ヘルプセンターの作り方:検索される記事構成と執筆ルール

ヘルプセンターの作り方:検索される記事構成と執筆ルール

カスタマーサクセス担当(CS)や情報システム部門のご担当者であれば、一度は「ヘルプセンターは作ったのに、あまり使われていない」「ナレッジベースもFAQもあるのに、結局Slackや電話で聞かれてしまう」という状況を経験されていると思います。本来、ヘルプセンターは顧客や社内ユーザーの自己解決の入口であり、ナレッジベースとFAQを通じて対応工数を削減しつつ満足度を高めるための重要なチャネルです。

しかし現実には、検索しても欲しい記事が出てこない、情報が古くて信用されていない、FAQページが見づらく離脱される、といった問題が重なり、ヘルプセンターが「あるのに使われない」状態に陥りがちです。本記事では、CSと情シスの両方の視点から、検索され、読まれ、業務に活かされるヘルプセンターを作るための実務的な考え方と手順を整理します。

単なる理論ではなく、カテゴリ設計、記事テンプレート、FAQ執筆ルール、運用フロー、ツール選定のポイントまで、現場ですぐ試せる粒度で具体的に解説します。読み終える頃には、どこから改善に着手し、どう継続運用するかのイメージを持っていただけるはずです。

ヘルプセンターとナレッジベース、FAQの全体像を示すイメージ図

ヘルプセンターが「あるのに使われない」理由を整理する

まず、なぜヘルプセンターやナレッジベース、FAQが「あるのに使われない」のかを冷静に整理する必要があります。多くの組織では、問い合わせが増えたタイミングで急いでヘルプセンターを立ち上げ、手元の資料をコピーしてFAQを登録し、「ひとまず完成」としてしまいがちです。その結果、最初に想定した情報構造と実際の問い合わせパターンのズレが放置され、検索しても見つからないヘルプセンターになってしまいます。

次に起こりやすいのが、情報の陳腐化です。プロダクトのUI変更、料金改定、社内システムの入れ替えが重なると、更新されない記事は少しずつ現実とズレていきます。こうしてヘルプセンターは徐々に「古いことが書いてある場所」になり、ひとたび誤った案内でトラブルを経験したユーザーは、ナレッジベース全体への信頼を失い、最初から人に聞く行動へ戻りやすくなります。

さらに、UI/UXが原因で離脱されるケースもあります。検索窓が目立たない、カテゴリが複雑、FAQ一覧がタイトルの羅列だけ――この状態では、ユーザーは記事に辿り着く前に離脱します。社内向け(情シス)では、社内用語・略語が多すぎて初心者に伝わらない、資料がPDFやスライドに分散していて検索できない、といった課題も頻繁に起こります。

このように「使われないヘルプセンター」は、単一の原因ではなく、情報設計・運用・UI・信頼性の4つが少しずつ崩れている状態です。逆に言えば、構造を見直し、記事品質を上げ、体験を整えることで、自己解決率は着実に改善できます。CSと情シスが共通認識を持ち、ヘルプセンターを“第一の窓口”にする方針を共有することが、改善のスタートラインになります。

現場でよくあるパターン

・ヘルプセンターはあるが、検索キーワードと記事タイトルが噛み合わない。
・更新が属人化し、FAQのメンテナンスが後回しになる。
・「まずFAQを読んでください」と案内しても、そのFAQが読みにくく離脱される。
こうした小さな歪みが積み重なると、「ヘルプセンター=役に立たない」という評価になってしまいます。

検索されるヘルプセンターの理想像を描く

課題を整理したら、次に「検索されるヘルプセンターとはどのような状態か」を具体的に描きます。理想の姿が曖昧なままだと、リニューアルやFAQの書き直しが場当たり的になり、改善が継続しません。ここでは、CSと情シスに共通する3つの観点から、あるべき姿を考えます。

1つ目は、ユーザーの検索行動から逆算されていることです。顧客も社内ユーザーも、「請求書 宛名 変えたい」「VPN つながらない」「パスワード リセット メール来ない」など、自然な言葉で検索します。記事タイトル、見出し、本文には、こうしたキーワードが不自然にならない形で含まれている必要があります。「〜のご案内」「〜のご説明」といった社内文書的なタイトルは、検索にも選ばれにくくなります。

