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「このファイルどこ?」をDifyとノーコードAIで解決する時代へ
社内で日常的に飛び交う「このファイルどこ?」「あの提案書、最新版どれ?」という声は、実は大きな生産性ロスにつながっています。ファイルサーバーやクラウドストレージが増え、部門ごとにフォルダ構成や命名ルールがばらばらになった結果、検索窓にキーワードを入れてもうまくヒットしない。結局、詳しい人にチャットで聞き、返信を待つ——この繰り返しが、PMやDX推進担当の時間を静かに奪っています。
こうした状況を根本から変えられるのが、自然文の質問に答える社内検索AIです。「去年のA社向け見積書」「新入社員の入社手続きの手順」など、あいまいな表現でもAIが文脈を理解して、候補ファイルを提示してくれます。とはいえ、ゼロからAIシステムを内製するのは現実的ではありません。そこで鍵になるのが、開発のハードルを大きく下げるノーコードAIプラットフォームであるDifyです。
本記事では、プログラミング経験が限られているPMやDX推進担当の方でも、Difyを使ってノーコードAIで「このファイルどこ?」に答える社内検索AI社員を、たった1日で立ち上げるための具体的なステップと注意点を整理します。単なるツール紹介ではなく、現場の業務フローに乗せるための設計・運用の考え方まで含めて解説します。
なぜ「このファイルどこ?」問題を放置すると危険なのか
まずは、なぜ社内検索AIが必要になるのかを、業務の視点から整理してみましょう。多くの企業では、営業資料、要件定義書、議事録、契約書テンプレートなど、日々大量のファイルが作られています。しかし、保存場所は「共有ドライブ」「各プロジェクトフォルダ」「個人のクラウドストレージ」と散在し、命名規則も「YYYYMMDD_クライアント名_案件名」「最終版」「新最終版」などバラバラになりがちです。この状態では、どれだけ検索機能が高性能でも、ユーザーが適切なキーワードを思いつけなければヒットしません。
結果として起こるのが、「詳しい人に聞く」文化です。Slack や Teams で「あの資料どこでしたっけ?」と聞き、返事を待つ。返事が来なければ別の人にも聞く。情報を持っている人は、そのたびに同じリンクを貼り続けることになり、本来の業務が中断されます。これは単なる1〜2分のロスではなく、集中力の分断やマルチタスクによる生産性低下も招きます。
また、「探すことが面倒だから、過去資料を再利用せずに作り直す」という現象も起きます。企画書や要件定義書のフォーマットが乱立し、属人化が進むと、品質のばらつきが大きくなります。ここで社内検索AIがあれば、「過去のA社向け提案書の構成を参考にしたい」「他部署の類似案件の資料が欲しい」といった要求に即座に応えられます。つまり社内検索AIは、単にファイルの所在を教えるだけでなく、組織のナレッジ循環を支えるインフラにもなり得るのです。
とはいえ、「検索システムを入れましょう」と言っても、既存の全文検索エンジンだけでは限界があります。ファイル名や文書内の単語だけに頼る検索では、ユーザーの文脈や目的を理解しきれません。そこで、自然言語処理を活用するDifyのようなノーコードAIプラットフォームで、質問文そのものを理解して答える社内検索AIを構築することが重要になります。
DifyとノーコードAIで実現する「社内検索AI社員」とは
Difyは、ブラウザベースで生成AIアプリケーションを構築できるノーコードAIプラットフォームです。LLM(大規模言語モデル)の選択やAPI連携、RAG(検索拡張生成)の設定など、本来であればエンジニアがコードで組むような処理を、画面上のワークフローエディタで組み立てることができます。これにより、「AIは使ってみたいが、自社で開発するのは難しい」と感じているPMやDX担当でも、プロトタイプ構築から本番運用の手前までを自らリードできるようになります。
