり、誰も止められません。
また、目的はできれば数値に寄せます。完璧でなくてよいので、たとえば「月次締めを5営業日→2営業日に短縮」「問い合わせ対応を20%削減」「入力ミスを半減」など、判断基準になる目標を置きます。外注先も提案の方向性が定まり、見積もりの前提が揃います。
「やらないこと」も同じくらい重要です。外注は、作るほど高くなります。スコープを固定するのは、現場を抑えつけるためではなく、限られた予算で成果を最大化するための設計です。
社内の意見をまとめる進め方:ヒアリング→可視化→合意の型
要件整理を「会議でまとめる」と失敗しやすいです。会議は結論を出す場で、情報収集の場ではありません。おすすめは、①個別ヒアリングで素材を集め、②見える形に整理し、③合意の会議で決める、という三段階です。
個別ヒアリングで「不満」ではなく「業務」を聞く
現場の声は貴重ですが、「使いにくい」「遅い」「全部自動化したい」のままだと要件になりません。ヒアリングでは、次をセットで聞きます。
- どんな業務の、どの場面で困っているか(タイミング)
- 誰が、何を入力/確認/承認しているか(登場人物と作業)
- 何が起きると困るか(ミス、やり直し、残業、機会損失)
- 例外対応は何があるか(よくある例外、月末だけ、拠点だけ等)
コツは、相手の言葉を否定せず、「具体例」を必ず1つもらうことです。「最近いつ困りました?そのとき何をしました?」と聞くと、仕様に落ちやすい情報が出ます。
意見を「論点」に変換して可視化する
集めた声は、付箋やスプレッドシートで構いませんが、次の3つに分類すると合意が取りやすいです。
- 要望:こうしたい(例:検索を早くしたい)
- 背景:なぜ必要か(例:電話対応中に探せず取り逃す)
- 効果:何が改善するか(例:応答時間短縮、受注率向上)
さらに、部門ごとの利害が衝突する箇所(例:営業は入力を減らしたい、管理部は項目を増やしたい)には「トレードオフ」と印を付けます。ここは会議で決める論点なので、事前に見える化しておくと感情論になりにくいです。
合意の会議は「決める」だけにする
会議のアジェンダは「論点」と「選択肢」に絞ります。たとえば入力項目の議論なら、次のように提示します。
- 案A:入力項目を最小化(入力工数↓、データ品質は後処理で担保)
- 案B:必須項目を増やす(入力工数↑、データ品質↑)
- 判断基準:目的(締め短縮/ミス削減)にどちらが効くか、期限に間に合うか
ここで重要なのは、誰が決めるか(意思決定者)を明確にすることです。全員の納得を目指すと止まります。現場の同意は大事ですが、最後は責任を持てる人が決める体制にします。
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外注先に伝わる「要件」の作り方:仕様書より必要な3点セット
外注前に完璧な仕様書を作る必要はありません。一方で、「口頭で伝えれば何とかなる」も危険です。見積もりと提案の質を上げるには、最低限、外注先が前提を揃えられる資料が必要です。おすすめは次の3点セットです。
- 目的・スコープ・制約が書かれた要件サマリ(1〜3枚):プロジェクトの憲法
- 業務フロー(現状/理想):作業の流れと例外が分かる
- 画面/帳票のラフ(手書きでOK):入力と出力のイメージが伝わる
要件サマリに入れるべき項目
要件サマリは、外注先・社内双方の誤解を減らすためのものです。最低限、次を入れます。
- 背景と目的(できれば数値目標)
- 対象業務・対象ユーザー
- 今回の範囲(やること/やらないこと)
- 優先順位(Must/Should/Could)
- 期限(いつまでに何が必要か:リリース時期、段階導入の可否)
- 予算感(上限だけでも)
- 制約(既存システム、利用クラウド、認証、セキュリティ、法令)
- 運用の前提(誰が更新するか、問い合わせ窓口、夜間対応要否)
「予算は言いたくない」というケースもありますが、予算帯が不明だと提案が散らばります。結果的に比較が難しくなるので、上限かレンジだけでも共有する方が合理的です。
業務フローは「例外」を書くほど価値が上がる
業務フローは、きれいな標準手順だけだと現場で使えません。外注で失敗しやすいのは例外対応です。たとえば受注なら「値引き」「返品」「分納」「代理店経由」「締め日またぎ」など、現場が日常的にやっている抜け道が必ずあります。例外を先に出すと、後からの仕様追加を減らせます。
画面ラフは「項目と動き」だけで十分
デザインの完成度より、入力項目と画面遷移が重要です。パワポでも紙でもよいので、
- 何を入力するか(項目名)
- 何を選ぶか(プルダウン、チェックなど)
- 押すと何が起きるか(登録、承認依頼、メール送信)
が分かる程度に描きます。外注先はここからワイヤーフレームやUI案に落とし込み、実装方針を立てられます。
優先順位の付け方:揉めないための「Must条件」と「段階導入」
社内意見がまとまらない最大の理由は、「全部大事」に見えることです。ここで役立つのが、Must/Should/Couldの整理と、段階導入(フェーズ分け)です。
まず、Mustは「ないと業務が回らない」または「法令/監査/セキュリティ的に必須」に限定します。Mustを増やしすぎると、見積もりが跳ね、納期が伸び、結局どれも中途半端になります。Mustを絞るときは、次の質問が効きます。
- これがないと、リリースしても使われない?