2つ目は、検索から解決までの導線がシンプルであることです。トップページで検索窓がすぐ見える、カテゴリから代表FAQにすぐ飛べる、記事末尾に関連リンクがあり、解決しない場合は問い合わせフォームやチャットにワンクリックで遷移できる――こうした導線設計が重要です。外部向けヘルプセンターであれば、SEOに対応させることで、Google検索から直接FAQへ流入し、自己解決に繋げることもできます。

3つ目は、ヘルプセンターが他システムと連携できることです。CSなら問い合わせ管理ツールやCRMと繋ぎ、「どのFAQを読んだうえでチケットが作られたか」を把握できます。情シスならITSMツールと紐付けて、インシデント対応時に該当記事へ即アクセスできる状態を作れます。将来的に生成AIチャットボットを導入する場合も、ナレッジ構造と記事品質がそのまま回答精度に直結します。

つまり「検索されるヘルプセンター」とは、記事数が多いことではありません。ユーザーの検索行動、解決までの導線、連携可能性という3点から、ヘルプセンター全体を自己解決のインフラとして設計し直すことが重要です。

情報設計と記事テンプレでナレッジベースの骨組みを作る

理想像が見えたら、次は情報設計に入ります。ここでのポイントは、カテゴリ構成と記事タイプを最初に決めることです。カテゴリが曖昧なまま書き始めると、FAQが重複し、似た記事が乱立して、結果として検索性が下がります。

実務的には、「機能別 × 利用シーン別」の2軸で整理すると迷子になりにくくなります。たとえばSaaSのCSであれば、「アカウント管理」「請求・支払い」「チーム管理」といった機能カテゴリと、「初期設定」「日々の利用」「トラブルシューティング」といった利用シーンを掛け合わせます。情シスであれば、「PC・デバイス」「ネットワーク」「アカウント・権限」「セキュリティ」などを基礎カテゴリにして社内向けヘルプセンターを構成し、その配下に記事を配置します。

次に、記事タイプごとのテンプレートを用意します。代表例は「How-to手順記事」「トラブルシューティング記事」「ポリシー・ルール記事」「リリースノート」「用語集」「FAQ集」です。たとえばHow-toなら、「この記事でできること」「対象読者」「前提条件」「手順」「よくあるつまずき」「関連リンク」を共通化します。トラブルシュートなら、「症状」「原因候補」「確認手順」「解決手順」「解決しない場合の連絡先」をテンプレ化します。

テンプレートに沿ってCSと情シスが共同整備すると、ヘルプセンター全体の読みやすさと検索性が揃います。FAQ単体で完結させず、「詳しい手順はこちら」のように詳細記事へリンクすることで、回遊も自然に増えます。加えて、タグ・ラベル設計も重要です。製品名、機能名、ユーザーロール(管理者・一般ユーザー)、OSやブラウザなどを整理しておくと、検索精度が上がり、横断的にも探しやすくなります。

最初に決めておきたいこと

・カテゴリ構成(CS/情シスの代表的な問い合わせ軸から決める)
・記事タイプとテンプレート(How-to、トラブルシュート、ルールなど)
・FAQと詳細記事の役割分担(どこまでFAQで、どこから詳細記事へ誘導するか)
これらを最初に合意しておくと、記事が増えても情報が破綻しにくくなります。

読まれるFAQと記事を書くための執筆ルールとチェックリスト

情報設計ができたら、次は1本1本の記事品質を高めます。構造が良くても、記事が読みにくければ自己解決率は上がりません。ここでは、CSと情シスが共通で使える執筆ルールとチェックリストの考え方を整理します。

最重要ポイントは、タイトルと冒頭3行です。ユーザーは検索結果一覧のタイトルとスニペットで読むかどうかを決めます。タイトルは「〜のご案内」ではなく、「請求書の宛名を変更する方法(管理者向け)」のように、誰が・何を・どう解決できるかを具体化します。冒頭では「この記事でできること」を先に言い切り、読者が「自分の問題が解決できそう」と判断できるようにします。

