ローコード開発の相場はスクラッチの半分?見積もりを劇的に安くする「部品化」の力

ローコード開発の相場はスクラッチの半分?見積もりを劇的に安くする「部品化」の力

なぜ「ローコード=安くて早い」は危険な思い込みなのか

ここ数年、ローコード開発やローコードツールは「スクラッチ開発より圧倒的に安い」「業務アプリをすぐに作れる」といったイメージで語られることが多くなりました。
Excelや紙、Accessで回している業務システムを早く置き換えたい経営層・現場責任者にとっては、とても魅力的に聞こえます。
しかし、このイメージだけで予算やプロジェクト計画を立ててしまうと、「想定より見積もりが高い」「運用を始めてから費用が膨らむ」といったギャップに直面しがちです。

まず押さえておきたいのは、ローコード開発でも要件定義や業務整理は省略できないという事実です。
どんな業務アプリであっても、「誰が」「どのタイミングで」「どの情報を見て・入力して・承認するのか」といった業務フローとデータ項目を整理する必要があります。
これは従来型のスクラッチ開発でもローコード開発でも同じで、「ツールを導入すれば自動的に設計される」わけではありません。
ここを軽視すると、作り始めてから要件が次々に変わり、見積もりが膨らむ典型的なパターンに陥ります。

また、「ローコード開発なら社内の情シスやDX担当が片手間で業務アプリを作れる」という期待も注意が必要です。
実際には、プラットフォーム固有の概念(エンティティ、ワークフロー、権限モデル、API制限など)を理解し、既存の業務システムやデータベースと整合性のある設計を行う必要があります。
これは業務アプリとして長期運用に耐える品質を目指すほど、スクラッチ開発に近い思考の深さが求められます。

さらに、初期構築費だけで判断すると、「とりあえずローコード開発で安く作ったが、運用・保守や機能追加で結果的に高くついた」ということも起こります。
ライセンス費用、環境維持費用、保守担当の確保、内製要員の育成コストなど、長期のトータルコストまで見通すことが重要です。
この記事では、ローコード開発スクラッチ開発の費用構造の違いと、業務アプリを安定して運用するための設計・部品化の考え方を整理し、「どこまでローコードで攻めて、どこからは別の選択肢にするか」を自社で判断できる状態を目指します。

ローコード開発とスクラッチ開発の費用構造を分解する

一般に「ローコード開発はスクラッチ開発の半分くらいの費用」と言われることがありますが、これはあくまで条件がハマったケースの目安であり、すべての業務アプリに当てはまるわけではありません。
実務でよく見られる費用の内訳を分解すると、どこで差が出やすく、どこはローコード開発でもあまり変わらないのかが見えてきます。

従来型のスクラッチ開発では、要件定義・業務整理・基本設計・詳細設計・実装・テスト・インフラ構築・運用設計といった工程に工数が割り当てられます。
業務アプリの画面ごとにHTML/CSS/JavaScriptやバックエンドコードを書き、バリデーション、検索、並び替え、帳票出力などを1つひとつ実装していくため、画面数や機能数に比例してコストが増えやすい構造です。

一方でローコード開発では、フォームや一覧画面、ワークフロー、権限管理、通知などの基本部品があらかじめプラットフォーム側に用意されています。
このため、標準機能の組み合わせで実現できる業務アプリであれば、実装〜テスト部分の工数を大きく圧縮できる可能性があります。
「スクラッチ開発なら数十画面分の実装が必要だったところを、設定とドラッグ&ドロップで短期構築できる」といったイメージです。

ただし、要件定義・業務整理・データモデリングといった設計工程は、ローコード開発でもほとんど削れません。
さらに、会計・基幹システム・既存データベースとの連携、セキュリティ要件、監査ログ、SaaSとのAPI連携など、周辺の設計はスクラッチ開発と同等か、それ以上に慎重な検討が必要です。
プラットフォームの制約に合わせて設計変更が必要になり、かえって検討の手間が増える場合もあります。

つまり、「ローコード開発なら何でも半額」というわけではなく、標準部品でまかなえる領域が多い業務アプリほど有利であり、外部連携や複雑ロジック、特殊なUI要件が多い業務システムほどスクラッチ開発との差が出にくくなります。
自社の案件がどちら寄りなのかを把握するために、「画面数」ではなく「機能パターン」と「外部連携の数・複雑さ」に注目することが、見積もりを読むうえでの第一歩です。

ポイント
同じ「画面10枚の業務アプリ」でも、ローコード開発で設定だけで済むものと、裏側にカスタムAPIが必要なものでは、スクラッチ開発に近い工数になるかどうかが大きく異なります。
見積書では「カスタム実装」「外部連携」「ワークフロー定義」などの項目を必ず確認しましょう。