- 手作業で代替できる?代替するなら誰がどれくらい困る?
- 事故(誤請求/情報漏えい/監査指摘)のリスクは上がる?
次に、Should/Couldは「価値はあるが後でもよい」機能です。ここを第2フェーズに回す前提にすると、現場も納得しやすくなります。重要なのは、後回しにする機能を「捨てる」のではなく、ロードマップに載せて約束することです。
段階導入の例を挙げます。
- フェーズ1:現状の業務を壊さず、入力と検索、最低限の帳票出力まで(まず使える状態)
- フェーズ2:承認フロー、自動通知、他システム連携(効率化の本丸)
- フェーズ3:ダッシュボード、分析、AI活用(意思決定の高度化)
外注先にとっても、フェーズ1で早期に価値を出し、改善しながら作れるのでリスクが下がります。社内調整でも「全部やる/やらない」ではなく、「今やる/次にやる」という建設的な議論に変わります。
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見積もり比較のために押さえるべき条件:RFPの最低限と評価軸
外注先を選ぶ段階では、複数社から見積もりを取ることが多いですが、要件整理が弱いと金額差の理由が分かりません。比較できる状態にするには、簡易RFP(提案依頼書)として、前述の3点セットに加え、次の条件を揃えます。
- 納品物のイメージ(ソースコードの権利、設計書の有無、マニュアルの範囲)
- 受入条件(テスト、検収の流れ、検収期間)
- 保守運用の前提(障害対応時間、改修の見積もりルール、SLAの要否)
- コミュニケーション(定例頻度、窓口、ツール)
そして評価軸は、金額だけにしないことが重要です。非エンジニアの方でも判断しやすい軸を置きます。
- 要件の理解力:こちらの目的を言語化し直してくれるか
- リスクの説明:できないこと・注意点を先に言ってくれるか
- 代替案の提案:予算/期限に合わせた現実的な案が出るか
- 体制と継続性:担当が属人化しないか、運用まで見ているか
- セキュリティ・品質:開発プロセス、レビュー、テスト方針があるか
提案内容の差は、要件整理の質に比例します。要件が整理されていると、外注先も具体的なWBS(作業計画)やリスク、段階導入案を出しやすくなり、結果として「安いけど危ない」「高いけど安心」のような曖昧な比較から脱却できます。
よくある失敗パターンと回避策(社内調整・外注コミュニケーション)
最後に、外注前の要件整理でよくあるつまずきを、回避策とセットで整理します。
- 失敗:部門の代表が強い要望を押し通し、全体最適が崩れる
回避:目的(KPI)と優先順位(Must条件)を先に合意し、「目的に効くか」で裁く - 失敗:現場ヒアリングが「愚痴の共有」で終わる
回避:具体例(いつ・誰が・何を・どれくらい)を必ず聞き、業務フローに落とす - 失敗:例外対応を後回しにして、開発途中で仕様追加が連発
回避:例外リスト(返品、取消、権限外、月末処理など)を先に洗い出す - 失敗:見積もりを取ったが、前提がバラバラで比較できない
回避:要件サマリ・業務フロー・画面ラフの3点セット+運用条件を揃えて依頼する - 失敗:「とりあえず全部」になって予算超過・納期遅延
回避:段階導入(フェーズ分け)を前提にし、フェーズ1を小さく勝つ
要件整理は、社内政治の調整でもあります。だからこそ、個別ヒアリング→可視化→合意という型が効きます。特に情シスの方は「技術の話」よりも、意思決定を前に進める資料を作ることが最大の価値になります。
外注前ヒアリングで使える質問テンプレ
- この業務のゴールは何ですか?(何ができたら完了?)
- 困るのはどの場面ですか?最近の具体例を教えてください
- 1回あたり何分かかりますか?月に何回ありますか?
- ミスが起きるとどうなりますか?(やり直し、顧客影響、監査)
- 例外は何がありますか?(月末、特定顧客、差し戻し)
- 「これだけは絶対に必要」な条件は何ですか?
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まとめ
外注前の要件整理は、仕様書作りではなく、社内の意見を「合意できる形」に変換する作業です。目的・対象・範囲・優先順位・制約の5点を先に揃えるだけで、議論が整理され、外注先の提案と見積もりの質が上がります。
- 会議でまとめようとせず、個別ヒアリング→可視化→合意の順で進める
- 外注先には、要件サマリ・業務フロー・画面ラフの3点セットを渡す
- 「全部やる」を避け、Must条件を絞って段階導入で成功確率を上げる
もし「社内の意見は集まったが、要件に落とし切れない」「外注先に何を渡せばよいか不安」「見積もり比較の軸を作りたい」といった状況であれば、第三者が入ることで一気に進むことがあります。要件整理から提案依頼、開発・運用まで一貫して設計すると、追加費用や手戻りを抑えやすくなります。
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