本文では、1文を短くし、主語と述語を明確にします。専門用語が必要な場合は「SAML(シングルサインオンの仕組みの一つ)」のように短く補足し、社内用語や略称は可能な限り避けます。スクリーンショットを使う場合は、alt属性にも「アカウント設定画面の例」「FAQボタンの位置」といった説明を入れると、アクセシビリティと検索性の両方に効きます。手順は番号を振り、「完了したらどう見えるか(完了状態)」を文章で示すと、非ITユーザーでも迷いにくくなります。

そして、品質を安定させるにはチェックリスト化が有効です。例えば「検索されそうな言葉がタイトルと本文に入っているか」「FAQと詳細記事の相互リンクがあるか」「更新日と対象バージョンが明記されているか」「解決しない場合の問い合わせ導線があるか」。執筆者とレビュアーが同じチェック項目を使うことで、ヘルプセンター全体の品質が底上げされます。

ワークフロー例:CSがドラフト作成 → 情シスが技術面レビュー → プロダクトオーナーが仕様・リリース整合性を確認 → 公開 → アクセス状況と問い合わせ件数を定期モニタリング。

運用とツール選定:小さく始めて改善し続けるために

最後に、ヘルプセンターとナレッジベース、FAQを「作って終わり」にしないための運用とツール選定のポイントを整理します。運用で重要なのは、問い合わせログやチケットデータを定期的に振り返り、「どのテーマを追加・更新するか」を決めるサイクルを仕組みとして固定化することです。月次や四半期ごとに、CSと情シス、必要に応じてプロダクトや総務も参加する「ナレッジレビュー会」を設け、改善対象を決めます。

運用ルールは、トリガーと締切を明確にします。たとえば「新機能リリース時は概要記事1本+FAQ3本を追加」「重大インシデント後は復旧から24時間以内に振り返り記事を追加」「毎月トップ10閲覧記事を点検し鮮度を確認」。さらにアーカイブ基準も重要です。「◯年以上アクセスがない」「サポート対象外バージョン依存」などの条件で非公開・アーカイブを判断し、ナレッジベースの混乱を防ぎます。

ツール選定では、検索精度(日本語検索、タグ・フィルタ)、権限管理(社外/社内の切り分け)、ワークフロー(下書き・承認・公開)、分析(検索語、閲覧数、離脱、自己解決率の推定)、連携(API・Webhooks)などがポイントです。将来的に生成AIチャットボットを導入するなら、ナレッジをAPIで参照できるか、記事構造がAIにとって扱いやすいかも確認しておくと安心です。

「自社だけで設計から運用までやり切るのは大変」というケースでは、外部パートナーを活用する選択肢もあります。株式会社ソフィエイトでは、CSと情シスの両方の現場に入り込み、現状診断〜情報設計〜執筆ルール策定〜ツール選定〜生成AI連携まで一気通貫で支援することが可能です。ヘルプセンター改善は一度で完成するものではなく、ナレッジを少しずつ育てていく長期戦です。伴走パートナーとして第三者視点と技術力を活用するのも有効です。

まとめ:ヘルプセンターを「問い合わせ削減ツール」から「価値提供チャネル」へ

本記事では、ヘルプセンターが「あるのに使われない」理由を整理し、検索される理想像、情報設計とテンプレート、執筆ルール、運用とツール選定のポイントを解説しました。CSと情シスのどちらにとっても、ヘルプセンターとナレッジベース、FAQは、単なるコスト削減の手段ではなく、ユーザーが自分で問題を解決できる体験を提供する重要なチャネルです。

いきなり完璧を目指す必要はありません。まずは問い合わせが多いトップ10テーマから着手し、カテゴリを整え、テンプレートを固定し、FAQを1本ずつ改善していきましょう。その過程で「どんな言葉で検索されているか」「どの記事を読んだ後に問い合わせが増えるか」といったデータが見えてきます。気づきをもとに構成と運用を改善し続けることで、自己解決率と満足度は着実に向上していきます。

もし設計や運用に不安がある場合は、外部の専門家に相談し、戦略設計から一緒に進めるのも一つの選択肢です。株式会社ソフィエイトは、システム開発・コンサルティング・UI/UX設計の知見を組み合わせ、CSと情シスの現場に寄り添いながら、「使われるヘルプセンター」の実現を支援します。

株式会社ソフィエイトのサービス内容

  • システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
  • コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
  • UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
  • 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い

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