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保守・メンテナンス費用はなぜ膨らむのか?「1/3」を目指す前に押さえる前提
「保守・メンテナンス費用を1/3にしたい」「毎年じわじわ増えていく運用保守コストをなんとか抑えたい」。中堅・中小企業の経営層や事業責任者、情シス・DX推進担当の方から、こうしたご相談をよくいただきます。ここでいう保守費用は、障害対応や軽微な改修だけでなく、問い合わせ対応、マスタメンテ、手作業オペレーション、インフラ費用、テスト、ドキュメント整備などをすべて含めたコストです。まずは、この全体像を揃えた上で「ローコードでどこまで長期的なコスト削減が可能か」を考える必要があります。
多くの企業で保守・メンテナンス費用が膨らむ理由はシンプルです。最初の要件定義では想定していなかった運用が現場で発生し、Excelや紙の運用、口頭ルールがどんどん増えていく一方、システム側もその場しのぎの改修で複雑化し、結果として運用保守コストが雪だるま式に増えていきます。しかも、これらのコストは「システム保守費」としては見えづらく、現場人件費として埋もれてしまうため、経営の視点からTCO削減(Total Cost of Ownershipの総コスト最適化)がしづらい構造になっています。
一方で、ローコード開発やローコードツールをうまく活用すると、こうした「見えない保守費用」を大きく削減できるケースがあります。ただし、どんな領域でも万能というわけではありません。リアルタイム性が非常にシビアな基幹のコア処理や、トランザクションが膨大なシステムを、無理にローコードに寄せると、かえって保守費用が増えてしまう場合もあります。重要なのは、ローコードが得意な領域とそうでない領域を切り分け、「ここなら保守・メンテナンス費用を1/3に近づけられる」という条件を見極めることです。
本記事では、ローコードを使って長期的なコスト削減を狙う際に押さえるべき背景と設計のポイント、具体的な進め方を整理します。読み終わる頃には、「どの業務をローコード開発で置き換えるべきか」「どこまで内製し、どこから外注・伴走パートナーを使うべきか」「要件定義でどこまで詰めれば総コスト最適化につながるか」といった判断材料を持っていただくことを目指します。
この記事のゴール
・自社の保守・メンテナンス費用と運用保守コストの正体を把握できる
・ローコード開発で長期的なコスト削減が効く領域/効かない領域を見極められる
・要件定義と運用設計まで含めて、TCO削減の筋道を描ける
Excel・Access・紙・属人運用の“見えない保守費用”をどうあぶり出すか
まず直視すべきは、ExcelやAccess、紙、メール、属人運用に潜んでいる運用保守コストです。表面上は「システムがないから保守・メンテナンス費用もかかっていない」と見えていますが、実際には現場担当者が転記・集計・突合・チェック・再入力などの作業に多くの時間を費やしています。さらに、担当者しか知らない「隠れルール」が山ほどあり、その担当者が異動・退職した瞬間に運用が破綻しかねません。
例えば、受発注や在庫、契約管理などをExcelで回している場合、ちょっとした項目追加や社内ルール変更のたびに、複数ファイルのフォーマットを直し、マクロを修正し、関係者へメールで周知し、過去データを手作業で整合させる…といった「ミニ開発+ミニ移行」を繰り返しています。これは立派な保守・メンテナンス費用であり、Excelだからタダというわけではありません。また、担当者間で解釈がズレることで、二重入力や整合性チェック、差し戻しが発生し、見えない保守費用として積み上がっていきます。
ローコードでこうした業務をアプリ化すると、この「見えない保守」を二重の意味で削減できます。第一に、業務フローや画面、データ項目がモデル化され、変更箇所が明確になることで、改修時の影響範囲が圧倒的に把握しやすくなります。第二に、申請・承認の状態、入力ミス、例外処理などがシステム内で管理されるため、「どこで止まっているのか」「どのルールがボトルネックか」が可視化され、長期的なコスト削減につながる改善サイクルを回しやすくなります。
もちろん、ただ闇雲にExcelを禁止し、ローコードツールに置き換えれば良いわけではありません。ローコードでシステムを作っても、設計が悪ければ別の形の属人運用が生まれるだけです。「何を標準化し、何を柔軟に残すか」「誰がどこまで設定変更できるようにするか」といった設計思想が、保守・メンテナンス費用の将来像を左右します。ここを曖昧にしたままツール導入だけ進めると、「Excel地獄」から「ローコードアプリ地獄」へ形を変えるリスクもある点は注意が必要です。
ローコードが「長期的なコスト削減」に効くメカニズム
では、なぜローコード開発は長期的なコスト削減に効くのでしょうか。ポイントは大きく3つあります。1つ目は「標準部品化」、2つ目は「ベンダー側によるプラットフォーム保守」、3つ目は「変更のやりやすさ」です。