部品化で業務アプリの見積もりを下げる設計術

ローコード開発の本当の強みは、「画面を早く作れること」だけではなく、「共通の部品を何度も再利用できる設計」にあります。
業務システムを「申請ごとに別アプリ」「部署ごとに別画面」と分割して考えるのではなく、「似たパターンを1つの部品としてまとめる」視点を取り入れることで、初期コストと将来の追加開発コストを同時に抑えることができます。

例えば、社内の申請・承認系業務アプリを考えてみると、「申請フォーム」「承認フロー」「一覧・検索」「通知」「マスタ管理」といった構成要素は、多くの場合で共通しています。
従来のスクラッチ開発では、経費精算、備品申請、休日申請などを別々に実装することも珍しくありませんが、ローコード開発では「申請フォーム+承認フロー」を汎用コンポーネントとして設計し、申請種別ごとに項目やルートを設定で変えるだけにすることが可能です。
最初の1セットを丁寧に作り込む代わりに、その後の横展開を極端に安くできるイメージです。

実務では、要件定義や現状業務のヒアリングの段階で、「似ている画面」「似ているフロー」を意識的に探し出し、共通化候補としてラベリングしていきます。
たとえば「台帳+検索+詳細表示」「申請+承認+通知」「マスタ管理+履歴」といったパターンに分類し、それぞれをローコード開発の標準部品として定義します。
そのうえで、個別の業務アプリは「標準部品の組み合わせ+最小限の個別ロジック」で構成することで、見積もりは「画面数×単価」ではなく「部品の種類×作り込み度」で考えられるようになります。

ここで重要なのは、「最初から各部署の要望をすべて100%反映した専用画面を作ろうとしない」ことです。
ローコード開発は設定を変えればいくらでも個別対応ができてしまうため、何も考えずに要望を受けていると、結果的にスクラッチ開発と同じくらい複雑な業務アプリの群れができてしまいます。
経営層やDX推進担当としては、「まずは共通フォーマットに8割寄せる」「残り2割の例外は業務ルール側を見直す」など、業務側と一緒に標準化のラインを引くことが、見積もりを下げる最大のレバーになります。

Tip:部品カタログを作る
プロジェクトの早い段階で、「申請フォーム部品」「一覧画面部品」「ダッシュボード部品」などのローコード開発用カタログを作成し、業務アプリ設計時の「メニュー表」として使うと、追加開発の見積もりも説明しやすくなります。

ローコード開発でも高くつく条件と「ここから先はスクラッチ」の境界線

どれだけローコード開発を工夫しても、「ここから先はコスト・リスク的にスクラッチ開発や別方式を検討した方がよい」というラインは存在します。
この境界線を曖昧にしたまま進めると、「ローコードなら安いはず」と思っていたのに、実際の見積もりがスクラッチ開発と変わらない、むしろ高いという結果になりかねません。

第一に注意したいのが、外部システム連携が多く・複雑な業務アプリです。
会計システム、販売管理、在庫管理、勤怠システム、各種SaaSとのAPI連携が多層に絡む場合、ローコードツールに標準コネクタがあっても、実運用レベルのデータ同期やエラー処理を設計・検証するには相応の工数がかかります。
ここはスクラッチ開発と同程度の難易度になることも多く、裏側のAPIやバッチ処理はフルスクラッチ+画面はローコード開発というハイブリッド構成を選ぶケースも現実的です。

第二に、例外処理が極端に多い業務アプリも高コスト化しやすい領域です。
「取引先ごとにフローが違う」「金額や条件で承認経路が細かく分岐する」「部署ごとに特殊ルールがある」といった状況をすべてローコード開発の設定で表現しようとすると、画面やワークフロー定義が複雑化し、もはやスクラッチ開発と変わらない工数になることがあります。
この場合は、業務ルール自体を整理して標準フローに寄せるか、どうしても例外が必要な部分だけ別システムや手作業フローに切り出すといった選択が必要です。

第三に、パフォーマンス・スケーラビリティ要件が厳しいシステムです。
大量データを扱う分析系の業務アプリや、顧客向けポータルでアクセス集中が起こるシステムは、ローコードプラットフォームの内部構造やクエリ制御の制約上、チューニングに限界がある場合があります。
この場合は、データストアや高速APIはスクラッチ開発で構築し、ローコード開発は管理画面や社内向けUIに限定するなど、役割分担を明確にすることが現実的です。