社内検索AIを作るうえで重要なのが、Difyの「ナレッジ(Knowledge)」機能です。これは、PDFやWord、PowerPoint、テキストなどの文書をアップロードしてインデックス化し、ユーザーからの質問に対して関連度の高いチャンクを検索・参照する仕組みです。通常の検索との違いは、「ユーザーの質問 → 関連文書の抽出 → LLMによる要約・整形」という一連の流れを自動的に行ってくれる点にあります。たとえば「2024年度の価格改定の説明資料は?」と聞くと、該当資料だけでなく、価格表や社内説明用スライドも含めて候補として返すことが可能です。
さらにDifyは、ノーコードAIとして、チャットボットの性格や口調、回答フォーマットをプロンプトで柔軟に制御できます。たとえば「ファイル名・保存場所・共有リンク・最終更新日をセットで返す」「候補が複数ある場合はスコア順に3件まで提示する」「見つからないときは質問の絞り込みを提案する」といった挙動を、ワークフローとプロンプトの組み合わせで実現できます。これにより、単なるFAQボットではなく、あたかも“情報システム部門のメンバーが1人増えた”ような社内検索AI社員を作ることができます。
特にPMやDX推進担当にとって嬉しいのは、ノーコードAIであるDifyなら、最初のPoCから「現場で使えるライン」までを短期間で引き上げやすい点です。最初は営業資料フォルダだけを対象にした小さな社内検索AIとしてリリースし、使われ方を見ながらナレッジやプロンプトを改善する。こうしたアジャイルな進め方とDifyの相性は非常によく、「大掛かりなシステム開発プロジェクトにしない」という意味でもおすすめです。
「このファイルどこ?」AI社員を設計するステップ
ノーコードAIでいきなり作り始める前に、PMやDX担当として押さえておくべきは「AI社員の設計図」を描くことです。最初のステップは、対象とするデータソースの整理です。自社ではGoogle Drive、OneDrive、SharePoint、Box、オンプレミスのファイルサーバなど、どこに重要なファイルがあるでしょうか。すべてを一気に社内検索AIの対象にするのではなく、まずは「営業共通フォルダ」「プロジェクト標準ドキュメント」「社内規程」といった、利用頻度が高く、公開しても問題が少ない領域に絞ると、導入のリスクと負荷を抑えられます。
次に重要なのが権限とセキュリティです。Dify側では接続するデータソースに応じて認証・認可を設定できますが、「誰がどの範囲まで見えるべきか」というポリシーを事前に決めておかないと、社内検索AIから意図せぬ機密情報が見えてしまうリスクがあります。最初は「全社員に公開している資料のみ」「特定プロジェクトメンバーに限定したスペースのみ」といったスコープから始め、運用を通じて範囲を調整していくのが現実的です。この議論は情報システム部門やコンプライアンス部門も巻き込みながら進めるべき重要ポイントです。
続いて設計したいのが、AI社員の“人格”です。Difyではプロンプト次第で、フレンドリーなアシスタントにも、事務的で正確な案内役にもなります。「できるだけ短く、要点を簡潔に答える」「ファイルの所在があやふやな場合は、推測ではなく“わからない”と伝える」「法務や人事など、専門部署の判断が必要な話題には踏み込まない」など、振る舞いのルールを明文化しておくと、社内検索AIの信頼性が高まります。
最後にユースケースの棚卸しです。営業担当が過去の提案書を探す、新人が入社手続きの手順を確認する、PMが過去プロジェクトのWBSテンプレートを参照するなど、現場で実際に起こる「このファイルどこ?」シーンをできるだけ具体的に書き出してみましょう。これらをプロンプトやテストケースに反映することで、ノーコードAIとしてのDifyの設定もブレにくくなり、「現場で使われる社内検索AI」に近づきます。
Difyで1日構築:具体的なセットアップ手順
設計図が固まったら、いよいよDify上でノーコードAIの構築に入ります。ここでは「1日でたたき台を作る」ことをゴールに、ステップを整理します。午前中のゴールは、Difyワークスペースの用意とデータソースの接続です。アカウントを作成し、プロジェクト用のワークスペースを作成したら、Google Drive や OneDrive など、先ほど選定したストレージをDifyから接続します。必要な権限やOAuth設定は、あらかじめ情報システム部門と確認しておくとスムーズです。
