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API連携で「個人情報・機密情報」が漏れる典型パターン
API連携は、社内システムと外部サービス(SaaS、決済、配送、チャット、生成AI、データ分析基盤など)をつなぎ、業務を自動化できる一方で、一度つないだ瞬間から「データが社外に出る前提」の設計が必要になります。特に個人情報・機密情報を扱う場合、漏えいは信用失墜だけでなく、取引停止・監督官庁対応・損害賠償など、事業継続に直結します。
よくある事故は「高度なハッキング」より、設定ミスや運用の抜けから起きます。たとえば次のようなパターンです。
- APIキーがソースコードや共有フォルダに平文で残る:Gitの公開、委託先への共有、退職者PCからの流出など
- ログに個人情報やトークンが出る:アクセスログ、エラーログ、デバッグログ、監視ツールに残り続ける
- 権限が広すぎる:「とりあえず管理者権限」で連携し、必要以上のデータにアクセスできてしまう
- 通信は暗号化されていても、保存やバックアップが甘い:暗号化されないDB/オブジェクトストレージ、スナップショットの公開設定ミス
- 外部委託・SaaS側の責任範囲が曖昧:契約で事故時の対応やログ提供、削除手順が決まっていない
API連携のセキュリティ対策は「暗号化」「認証」「権限」「監査」「運用」をセットで考えるのがコツです。以下では、ITに詳しくない方でも判断できるように、やるべき対策を実務の手順として整理します。
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最初に決める:データの棚卸しとリスク境界(何をどこまで出すか)
対策の前に、API連携で扱う情報を棚卸しします。ここが曖昧だと、後から「そもそもそのデータを外部に送ってよかったのか?」が問題になりがちです。「誰の」「どの情報が」「どのシステムを経由して」「どこに保存されるか」を1枚の表にするだけでも効果があります。
棚卸しで最低限そろえる項目(例)
- データ種類:氏名、住所、電話、メール、社員番号、給与、取引先単価、見積書、契約書、ソースコード、設計書など
- 機微度:公開不可(機密)/社内限定/取引先限定/公開可
- 利用目的:配送のため、本人確認のため、請求のため、分析のため など
- 送信先:どのSaaS、どのクラウド、どの委託先か
- 保存場所:外部サービス側に保存されるか、一定期間で消えるか
- 保持期間:何日・何年残すか、削除は誰が実行するか
次に「出してよい最小限」を決めます。例えば、顧客サポートのチャット連携に顧客の住所まで送る必要は通常ありません。目的に必要な項目だけに絞る(データ最小化)ことで、漏えい時の被害範囲を最小化できます。
さらに、API連携の「境界」を設計します。よくある誤解は「TLSで暗号化しているから安全」というものですが、通信経路が安全でも、外部に渡した時点でその先の保存・閲覧・二次利用のリスクが出ます。契約・設定・監査まで含めて「どこから先が社外か」を明確にしましょう。
認証・認可:APIキー頼みをやめ、権限を最小化する
API連携の入口は、ほぼ例外なく「認証(誰かを確認する)」と「認可(何をしてよいか決める)」です。実務上、事故が多いのは、APIキーや固定トークンを使い回し、権限も広いまま運用してしまうケースです。鍵が漏れたら“その人になりすませる”状態を作らないことが重要です。
推奨の考え方(非エンジニアでも押さえるポイント)
- 権限は「必要最低限」:読み取りだけでよいのに書き込み権限を付けない。管理者権限を避ける
- 利用者(システム)ごとに鍵を分ける:部署Aと部署B、検証環境と本番で同じキーを使わない
- 期限のあるトークンを使う:可能ならOAuth2/OIDCなどの仕組みで短命トークンにする
- キーのローテーション:定期的に入れ替える前提で手順を作る(退職・委託終了時は即時失効)
たとえば外部SaaSとAPI連携する際、APIキーが1本だけだと、どのシステムが使ったのか追えず、漏れた時に止血が遅れます。キーを分け、用途を限定し、失効できるようにすると、インシデント対応が現実的になります。
チェックリスト:権限設計でよくあるNG
- 「開発が早いから」で全権限トークンを発行してしまう
- 本番と検証で同じ連携アカウントを使う
- 誰がどのキーを持っているか台帳がない
- キーを失効しても、どこで使われているか分からない
認証方式の選定はサービス側の仕様に依存しますが、意思決定者としては「短命トークン」「最小権限」「分離」「失効可能」を満たしているかを評価軸にすると、過不足のないセキュリティ対策になります。
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通信・保存・バックアップ:暗号化と鍵管理を「セット」で実装する
個人情報・機密情報のAPI連携では、データが「移動中」と「保存中」の両方で守られている必要があります。通信はHTTPS(TLS)で暗号化するのが前提ですが、問題になりやすいのは保存やバックアップです。保存先が増えるほど、漏えいの入口も増えるため、設計段階で保存範囲を最小化し、暗号化と鍵管理をセットで考えます。
移動中(通信)の基本
- HTTPS(TLS)を必須化し、HTTPは拒否する
- 可能なら証明書ピンニング等の高度対策も検討(モバイルアプリなど)
- Webhook受信側は送信元検証(署名検証やIP制限)を行う
保存中(DB・ファイル・ログ・バックアップ)の基本
- DB暗号化:ディスク暗号化に加え、必要に応じてカラム単位で暗号化やトークナイズ
- オブジェクトストレージの公開設定:「公開リンク」やバケット公開を禁止し、アクセス権を明示