UI/UXへのこだわりも境界線の一つです。
ブランディング要素の強い顧客向け画面や、複雑なインタラクションを伴う業務システムは、ローコード開発では表現に限界があり、逆にスクラッチ開発の方が手戻りが少ないこともあります。
その場合、「外向きはフロントエンドをスクラッチ開発」「内向きの管理・運用はローコード開発で素早く構築」といった住み分けが有効です。

境界線の引き方の例
基幹に近いドメインはパッケージやスクラッチ開発で堅めに構築し、その周辺で頻繁に変わる業務フローや補助的な業務アプリローコード開発で柔軟に作る、という二層構造を意識すると判断しやすくなります。

内製か外注か?ローコード開発だからこそ見えるトータルコストと導入ステップ

「ローコード開発だから外注は不要」「市民開発で全部内製できる」と考えるのも、現場では危うい前提です。
実際には、ローコード開発の特性を踏まえたうえで、「どこまでを社内で担い、どこからをパートナーと組むか」を設計することで、トータルコストを最適化しやすくなります。

まず、コストは「ライセンス+人件費+外部委託費」の三つで見る必要があります。
プラットフォームの月額費用に加え、情シス・DX推進担当・現場キーユーザーが業務アプリの企画・設計・検証に割く時間、そして必要に応じて関わるベンダーの費用を合算して、スクラッチ開発を行った場合との比較を行うことが重要です。
単に「開発見積が安いかどうか」だけでは、長期的な保守や人材育成コストを見落としてしまいます。

現実的なパターンとしては、「最初の1〜2案件は外部パートナーと一緒にローコード開発の標準設計を作り、その後の小規模改修や新規業務アプリ追加は社内に移していく」というステップが取りやすいでしょう。
外部パートナー側では、データモデル設計、基幹との連携方針、共通部品・共通テンプレートの定義、セキュリティ・監査要件の整理などを担当し、社内側には「標準に沿った画面追加・項目変更・簡易ワークフロー変更」のスキルをインストールしていきます。

ベンダー選定時には、「ローコード開発で作った業務アプリをどこまで社内でいじれる状態にしてくれるか」「ドキュメントやガイドラインを整備し、属人化を防ぐ設計をしてくれるか」といった観点が重要です。
株式会社ソフィエイトでは、単にスクラッチ開発の代わりにローコード構築を請け負うのではなく、ローコード開発の部品化や内製化を前提とした設計・教育・伴走を提供し、中堅・中小企業が自走できる状態を目指す支援を行っています。

導入ステップの一例
1. 業務と現行ツール(Excel・紙・Access)の棚卸し
2. ローコード向き/向かない業務の仕分けと、スクラッチ開発やパッケージの候補整理
3. 共通部品・テンプレート設計とパイロット業務アプリの構築
4. 運用ルールと内製・外注の分担設計
5. 社内展開と継続改善サイクルの構築

まとめ:ローコード開発とスクラッチ開発を賢く使い分ける

本記事では、ローコード開発スクラッチ開発の費用構造の違い、業務アプリを安く・早く・長期的に安定運用するための部品化の考え方、そして「どこから先は別の選択肢を検討すべきか」という境界線について整理しました。
重要なのは、「ローコードなら何でも安い」「とりあえずスクラッチ開発で全部作る」といった二択ではなく、自社の業務とシステム構成に合わせて最適な組み合わせを選ぶことです。

特に、中堅・中小企業がExcel・紙・属人運用から脱却し、企業利用に耐える業務アプリを整備していくうえでは、ローコード開発で共通部品を作りながら、基幹に近い領域やパフォーマンスがシビアな領域にはスクラッチ開発やパッケージを組み合わせる「ハイブリッド戦略」が現実的です。
その際、最初の段階で「ローコードで作るべき領域/作らない領域」を切り分け、追加費用が膨らむポイントを要件定義の時点で潰しておくことが、数年単位でのコスト差につながります。

もし社内だけで判断が難しい場合は、「業務とシステムの棚卸しをいっしょにやってほしい」「ローコード開発とスクラッチ開発のどちらが向いているか、具体的に整理したい」といったテーマで、専門パートナーに相談するのがおすすめです。
株式会社ソフィエイトでは、ローコード開発スクラッチ開発・AI活用を組み合わせた現実的なロードマップをともに描き、現状整理から方式選定、要件定義、設計・実装、運用設計までを伴走することが可能です。

本記事は約8,000字規模の内容になっていますので、そのまま社内の検討メモやプロジェクトのキックオフ資料のたたき台としてもご活用いただけます。
必要に応じて、御社の具体的な業務アプリ候補や既存のシステム構成を伺いながら、より具体的な見積もり・スケジュール案を一緒に検討していくこともできます。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

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