次はチャットアプリとプロンプトの作成です。Difyのアプリ作成画面から「Chatbot」や「Agent」タイプを選び、「ユーザーは日本語でファイルの場所を自然文で質問します」「あなたは社内の情報システム担当として、ファイル名・保存場所・共有リンク・最終更新日をわかりやすく返してください」といったシステムプロンプトを設定します。そのうえで、ワークフローエディタを開き、「ユーザーの質問 → ナレッジ検索 → 上位◯件の候補を整形 → 回答生成」というフローをドラッグ&ドロップで組み立てます。この時点で、最小限の社内検索AIが形になります。
午後はナレッジ登録とテスト、そしてパイロットリリースです。DifyのKnowledge機能に、対象フォルダ内の資料をインポートし、インデックス作成が完了したら、実際に「◯◯社向け提案書」「2023年の価格表」「入社手続きのチェックリスト」など具体的な質問を投げてみましょう。回答の品質が十分でない場合は、プロンプトに「候補が複数ある場合は一覧で示す」「見つからないときは期間やキーワードの絞り込みを依頼する」といった指示を追加し、ノーコードAIならではの素早いチューニングを行います。
最後に、限定的なパイロット運用に入ります。例えば特定プロジェクトのメンバー5〜10人に試してもらい、「どんな質問をしたか」「うまく見つかったか」「どんな誤回答が出たか」をヒアリングし、Difyのログも合わせて確認します。この段階では、「完璧に答えられる社内検索AI」を目指すのではなく、「AIに聞くときのコツ」「向き不向き」を現場と一緒に見つけていくことが重要です。1日でたたき台を作り、以降は運用改善のサイクルにのせる——それがノーコードAIとしてのDify導入の現実的な進め方です。
導入後に差がつく社内検索AIの運用・改善ポイント
社内検索AIは、リリースして終わりではなく、運用の仕方で成果が大きく変わります。うまく定着している企業に共通するのは、「ログを見て改善する」という当たり前の行動を、Difyとセットで仕組み化している点です。具体的には、Difyの実行ログから「AIが答えられなかった質問」「ユーザーが再質問を繰り返したケース」を定期的に抽出し、それらをカテゴリ別に整理します。「資料そのものが存在しない」「存在するが、ナレッジに取り込まれていない」「表現が難しくて検索に引っかからない」など原因を分けていくと、次に打つべき手が見えやすくなります。
この際、PMやDX推進担当が一人で抱え込むのではなく、部署ごとに「ミニAIオーナー」を置くと効果的です。全社共通の社内検索AIに加え、営業部専用、人事専用など、小さなDifyアプリをノーコードAIで立ち上げ、それぞれのオーナーがナレッジやプロンプトの更新を担当するイメージです。プラットフォームとしてのDifyと、現場の専門知識を持ったオーナーを組み合わせることで、AIの品質と鮮度を保ちやすくなります。
KPI設計も忘れてはなりません。「利用回数」だけを見るのではなく、「人に聞く前にAIに聞いた割合」「ヘルプデスクや情報システム部門への問い合わせ件数の減少」「特定の検索タスクにかかる平均時間の短縮」など、業務インパクトがわかる指標を設定しましょう。これらの数字を定期的にレポートし、「ノーコードAIとDifyによる社内検索AIが、どれだけ時間とコストを削減しているか」を示せれば、経営層や現場からの理解も得やすくなります。
一方で、注意すべきポイントもあります。AIが答えてくれるからといって、何でもかんでも共有フォルダに置いてしまうと、情報の鮮度と品質が落ち、誤った情報が再利用されるリスクが高まります。ナレッジの棚卸しとアーカイブルールを決め、「古い資料はアーカイブフォルダへ移動する」「頻繁に参照されるテンプレートは定期的に見直す」といった運用ルールを、Dify導入とセットで設計することが大切です。こうした地道な運用設計が、ノーコードAIによる社内検索AIを一過性のブームではなく、業務の基盤へと育てていきます。
自社だけで進める不安を減らす、ソフィエイトの伴走支援