- バックアップの取り扱い:本番以上に公開設定ミスが起きやすい。暗号化と保管先の権限制御が必須
- 鍵管理:暗号鍵をアプリ設定ファイルに埋め込まない。KMS等の鍵管理サービスを利用
「暗号化しているから安心」と言い切れないのは、鍵の置き場所が漏れると復号できてしまうからです。鍵は別管理にし、アクセスできる人・システムを絞ります。また、外部サービスに保存される場合は、保存期間、削除方法、バックアップからの削除可否まで確認しておくと、後々の監査や顧客対応で困りません。
ログ・監査・アラート:漏えいを「起こさない」より「早く気づく」
完璧に事故をゼロにするのは現実的ではありません。だからこそ、API連携のセキュリティ対策では検知(早く気づく)と追跡(何が起きたか分かる)が重要です。特に個人情報・機密情報を扱う場合、いつ・誰が・どのデータにアクセスしたかを説明できないと、社内調査も顧客説明も進みません。
ログ設計の要点(残すべき/残してはいけない)
- 残す:いつ、どのシステムが、どのAPIに、成功/失敗、どの権限でアクセスしたか(IDやリクエストID)
- 極力残さない:氏名・住所・メール本文・カード情報などの生データ、アクセストークン、APIキー
特に「デバッグのためにリクエスト全文をログに出す」は危険です。後からログ収集ツールやチケットに貼り付けられ、意図せず拡散します。必要なら、個人情報はマスキング(例:メールの@前を伏せる)し、トークンは常に伏せ字にします。
監視・アラートの具体例
- 短時間に大量のAPI呼び出し(スクレイピングやキー流出の兆候)
- 普段使わない国・IP・時間帯からのアクセス
- 権限エラーや認証失敗が急増(総当たりの兆候)
- 連携先の設定変更(Webhook URL変更、権限拡大、キー再発行)
監視は「担当者の気合」ではなく仕組みで回すことが大切です。アラートを受け取る連絡先、一次対応(キー失効、連携停止、影響範囲確認)の手順、エスカレーション先(情シス、法務、広報)を決めておくと、被害を最小化できます。
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実務で効く運用ルール:委託先・SaaS・生成AI連携で増える落とし穴
API連携は、外部のSaaSや委託先の開発会社、最近では生成AIのAPIなど、社外の関係者が増えやすい領域です。ここで重要なのは、技術だけでなく契約・権限・手順の三点セットで運用を固めることです。
委託先・開発ベンダーと決めるべきこと
- 秘密保持・再委託:再委託の可否、再委託先にも同等の管理を義務付ける
- アカウント発行:共有アカウント禁止。個人にひもづく発行・削除を徹底
- 環境分離:本番データを検証に持ち込まない(必要なら匿名化データ)
- 成果物の管理:ソース・設定・秘密情報の取り扱い(返却・消去・証跡)
SaaS選定・契約で確認すべき観点
- データの保管場所(国・リージョン)、第三者提供の有無
- 暗号化、アクセス制御、監査ログの提供
- インシデント発生時の通知時間、調査協力、ログ提供
- データ削除(退会時・契約終了時・バックアップ含む)
生成AIのAPI連携で注意する点
生成AIに問い合わせ内容や社内資料を投げるAPI連携は便利ですが、入力内容が学習・保存される条件や、オプトアウト、保持期間がサービスごとに異なります。「何を投げてよいか」を業務ルールとして明文化し、個人情報や機密情報は匿名化・要約してから送る、あるいは送らない運用にします。たとえば「顧客名は顧客IDに置き換える」「契約書は条文の論点だけ抽出して質問する」など、具体例を社内に共有すると現場でブレにくくなります。
導入手順:非エンジニアでも進められるAPI連携セキュリティの進め方
ここまでの話を「結局、何からやればいいのか」に落とすために、実行順を提示します。専門知識がなくても、プロジェクトの進め方として押さえられる内容です。重要なのは、設計・実装・運用を分けて考え、担当と期限を決めることです。
- データ棚卸し:APIで扱う個人情報・機密情報、送信先、保存期間、目的を一覧化
- 最小化・匿名化の設計:送る項目を減らす、ID化する、マスキングする。不要な保存をなくす
- 認証・権限設計:キー分離、最小権限、短命トークン、失効手順、ローテーション計画
- 通信・保存の暗号化:TLS必須、保存暗号化、鍵管理、バックアップの権限と暗号化
- ログ・監視:残す項目とマスキング方針、アラート条件、インシデント一次対応手順
- 契約・社内ルール:SaaSの責任分界、委託先の取り扱い、生成AIへの入力ルール
- リリース前チェック:権限の過不足、公開設定、テストデータ、ログの漏れ、失効テスト
加えて、「年1回」ではなく、連携追加や仕様変更のたびに見直すのが現実的です。API連携は増え続けるため、最初にテンプレート(チェックリスト、台帳、申請フロー)を作っておくと、拡大しても破綻しにくくなります。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
個人情報・機密情報をAPI連携で扱うときは、「暗号化しているから大丈夫」ではなく、データ最小化・認証/権限・保存/鍵管理・ログ/監視・契約/運用を一連の仕組みとして整えることが重要です。事故の多くは設定ミスや運用の抜けで起きるため、まずはデータ棚卸しと権限最小化、ログのマスキングから着手すると効果が出やすいです。
API連携が増えるほど管理は複雑になります。チェックリスト化、キーの分離、失効手順、委託先・SaaSの責任分界を最初に整え、追加連携のたびに同じ基準で判断できる状態を作りましょう。
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