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ファイルサーバーをクラウド化すると何が変わる?(まず押さえる全体像)
社内のファイルサーバーをクラウド化(クラウドストレージへ移行)すると、ファイルの置き場所が「社内のサーバー」から「インターネット越しに安全に使えるサービス」へ変わります。結果として、拠点や在宅勤務でも同じファイルにアクセスでき、サーバー保守の手間や更新費用を減らしやすくなります。一方で、クラウド化は“置き換えるだけ”ではなく、権限設計(誰が何を見られるか)と運用ルールまで含めて設計し直すプロジェクトです。
検索されやすい悩みとしては、次の3つに集約されます。
- 「共有フォルダが増えすぎて、誰が何を見ていいか分からない」
- 「移行したいが、止められない業務があり切り替えが怖い」
- 「クラウドは便利そうだが、情報漏えいが心配」
この記事では、開発の専門知識がない方でも進められるように、クラウド化の進め方を「準備→権限設計→移行手順→運用・改善」の順で解説します。Microsoft 365(SharePoint/OneDrive)やGoogle Workspace(Google ドライブ)など代表的な選択肢にも触れつつ、製品名に依存しない“考え方”を中心にまとめます。
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ファイルサーバーをクラウド化する際、最初の分かれ道は「どのクラウドストレージを基盤にするか」です。よくある候補は、Microsoft 365(SharePoint/OneDrive)、Google Workspace(Google ドライブ)、Box、Dropbox Businessなどです。選定のポイントは機能比較よりも、既存の社内基盤(メール、ID管理、端末管理)と“セット”で運用できるかにあります。
選定の判断軸(非エンジニア向け)
- 認証(ログイン)を統一できるか:Microsoft Entra ID(旧Azure AD)などでSSOができると、退職者のアカウント停止が一括で安全に行えます。
- 権限管理の粒度:部署・プロジェクト・社外共有など、現実の運用に合わせて「グループで管理」しやすいか。
- 外部共有の扱いやすさ:取引先に渡す頻度が高い会社は、リンク期限・パスコード・ダウンロード制限などが重要です。
- 監査ログとアラート:「誰がいつ何を見たか」「大量ダウンロードが発生した」など、万一に備えた追跡性。
- Office連携・共同編集:Excel/PowerPoint中心ならMicrosoft 365との相性、Googleスプレッドシート中心ならGoogleとの相性が出ます。
「ファイルサーバーの置き換え」だけで終わらせない
クラウド化は、NASやWindowsファイルサーバーの容量問題を解決するだけではありません。クラウド移行を機に、フォルダ構成の整理、アクセス権の棚卸し、承認フローの見直し、監査ログの運用など、情報管理のやり方をアップデートできます。逆に言うと、これをやらないまま移行すると、クラウド上で“散らかった共有フォルダ”が再現され、後から手を付けにくくなります。
選定は「現状の苦しみ」がどこにあるか(外部共有の多さ、拠点間の遅さ、退職者管理、監査要求など)を言語化し、それを解決できる基盤を選ぶのが近道です。
権限設計の基本:個人に付けない、グループで管理する
ファイルサーバーをクラウド化する上で最重要なのが権限設計です。多くの現場では「Aさんが担当だからAさんに権限」「Bさんも必要になったから追加」と、個人ベースで増やしていきがちです。しかしこのやり方は、異動・退職・兼務が発生した瞬間に破綻しやすく、棚卸しも困難になります。クラウド化を成功させるコツは、権限を“人”ではなく“役割(グループ)”に付けることです。
権限設計で決めるべきこと(最低限)
- 誰が閲覧できるか(閲覧権限):機密文書、全社共有、部署限定、プロジェクト限定などの分類
- 誰が編集できるか(編集権限):更新権限が広すぎると誤編集・上書きの事故が増えます
- 誰が共有できるか(外部共有権限):“共有リンクを作れる人”の範囲を最小化するのが基本です
- 所有者(管理者)を誰にするか:担当者が退職しても管理が途切れないように、部署やチームで持つ
おすすめの考え方:「部署」「プロジェクト」「機密」の3レイヤー
フォルダ(またはサイト/チーム)構成は会社ごとに異なりますが、整理の型として次の3レイヤーが有効です。
- 全社・共通:規程、社内テンプレ、全社告知資料など
- 部署:営業部、経理部、人事部といった部署単位の業務資料
- プロジェクト:顧客案件、社内横断PJ、期間限定の取り組み