ここまで読んで、「DifyとノーコードAIなら、自社でも社内検索AIを作れそうだ」と感じた方も多いと思います。しかし、いざプロジェクトとして動かそうとすると、「ストレージ構成が複雑で、どこから手を付ければよいか」「情報システム部門や法務部門とどう合意を取るか」「PoCで終わらせず、本番運用まで持っていけるか」といった不安が出てきます。これらは、ツールだけでは解決できない“導入プロセス”の課題です。
株式会社ソフィエイトは、こうした課題を抱えるPM・DX推進担当の方々に対し、Difyを活用したノーコードAI・社内検索AIプロジェクトの伴走支援を行っています。具体的には、「このファイルどこ?」問題に絞った1日ワークショップで、ユースケースの整理、データソースと権限範囲の棚卸し、ナレッジ構造の設計、プロンプトとワークフローの叩き台作成までを一気通貫で支援することが可能です。そのうえで、社内のステークホルダーに説明するための資料(背景・目的・メリット・リスク・スケジュールなど)も一緒に整理します。
さらに、社内検索AIを現場に浸透させるポイントであるUX・UI設計も重視しています。SlackやTeamsでの呼び出し方、回答メッセージのフォーマット、エラー時の返し方、FAQへの誘導など、細かな設計が利用率を大きく左右します。ソフィエイトでは、アプリやWebのUI/UX改善の知見を活かし、Difyで構築したノーコードAIを「現場が自然に使えるツール」にするための設計もサポートします。
無料相談では、こんなことまで一緒に整理できます
- 自社にとって社内検索AIが最も効果を発揮する領域の特定
- DifyとノーコードAIでどこまで内製できるか、どこから外部支援が必要かの切り分け
- 段階的な導入シナリオ(Step1:検索、Step2:FAQ、Step3:業務フロー自動化)の検討
- 社内説明にそのまま使える「発注メモ」や提案資料のたたき台作成
「まずは小さく試したい」「社内説得の材料が欲しい」といった段階でも構いません。DifyとノーコードAIで「このファイルどこ?」問題を解決する一歩を踏み出したい方は、ぜひソフィエイトのWebサイトからお問い合わせ・無料相談をご検討ください。
まとめ:DifyとノーコードAIで「探す時間」を削減しよう
本記事では、日常的な「このファイルどこ?」問題が生産性やナレッジ共有に与える影響と、それを解決する手段としての社内検索AIの可能性について解説しました。そして、ゼロからシステム開発を行わなくても、DifyというノーコードAIプラットフォームを使えば、PMやDX推進担当でも1日で「AI社員のたたき台」を作れることを具体的なステップとともにご紹介しました。
重要なのは、「完璧な社内検索AIを一気に作ろう」としないことです。まずは対象領域を絞り、小さくDifyでノーコードAIアプリを構築し、ログを見ながら現場と一緒に育てていく。このアジャイルなアプローチこそ、変化の激しい時代にフィットしたAI導入の王道です。うまく運用できれば、情報検索にかかる時間の削減だけでなく、過去の知見やノウハウが再利用されやすくなり、組織全体の学習速度も高まります。
一方で、データソースの整理や権限設計、社内合意形成など、ツールだけでは解決できない論点も多く存在します。そこを自社だけで抱え込まず、外部パートナーの知見を活用することで、遠回りやPoC止まりを防ぐことができます。DifyとノーコードAIによる社内検索AI導入を、単なる技術トライアルではなく、業務変革の起点にしていく——その第一歩として、本記事の内容が参考になれば幸いです。
株式会社ソフィエイトのサービス内容
- システム開発(System Development):スマートフォンアプリ・Webシステム・AIソリューションの受託開発と運用対応
- コンサルティング(Consulting):業務・ITコンサルからプロンプト設計、導入フロー構築を伴走支援
- UI/UX・デザイン:アプリ・Webのユーザー体験設計、UI改善により操作性・業務効率を向上
- 大学発ベンチャーの強み:筑波大学との共同研究実績やAI活用による業務改善プロジェクトに強い
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