まず標準部品化です。ローコードツールには、画面コンポーネント、ワークフロー、通知、権限管理、ログ取得、API連携など、業務アプリでよく使う機能があらかじめ部品として用意されています。これらを組み合わせることで、ゼロからコーディングするよりも少ない工数で機能を実装できるだけでなく、後からの改修時も「どの部品をどの設定で使っているか」が分かるため、保守・メンテナンス費用を抑えやすくなります。部品を共通化することで、1つの改善が複数アプリに波及し、結果として運用保守コスト全体のTCO削減へつながるケースも多く見られます。
2つ目のプラットフォーム保守も大きな要素です。従来のスクラッチ開発では、OSやミドルウェア、フレームワークのバージョンアップ対応、脆弱性対応、性能改善なども自社やベンダー側で対応する必要があり、その分の保守費用がかかっていました。ローコードの場合、プラットフォーム自体のアップデートはベンダーが継続的に行うため、自社側はアプリケーション部分に集中できます。もちろんライセンス費用は発生しますが、長期的には「自社でプラットフォームを保守するコスト」を外部化することで、総コスト最適化を図ることができます。
3つ目の変更のやりやすさは、ローコード開発最大の魅力です。申請フローの分岐追加、入力項目の追加、バリデーションルール変更、通知先や文言の調整など、従来なら開発ベンダーへの依頼と見積もりが必要だった変更を、設定変更レベルで反映できるケースが増えます。これにより、日々の軽微な変更を内製で回せるようになり、外注に頼っていた分の保守・メンテナンス費用を圧縮できます。また、ビジネス環境の変化に合わせて素早く業務フローを見直せるため、「変化に対応できないシステム」の延命コストを払い続ける状況から脱却し、結果として長期的なコスト削減とTCO削減が両立しやすくなります。
ローコードが効きやすい領域のイメージ
・申請・承認ワークフロー(稟議、経費、各種申請)
・各種台帳・マスタ管理(契約、顧客、設備、在庫の周辺)
・進捗・ステータス管理(案件管理、問合せ管理など)
・チェックリスト・点検・報告業務
こうした領域はローコードの標準部品で表現しやすく、保守・メンテナンス費用の長期的なコスト削減が見込めます。
「安くなる設計」と「高くつく設計」の境界線をどう引くか
ローコードが魔法の杖ではない最大の理由は、「設計次第でいくらでも高くつく」点にあります。保守・メンテナンス費用を1/3に近づけるどころか、逆に増やしてしまうプロジェクトにも共通パターンがあります。それは、「何でもローコードアプリ側に寄せようとする」「例外パターンを全部取り込もうとする」「UIを凝りすぎて標準コンポーネントを捨ててしまう」といった設計です。
例えば、顧客ごとに異なる契約条件や料金ロジックを、すべて1つのローコードアプリに詰め込もうとすると、分岐と例外だらけのワークフローが出来上がります。最初は何とか動いたとしても、後から仕様変更が入るたびに影響範囲の調査・テスト・リリースに大きな保守費用がかかり、長期的には運用保守コストの爆発につながります。こうしたケースでは、「基幹側で持つべきロジック」と「ローコード側で持つべき柔軟性」の境界線をきちんと設計することが重要です。
逆に、「安くなる設計」のパターンもあります。それは、業務フローのパターンを整理し、「標準ケース」と「例外ケース」を分けて設計するやり方です。標準ケースはローコードツールのワークフロー機能でしっかりモデリングし、例外は別フローや別アプリ、あるいは割り切って手作業に残すなど、あえて100%自動化を目指さない設計も選択肢に入れます。また、権限・ログ・監査・性能・バックアップ・障害時の運用といった非機能要件を最初から洗い出し、ローコード開発でどこまでカバーするかを決めておくことで、「後から必要になって追加費用」という事態を減らせます。
ソフィエイトのようなパートナーが価値を出しやすいのは、まさにこの「境界線の設計」です。最終的な目標である長期的なコスト削減とTCO削減を見据えながら、「どこまでローコードで作るか」「どの部分は既存基幹やSaaSを活かすか」「どの業務はあえてシステム化しないか」を一緒に整理していくことで、ローコードのポテンシャルを最大化しつつ、保守・メンテナンス費用の暴走を抑えることができます。
保守・メンテナンス費用を1/3に近づける実務ステップ
ここからは、実際にローコードで保守・メンテナンス費用を1/3に近づけるためのステップを、業務フローに沿って整理します。ポイントは、「ツール選定の前に設計」「設計の前に棚卸し」です。
ステップ1:現状の棚卸しとコストの見える化
まず、対象となる業務の現状を整理します。どのようなフローで業務が進んでいるのか、どのタイミングでExcel・Access・紙・メールが登場するのか、誰がどの作業にどれくらい時間を使っているのか、どこでミスや手戻りが発生しているのかを洗い出します。同時に、障害対応や仕様変更、問い合わせ対応にかかっている工数・外注費などもできる限り数字で把握し、運用保守コストの全体像を明らかにします。
ステップ2:方式選定とローコード適用領域の決定
次に、「何をローコード開発で置き換えるか」を決めます。基幹システムの心臓部をいきなりローコードにリプレイスするのではなく、その周辺にある申請・調整・集計・台帳管理などの領域から段階的に着手するのが現実的です。ここでは、「どの業務をローコードでやると長期的なコスト削減が大きいか」「どの業務は既存システムやパッケージを活かした方がTCO削減につながるか」を比較検討します。