ここに「機密(役員資料、人事評価、給与、M&Aなど)」を別枠にして、アクセスできる人数を厳格に絞ると事故を減らせます。クラウドでは“なんとなくアクセスできる”状態が起こりやすいので、最初に分類と範囲を決め、例外を作らないことが重要です。
権限グループの作り方(例)
「営業部_閲覧」「営業部_編集」「営業部_外部共有可」のように、役割が分かる命名でグループを作ります。ユーザーは原則そのグループに所属させるだけにし、フォルダ側には個別ユーザーを直接追加しません。これにより、異動時はグループを入れ替えるだけで権限が追随し、監査や棚卸しも簡単になります。
実務のコツ:「編集できる人」を必要最小限にし、「閲覧できる人」を広めにする方がトラブルが少ないケースが多いです。編集権限が広いと、誤削除・上書き・最新版の混乱が増えます。
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移行前の準備:棚卸しと“捨てる勇気”が成功率を上げる
クラウド化の移行作業でつまずく原因の多くは、ツールではなく「移行対象が多すぎる・汚れている」ことです。現行ファイルサーバーには、重複ファイル、古い資料、退職者のフォルダ、誰も見ないバックアップなどが混在していることが珍しくありません。これらをそのままクラウドへ持ち込むと、容量コストだけでなく検索性や権限事故の原因になります。移行前に、現状の棚卸し(何がどこにどれだけあるか)と整理方針を決めましょう。
棚卸しで確認する項目
- 容量と増加ペース:現時点の総容量、月次増加、巨大フォルダ上位
- ファイル種類:Office、PDF、画像、CAD、動画など(プレビュー可否や同期負荷に影響)
- 最終更新日:2年以上更新がないフォルダはアーカイブ候補
- 権限の実態:誰がアクセスしているか、アクセス制御が破綻していないか
- 業務依存:特定のアプリがネットワークパスを参照しているか(例:社内システムが共有フォルダに出力)
移行対象の分類(おすすめ)
- 今後も使う(移行):日常的に更新する業務資料
- 参照するが更新しない(アーカイブ):過去案件、完了プロジェクト、旧版資料
- 不要(廃棄):重複、個人メモ、古い一時ファイル
「捨てるのが怖い」という声は多いですが、実務では“捨てずにアーカイブに隔離する”だけでも効果があります。クラウド上でもアーカイブ領域を分け、原則読み取り専用にしておくと、日常領域がすっきりします。
ファイル名・パスの注意(意外にハマる)
クラウド移行では、深すぎる階層(長いパス)や、使用できない文字、同名ファイルの衝突などがエラー原因になります。移行前に「フォルダ階層を浅くする」「命名規則を整える」などの手当てをしておくと、移行ツールのエラー対応が激減します。移行作業の工数は“事前整理の質”でほぼ決まると言っても過言ではありません。
移行手順:止めない移行(並行運用)で安全に切り替える
ファイルサーバーをクラウド化する移行は、一晩で切り替える“大停電型”よりも、段階的に進める“並行運用型”が現実的です。特に中小企業でも「月末締め」「監査対応」「請求処理」など止められない業務があります。ここでは、一般的に失敗しにくい移行手順を紹介します。
移行の全体フロー(おすすめ)
- 移行方式を決める:一括移行/段階移行/部署単位/プロジェクト単位
- クラウド側の器を作る:フォルダ(またはサイト/チーム)構造、権限グループ、外部共有ポリシー
- パイロット(小規模)移行:1部署または1プロジェクトで試し、運用ルールと教育を検証
- 本移行(段階的):夜間や休日に差分同期をかけつつ、順に切り替え
- 最終切替:最終差分を反映し、旧ファイルサーバーを読み取り専用化
- 安定化:アクセスログ確認、問い合わせ対応、例外運用の整理
パイロット移行で検証すべきポイント
- 権限が想定通りか:見えてはいけないものが見えない/必要な人が見える
- 同期(PCへの自動ダウンロード)の運用:全員同期にするとPC容量やトラブルが増えるため、必要範囲だけにする
- 共同編集と競合:Excelの運用(同時編集が難しいファイルの扱い)
- 検索性:ファイル名・フォルダ名・メタデータの付け方で探しやすさが変わる
- 業務アプリ連携:システムから出力しているフォルダがある場合、出力先変更の手順
移行ツールと手作業の線引き
移行は「ドラッグ&ドロップ」でもできますが、規模が大きいほどツール活用が安全です。代表的には、各クラウドの移行ツールや、サードパーティ製の移行ツールがあります。ツールを使うと、差分移行(更新分だけ再同期)やログ取得、エラー一覧化ができ、切替がスムーズになります。“移行後の検証(何が移ったか)”まで含めて計画し、移行作業を属人化させないのがポイントです。
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よくある失敗と対策:権限事故・外部共有・運用崩壊を防ぐ
クラウド化後のトラブルで多いのは、技術的な障害よりも運用ルールの曖昧さから起きる問題です。特に「誰が共有リンクを作ってよいか」「退職者が出たときの処理」「プロジェクト終了後の片付け」が定まっていないと、情報漏えいや混乱につながります。ここでは、現場で起きがちな失敗パターンと対策をまとめます。
失敗:外部共有リンクが無秩序に増える
取引先への共有が便利な反面、リンクが無期限・誰でもアクセス可能になっているとリスクが跳ね上がります。対策としては、外部共有は原則「期限付き」「特定相手のみ」「ダウンロード制限(可能なら)」を標準にし、例外申請で対応するのが安全です。加えて「共有リンクの棚卸し(月1回など)」を運用に組み込みます。
失敗:権限が複雑化して誰も説明できない
フォルダごとに個人権限を継ぎ足していくと、数か月で管理不能になります。対策は、前述の通りグループ運用に寄せること、そして「新規フォルダ作成時のテンプレ(部署/プロジェクト/機密)」を用意することです。作成時点で権限セットが決まっていれば、後からの例外が激減します。
失敗:同期トラブルで「クラウドは危ない」と言われる
同期クライアントは便利ですが、全社で無制限に同期すると、PC容量不足、同期競合、オフライン編集の衝突などが起きやすくなります。対策は、原則はブラウザ利用+必要フォルダのみ同期、そして大容量フォルダ(動画・画像素材など)は同期しない運用を徹底することです。
失敗:移行したのに旧ファイルサーバーが捨てられない
「結局、両方を見る」状態が続くと、最新版がどちらか分からなくなり、クラウド化の効果が出ません。対策は、最終切替日に旧ファイルサーバーを読み取り専用にし、「更新はクラウドのみ」というルールを明確化することです。例外が必要な部署には期限付きで対応し、必ずクローズします。
運用設計:クラウド化の効果を出すルール(教育・監査・改善)
移行が完了した瞬間がゴールではなく、運用が回り始めて初めてクラウド化の価値が出ます。特に情シスや総務が少人数の組織では「ルールが複雑だと守られない」問題が起きがちです。運用設計は、細かい規程を増やすより、最低限のルールを短く・分かりやすくし、定期的に見直すのが現実的です。
最低限用意したい運用ルール
- 保存場所のルール:個人領域(下書き)と共有領域(正式版)を分ける
- フォルダ作成ルール:命名規則、作成申請の要否、テンプレ構造
- 外部共有ルール:期限、相手指定、承認の要否、共有禁止情報の定義
- 退職・異動時の手順:アカウント停止、所有権移管、共有リンク無効化
- アーカイブ:プロジェクト終了時の保管先、保存期間、削除ルール
教育(周知)は「30分の短い研修+チートシート」が効く
非エンジニアの方がつまずくのは、機能ではなく「どこに保存すべきか」「どう共有すべきか」の判断です。よくある業務シーン(見積書を社外共有する、稟議資料を上長にレビュー依頼する、プロジェクトが終わったらアーカイブする)に沿って、30分程度の研修と1枚のチートシートを用意すると、問い合わせが減ります。“例で覚えられる運用”にするのがポイントです。
監査・セキュリティ:大企業の情シスが見るべき観点
監査対応やセキュリティ要求がある場合は、クラウド側の設定(多要素認証、条件付きアクセス、端末管理、監査ログ保管、DLPなど)を前提に運用を設計します。全てを最初から厳格にしすぎると現場が回らないため、「機密領域から優先的に強化」「外部共有は段階的に解放」といった進め方が有効です。最も重要なのは“設定したこと”ではなく“運用され続けること”です。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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まとめ
ファイルサーバーをクラウド化する際は、ツール選定以上に「権限設計」と「移行前の整理」が成否を分けます。まずは現状の棚卸しで移行対象を絞り、権限は個人付与ではなくグループで管理する方針に切り替えるのが鉄則です。移行はパイロットから始め、段階的な並行運用で業務を止めずに切り替えると安全です。
また、クラウド移行後は外部共有・同期・アーカイブなどの運用ルールを短く分かりやすく整え、教育と棚卸しを定期的に回すことで効果が定着します。「移行して終わり」ではなく「使い続けられる仕組み」を作ることが、クラウド化の投資対効果を最大化します。
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