ステップ3:要件定義と運用設計
ローコードを前提にした要件定義では、画面・データ・権限・承認・ログ・帳票・外部連携・移行・性能・セキュリティ・教育といった観点をテンプレートとして用意し、抜け漏れなく詰めていくことが重要です。併せて、誰がどの範囲まで設定変更できるのか、軽微な改修をどのルールで受け付けるのか、テストとリリースをどう回すのかといった運用設計も、最初から決めておきます。ここを曖昧にすると、せっかくローコードツールで柔軟に変更できるのに、社内ルールのせいで改修が滞り、結果として保守・メンテナンス費用の削減につながらない、という状況になりかねません。
ステップ4:KPI設定と継続的な見直し
最後に、「本当に長期的なコスト削減ができているか」を測るためのKPIを設定します。例えば、「対象業務の処理時間」「問い合わせ件数」「改修リードタイム」「障害件数と復旧時間」「外注保守費用」「現場の残業時間」などです。ローコード導入前後でこれらのKPIを比較し、定期的に見直すことで、本当にTCO削減・総コスト最適化が進んでいるかをチェックできます。
ソフィエイトがご支援できること
・現状棚卸しワークショップで運用保守コストを見える化
・ローコード適用領域の選定と基幹/周辺システムの境界線設計
・要件定義テンプレートと運用設計の型の提供
・導入後の振り返りと長期的なコスト削減のモニタリング設計
内製化と外注の“真のコスト”と、ソフィエイトの伴走活用法
ローコードという言葉とセットで語られるのが「内製化」です。「現場でもアプリが作れる」「情シスだけで回せるようにしたい」といった期待は自然なものですが、内製化にもコストがあります。教育・標準ルール作り・レビュー体制・ナレッジ共有などをおろそかにすると、ローコードアプリが乱立してしまい、結果として保守・メンテナンス費用の見通しが立たなくなる危険性もあります。
一方、すべてを外注に頼ると、ちょっとした項目追加やフロー変更のたびに見積もりと稟議が必要になり、スピードも運用保守コストも大きくなりがちです。長期的なコスト削減とTCO削減の観点からは、「どこまで内製し、どこから外注・伴走に頼るか」のバランス設計が重要になります。
おすすめのスタンスは、「骨格は外部のプロと一緒に作り、日々の軽微な改修は内製で回す」ことです。例えば、全体アーキテクチャ、データモデル、権限・監査ログ、API連携方式、運用フローといった長期的な保守・メンテナンス費用に効く部分は、株式会社ソフィエイトのようなパートナーと一緒に設計します。その上で、申請項目の追加や分岐条件の調整、通知文面の変更などの小さな改修を情シスや現場が担うことで、スピードと総コスト最適化を両立させることができます。
ソフィエイトでは、単発の開発だけでなく、「現状整理→方式選定→要件定義→設計・実装→運用設計」という一連のプロセスを、お客様の体制やカルチャーに合わせて一緒に設計していく伴走支援を行っています。最初からすべてを丸投げするのではなく、「将来的には内製できる部分を増やしていきたい」「ローコード開発のノウハウを社内に残したい」といったご要望にも対応しながら、保守・メンテナンス費用の長期的なコスト削減を目指すスタイルです。
「うちの業務で本当にローコードが効くのか知りたい」「とりあえず今の運用保守コストの状況を整理したい」と感じられた方は、まずはライトなヒアリングからでも構いません。Excel・Access・紙・属人運用のどこにどれだけの保守費用が埋まっているのか、一緒に棚卸ししてみるところから、TCO削減の第一歩が始まります。
まとめ:ローコードで「作って終わり」から「育てて安くする」へ
本記事では、保守・メンテナンス費用を1/3に近づけるために、ローコードをどう活かすかを整理してきました。ポイントは、単に「開発が早くて安い」だけではなく、「運用・保守まで含めた長期的なコスト削減」「システムと現場運用を合わせた総コスト最適化」を見据えて設計することです。
そのためには、まずExcel・Access・紙・属人運用に潜む運用保守コストを見える化し、ローコード開発で置き換えるべき領域を見極めることが重要です。次に、ローコードツールの標準部品を活かしつつ、「安くなる設計」と「高くつく設計」の境界線を意識し、基幹システムや既存SaaSとの役割分担を決める必要があります。そして、要件定義と運用設計を丁寧に行い、内製と外注のバランスを取りながら、継続的にKPIで成果を確認していくことが、TCO削減と総コスト最適化を両立させる鍵になります。
株式会社ソフィエイトは、単なる開発ベンダーではなく、お客様と一緒に「ローコードでどこまで攻めるか」「どこは攻めないか」の境界線を引き、保守・メンテナンス費用と運用保守コストの長期的なコスト削減を実現する伴走パートナーでありたいと考えています。「まずは現状整理と方針のすり合わせから」という段階でも、お気軽にご相談ください。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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